SICE 社団法人 計測自動制御学会
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 会告:2007年度計測自動制御学会学術奨励賞の贈呈
学術奨励賞 研究奨励賞10君,学術奨励賞 技術奨励賞4君に贈呈された.

○学術奨励賞 研究奨励賞

やまがた たかゆき
山縣 貴幸 君 (学生会員)

 2006年東北大学大学院工学研究科バイオロボティクス専攻修士課程修了.同年同専攻博士後期過程入学,現在に至る.実験計測と数値シミュレーションの融合による実現象の流れの再現に関する研究に従事.

受賞論文「壁面圧力計測と流れのシミュレーションの融合による実流れの圧力場の再現」
〈東北支部第232回研究集会で発表〉
 流体解析において実験計測と数値シミュレーションは重要な手法であるが,実際の流れの再現という観点で見るとそれぞれに長所と短所を有する.本論文では,実際の流れの詳細かつ正確な情報を得るために風洞実験による圧力計測と数値シミュレーションを一体化したハイブリッド風洞を扱っている.ハイブリッド風洞はオブザーバ理論を流れの解析に応用し,数学モデルとして流れの数値シミュレーションを用いた手法である.本論文では,流れの構造に影響を及ぼす重要な因子である圧力場の再現性に関する検証を行った.再現性の検証では解析結果と実験結果の風洞壁面圧を比較し,通常のシミュレーションでは不十分な空間解像度や時間解像度の計算条件でも,ハイブリッド風洞では解析結果が改善され,実験値と一致する平均圧力および圧力変動を再現できた.特にフィードバック点の位置から-4D≦x≦3D (Dは角柱幅)の範囲では,圧力変動について正の相関が得られ,効果的にフィードバックが作用していた.


あおい しんや
青井 信也 君 (正会員)

 2001年京都大学工学部物理工学科卒業.03年同大学大学院航空宇宙工学専攻博士前期課程修了.06年同後期課程修了,博士(工学).03年日本学術振興会特別研究員.06年京都大学大学院工学研究科COE助手.07年同助教,現在に至る.歩行ロボットや生体の運動制御に関する研究に従事.

受賞論文「ニホンザルの詳細な骨格モデルとキネマティクスデータに基づく歩行生成」
〈システム・情報部門学術講演会2006(SSI2006)で発表〉
 動物は冗長で複雑な筋骨格系を巧みかつ協調的に動かし,多様な環境の下で適応的な歩行を実現する.こうした動物の優れた歩行生成メカニズムの解明に向けて多くの研究が行われてきたが,従来,神経回路網の形態や活動を直接計測することでアプローチする神経生理学的研究と,ロボットやシミュレーションを用いて歩行を再現することでアプローチする工学的研究がそれぞれ独立して行われてきた.しかしながら,歩行は神経系と筋骨格系,そして環境との力学的相互作用から形成される秩序だった運動であり,これを理解するためには,生物学的データに基づく要素論的方法と,力学に基づく構成論的方法を融合した研究パラダイムを構築することが不可欠である.本研究では,神経生理学の実験動物として用いられ,人類学的にも興味深い研究対象であるニホンザルを対象に,詳細な解剖学的データに基づく骨格モデルと,歩行中のキネマティクスデータ,そして神経生理学的知見に基づいてシミュレーションを行い,動物の適応的な歩行生成メカニズムについて調べた.


Tanagorn JENNAWASIN 君 (学生会員)

He was born on 28 March 1980. He received the B.Sc. degree in Electrical Engineering from Chulalongkorn University, Thailand in 2001, and M.Sc. degree in Mathematical Informatics from The University of Tokyo in 2005. He is currently a Ph.D. student in Mathematical Informatics at The University of Tokyo. His research interests include computational methods in robust and nonlinear control.

受賞論文「A Region-Dividing Technique for Constructing the Sum-of-Squares Approximations to Robust Semidefinite Programs」
〈第7回制御部門大会で発表〉
In this paper, we present a novel approach to robust semidefinite programs, whose coefficient matrices depend polynomially on uncertain parameters. The approach is based on approximation with the sum-of-squares polynomials, but, in contrast to the conventional sum-of-squares approach, the quality of approximation is improved by dividing the parameter region into several subregions. The optimal value of the approximate problem converges to that of the original problem as the resolution of the division becomes finer. An advantage of this approach is that an upper bound on the approximation error can be explicitly obtained in terms of the resolution of the division. Numerical examples on polynomial optimization are presented to show usefulness of the present approach.


いがらし ゆうじ
五十嵐裕司 君 (正会員)

 2008年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム専攻修士課程修了,同年三菱電機(株)入社,現在に至る.在学時には協調制御に関する研究に従事.

受賞論文「SE(3)における出力協調−受動性アプローチ−」
〈第36回制御理論シンポジウムで発表〉
 本稿では3次元空間内SE(3)に複数の剛体が存在し, お互いが情報交換する状況において,すべての剛体の位置と姿勢の両方を一致させる出力同期問題の問題について考察する.また,これらの目的を達成するための受動性に基づく制御則を提案する.まず,剛体を運動学モデルで,エージェント間の通信構造を強連結グラフでモデル化し,各剛体の運動学モデルが受動性に近い性質を有することを示す.つぎに,これらの性質を利用し,制御則の提案と,提案した制御側により出力同期が達成されることを示す.さらに出力協調を達成する制御則を拡張し,出力協調を達成するのと同時に,全体を所望の動きにする制御則を提案する.これにより,合意,姿勢協調,Kuramoto振動子の同期が,SE(3)上の出力同期として置き換えられる.これらの結果は各剛体が受動性に近い性質を持っているため,各剛体のエネルギー関数の総和がシステム全体のポテンシャル関数となることを用いて示される.


じんぼ ともひこ
神保 智彦 君 (正会員)

 2002年名古屋大学大学院工学研究科マイクロシステム工学専攻修士課程修了.同年(株)豊田中央研究所入社,現在に至る.また,07年10月より名古屋大学大学院工学研究科機械理工学専攻博士後期課程在籍.エンジン・パワートレーンのモデリングと制御に関する研究に従事.自動車技術会会員.

受賞論文「役割変数によるマルチサイクリック現象のモデル表現−SIエンジンにおけるモデルベース始動制御−」
〈第36回制御理論シンポジウムで発表〉
 厳しい環境規制やエネルギー問題を解決するためには,さらなるエンジンの高品質化と開発の効率化が必須である.これまでのエンジン制御系設計は,マップやIf-then ルールあるいは部分的な物理モデルや数理モデルに基づいたものであったため,エンジンごとに膨大な工数が必要であり,また,制御系の解析や最適性が十分に議論されていなかった.しかし, エンジンは連続と離散の入力を有し,クランク角依存のイベントにより時間依存の非線形物理挙動を切り替える周期系であり,複数の気筒が互いの位相をシフトして繰り返す大規模で複雑なMIMO系であるため,制御系解析や設計,実装に耐えうるエンジン全体の統合的な物理モデルを導出することが困難であった.そこで,本論文では,エンジンを近似解析的に非線形離散時間周期系としてモデル化し,役割変数の導入によって,そのモデルを時不変系に等価変換することで,容易に最適制御設計ができることを示した.このようなモデル化やモデル簡易化の手法はエンジンのみならず,多くのマルチサイクリック現象のモデル表現に利用可能である.


いわさき やすし
岩崎  靖 君 (正会員)
 2005年芝浦工業大学システム工学部電子情報システム学科卒業.07年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻修士課程修了.同年キヤノン(株)光学技術研究所入所,現在に至る.

受賞論文「実数値学習分類子システムに関する研究−超楕円体表現における一般性比較演算の改善−」
〈第34回知能システムシンポジウムで発表〉
 実数値学習分類子システムは条件部が超立体で表現されており,これの包含条件を求めることにより一般性比較演算が設計される.超立体として超楕円体を用いたものの有効性が示されているが,真の包含条件を求めることが容易ではないとされ,中心間方向の距離を用いた近似が利用されていた.これらに対し本研究ではつぎの結果が得られた.(1) 2次元すなわち楕円の包含条件を解析的に求めた.しかし一般次元は困難であり,求められたとしてもきわめて複雑であり使用することは現実的でないことを示した.(2) 線形変換により超球体の包含条件に帰着できる場合の条件を用いるという近似を提案し,この有効性を従来手法とともに理論面・実験面それぞれの評価を通して調査した.理論面では,2次元においては(1)の結果を用いて提案手法が従来手法よりも高い正解率(89%:56%)であることを示し,一般次元においてもある予想が正しいとき同様であることを示した.また,この予想の信憑性を決定づける結果が得られた.実験面では,関数近似において提案手法が従来手法と超直方体表現よりも優れていることを示した.


かまみち のりひろ
釜道 紀浩 君 (正会員)
 2006年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム専攻博士課程修了,博士(工学).同年4月理化学研究所バイオ・ミメティックコントロール研究センター研究員.07年4月東京電機大学未来科学部助教,理化学研究所客員研究員,現在に至る.ロボット工学,制御工学,高分子アクチュエータ・ センサの研究に従事.

受賞論文「パターニングしたIPMCによるセンサ・アクチュエータ統合システム−駆動入力のセンサ信号への影響−」
〈第7回システムインテグレーション部門講演会(SI2006)で発表〉
 イオン導電性高分子・貴金属接合体(Ionic polymer-metal composite: IPMC)は低電圧で駆動可能なソフトアクチュエータであり,また,反対にセンサとしても利用可能な機能性高分子材料である.アクチュエータとセンサの両機能を有していることから,柔軟で軽量なアクチュエータの特長を損なうことなく,センサを統合することができ,システム応用の可能性も高い.IPMCは表面の電極層をパターニングすることで,1つの素子上に目的に応じた任意形状のセンサ・アクチュエータ素子が作製可能である.しかし,同一素子上のセンサとアクチュエータを同時に使用する場合,アクチュエータの駆動入力からセンサ信号への干渉が問題となる.本研究では,パターニングしたIPMCによるセンサ・アクチュエータシステムの構築・応用のため,駆動入力からセンサ信号への影響の動特性と,その影響を補償する手法について検証を行った.


こが としき
古賀 敏幹 君 (学生会員)
 2006年3月東京工業大学工学部制御システム工学科卒業,同年4月同大学大学院理工学研究科機械制御システム専攻修士課程進学,08年3月同課程修了見込.経皮電気刺激を用いた力覚提示法に関する研究に従事.

受賞論文「レートジャイロと電気刺激を用いた仮想操作器における疑似変位フィードバック効果の検討」
〈第7回システムインテグレーション部門講演会(SI2006)で発表〉
 パルス状の電気刺激によって筋力を発生する原理を利用して,操作者の筋力を介したフィードバックを実現することにより,機構部を伴わず動特性を変えられる仮想操作器の可能性を検討している.従来研究では,マスタ・スレーブ・マニピュレータの負荷加重など,準静的な感覚提示に利用する例はあるが,運動を伴う動的な用途には用いられていなかった.それに対し本研究では,手首の曲げを操作運動とし,シリコン振動ジャイロで角速度を検出して,疑似積分演算による変位情報を弾性力としてフィードバックする仮想操作器を実現し,操作実験を行った.その結果,操作器特性の実現に伴った操作性の向上や,弾性係数に最適値が存在など,実際の操作器から得られるような効果の傾向を確認し,その有効性を示した.


とや ちさし
戸舎 稚詞 君 (学生会員)
 2004年松江工業高等専門学校電子制御工学科卒業.06年広島大学工学部第二類システム工学課程卒業.08年広島大学大学院工学研究科複雑システム工学専攻博士課程前期修了.同年島根大学医学部医学科に学士入学し現在に至る.医工連携の研究に従事.

受賞論文「内視鏡用アクティブストロボイメージャ」
〈第7回システムインテグレーション部門講演会(SI2006)で発表〉
 生体に発生する悪性新生物(癌,肉腫等)は,一般にその細胞密度が高いため正常組織に比べ硬度が高いという特性を持つ.臓器に発生する癌の局在を手術中に同定する際,術者はこの硬さの違いを手で感じ取ることによって行っていた.ところが近年の内視鏡技術の進歩に伴い,低侵襲手術が可能となった反面,従来は容易に行えていた術中の触診が困難になっている.そのため内視鏡手術時に,触診によらず癌の局在を検出する医療診断技術の開発が待望されていた.本論文では,自発的に振動できない臓器を空気噴流によってアクティブに加振し,同時にストロボ撮影を行うことで分布的な硬さを振動情報に置き換え,リアルタイムに医師に提示することで,診断時の情報支援を行うことを目的としたアクティブストロボイメージャ(ASI)を提案する.さらに,ASIの実験システムを構築し,ヒトの摘出肺を用いた基礎実験の結果から,本手法により肺気腫が捉えられることを示した.


なかはら かずや
中原 和哉 君 (正会員)
 2005年北海道大学工学部システム工学科卒業.ロバスト画像照合,ロボットビジョンの研究に従事.2007年同大学院情報科学研究科修士課程修了.

受賞論文「方向符号照合法を用いた農作業機用速度センサの開発」
〈第7回システムインテグレーション部門講演会(SI2006)で発表〉
 本研究は,圃場での大きなスリップなどが避けられないスプレイヤ(散布機)やハーベスタ(収穫機)などの農作業機の実速度をロバストに計測するためのシステムを開発することを目的としている.従来の速度センサは,タイヤホイルの回転を近接センサで検出する方法で,スリップなどによる回転数の変化から高精度の速度の計測は困難であった.そこで,地面の移動量を画像照合法である方向符号照合法に基づいて間接的に測定し,移動速度を計測する新しい速度センサを開発した.方向符号照合法は,圃場のような環境で頻繁に起こる,遮蔽や明度変動にロバストな特徴を持っている.試作システムを農耕用トラクタに搭載し,天候や作物などの条件の異なる実圃場において,速度計測実験を行うことにより有効性を検証した.


○学術奨励賞 技術奨励賞

Atsushi GOGAMI 君 (学生会員)
 2007年3月東洋大学工学部機械工学科卒業,同年4月同大学院工学研究科機能システム専攻博士前期課程進学,現在在籍中.シリコン半導体ウエハのin-situ放射測温に関する研究に従事.

受賞論文「Compound Hybrid-type Sensor for Wide Temperature Measurement Range」
〈SICE Annual Conference 2007で発表〉
 私達は,接触式と非接触式測温法を組み合わせたハイブリッド型表面温度センサを開発し,900〜1000Kの限られた温度範囲において不確かさ0.5Kの精度で測温可能であることを確認した.しかし,本センサは熱定常状態を利用して測定を行っていたため数十秒の時間を要していた.私達はさらに研究を進め,本センサの過渡応答を利用して測定時間の大幅な短縮,および SiとInGaAsセンサの複合素子センサを導入して測温領域を600〜1300Kまで拡大した高速ハイブリッド型表面温度センサを提案した.本論文においてシリコンウエハを測定対象として,新しい表面温度センサの測温精度を600〜1000Kの温度範囲で実験した結果,1s内の応答時間で不確かさ1Kの精度で測温可能であることを実証した.


さかもと なおき
坂本 直樹 君 (正会員)
 2000年徳島大学大学院工学研究科博士前期課程修了.同年(株)前川製作所入社.食品工場における人手作業の自動化に関する研究に従事.2006年4月より広島大学大学院工学研究科博士課程後期(社会人)在籍.日本機械学会,日本ロボット学会の会員.

受賞論文「Piercing に基づく食品のハンドリング」
〈第7回システムインテグレーション部門講演会(SI2006)で発表〉
 コンビニ弁当は盛り付け作業のほとんどを人手で行っているが,食の安心安全への関心から作業の自動化が期待されている.本研究では弁当容器への盛り付け動作を想定した食品のハンドリングについて議論する.弁当容器には深さがあり,対象物の側面を把持する方法では使用できる状況が限定される.また,食品には形状や大きさの個体差があり,側面を挟む方法では把持できない可能性がある.そのため,本研究では対象物の上面から針を刺し込み運搬するPiercingに基づく食品ハンドリングを提案する.あらかじめハンドに取り付けられたパームによって対象物に弾性変形を与え,突き刺し動作および運搬動作を行う.本稿では,試作したハンドを用いて実験を行い,Piercingに基づくハンドリングの有効性を確認した.また,対象物を持ち上げる動作において,パームと対象物の接触力を計測し,対象物の持ち上げ動作速度と食品の粘弾性に依存する持ち上げ力の関係を確認した.


おおにし まさき
大西 正輝 君 (正会員)
 2002年大阪府立大学大学院博士後期課程修了.同年理化学研究所バイオ・ミメティックコントロール研究センター研究員を経て,06年産業技術総合研究所情報技術研究部門研究員,現在に至る.理化学研究所客員研究員.コンピュータビジョン,ロボットの認知・知識処理に関する研究に従事.博士(工学).

受賞論文「人と接するロボットRI-MANによる抱き上げ動作の実現」
〈第7回システムインテグレーション部門講演会(SI2006)で発表〉
 高齢化社会を迎え,介護や福祉の現場において人間の代わりに力仕事ができるようなロボットの実現が強く望まれている.筆者らの所属する理化学研究所バイオ・ミメティックコントロール研究センターでは,人間と環境を共有し人間との力学的な相互作用が可能なロボットの実現を目指し,研究プラットフォームとしてのロボットRI-MANを開発した.本論文では,ロボットの全身の触覚を用いて運動軌道を時空間的に修正することでタスクに成功するための新たな運動軌道を作り出す手法を提案した.提案手法は過去に得られたタスク成功時の運動軌道とその時に得られた触覚情報のマッピングを行い,成功軌道が得られた時と異なる環境においても触覚情報を元にタスクに成功させる運動軌道を作り出す手法であり,ロボットの全身を用いて人間を抱き上げるというような力学的な解析が難しい問題に有効である.実際にRI-MANを用いて体重18キロのダミー人形を抱き上げる実験を行い,提案手法の有効性を確認した.


ふじい きよし
藤井  淳 君 (正会員)
 2005年明治大学理工学部電気電子工学科卒業.07年横浜国立大学工学府物理情報工学専攻修士課程を終了.同年4月(株)デンソー入社.在学中は電気自動車の運動制御に関する研究に従事.

受賞論文「走行抵抗を考慮した車体速検出不要の電気自動車のスリップ率推定法とその制御」
〈第7回制御部門大会で発表〉
 トラクションコントロールを実現する上で非常に重要であるスリップ率の検出には車体速の測定が不可欠である.しかし,車体速の測定は非駆動輪にセンサを装着するか,加速度センサの値を積分するような方法が考えられるが,四輪駆動車であれば非駆動輪は存在しない.また,加速度センサはオフセットの問題があり非常に困難である.そこで,著者らは電気自動車の特徴である発生トルクをリアルタイムに把握できる点を利用し,スリップ率推定器を提案した.また車輪加速度が負になったときに,推定誤差の収束が補償できないという問題を解決したスリップ率オブザーバを提案した.さらに推定に影響を及ぼしている走行抵抗を推定し,上記の推定器に導入することで推定精度を高めた.
 ここで推定したスリップ率と電気自動車の高いトルク応答性を利用し,車体の持つ非線形性を補償した制御手法を提案し,走行安全性の向上を図る.
copyright © 2007(社)計測自動制御学会