6. 事務職員の待遇

職員の処遇、特に管理者レベルの給与については、過大ではないかとの声を耳にするが、これらは具体的なデータに基づくものではなく断片的 な情報による感覚的な批判であったように思われる。しかしながらこの問題意識は会員の中に広く 内在しており処遇制度の透明化はSICE運営にとって最重要テーマの一つである。
今回のTFでは給与制度運用の実態を調査・分析して問題点を抽出し、いくつかの改善提案を纏めた。

6.1 現状の問題点・課題(井上)

SICEでは「計測自動制御学会事務局職員に関する規程」(昭和48年制定)があり、給与等もこれに基づいて定められている。この規程の基本は「公務員一般職に準ずる」ということであり、給与に関しても国家公務員給与法(一般職)の規定を準用している。国家公務員に準ずることの是非を論ずることは今回のTFのミッションではないが、実際の運用面ではいくつかの問題点が浮かび上がってきた。
  1. 一般職員の俸給は 行政職俸給表(一) の2級が適用されており略々妥当と思われるが、事実上業績評価が行われておらず、賞与査定、昇給共機械的に行われている。
  2. 規程に明記されてはいないが、内々の基準とされている管理職の適用職務等級が公務員の基準に比べて過大となっているように思われる。

SICE運用
相当する公務員基準(概略)
一般職員 2,3級
相当高度の知識経験を要する職務
主任 4,5級
本省の係長/地方機関の困難な業務の係長
本省の相当困難な業務を分掌する係長
次長 6,7級
本省の困難な業務を分掌する係長
本省の課長補佐
事務局長 8,9級
本省の困難な業務を分掌する課長補佐
本省の室長

    1. 管理職手当が公務員基準と比較するとかなり高いレベルに設定されている。
SICE規定

公務員基準(特別調整額)

   
  
本省庁課長補佐
8%
   
      
5種
10%
主任
12%
4種
12%
次長
16%
3種
16%

     
2種
20%
事務局長
25%
1種
25%
1〜5種は各機関ごとに定められるが課長クラスで3種、部長クラスで2種、程度
社会保険料(厚生年金、健康保険)は雇用主と従業員が折半で負担することが原則であるが、SICEが全額負担している。これは 給与が実質的に約1割多いことに相当する。厚生施設が準備されていないという理由でスタート時から慣習的に行われてきたもののようである。(当然ではあるがこの分は各個人の課税対象としては処理されており、違法ではない。)

6.2 改善提案(井上)

(1) 能力給への移行を公務員制度の改革に準じて行う
能力給への移行を主体とする公務員制度改革が 2 年以内に実施されるものと思われる。業績評価の処遇への反映を本格的に導入することは、公務員制度改革に合わせて行うことがよりスムーズであると思われる。 制度改革の細部が公表された時点でSICEも準備作業に入ることが望ましい。
それまでの間は賞与(期末勤勉手当)の支給係数に最大±10%程度の査定幅を設けることで対応する。(賞与の査定は現行の給与体系を崩すことなく行えるので、過渡的な措置としては容易に導入できる。)職員の査定は事務局長が行い、総務委員会経由会長承認で実施する。
また、 55 歳到達以降の昇給は行なわない。 (公務員準拠)
(2) 事務局長等への年俸制導入
事務局長および特別職を対象に年俸制を導入する。
事務局長はその職位と責任から考えて業績に応じた年俸制が馴染み易いこと、今後予想される様々な採用プロセスに柔軟に対応し易いこと、などから年俸制を採用する。細部は添付資料に述べるが、骨子は@年功分・能力分を各々約50%とする、A能力分は 5段階とし公務員俸給表とリンクさせる、B能力分の安易な高止まりを避けるためランクアップには年限を設ける、などである。なお、事務局長年俸額のレベルは公務員、民間管理職等とのバランスを勘案して設定した。
また、今後IT専門家等の採用も考えられるため、世間相場に見合った処遇を柔軟に行えるよう、年俸制による特別職を設ける。特別職は原則として有期年契約の短期契約社員とする。
(3) 年金併用
60歳以降の人材活用を柔軟に行えるようにするため、年金併用制を導入する。
なお、この制度は今後定年規定との整合を取る必要がある。
(4) 適用職務等級の適正化
公務員基準、民間レベル等を勘案し、以下の運営とする。
一般職  2,3級
主 任   4級
次 長  5級

この基準と次項管理職手当を適用した場合の 給与モデルを本章末の添付資料 に示す。
また、現職員でこの基準と乖離している場合は、原則として現状基準を維持するものとし、個別に判断する。
(5) 管理職手当の見直し
公務員基準および超過勤務手当喪失等を勘案して以下の運営とする。
主 任   4%
次 長   8%

(6) 社会保険料の折半負担
社会保険料負担は世間並みの労使折半とする。
ただし経過措置として、負担増分を吸収するまでの間は現行基準で算出した給与(年収ベース)との差額を補填する。(試算ではベースアップが無い場合でも、特殊ケースを除き3〜6年程度で吸収可能と思われる。)  
    *1:期末勤勉手当て等の支給係数の変更等は反映させる。
また、学会100%負担の根拠とされていた福利厚生施設については、代替措置として文京区施設の利用促進、また民間業者との契約(有料)により施設を安価に利用できる道を拓く。
(7) 公務員規定との整合
  扶養手当 通勤手当 住宅手当 超過勤務手当 などについては個々に規定せず、「公務員一般職の職員の給与に関する法律に準拠する」 という表現に変える。若干の負担増が生じる部分もあるが、公務員規定に合わせての改定の手間が不要となる。
(8) その他
上記の改定案に基づいて現行の「計測自動制御学会事務局職員に関する規程」 変更および運用を明文化した運用内規の制定を実施する。

添付資料へ

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