SICE 社団法人 計測自動制御学会
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 会告:2009年度計測自動制御学会学会賞の贈呈
 2009年度計測自動制御学会学会賞贈呈のため,出口光一郎副会長を委員長とする学会賞選考委員会において慎重に選考の結果,下記論文賞9件,技術賞3件,著述賞2件,新製品開発賞2件,教育貢献賞1件(11名)が推薦され,理事会の決定を経て8月20日,ICROS-SICE International Joint Conference 2009 (ICCAS-SICE 2009 in Fukuoka) 会場において贈呈式を行い,受賞者に賞状および副賞が贈呈された.

[論文賞]9件
(論文賞・蓮沼賞)
○高速増殖炉用抵抗方式ナトリウム温度計測システム
 (計測自動制御学会論文集Vol.43, No.9で発表)
     東京大学 山ア弘郎君,慶應義塾大学 本多 敏君
     日本原子力研究開発機構 上田雅司君
     横河電機(株) 笛木 学君
(論文賞)
○引きつれ効果を考慮した生体粘弾性パラメータのアクティブセンシング
 (計測自動制御学会論文集Vol.44, No.10で発表)
     大阪大学 田中信行君,東森 充君,金子 真君
(論文賞・武田賞)
○複数の入力むだ時間を有する系に対するH∞ループ整形設計法の導出
 (計測自動制御学会論文集Vol.44, No.10で発表)
    首都大学東京 児島 晃君,市川洋資君
(論文賞)
○受動性に基づいた3次元姿勢協調
 (計測自動制御学会論文集Vol.43, No.12で発表)
   東京工業大学 五十嵐裕司君,畑中健志君,藤田政之君
(論文賞) 
○量子化したフィードバックによる外乱抑制
 (計測自動制御学会論文集Vol.43, No.8で発表)
     京都大学 新銀秀徳君,太田快人君
(論文賞)
○非線形系の重み付き平衡実現とモデル低次元化
 (計測自動制御学会論文集Vol.44, No.1で発表)
     東京大学 椿野大輔君,名古屋大学 藤本健治君
(論文賞・友田賞)
○運転行動における判断の定量化とそれに基づく行動特性解析
 (計測自動制御学会論文集Vol.44, No.3で発表)
     名古屋大学 田口 峻君,稲垣伸吉君,鈴木達也君
     豊田工業大学 早川聡一郎君
     トヨタ自動車(株) 津田太司君,渡辺 篤君
(論文賞)
○Model Representation of Multi-cyclic Phenomena using Role State Variables: Model Based Fast Idling Control of SI Engine
 (SICE JCMSI Vol.1, No.4で発表)
    Toyota Central R&D Labs., Inc. Tomohiko Jimbo君
    Nagoya University Yoshikazu Hayakawa君
(論文賞)
○空気圧受動要素を用いた短下肢装具の歩行相フィードバック制御システムの開発
 (計測自動制御学会論文集Vol.44, No.12で発表)
     立命館大学 中村彰利君,小澤隆太君
     (株)堀場製作所 後藤 智君
     鈴鹿医療科学大学 畠中泰彦君
     立命館大学 川村貞夫君
[技術賞]3件
(技術賞)
○Haar-Like特徴を用いた顔画像計測技術
 (第10回画像センシングシンポジウム,他で発表)
    三菱電機(株) 羽島一夫君,枝澤一寛君,松下雅仁君,
    三輪祥太郎君,鹿毛裕史君,Michael Jones君
(技術賞)
○ハイブリッド自動車開発用HILSシステムの開発及びその応用
 (15th Aachen Colloquium Automobile and Engine Technology,他で発表)
   トヨタ自動車(株) 奥田尚住君,石川直樹君
   トヨタテクニカルディベロップメント(株) 康 子博君,
   正 浩志君,片山朋彦君
   富士通テン(株) 中井敏夫君
(技術賞)
○手すり加速度を用いたエスカレーターチェーンの弛み異常診断
 (計測自動制御学会論文集Vol.44 No.8で発表)
     三菱電機(株) 蔦田広幸君,平位隆史君,
     鷲見和彦君,伊藤 寛君,
     三菱電機ビルテクノサービス(株) 志賀 諭君
[著述賞]2件
(著述賞)
○センシングのための情報と数理(計測・制御テクノロジーシリーズ)」
 (2008年・コロナ社)
   東北大学 出口光一郎君,慶應義塾大学 本多 敏君 著
(著述賞)
○制振工学ハンドブック
 (2008年・コロナ社)
     制振工学ハンドブック編集委員会 著
[新製品開発賞]2件
(新製品開発賞)
○共焦点スキャナユニットCSU-X1
     横河電機株式会社殿
(新製品開発賞)
○直接挿入レーザ方式ガス分析計
     富士電機システムズ株式会社殿
[教育貢献賞]1件(11名)
(教育貢献賞)
○SICEプロセス制御専門家養成塾(SICEプロセス塾)
      東京大学名誉教授 北森俊行君
      元名古屋工業大学 伊藤利昭君
      (株)山武 小河守正君
      京都大学 加納 学君
      東芝三菱電機産業システム(株) 重政 隆君
      日揮(株) 末続 靖君,
      元横河電機(株) 富田芳生君
      名古屋工業大学 橋本芳宏君
      東京農工大学 永島 晃君
      横河電機(株) 高津春雄君,大谷哲也君

受賞者略歴および受賞論文概要
やまさき ひろお
山 ア 弘 郎 君(名誉会員,フェロー)
現職 東京大学名誉教授,金沢工業大学大学院客員教授.
 1956年東京大学工学部応用物理学科卒業,横河電機(株)入社.工業計測用センサなどの研究開発に従事.72年工学博士(東京大学).75年東京大学教授.センシング技術,計測制御機器,計測信号処理などの研究と教育に従事.93年東京大学名誉教授.横河電機(株)常務取締役,95〜2000年(株)横河総合研究所会長,08年〜金沢工業大学大学院客員教授.1965,1981年度大河内記念技術賞.1993年度島津賞,1996年科学技術庁長官賞,1997年紫綬褒章.2000年電気学会業績賞,1968,1973,1985,1990年,1993年本会学会賞受賞.(財)大河内記念会常務理事,日本工学アカデミー理事.電気学会,日本VR学会,ISA,IEEE会員.1989年度本会会長,1998年名誉会員.1994年IEEE Fellow.
ほんだ さとし
本 多   敏 君(正会員)
 1975年東京大学工学部計数工学科卒業,同学科助手.86年同講師,同年熊本大学工学部生産機械工学科助教授.90年慶應義塾大学理工学部計測工学科助教授.92年アーヘン工科大学客員研究員.98年慶應義塾大学理工学部物理情報工学科教授,現在に至る.流体計測,生体計測の研究に従事.工学博士.
うえだ まさし
上 田 雅 司 君(正会員)
 1987年名古屋大学工学部電気学科卒業.同年動力炉・核燃料開発事業団(現 日本原子力研究開発機構)入社.高速実験炉「常陽」,原型炉「もんじゅ」の保守部門を経て2009年よりプラント工学研究センター保全技術グループサブリーダー.高速炉の異常診断システム,新型計装および検査・補修技術開発に従事.
ふえき まなぶ
笛 木   学 君(正会員)
 1991年東京工業大学理工学研究科機械物理工学専攻修士課程修了.同年横河電機(株)入社.流体計測システムの研究,リニアモータの開発,細胞イメージングシステムの開発に従事.日本機械学会などの会員.技術士(機械部門).
受賞論文「高速増殖炉用抵抗方式ナトリウム温度計測システム
 高速増殖炉は炉心の熱出力密度が高いため,高熱伝導率の液体ナトリウムが伝熱流体として使用される.伝熱流体温度を管路外側から計測する新しい計測手法を開発した.手法の理論的解析,シミュレーション,試作検討結果を述べた.原理は管路壁を形成するステンレス鋼とNaとでは,比抵抗と抵抗温度係数が大きく異なり,Naの比抵抗が低く約1/7であり,温度係数が約4倍と高いことを利用する.管路を横断する電流を管壁から流すと,管壁上の電位分布が管路内の電流分布を反映するので,管壁における電位計測からNaの温度温度が求められる.高速増殖炉「もんじゅ」で,熱電対温度センサの保護管が折損した結果Naが漏洩して火災が発生した.本方式では計測対象の流体自身と管路外壁に設置した電流電極と電圧電極とからセンサが構成されるので,管路壁をセンサが貫通せずNa温度を管路外から連続計測できる.試作した結果200〜500度の範囲で±5℃の不確かさで計測可能なことが実証された.

たなか のぶゆき
田 中 信 行 君(学生会員)
 1983年8月28日生.2003年鈴鹿工業高等専門学校機械工学科卒業.08年広島大学大学院工学研究科複雑システム工学専攻修了.現在大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻・博士後期課程在学中.日本学術振興会特別研究員(DC1).ロボット技術の医療応用,アクティブセンシングに関する研究に従事.
ひがしもり みつる
東 森   充 君(正会員)
 1974年3月9日生.98年広島大学大学院工学研究科博士課程前期修了.同年(株)東芝入社.2002年8月広島大学大学院工学研究科助手,06年10月大阪大学大学院工学研究科助手,08年3月同准教授,現在に至る.博士(工学).ロボットハンド,アクティブセンシングの研究に従事.日本ロボット学会,日本機械学会,日本生体医工学会,IEEEなどの会員.
かねこ まこと
金 子   真 君(正会員)
 1954年1月18日生.81年東京大学工学系研究科博士課程修了.工学博士.通産省工業技術院機械技術研究所,九州工業大学助教授,広島大学教授を経て,2006年より大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻教授.ハイパーヒューマン技術を応用したダイナミックアクティブセンシングとその医療診断応用に興味をもつ.1996,2002,2008年本会論文賞,1994,2007年日本ロボット学会論文賞,2004年IEEE RAS 論文賞,IEEE Fellow.
受賞論文「引きつれ効果を考慮した生体粘弾性パラメータのアクティブセンシング」
 生体組織では力印加部だけでなく,その近傍まで引きつられて変形するため,引きつれ度合いも考慮した硬さ評価方法の構築が望まれていた.さらにこの変形特性に起因して,力印加時と力遮断時で変形の応答特性が異なる方向依存型応答特性が現れる.本論文では,4つの線形粘弾性パラメータで引きつれ効果が表現できる生体組織モデルを新たに提案している.このモデルは節点位置と粘弾性パラメータが積の形で現れるため,運動方程式は一般に非線形になるものの,表面形状が計測可という条件を付与することによって粘弾性パラメータに関して線形方程式に帰着させることができる.提案モデルを用いてパラメータ推定を行い,さらに推定されたパラメータを用いて順問題を解いた結果,引きつれ効果だけでなく方向性依存型応答特性も明快に表現できることがわかった.生体組織の簡易パラメータ推定法として今後の応用が期待される.

こじま あきら
児 島   晃 君
(正会員)
 1991年早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了.同年,東京都立科学技術大学講師.97年同助教授.2004年首都大学東京教授となり,現在に至る.2000〜01年,スイス連邦工科大学(ETH)自動制御研究所 客員研究員.モデル予測制御とその応用,ロバスト制御,むだ時間系をはじめとする分布系の制御などの研究に従事.工学博士.IEEE,システム制御情報学会,日本鉄鋼協会,電気学会などの会員.
いちかわ ようすけ
市 川 洋 資 君
(正会員)
 1984年3月16日生.2006年東京都立科学技術大学電子システム工学科卒業.08年首都大学東京大学院システムデザイン研究科修士課程修了.同年より,横河電機(株)に勤務.ロバスト制御など制御系設計法の研究に従事.
受賞論文「複数の入力むだ時間を有する系に対するH∞ループ整形設計法の導出」
 複数の入力むだ時間を有する系に対して,ギャップ距離によるロバスト安定化問題を解き,可解条件と制御則の構成法を導いた.そして,著者らが開発したRiccati作用素方程式の解法を用いることにより,1) 制御/観測 Riccati 作用素方程式の解析解が構成できること,2) スペクトル半径に関する条件が陽に検証できることを明らかにした.本稿で用いられた手法は,集中定数系に対して展開された状態空間における接近法に対応するものであり,得られた制御則は集中定数部分のオブザーバと予測制御を併合した簡明な構造を有していることが示された.また数値例により,入力むだ時間とループ整形の関係を調べ,集中定数部分の最小位相性が性能改善にそれほど効果がない場合があることを紹介した.

いがらし ゆうじ
五十嵐 裕 司 君(正会員)
 2006年東京工業大学工学部制御システム工学科卒業.08年同大学大学院理工学研究科機械制御システム専攻修士課程修了.同年,三菱電機(株)入社.現在に至る.
はたなか たけし
畑 中 健 志 君(正会員)
 2002年京都大学工学部情報学科卒業.04年同大学大学院情報学研究科数理工学専攻修士課程修了.06年日本学術振興会特別研究員DC.07年京都大学情報学研究科数理工学専攻博士後期課程修了.07年東京工業大学大学院助教,現在に至る.協調制御,予測制御の研究に従事.博士(情報学).
ふじた まさゆき
藤 田 政 之 君(正会員)
 1984年早稲田大学大学院理工学研究科博士前期課程修了(電気工学専攻),85年同博士後期課程中退.同年金沢大学工学部助手.同講師,助教授を経て,92年北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教授.99年金沢大学工学部教授.2005年東京工業大学大学院理工学研究科教授.2010年IEEE Multi-conference on Systems and Control General Chair.2008年IEEE Transactions on Control Systems Technology Outstanding Paper Award,2000年システム制御情報学会論文賞,1997年本会論文賞を受賞.ビジュアルフィードバック,協調制御,ロバスト・予測制御とその応用に関する研究に従事.工学博士.IEEEなどの会員.
受賞論文「受動性に基づいた3次元姿勢協調」
 本論文はSE(3)上での複数の剛体の姿勢協調問題について考察する.まず,姿勢協調問題を定義し,これを達成する制御則を提案する.つぎに,各剛体が受動性をもつことを利用し,個々の剛体のエネルギー関数の総和をポテンシャル関数として定義することで,平衡強連結グラフで表現される情報交換の下で姿勢協調が達成されることを示す.さらに,通信遅れがある場合や,リーダが存在する場合,グラフが変化する場合についても考察し,提案した制御入力が姿勢協調を達成することを示す.また,ユークリッド空間上での協調制御問題においてはグラフの構造と収束の速さの関係を表わす指標としてalgebraic connectivityが用いられるが,本論文ではSE(3)上での協調制御問題においてもこれが有効であることを示す.最後にシミュレーションにより本論文の有効性を確認する.

しんぎん ひでのり
新 銀 秀 徳 君
(正会員)
 2002年大阪大学工学部応用理工学科卒業.07年大阪大学大学院工学研究科電子制御機械工学専攻博士後期課程単位修得退学.京都大学大学院情報学研究科教務補佐員,技術補佐員,研究員などを経て,08年より山口大学大学院理工学研究科機械工学専攻助教.博士(工学).
おおた よしと
太 田 快 人 君
(正会員)
 1980年大阪大学工学部電子工学科卒業.83年大阪大学大学院工学研究科電子工学専攻後期課程中退.同年大阪大学工学部電子工学科助手,大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻教授を経て,2006年より京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻教授.この間86年から88年米国マサチューセッツ工科大学情報と決定システム研究所客員研究員.European Journal of Control, Automaticaなどの Associate Editor.制御理論の研究に従事(工学博士).
受賞論文「量子化したフィードバックによる外乱抑制」
 本論文では,有界振幅外乱の抑制におけるフィードバック信号の量子化ビット数を低減する問題について考えた.扱う制御対象は,状態が観測可能な一入力のシステムである.出力振幅を抑制する問題は,制御対象の状態を不変集合の中に抑制する問題に帰着することが知られている.ここでの不変集合とは,状態がその中にあれば,制御入力によりそれ以後の状態をその中に保つことができるような集合のことである.本論文では,量子化を考慮しない,つまり連続の制御入力値を許容する場合に構成された不変集合をもとにして,状態フィードバックの量子化ビット数を低減する方法を示した.具体的には,与えられた多面体の不変集合に対して,状態をその中に抑制するために必要な制御入力値の種類を最小化するアルゴリズムを示した.アルゴリズムは,線形計画法による最適化の反復として与えられた.

つばきの だいすけ
椿 野 大 輔 君
(学生会員)
 2005年名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業,07年東京大学大学院工学系研究科修士課程航空宇宙工学専攻修了,同年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程システム情報学専攻進学,09年日本学術振興会特別研究員(DC2).数値計算手法の制御理論への応用,階層化システムなどの研究に従事.
ふじもと けんじ
藤 本 健 治 君
(正会員)
 1994年京都大学工学部精密工学科卒業,96年京都大学大学院工学研究科修士課程応用システム科学専攻修了,97年同大学院博士後期課程を中途退学,97年京都大学大学院工学研究科助手等を経て,2007年より名古屋大学大学院工学研究科准教授.1999年オーストラリア国立大学客員研究員,1999〜2000年および2002年デルフト工科大学客員研究員.非線形制御の研究に従事.博士(情報学).IEEE,システム制御情報学会,日本機械学会,日本鉄鋼協会などの会員.
受賞論文「非線形系の重み付き平衡実現とモデル低次元化」
 一般にシステムの次数の増加は,数値的困難さなど制御系設計を行う際に多くの問題をもたらす.実用上,これらの問題に対処するため,より低い次数のシステムで近似を行うモデル低次元化が用いられる.特に代表的なものに平衡実現を用いた低次元化法があり,近年,その概念は非線形システムへ拡張された.そこでは非常に整った理論が展開されており,単に低次元化のみならず非線形システム解析に有用なツールとなることが期待されている.しかしながら,特定の周波数に基づく平衡実現,つまり重み付き平衡実現には対応していない.実用上は,特定の帯域の入出力のみ近似できればよく,この概念は実用を考えるうえで必須なものといえる.そこで本論文では,非線形システムに対して,重み付き平衡実現とそれを用いた低次元化手法を定式化する.平衡化を行うものが,線形の場合では行列であったのに対し,非線形の場合では状態変数の関数となるため,線形システムの重み付き平衡実現を直接的に拡張することはできない.著者らは,それらの関数において,重みに対応する状態変数にある拘束を付加することを提案した.その結果,線形の場合の自然な拡張となる重み付き平衡実現を定義することができた.さらに,低次元化後のシステムが安定となるための条件も得た.

たぐち しゅん
田 口   峻 君
(正会員)
 1984年生.2009年3月名古屋大学工学研究科博士課程前期課程修了.同年4月(株)豊田中央研究所入社,現在に至る.
いながき しんきち
稲 垣 伸 吉 君
(正会員)
 1975年11月生.2003年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).03年名古屋大学大学院工学研究科助手.07年同助教.08年同講師,現在に至る.2007年Finalist of the SICE Annual Conference Young Author's Awardなどを受賞.自律分散システム,多脚歩行ロボット,確率的故障診断,人間−機械系の解析・設計に関する研究に従事.日本機械学会,日本ロボット学会,IEEEなどの会員.
すずき たつや
鈴 木 達 也 君
(正会員)
 1964年生.91年名古屋大学大学院博士課程後期課程電子機械工学専攻修了.工学博士.同年名古屋大学工学部助手.2000年同助教授.06年同教授.現在に至る.この間,1998年から1年間,U.C.Berkeley 客員研究員.ハイブリッドシステム論に基づく知的システムの実現や人間行動の解析とその人間機械系への応用等に関する研究に従事.電気学会論文賞(1995),ICCAS Outstanding paper award (2008) などを受賞.電気学会,電子情報通信学会,日本機械学会,システム制御情報学会,日本ロボット学会,日本人間工学会,IEEEなどの会員.
はやかわ そういちろう
早 川 聡一郎 君
(正会員)
 1968年生.96年名古屋大学工学部電気工学研究科博士課程後期課程修了.同年豊田工業大学助手,2009年三重大学准教授.現在に至る.博士(工学).主としてロボット制御,知能制御や人間行動解析とその応用に関する研究に従事.日本ロボット学会,電子情報通信学会,電気学会の会員.
つだ たいし
津 田 太 司 君
(正会員)
 1975年生.2000年東京大学大学院工学系研究科修士課程産業機械工学専攻修了.半導体製造装置メーカを経て, 03年トヨタ自動車(株)入社.運転操作系開発,情報提示技術開発を経て,ドライバー状態検出技術などを応用した予防安全システム開発に従事.自動車技術会の会員.
わたなべ あつし
渡 辺   篤 君
(正会員)
 1966年10月31日生.90年早稲田大学理工学部電子工学科卒業.同年トヨタ自動車(株)入社.車両用駆動装置開発,車載LAN開発,テレマティクス開発を経て現在ドライバー状態検出,ドライバーへの情報伝達などHMIの開発に従事.自動車技術会の会員.
受賞論文「運転行動における判断の定量化とそれに基づく行動特性解析」
 人間の運転行動は「認知」「判断」「操作」の各機能から成り立っていると考えられているが,「認知」や「判断」のモデル化は「操作」のモデル化に比べてかなり立ち遅れている.システム論的な視点から見た場合,「操作」が連続で時間駆動的な機能であるのに対し,「判断」は連続的な知覚情報から、いわゆる「する」か「しない」かの二値的な出力へのマッピングであり,離散事象的な機能として捉えられると考えられる.また,人間の「判断」には通常,大きなばらつきが存在し,しかもこのばらつきの統計的な性質が人間の判断能力のある側面を表しているとも考えられる.したがって,「判断」のモデル化にあたっては,連続信号から離散信号へのマッピングを,統計的ばらつきを考慮しながら定量的に扱える数理モデルを新たに導入する必要がある.本論文では,運転行動における「判断」を,結果変数が二値で説明変数が連続値を取るような入出力関係を確率的にモデル化することが可能なロジスティック回帰モデルを用いてモデル化する手法を新たに提案した.具体的には,ドライバーの交差点での右折行動をドライビングシミュレータを用いて計測し,その際の "go" か"stop" の「判断」を対向車の情報を説明変数としたロジスティック回帰モデルを用いて表現した.つぎに,この提案モデルがドライバーの判断のオンライン予測に有用であることを示した.そして最後に,「判断エントロピー」,「判断の積極性」と名づけた提案モデルより計算可能な2つの定量的な指標を提案し,アンケートによる主観的な評価と照らし合わせながら,それらに基づいたドライバーの分類が可能となることを示した.

じんぼ ともひこ
神 保 智 彦 君
(正会員)
 2002年名古屋大学大学院工学研究科マイクロシステム工学専攻修士課程修了.同年(株)豊田中央研究所入社,現在に至る.また,07年10月より名古屋大学大学院工学研究科機械理工学専攻博士後期課程在籍.エンジン・パワートレーンのモデリングと制御に関する研究に従事.自動車技術会の会員.
はやかわ よしかず
早 川 義 一 君
(正会員,フェロー)
 1979年名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程修了.同年名古屋大学工学部助手.その後,講師,助教授を経て,96年同教授.システム制御理論,ロボット制御,制振制御などの研究に従事.日本機械学会,システム制御情報学会などの会員(工学博士).
受賞論文「Model Representation of Multi-Cyclic Phenomena Using Role State Variables」
 厳しい環境規制やエネルギー問題を迅速に解決するためには,多機能・高性能化する大規模なエンジンシステムの解析や制御設計を効果的かつ効率的に実現することが必須であり,モデルベース開発(MBD)の重要性が増している.本論文では,システム解析に利用される厳密な物理モデルを用いたエンジン制御設計への理論的基礎を確立した.具体的には,周期離散事象駆動の連続時間非線形系である物理モデルを近似解析的に離散化し離散時間非線形周期系を導出する手法,および,役割変数という新しい概念によるエンジンの周期性を利用した時不変系への状態変換を提案している.後者は,線形周期系を線形時不変系に変換するフロケ理論の非線形系への拡張に相当する.提案するモデルを利用すれば,将来アクチュエータやセンサの増大で多機能化するエンジンシステムの効率的な解析や最適制御設計を容易に実現することが可能となる.

なかむら あきとし
中 村 彰 利 君
(正会員)
 2006年立命館大学理工学部ロボティクス学科卒業.08年立命館大学大学院理工学研究科創造理工学専攻修士課程修了.同年村田機械(株)入社.現在,物流搬送機器の設計・開発に従事.
おざわ りゅうた
小 澤 隆 太 君
(正会員)
 2001年明治大学理工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).同年同大学理工学部助手,02年日本学術振興会特別研究員,03年から立命館大学理工学部講師.腱駆動機構,ロボットハンド,無重力での質量推定,AFO等の研究に従事.IEEE,日本ロボット学会などの会員.
ごとう さとし
後 藤   智 君
(正会員)
 2004年立命館大学理工学部ロボティクス学科卒業.06年同大学大学院理工学研究科情報システム学専攻修士課程修了.同年4月(株)堀場製作所入社.現在,金属分析装置の研究・開発に従事.
はたなか やすひこ
畠 中 泰 彦 君
(正会員)
 1985年京都大学医療技術短期大学部卒業.90年立命館大学理工学部基礎工学科卒業.2008年立命館大学大学院理工学研究科総合理工学専攻博士後期課程修了.博士(工学).現在,鈴鹿医療科学大学保健衛生学部理学療法学科教授.逆動力学解析手法による運動療法,装具療法の研究に従事.日本機械学会,日本バイオメカニズム学会,日本臨床バイオメカニクス学会,日本義肢装具学会,日本体力医学会,日本トレーニング科学会,ISB,ISPOなどの会員.
かわむら さだお
川 村 貞 夫 君
(正会員)
 1986年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了(工学博士).同年同大学助手.87年立命館大学理工学部機械工学科助教授・教授を経て,96年ロボティクス学科教授.研究・専門テーマは,ロボットと人間の運動知能.1987年,2000年本会論文賞,1987年システム制御情報学会論文賞,1992年(財)油空圧振興財団論文表彰,2001年グッドデザイン賞ユニバーサルデザイン特別賞などを受賞.日本ロボット学会,日本学術会議(連携会員),日本工学アカデミー等の会員.
受賞論文「空気圧受動要素を用いた短下肢装具の歩行相フィードバック制御システムの開発」
 脳梗塞,脳出血などの後遺症により体の片側に麻痺が生じたり,筋力が低下したりすることで,爪先が垂れ下がり正常な歩行ができなくなることがある.短下肢装具は,この爪先垂れなどを防ぎ,歩行を補助するための装具であり,一般に足関節を完全に固定したり,ダンパやワンウェイクラッチを内蔵した回転軸を持たせたりすることで歩容を改善する.しかしながら,人間の歩行周期は少なくとも4相に分けられことが知られており,これらの装具では関節の姿勢に依存したたかだか2種類のみで対処している.そのため患者それぞれ歩行の仕方に合わせた調整が難しく,適用できる患者が限られるなどの問題点が考えられる.本稿ではこれらの改善を目指し,足裏のセンサを用いて歩行状態を推定し,回転型空気圧受動要素により拘束力を制御する装具の開発を行った.またこのシステムを用いた基本的な実験を行った.

はしま かずお
羽 島 一 夫 君
(正会員)
 1983年東北大学工学部金属加工学科卒業.同年三菱電機(株)に入社.現在同社先端技術総合研究所にてバイオメトリクス認証システムの開発に従事.情報処理学会会員.
えだざわ かずひろ
枝 澤 一 寛 君
 2002年大阪大学工学部応用理工学科卒業.04年大阪大学大学院知能・機能創成工学専攻修了.同年三菱電機(株)入社.現在,先端技術総合研究所で,セキュリティシステム開発業務に携わる.
まつした まさひと
松 下 雅 仁 君
 1991年芝浦工業大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了.同年三菱電機(株)に入社.現在,同社先端技術総合研究所・物理セキュリティシステム開発プロジェクトグループに勤務.主として生体認証技術,入退室管理システムなどセキュリティシステムの開発に関する研究に従事.電子情報通信学会,映像情報メディア学会の会員.
みわ しょうたろう
三 輪 祥太郎 君
 1991東京大学工学部電気電子工学科卒業.同年三菱電機(株)入社.現在,同社先端技術総合研究所に勤務.画像認識・学習理論とその応用システムの研究開発に従事.情報処理学会会員.
かげ ひろし
鹿 毛 裕 史 君
 90年3月京都大学大学院工学研究科修士課程(情報工学専攻)修了.同年三菱電機(株)中央研究所入社.91〜92年大阪大学医学部研究生(神経生理学).画像認識,ニューロコンピュータ,人工網膜LSI,脳の視覚モデルに関する研究に従事.現在,三菱電機(株)先端技術総合研究所・センサ情報処理システム技術部画像認識システムグループマネージャおよび電子情報通信学会・ニューロコンピューティング研究会研究専門委員.
Michael JONES 君  1990年にライス大コンピュータサイエンスの学部卒業.97年にはMITの人工知能研究所より学位取得.現在はマサチューセッツ州ケンブリッジにあるMitsubishi Electric Research Laboratoryにおいて,おもに顔検出,顔認証の研究に従事.
受賞論文「Haar-Like特徴を用いた顔画像計測技術」
 近年,Haar-Like特徴と呼ばれる差分フィルタを用いて,顔画像の検出や認証を行うさまざまな製品が普及しつつある.このHaar-Like特徴を用いた顔画像の検出・認証技術は,ViolaとJones 1) が2001年に基本技術を開発し,われわれが世界に先駆けて実用化した技術である.本技術の特徴は,差分フィルタを高速に演算する基本技術と高精度な識別器の生成技術にある.顔画像識別器は,大きさ・位置および形状をパラメータとする多数の差分フィルタ群から,顔の識別に有効なパラメータをもつフィルタの組み合わせを選別する学習アルゴリズムを用いて生成される.本技術を用いることにより記録された監視画像の中から正面を向いた顔画像を高速に抽出し,目視による検索対象人物の絞込みを効率良く行うことが可能となった.また,高速・高精度という本技術の特徴を生かし,実時間での顔認証システムを構築することができた.
1) Rapid Object Detection using a Boosted Cascade of Simple Features, CVPR, 1, 511/518(2001)

おくだ なおずみ
奥 田 尚 住 君(正会員)
 1998年東京工業大学大学院情報理工学研究科修士課程終了.同年トヨタ自動車株式会社に入社,現在同社第2パワートレーン先行開発部に所属.以来,HILS/SILSの開発および運用に従事.
いしかわ なおき
石 川 直 樹 君
 1998年東北大学工学部応用物理学科卒業.同年トヨタ自動車株式会社に入社.現在同社HVシステム制御開発部に所属.以来,ハイブリッド車両の制御開発に従事.
こう しはく
康   子 博 君
(正会員)
 1996年中国東北大学大学院自動制御工学専攻博士後期課程修了.工学博士.同年同講師.97年大同工業大学客員研究員.2003年株式会社トヨタマックス(現 トヨタテクニカルディベロップメント株式会社)入社.ロボット等のロバスト制御,自動車ダイナミックシステムのモデリング,シミュレーションおよび制御システム開発効率化に関する研究開発に従事.
しょう ひろし
正   浩 志 君
 1994年香川大学教育学部情報科学コース卒業.同年株式会社東芝入社(重電部門の生産技術開発に従事).2002年株式会社トヨタコミュニケーションシステム(現 トヨタテクニカルディベロップメント株式会社)入社.現在同社第2HV開発部に所属.以来,HV-HILS開発と運用に従事.
かたやま ともひこ
片 山 朋 彦 君
 2001年東京大学工学部精密機械工学科卒業.同年株式会社トヨタシステムリサーチ(現 トヨタテクニカルディベロップメント株式会社)入社.現在第2HV開発部第22HV開発室に所属.以来,HILSシステムの開発に従事.
なかい としお
中 井 敏 夫 君
 2000年大阪工業大学工学部電気工学科卒業.01年富士通テン株式会社に入社.現在同社AE本部制御システム開発統括部CRAMAS部に勤務.以来,自動車用電子機器の開発および制御システム用シミュレータ(CRAMAS)の開発に従事.
受賞論文「ハイブリッド自動車開発用HILSシステムの開発及びその応用」
 演算負荷の少ない永久磁石同期モータの3相モデルを開発し,従来のdq軸モデルと比較して,シミュレーションの安定性,精度と対応可能な最高回転数などの面で3相モデルの優位性を確認した.Simulinkベースの上記3相モデルのFPGA化に成功し,超高速なモータシミュレータMotorBoxを開発した.従来のDSPに比べて数十倍の高速化を実現し,コンパクトで汎用性の高い高精度なモータHILSを実現した.上記のシステムをハイブリッド車のフェールセーフ制御検証に適用し,従来の実車による試験に比べ,現在対実車精度98%,約30倍の高速化を実現した.

つただ ひろゆき
蔦 田 広 幸 君(正会員)
 1997年大阪大学大学院基礎工学研究科システム工学専攻修士課程修了.同年三菱電機(株)入社.現在,同社先端技術総合研究所において,昇降機・電力機器などの機器診断技術,監視制御技術に関する研究に従事.博士(工学).電気学会会員.
ひらい たかし
平 位 隆 史 君
 1984年京都大学工学部数理工学科卒業.89年同大学院工学研究科博士後期課程研究指導認定退学.同年三菱電機(株)入社.現在,同社先端技術総合研究所において,研究開発戦略の企画・立案業務に従事.工学博士.システム制御情報学会,電気学会の会員.
すみ かずひこ
鷲 見 和 彦 君
 1982年京都大学工学部電気電子工学科卒業.84年同大学院工学研究科修士課程修了.同年三菱電機(株)入社,現在先端技術総合研究所にてセンサ情報処理の研究に従事.その間,89年メリーランド大学客員研究員,2003〜2005年京都大学大学院情報学研究科研究員(COE)客員教授.工学博士.情報処理学会,電子情報通信学会の会員.
いとう ゆたか
伊 藤   寛 君
 1980年新居浜工業高等専門学校電気工学科卒業.同年三菱電機ビルテクノサービス(株)入社.現在,同社昇降機保守事業本部において,昇降機の遠隔監視・診断技術に関する研究に従事.
しが さとし
志 賀   諭 君
 1996年東京都立大学工学部電気工学科卒業.同年三菱電機ビルテクノサービス(株)入社.現在,同社昇降機保守事業本部において,昇降機の遠隔監視・診断技術に関する研究に従事.
受賞論文「手すり加速度を用いたエスカレーターチェーンの弛み異常診断」
 エスカレーターの保守においては,手すりを駆動するチェーンの張り具合を1〜3ヵ月ごとに点検し,手入れ要否を判定している.現行作業では,ステップを取り外して内部に潜り込み,複数チェーンに触って振れ幅を測定していたため,約30分程度の作業時間を要していた.これに対し本論文では,手すり上の加速度を用いて,チェーン弛みを定量的に検出する方法を提案した.エスカレーター反転起動時における左右手すり上の微小加速度を信号処理することで,起動から手すり動き出しまでの遅延時間が測定できること,および前記遅延時間の増加からチェーン弛みが検出できることを明らかにし,実機で有効性を確認した.加速度センサを内蔵した装置を手すりに装着し,エスカレーターを数回往復させるだけで点検が行えるため,作業時間を大幅に短縮することができた.

でぐち こういちろう
出 口 光一郎 君
(正会員,フェロー)
1976年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了,東京大学工学部助手・講師.1984年山形大学工学部助教授.1988年東京大学工学部助教授.98年東北大学大学院情報科学研究科教授,現在に至る.この間1991〜92年米国ワシントン大学客員准教授.画像計測,ロボット視覚等の研究に従事.本会会誌編集委員会,論文集委員会等委員,東北支部長,評議員,副会長を歴任.
ほんだ さとし
本 多   敏 君
(正会員)
(受賞論文「高速増殖炉用抵抗方式ナトリウム温度計測システム」を参照)
受賞図書「センシングのための情報と数理(計測・制御テクノロジーシリーズ)」
 本書は,センシングのための情報の取扱いとその基盤となる数理を論じたものである.本書でのセンシングにおける情報と数理は,単にセンシングにおけるデータ処理の数理的手法のことではなく,情報という観点でセンシングを捉え直す.

ながまつ あきお
長 松 昭 男 君(正会員)
 1962年東京工業大学工学部機械工学科卒業,70年同大学院理工学研究科博士課程修了.同年東京工業大学工学部機械工学科助手,助教授,教授を経て現在同名誉教授.2000年法政大学工学部機械工学科教授,現在に至る.モード解析,動的現象の計測,振動制御,制振工学の研究に従事.工学博士.
受賞図書「制振工学ハンドブック」
 振動・音響は,会話のように常時利用する反面,人間にさまざまな害を及ぼし,時には金属疲労や地震により命を脅かす存在になる.そのため,振動・音響を制することすなわち予測し計測し解析し制御し低減しあるいは快適化することは,古くからさまざまな分野で取り組まれている.しかしこれらは,分野ごとに互いに無関係に行われてきたため,学問,技術,概念,用語などが工学全体で不統一であり,混乱を生じているのが現状である.本書は,制振工学という学際領域における諸知見の共通化を図り異分野間の見通しを良くする目的で設立された制振工学研究会を母体とする編集委員会によって企画・編集され,関連諸分野の145名の研究者・技術者によって執筆された.本書には,制振工学に関連する各分野の理論,技術,ノウハウ,データなどの諸知見が,利用しやすい形で集大成されている.本書は,基礎理論,制振材料,計測技術,解析・適用技術,利用技術,および基礎資料の6編から構成されている.

受賞製品「共焦点スキャナユニット CSU-X1」 横河電機株式会社
 共焦点スキャナユニットCSU R は,顕微鏡・レーザ光源・高感度カメラと組み合わせて共焦点顕微鏡システムを構成し,蛍光タンパク質等を用いたバイオイメージング分野で,高速・高精細・低退色な画像観察に有効な装置です.最近の研究では,生細胞や臓器の動態観察の重要性がより増しています.また撮影には空間,時間,波長,照明方法など多くの領域からのアプローチが求められます.弊社は,このような研究ニーズに応えるべくCSU-X1を2007年に国内外で発売を開始いたしました.1) 最高画像形成速度を従来機の2倍の0.5ms/frameにして,世界最高速を達成しました.血流観察やμPIV分野において,より高速な現象を捉えることができます.2) レーザ光の利用効率を従来機の2倍にしました.露光時間を短縮でき,測定の時間分解能を上げることができます.3) 顕微鏡からの明視野像を高効率でカメラに伝送する光路切替機構や,多波長観察で撮影の同時性を確保するセカンドカメラポート等をオプションで用意し,研究に最適な測定システムをご提供いたします.

受賞製品「直接挿入レーザ方式ガス分析計」 富士電機システムズ株式会社
 「直接挿入レーザ方式ガス分析計」は,煙突に直接装置を取り付け,流通している排出ガスにレーザ光を照射してガス濃度を測定するガス分析計です.
 従来は,ガスを採取してガス濃度を計測する方式が主流でしたが,本製品はガスを採取しないので,(1)高速応答,(2)長期安定性,(3)メンテナンスフリー,(4)低ランニングコスト,(5)優れた耐環境性能など多くの優れた特徴があります.
 このような特徴から,大気汚染防止法によって規制される工場などの排出ガス監視のみならず,電力,鉄鋼,ゴミ焼却施設のプロセス制御用として用いられ,消石灰やアンモニアの消費量削減や,燃焼効率の改善に役立っています.
 日本では2008年3月にJIS化が行われたことにより本製品の検出方式が認知され,導入数が増加しております.現在,測定成分は塩化水素をはじめ7種類あり,今後はアプリケーションに応じて順次増やしていく予定です.

きたもり としゆき
北 森 俊 行 君(名誉会員,フェロー)
 1962年東京大学大学院数物系研究科博士課程修了,工学博士.同年4月慶應義塾大学工学部助手.専任講師,助教授を経て,65年東京大学工学部助教授,79〜94年同教授.94年東京大学名誉教授.94〜2004年法政大学工学部教授.1994年度本会会長.2000〜05年タマティーエルオー(株)取締役会長,04年より(株)NF回路設計ブロック監査役.制御系の工学的設計法,計測系の機能と構造,システムの機能の研究に従事.1964,71,80,91,92,93年本会論文賞,2007年システム制御情報学会論文賞,1990年島津賞受賞.システム制御情報学会名誉会員,IEEEなどの会員.
いとう としあき
伊 藤 利 昭 君(名誉会員,フェロー)
 1943年1月13日生.67年京都大学大学院工学研究科数理工学専攻修士課程修了.97年京都大学工学博士.67年三菱化成工業(株)(現 三菱化学(株))入社.黒崎工場施設部電計技術室主席,同工務技術室主席,本社技術室主席,水島事業所生産技術センター長,横浜総合研究所副所長,理事などを歴任,2001年退職.同年名古屋工業大学教授,06年同退職.93〜97年本会制御理論部会/制御技術部会主査,01年同フェロー,09年同名誉会員.著書「化学産業における制御」(コロナ社)など.ISCIE,ISA,化学工学会,OR学会,日本プラントヒューマンファクター学会などの会員.
おがわ もりまさ
小 河 守 正 君(正会員)
 1966年三菱化学(株)(旧三菱化成工業(株))入社,2004年10月まで三菱化学,同年11月より(株)山武,現在に至る.プロセス制御に関する現場密着型問題解決の業務に従事.1993年度システム制御情報学会論文賞,1999年度本会論文賞,2003年度同武田賞,IFAC World Congress 2002 Control Engineering Practice Prize Paper Awardを受賞.京都大学博士(工学).
かのう まなぶ
加 納   学 君(正会員)
 1994年京都大学大学院工学研究科化学工学専攻修士課程修了.同年同助手,2004年同助教授,07年同准教授となり,現在に至る.品質改善のためのプロセスデータ解析,プロセス制御,マイクロ化学プロセスなどに関する教育と研究に従事.博士(工学).本会論文賞武田賞,技術賞,制御部門パイオニア技術賞,化学工学会奨励賞内藤雅喜記念賞,日本鉄鋼協会計測・制御・システム研究賞等を受賞.化学工学会,システム制御情報学会,日本鉄鋼協会,AIChEなどの会員.
しげまさ たかし
重 政   隆 君(正会員,フェロー)
 1971年早稲田大学大学院電気工学専修.同年,東京芝浦電気(株)(現在の(株)東芝)に入社.総合研究所の電気機械研究所から始まり,研究開発部門でシステム制御技術・プロセス制御技術の研究開発を担当.本会論文賞(昭和60年度)・技術賞(1993年度,1994年度)を受賞.1998年本会産業部門長,2000年本会制御部門長.1998年本会フェロー.2006年より東芝三菱電機産業システム(株)システムソリューション技術部.2002年より法政大学大学院兼任講師.本会ならびにシステム制御情報学会などの会員.
すえつぐ やすし
末 続   靖 君(正会員)
 1945年生.67年慶應義塾大学工学部計測工学科卒業.68年日揮(株)入社.海外・国内の石油精製装置・石油化学装置の計装制御設備の設計・機器調達・建設・試運転に従事.2009年4月より,JGC Vietnam Co. Ltd (Hanoi, Vietnam)へ出向.技術士(応用理学部門―物理及び化学的計測).
とみた よしお
富 田 芳 生 君(正会員)
 1961年3月京都大学工学部電子工学科卒業.同年4月(株)横河電機製作所入社,プロセス計装システム設計や計算機制御のシステムエンジニアを経て,74年に営業技術へ.81年から海外市場開発を担当.95年横河電機(株)取締役に就任.97年顧問に就任.2000年より08年まで技術コンサルタント.この間一貫してプロセス制御にかかわり,制御技術とシステム技術でプロセス制御の発展に貢献.
はしもと よしひろ
橋 本 芳 宏 君(正会員)
 1957年生.80年京都大学工学研究科博士課程単位取得退学.工学博士.名古屋工業大学助手,助教授を経て,2003年より情報工学専攻システム制御分野教授.エネルギーマネジメントに関するプロセスモデリング・制御等の研究に従事.化学工学会,設備管理学会などの会員.
永 島   晃 君(正会員,フェロー) (フェロー紹介を参照)
たかつ はるお
高 津 春 雄 君(正会員,フェロー)
 横河電機株式会社 グローバル営業本部 PEソリューションセンターAPC担当マネージャー.1973年 東京工業大学制御工学科卒業,同年(株)北辰電機製作所(現横河電機株式会社)に入社.1984年 東京工業大学大学院システム科学専攻終了.プロセス制御システム,制御アルゴリズム,コンピュータシステムソフトウエアの開発,APCアプリケーションの開発に従事,現在に至る.2004-2005 本会総務理事,本会計測制御エンジニア, 本会フェロー
おおたに てつや
大 谷 哲 也 君(正会員)
 1985年大阪大学大学院工学研究科産業機械工学専攻修士課程修了.同年横河北辰電機(現 横河電機)(株)入社.以来,プロセス制御,プラントシミュレーション,モデルベース制御,非線形制御,画質検査アルゴリズムなどの研究開発に従事し,現在はシステム・制御研究所長.2006〜07年度本会理事.工学博士.
受賞教育活動「SICEプロセス制御専門家養成塾(SICEプロセス塾)」
 プロセスが制御工学の主たる活躍分野である日本において,プロセス制御技術者の数が減少していることに危機感を覚え,同制御技術者を3年間で100人養成する計画をたて,実施した.講師には日本の現場での制御技術を有効かつ高度に発展させてきた技術者,研究者にお願いし,ウェブベースの講義・演習とメールによる質疑応答に加えて,数回の合宿学習の場を用意し,受講者と講師全体の人脈の構築にも配慮した.受講者は必ずしもプロセスに直結した技術者ばかりではなかったが,現場的な制御理論,制御技術のあり方を講義・演習,事例紹介・現場見学を通じて体得できたことと信ずる.プロセス制御は特殊な分野に見えるかもしれないが,現実の制御としてはまさに代表的制御である.プロセスという制御対象は有限次元でもなく,線形でもなく,数式モデルを正確には記述できないが,比例動作でもある程度制御ができ,積分動作を加えればオフセットをなくすことができ,微分動作を加えれば速応化ができるし,さらに少しずつ高度の制御動作を加えて制御性能を上げていくことができる.これこそ過去数十年以上に亘って実績を上げてきた実用的制御の基本的なアプローチであり,工学的に本質的であることに思い至れば,このプロジェクトがプロセス制御の分野だけにとどまらないことに気づく.このように有益な教育・育成課程を企画し,3年間という短期間に100名もの制御技術者を送り出したことは,本学会の社会的に意義ある活動として高く評価して余りあると思われる.
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