4.1 齋藤顧問の意見(木村・阿部)
SICE の創立以来事務局を掌握してきた斎藤保孝顧問からその経験を踏まえて新しい事務局体制に対する意見を聞くことからタスクフォースの仕事を開始した。聞き取りの形式としてはまず主査が顧問に質問事項をあらかじめ伝え、それに対する回答を聞きながら意見を述べて頂くという形式をとった。
4.1.1 斎藤顧問への質問
斎藤顧問殿、
学会事務局の新体制に向けてのタスクフォース設置が理事会で認められたことはご存知と思います。
さてタスクフォースでは事務局の実態調査を通じて学会業務のあるべき姿を把握すべく、まず長年学会の業務に携わってこられた貴殿に事務局運営に対するお考えを大局的な立場からお伺いし、今後のタスクフォースの方針を構築する参考としたいと考えております。
つきましては来る5月16日(月)午後3時から、タスクフォースのメンバーが貴殿にお話をお伺いする会を持ちたいと思いますがいかがでしょうか? お忙しいと思いますが、タスクフォースの成功のためまたひいては今後のSICEの発展のため、貴殿のお知恵を拝借したいと思う次第です。どうかよろしくお願い申し上げます。
タスクフォースでは以下に要約するようなことに関心を持っております。今回はこのような問題にしぼってお伺いしたいと思いますので、よろしくお願い致します。
- 40年に及ぶSICEの変遷のなかで学会業務も変質・変容してきたと思われますが、20年ほど前のSICEと比べて現在のSICEが業務の力点のおき方でもっとも変わったことは何でしょうか? たとえば前にはあまり重要でなかったことが今では重要になった、あるいはその逆などについてご教示下さい。 [回答へ]
- 学会事務局の業務と他の一般の会社における業務とで違うと思われる側面はどこにあるのでしょうか? 管理者の立場と担当者の立場でちがうと思いますが、ご経験から、感じられたことをお伺いしたいと思います。 [回答へ]
- SICEの業務は多岐にわたっていますが、その中でもっとも難しい(経験と能力を要する)業務はどれでしょうか? それを担当する事務局員の教育にはどのような苦労をされたでしょうか? [回答へ]
- 会員と事務局の接点には人間的な要素と事務的な要素があります。事務的な要素はITによって効率化の一途にありますが、人間的な要素でもっとも重要でこれだけは守らなければならない、と思われることがあればご教示ください。 [回答へ]
- 他の学会事務局員や外国の学会の事務局員ともお付き合いされていると思いますが、それらの学会と比べてSICEの事務局が違うと思われる面を感じておられることがあればお伝えください。 [回答へ]
- SICEの役員(正副会長や理事、部門長など)は事務局に頼りすぎるという批判を聞くことがありますが(たとえばISCIEと比較して)、それについてはどうお考えですか? 理事などは業務上の仕事はもっと自分でやるべきと思われますか?それとも事務局のサービスが足りないと思われますか?率直なご意見をお聞かせください。 [回答へ]
4.1.2 斎藤顧問の回答
2001.5.16 斎藤保孝
事務局のタクスフォースについて
斎藤顧問の回答文書は質問事項に対する斎藤顧問の回答文書 ( 手書き ) をそのまま Word に打ち直したものである。聞き取り時に各項目に関する斎藤顧問のコメントと TaskForce メンバーのコメントを箇条書きで付け加えた。
l これは斎藤顧問のコメント
¨ これはTaskForce メンバーのコメント
40 年のうち、 20 年前後は会長が大島康次郎先生で、学会は 20 年で成人を迎え大人になった。会員は 7,000 名、毎年 2〜3% 増加し、学会事務所もあり、景気はよく、財政も安定していた。毎年 1,000 万円の剰余金があり、(広告収入が多かった) ( そのおかげで事務所を自前で持つきっかけとなった ) これくらいの規模が適当である ( 大きくなる必要はない) との声があった。
l 会費収入( 現在の約半額) よりも事業収入特に広告収入が多い。しかし、その頃新しい学会 (リモートセンシング、ロボット、ファジイ、ヒューマンインターフェース )の揺籃期を迎え、徐々に独立していった。そういうことが SICEが親学会になり裾野が広がるため、間接的に SICEの発展につながるからそれでよい、協力しようという風潮があった (独立を抑えようという意見もあるにはあったが、多数ではなかった。 )
l 事務所は昭和55 年購入、数年で支払い終了
l 会員数91 年(30 周年) をピークに減少
l 公益法人だと寄付が免税になる。30 周年時は便法で免税にした
l この当時は運営に余裕があったため役員も楽だった
l 理事会開催は今と同等、ただし、旅費は全額支給だった
一方既存の大学会はわれわれに競合する分野のシェアを分け与えるのではなく、むしろ、塀を高くしてかたくなに自分の牙城を守っていた。
現在主務官庁ではやはり数の論理でものをいい、正会員が 1万人を超えれば、特定公益増進法人になれるスタートであるともいっている。 SICEの現状は 91年をピークに会員をはじめ、学会事業は事業収入、広告収入は景気の長期低迷と多数学会の林立により減り続けている。
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a) 学会業務
職員
1. 職員に対する命令系統がよくない、役員事務局責任者両方からくることがある。職員は楽なほうにすり寄る。l 命令系統が2 系統( 事務局と理事) ある2. 役員、事務局責任者から依頼されたことだけをやって折ればよいと思っている職員が多いと思う (最近は若干改善されてきたようだが )
l 理事から職員に残業を強いられた場合は、職員を帰した。
l 期限内にできない仕事を職員が要求されたとき職員はそれを受けてしまって いる
3. 本学会 ( 事務局) を「会社」といった職員もいた、モラルが悪い。
4. 学会職員の待遇は国家公務員に準拠している ( 全体的に恵まれていると思う)
l 職員の査定はやっていない。他学会でもおそらくやっていない。責任者
l 過去に理事会、会長から査定の要請を受けたことはない。
l パートは一律自給1000 円、勤続年数に関係ない。1 年契約。必要な保健は入っている。
l 組合はない。
l 工学会が音頭をとり、事務所の統合の話があった。( 結局資金不足) 当時の理事からは学会の職員同士のよくない交流がありうる。
l 職員はプライドを持ってほしい。
l 会員から感謝されたときにプライドが満足される
l 最近はややプライドがない。景気が悪いせいもある。
l 月に一回30 分間、朝礼。仕事伝達、各自の仕事の状況
¨ パートは長期に渡ると社員にしないといけない風潮。週に30 時間まで
¨ 組合までは必要ないが、職員と事務局長の対話を持つ必要がある。
¨ 仕事の達成感がプライドにつながる
責任者は限られた職員を適材適所に配置し、業務すべてがうまくいくように自らもここの仕事を担当し、全体の効率をあげ (特定の会員ではなく )会員全体にサービスすることとし、そのため努力しなければならない。
b) 一般会社の業務
企業の目的 (究極としては営利 ) により、社長を頂点に組織された業務を遂行するため、私命に従い仕事を行う。命令系統は行き届いていると思う。業務が上がらないと大変である。社員の業務に対し評価がある。
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業務の中で難しい査読、校閲、会計、人事( 主として役員の) コンピュータと思います。職員の資質、能力、により担当を決めます。
1. 査読、校閲は会誌論文編集の担当者があたります。これは担当者に従事するときに趣旨を (丸秘のことがあり ) 繰り返し説明し絶対に遵守してもらいます。
2. 会計は学会全体のお金のことを把握する必要があり、判断のため経験が必要です。また、給与計算などのこともあり神経を使います。担当者の資質、能力を問います。
3. 人事は学会事務局には、いろいろなところからいろいろな情報が入ってきます。適宜に判断することが必要です。変な情報に惑わされることなく冷静に対処することが必要。事務局責任者が担当すべきです。
l いろいろな先生方から問い合わせがあることがある。4. コンピュータこれは大変便利な道具です。仕組みを作ることにより大量に瞬時に情報を伝達することができます。念には念を入れてチェックすることが大前提です。 (間違うと不正確な情報を伝え、たくさんの人に迷惑をかけます。また損害も与えます。事務局の信用もなくします。 )
l チェックが重要5. 学会事務局は表に出て、仕事を行うことではない。裏方に徹してけれども卑屈にならずに堂々と働くの学会事務局と思います。
l 役員の略歴間違いなどが過去にあった
l 職員の紹介を総会で行った[質問へ戻る]
l 新人の研修は1日。学会とはなにか、業務の流れなど、現況報告などを利用して、マニュアルはない
l 職員を雇う場合:一般公募、最近は多いパートでも数名来る。面接は総務理事と事務局責任者、理事会承認。面接が主。会員からの紹介が多い。新聞広告 (地域紙 )などを出していない。
l 引継ぎはほとんど行えない状況
会員は人間的に優れた知識を持っている方々なので、職員は尊敬の気持ちを持って対応することが必要。在職期間が長くなると年齢的にも年下の会員とも接することになり、応応にして対等とか年下とか意識し、それが態度に出るようなことがないよう心がける必要がある。
l お客様に接するような態度会員は、またボランティアの精神で役員として学会運営を協力しているのだから職員が本来学会存在の精神で学会事務局で働いたとき、終了したとき「ごくろうさん」「ありがとう」というたくさんの会員からいわれよう。
l 職員は給料をもらっている。会員はボランディアである
l 職員と会員の関係はうまくいっていると思う
¨ スタッフはラインをコントロールしてはならない、ラインにサービスを提供するものである
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それぞれの学会はそれぞれの特徴があるので、その学会の現状を尊重した上で、それぞれの学会事務局とお付き合いしていくことが必要である。 (いろいろな業務の**とか )ふだん会うことはないのだから、会ったときに情報交換したり相手と話し合う状況も作り出すよう努力する必要がある (職員待遇の比較とか労働組合などのことを話題にすることはあまりいいことではない、不満が募るばかりであるから )
その学会がいいとか、よくないとか判断することは避けた方がよい。学会がよく見える悪く見えるも事務局員の対応で判断されることがあるから注意したほうがよい。
事務局員同志仲良くなる方法の一つに会食も必要である。
学会間の緊密の度合いは職員がどのような関係にあるかによって決まるといっても過言ではない。
l 他学会の先生、事務局から顧問宛に問い合わせがある。10 年ほど前から10 学会程度。アイサイ、ロボット、人工知能、精密工学会、情報処理学会( はじめのころ) 、土質工学会、溶接学会、可視化情報学会、ガスタービン学会、ファジイ学会、定款・事業報告など持参。 SICEフォーラムと銘打って、交流会。顧問から教えることが多かった。参加費 3000円、懇親会費で消える。 5,6月ごろに行っている。精密工学会、情報処理学会などは事務局長との個人的面識から。
l 主務官庁への対応のノウハウ、税金関係、
l 上述学会からみて経済的によかった
l アイサイは旅費がないから来なかった
l 連合講演会時に会長レベルの会合をアイサイと行っている
l 人工知能学会は事務局を統一したほうがよいといっていた
l 海外ICASE( 韓国) 、CIS( 中国、国営企業)
l JEMIMA( 職員 15 名 ) SJ交流会を事業委員会主体で行っている
l IFAC, IMECO などと交流がる。ほかに IEEE,ISA,
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大変難しいことですが。
1. 役員と事務局は年度開始前に打ち合わせを行うべきです。委員会には、正副委員長がおられますがそれぞれお考えが違い、ひどいときには方針が 180度違うこともあり、中間的に 90度くらいはふつうです。
l 年度始めに役員と事務局の話合い( 打ち合わせ) をやってほしい2. まず役員の方針具体的実施方法などについて説明をいただく、役員が具体的にどのようなお考えを持っているのか、また、 SICEのことをどの程度、どのように理解しているかによって、事務局の説明が変わってきます。
l 理事会への議題提案は企画委員会担当
¨ 新任理事に対してマニュアルが必要
¨ すべてが総務委員会になっている。会長、副会長は事務とのコンタクトがない。
¨ 理事会前の総務委員会には会長も出るべきだ。総務委員会と会長との打ち合わせが必要。
¨ 会長( 役員) が下手をすると職員を秘書のように思う場合がある
3. 事務局には仕事をするために職員がいるのです。また職員は仕事のプロのわけですからお任せいただけばよいのです。むしろ役員は細かいことに手を出さないで適切な方針方法の助言に徹するべきかと思います。
4. 事務局は会員にもっとサービスをすべきです。これでよいということはありません。
5. 役員の方は外から SICE 事務局をみて「よくやってくれているね」という方もおります。「何と事務局は貧弱な体制だろう」「何でこんなことができないのか」などなど。というご意見を沢山いただきます。それで立て続けに結果はまだかまだかと矢のような催促をされます。役員の方が思っている以上に事務局員の能力が劣っているなら能率向上に手をお貸しください。人数が少ないところで休暇もままならない状況と思います。
6. 大学大企業からの役員は往々にして設備の整ったスタッフが多数いる環境におられるのですが、私たち事務局には予算の少ない限られた職員で同時に多数の会員 (現在 8,300名ですが )からの依頼問い合わせがあるのです。それもしながら、役員からの依頼 (学会の事業の増進 )を進めているのです。事務局の中で役員からいわれたこと (難しいことならなおさら )を考えている時間はないかと思います。
追伸:お問い合わせに対するお答えになっていたかどうかですが思いつくことを書きました。
l 1985 年から国際セッション、論文数は減少
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