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[論 文]
[ショート・ペーパー]
三菱電機・実森彰郎,東大・安藤 繁
筆者らは,先に,チャープ超音波を境界近傍に存在する物体を覆うように照射し,そのエコーから物体の形状を判断する方式を提案した.本論文では,その基礎的事項について考察し,複雑形状物体の形状判断への適用の根拠を得る.反射物体の大きさに比べて使用する超音波の波長が十分小さいという前提で,観測される超音波信号の意味を理論的に調べ,超音波反射対としての物体のモデル化を行い,複雑な形状の物体であっても比較的少ない点からの反射の和として扱えることを示す.物体の形状を判断する目的では,送受信点から物体の各点までの距離を測定する必要はなく,物体の各点間の相対的距離関係がわかれば良いことを指摘し,送受信点からの絶対距離によらない,反射点間の距離差に依存したモデルを導いた.物体の形状を推定するために適切な送信波の変調方式を論理的に検討し,その結果としてチャープ波を導く.具体的な例でモデル化を行い,チャープ波の照射実験による検証を行う.以上を踏まえて,先に提案した方式の特徴を整理する.
University of Tsukuba・Lisheng CHEN, Nobuharu AOSHIMA
In this paper we presented a method of high precision load measurement by dynamic crane scale. The basic point of this approach lies in the idea that the sampling average of dynamic load signal during a time interval between the maximum swing angles is a function of the maximum swing angle. The mass of goods is a constant factor of this function. By the function and the maximum swing angle calculation formula, the mass value of goods can be calculated under the dynamic condition. The experimental results indicated that measurement precision of more than 0. 1%F. S. can be achieved.
東北大・江原康生,曽根秀昭,根元義章,日大・高木 相
電気接点の消耗あるいは転移による表面形状変化は,性能劣化に大きな影響を与える.本論文では,電極の表面形状を計測したデータに対して,ディジタル画像処理手法を適用し,表面形状変化の可視化を試みた.
電極表面の微小な変化を計測したデータには,光の焦点拡がりと複雑な反射に起因する誤りが加わる.平滑化処理を行うと微小な特徴が損なわれ,また特徴強調では誤り成分が強調されるために,特徴と誤りの判別が非常に困難である.
筆者らは,電気接点の表面形状計測において,誤りを除去しつつ,特徴成分を保つ画像処理手法を提案した.欠落データの補間処理を行い,次に非線形な近隣画素平均化によって辺縁部分を保ちつつ,計測誤りを除去する.さらに注目点の近隣成分の変化パターンによって係数が動的に変化するフィルタを用いて,特徴成分と誤り成分を区別をして平滑化と特徴強調を行う.その結果,微小な凹凸を持つ電気接点の表面形状変化の可視化が実現した.
計量研・小林正信,小野 晃,佐久間史洋
本論文では常温の熱放射に応答する熱赤外検出器を対象とした,背景放射の新しい光学的な低減方法について報告する.熱赤外の放射温度計には,放射温度計内部の不用な背景放射による零点ドリフトの問題がある.特に受光面の広い多素子の検出器は,単素子の検出器よりも背景放射が入射しやすい.
この問題に対処するため,中央部に測定対象からの信号放射を通すための開口を設けた凹面鏡(ミラーアイリス)を冷却された検出素子の前方に設置する,背景放射の新しい低減方法を考案した.また,ミラーアイリスの効果を確認するため,10素子のInSbリニアアレイ検出器を用いた放射温度計を試作し,零点の安定度を評価した.
試作した放射温度計はミラーアイリスを用いることにより,同じ開口径の黒色板絞りを用いる場合の1/3以下に背景放射を低減できた.さらに,ミラーアイリスと温度補正を組み合わせることにより,光学的なチョッパーを用いることなく,零点のドリフトを実用上十分に小さくすることができた.試作した放射温度計は40℃に保持した黒体炉を観測した状態で,周囲温度を約4時間周期,±6℃の幅で変化させた場合の指示温度のドリフトが±0.2℃以内という高い安定度を実現した.
近畿大・稲荷隆彦
被測定表面上に格子などのスリットパターンを投影し,その像の画質から粗さ等の表面性状を計測するパターン投影法をとりあげる.パターン投影法は基本的に2つの方式に区分できるが,本論文ではまず被測定表面をパターンの結像光学系の途中に配置する伝達関数法と呼ぶ方式につき実験的,理論的検討を行った.この方式は表面粗さ構造の振幅が光の波長に比べ十分小さい場合にその適用が限定されるので,中心線平均粗さRaが0.1 μm以下である表面試料を用いて実験を行った.その結果,観測されるパターンのコントラストのRaによる変化は,散乱の理論から推定される光の散乱の正反射光成分の変化,e−g,gはRaの2乗を含むパラメータ,に対応することが実験的に明らかになった.これによりパターンのコントラストから,Raを非接触計測することが可能であることが証明された.コントラストは使用する光学系の影響を大きく受けることも実験で明らかにした.
また,伝達関数法のRaに対する限界より大きい表面粗さ計測へ拡張するため,一度スリットパターンを被測定表面に投影し,もう一度観測面上に結像させる再結像法と呼ぶ方式を従来より提案してきたが,Raの大きい試料も含めて,簡単な実験を試み,その可能性を検討した.
東芝・落合 誠,東京電力・黒木雅彦,小久保隆,東芝・久保克己,兼本 茂
本論文は,大気中など開空間に拡散した不可視ガスの分布を,レーザー超音波法を用いて3次元的かつ高い選択性をもって分布計測する新しい手法を提案するものである.ガス分子の吸収波長に同調させたレーザー光を対象に照射すると,光音響効果によって音波が発生する.この開花は,セルに閉じこめた物質を分析対象とした光音響分光法の計測原理として一般に知られている.本研究では,発生過程における光音響信号の信号レベル,周波数帯域,電波指向性を検討し,信号の中心周波数が40kHz程度の超音波信号であること,励起光線の電波方向と垂直方向に比較的鋭い伝播指向性をもつことを明らかにした.またこの特性を利用すれば,光音響効果で発生する微弱な音波を,開空間でも良好に検知することが可能であることを実験的に示した.
一方,検知された音波信号の電波時間には音源の位置情報が含まれるため,アレイマイクロフォン技術を適用することにより音源,すなわちガス分子の存在位置を知ることが可能である.そこで,開空間にリークしたメタンガスを対象に,レーザー超音波法を用いてガス分布の計測を試みた.その結果,2つのノズルから大気に放出されるメタンガスを良好に可視化することができた.
計量研・櫻井弘久
低温域の温度標準の設定や精密測定には液体ヘリウム温槽が使われてきた.これらの装置の設計には低温独特の専門知識が,また,運転には複雑な操作や技術が必要であった.一方,クローズドサイクル冷凍機には,操作性の良さ,省力化などのメリットがある反面,機械的振動や温度の揺らぎがあるなどの欠点があった.このため温度定点の実現など精密測定に利用された例は少なかった.
ここではクローズドサイクル冷凍機を用いて,断熱カロリメトリーによる平衡水素の三重点の実現法を報告する.機械的振動に対しては定点セルを吊すという簡単な除振法を,また,操作性を良くするため固体の熱伝導のみで冷却するという方法を採用した.これにより,省力化のみならず,精密な断熱制御が可能となり,安定な低温環境が実現でき,精密な断熱制御が可能になった.この結果,水素のオルトーパラ変換に使用されている触媒による固体水素の熱異常が見い出された.また,抵抗測定に交流を使ったときの周波数依存性が観測された.
冷凍機で実現した平衡水素の三重点で標準用白金抵抗温度計を校正する際の標準不確かさは約0.07〜mKであり,液体温槽を使ったときより良い結果が得られた.
吉備高原医療リハビリテーションセンター・谷本義雄
脊髄損傷者にとってプッシュアップ動作は,基本的動作の1つで,褥そうの予防やトランスファー動作において欠かせないものである.リハビリテーション医療の分野では,理学療法士は,力学的な力の向上,臀部をより高く上げるための方法の指導,それらの能力維持の3点に着目し,訓練の指導や評価を経験的に行っている.そこで我々は,その力と方法を定量的に捉える目的で,手にかかる上下,前後,左右の3方向の力を計測する,プッシュアップ動作計測装置を製作し,脊髄損傷者27名について計測を行った.プッシュアップにおいて臀部をより高く引き上げるには,肩関節を中心に臀部を後方に引き上げる力が必要であり,この力は肩屈曲モーメントで表される.そこで,プッシュアップ動作における力は,力学モデルを用いて算出した肩屈曲モーメントにより捉えることとした.次に,プッシュアップの個人による特徴は前後方向の力の波形パターンに現れることが明らかとなり,プッシュアップの方法を前後方向の力の波形パターンにより捉えることが可能となった.そして,このシステムを用いれば,理学療法士が経験的に行っていたプッシュアップ動作の指導に対し,定量的な評価を行うことが可能となり,個々の障害者にあったプッシュアップ動作訓練の指導が可能となろう.
山口大・田中正吾,渡邊克彦
水道,ガス,電力,通信などの配管では,配管の老朽化や地震などの原因により,配管がずれたり,あるいは異物が詰まったりすることがある.このような場合,その異常を高速,高精度に検出することが重要となるが,このような配管系では,湾曲部や分岐部が存在したり,また直管であっても管内にガスが充満している場合がある.そのため,光波距離センサによる異常物体の位置計測は一般に困難である.
このような観点から,本研究では音響センサを用いることを考えた.つまり,音波を配管の送波口より入射すれば,配管内の管端,湾曲部,分岐部および異常物体前・後面で反射・透過を繰り返し,複雑な反射波が受波器に得られるが,反射波の受波時刻には管長および異常物体の位置・厚み情報が,振幅には異常物体の断面積情報が,また受波パターンには配管の形状に関する情報がそれぞれ含まれる.そこで,実際の受波波形と送受波器の物理特性を考慮した反射波予測波形とのパターンマッチングを図ることにより,各反射波の受波時刻および振幅に関する情報(ここでは受波時刻マップと呼ぶ)が得られることになるが,本論文ではこのように求めた受波時刻マップと理論的に求めた受波時刻マップを照合することにより,管の形状・長さ情報の有無に拘わらず,異常物体の位置,厚みおよび断面積の計測が行える計測システムを提案した.
佐賀大・渡辺桂吾,日本ソフトサービス・野見山 章
ファジィ推論に基づくファジィ制御器は従来の制御理論との結びつきがほとんどないことから,その制御器設計では一般に多大な試行錯誤を伴うことになり,また制御系の安定性も容易に確保できない等の課題が指摘されてきた.そのため,ファジィ制御系の安定性システマティックな設計方法を提供し,しかもその制御系の安定性も確保できる方法が望まれている.このようなことを鑑み,著者はすでに従来の制御理論との整合性がとれ,しかも実用的ファジィ制御器設計法や解析手法を提供する,確率ファジィ制御法を提案してきた.この方法によると,従来のモデルベース制御のように,もし制御対象が既知ならば極配置抑制としてファジィ制御器が設計できることを示した.
本稿では,さらに部分的あるいは完全未知制御対象に対して,線形min-max制御法の考え方を応用したゲイン設計法を提案する.この方法では,不確定要素に対していわゆるマッチング条件が満足されているならば,確率ファジィ制御系はある許容誤差内への斬近暗転性を保証できることを証明する.また,本設計法を2輪独立駆動型移動ロボット車の軌道制御問題に適用し,物理パラメータが完全に未知の場合における設計例題とそのシミュレーションにより有効性を検証する.
琉球大・上里英輔,阪大・池田雅夫,神戸大・遠山隆二
本論文では,線形ディスクロプタシステムを対象に,そのロバスト安定化問題が考察されている.安定化可能条件を導くために,まず,ディスクリプタ変数の線形フィードバックによって得られる閉ループ系とロバスト安定性に関して等価であって,ディスクリプタ変数の微分の関係行列に不確かさを含まない2つのシステムが考えられている.それらの等価システムが2次安定ならもとの閉ループ系がロバストであることを用いて,等価システムの2次安定条件を導くことにより,対象システムがロバスト安定化可能であるための2つの十分条件が得られている.対象システムの係数行列の不確かさは双線形行列不等式の条件に帰着する.双線形行列不等式についてはアルゴリズムが確立していないので,Homotopy法の考え方による解法が提案されている.
阪大・渡辺 亮,早大・内田健康,金沢大・藤田政之
加わる外乱が有界な領域に制約された非線形システムに対する解析法の1つに,状態方程式を線形近似項と余剰項に分解,余剰項をパラメータ変動として捉え,これに線形ロバスト解析を適用する手法がある.この場合に問題となるのは,パラメータ変動として扱う余剰項の評価である.余剰項がシステムの状態に依存していることを鑑みれば,外乱が制約されているという状況下において状態が到達可能な領域,状態可到達集合,の評価が重要な問題となる.
本稿では,状態方程式が線形近似項と状態に依存した余剰項で記述される非線形システムとして,非線形システムの2次システムを導入する.次に,加わる外乱が円領域に拘束されている2次システムに対し,線形行列不等式条件に基づいた状態可到達集合の評価法を提案する.また,数値例では,本稿で提案する評価法に基づいて,与えられた2次システムに対する状態可到達集合を実際に評価し,その有効性を検証する.
山形大・大久保重範
多変数多項式からなる非線形システムの安定化制御には,評価関数を使った非線形レギュレータがある.本論文では評価関数を使わずにべき状態フィードバックによって直接的に非線形システムを安定化する方法を示す.本方法は線形システムでの安定化フィードバックに対応する.非線形システムでは線形システムでの極の概念が存在しないが,リアプノフ関数で考えれば,非線形システムの安定化は線形システムの安定化の自然な拡張になる.線形システムと非線形システムを対応させれば,状態ベクトルがべき状態ベクトルに対応し,2次形式がべき状態ベクトルの2次形式になる.さらにリアプノフ方程式は拡張リアプノフ方程式に対応する.拡張リアプノフ方程式は変数の個数より,方程式の個数が多いため,数学的には解を求めることができない.本論文では遺伝的アルゴリズムを使って拡張リアプノフ方程式の荷重行列が正定になるようにフィードバック行列を決定する.本方法は最高次数が奇数次の多項式の非線形システムに対して,大域的に安定になるような有限次数のべき状態フィードバック制御則を厳密に設計することが可能である.最後に数値例を使って比較的容易にフィードバック行列が求まることより本方法の有効性を示す.
Kagoshima University・H. YOSHIDA, T. TANAKA, K. YUNOKUCHI
The controllability with positive input constraints is very important and interesting in dealing with many practical control applications such as a pendulum system, economic system, etc. Although the necessary and sufficient condition for the controllability of discrete-time linear systems with positive controls is given earlier, it is not easy to determine whether a given multiple input system is positive controllable or not based on the former result.
This paper presents a simple criteria for multiple input discrete-time linear systems to become positive controllable are given based on the Jordan canonical form and elimination method of Gauss. It is pointed out that the number of steps necessary to discriminate the positive controllability is finite. The results presented here clarify the structure of positive controllable systems and are useful in discussing fundamental control problems.
名古屋工大・加藤久雄,舟橋康行
近年の計算機技術の発展により,自動制御の分野においてサンプル値制御系が広く用いられてきている.これに伴い,その理論的解析も重要度を増してきていると言えるが,その課題のひとつとしてリップルがあげられる.これはサンプル時点では望ましい応答をしているにもかかわらず,サンプル時点で無視し得ない偏差を生じるという現象のことで,その存在自体は以前からよく知られていたものである.この現象に対しては,比較的近年,いくつかの研究がこのリップル現象を回避する条件について考察している.これらはデッドビート条件を課したものと,そうでないものに分けられる.
本稿は,デッドビート条件を課さないリップルフリートラッキング問題を“C級への収束”という新たな概念を導入して議論するものである.これは,サンプル値系においてサンプル点間では,外部入力とホールド出力が滑らかな場合,応答も常に滑らかになるが,これが時間がたつにつれてサンプル時点でもより“滑らか”になるという概念である.これによりリップルフリー達成のための条件,連続時間内部モデルの必要十分性が異なったかたちで証明される.その際,より議論が簡潔になっていると思われる.
法政大・小林一行,渡辺嘉二郎,米国ミシガン州立大・Ka C. CHEOK, G. Edzko SMID
車両の安定性や制御性,車両運動性能の向上は重要である.その一役を担う運動制御システム,例えばABS,TCSなどがすでに開発,実用化されている.これら制御のための車両モデルは,次数が高く非線形性を含み複雑でモデルを用いる制御は実用的でないと考えられてきた.従って,モデルを用いたアプローチの代わりに,実装プロトタイプの作成,実験,改良などの繰り返しにより開発が進められてきた.本論文では,速い処理が可能で,かつ本質的な非線形要素はそのまま残すモデルをオブジェクト指向的なアプローチで構築した.このモデルダイナミクスの検証のため,汎用制御用ソフトSIMULINKを用いGUI的なアプローチにより実装をおこなった.オブジェクト指向的モデリング法とGUIプログラミング法は,設計や変更を容易にする.また,非線形性要素などの実装も容易である.実際,SIMULINKブロックをCコードに変換するリアルタイムワークショップを用いC言語に変換後シミュレーションした結果,サンプリングタイム0.01secでワークステーション(SGI社のMaxImpact)を用い,実際の動かす場合より約25%速くシミュレーションすることができた.
東工大・藤田壽憲,渡嘉敷ルイス,池上 毅,香川利春
ほとんど空気圧シリンダの駆動回路にはメータアウト回路が使用されている.その理由はシリンダの運動時間が負荷に依存せず排気側絞り面積だけで一定とできる,言い換えれば負荷に対して速度制御機構が働いていることにある.この性質については古くから知られ,数値シミュレーションにより確認されているが,その原理については理論的に全く不明である.またフィードバックループの存在により運動時間が一定となるという定性的な説明も行われているが,具体的なフィードバック機構はよくわかってはいない.
そこで本研究ではシリンダの基礎方程式からブロック線図を描くことにより速度制御機構を解明し,シリンダの運動時間について考察した.その結果,負荷からシリンダ速度の伝達関数が−1型となり,負荷変化があっても平衡速度が絶えず一定となることがわかった.このことは負荷の増加による絞りからの排気流量の変化分が,ピストンが押し退ける空気質量の変化分に等しくなるためであることを解明した.また任意の負荷に対して初期値と平衡状態の関係は常に一定となり,平衡速度ばかりでなく過渡応答までもが一致することを示し,このことも運動時間が変化しないことに重要な役割を持つことを指摘した.
佐賀大・佐藤和也,東芝・樊 家春,九州工大・小林敏弘
実プラントの制御において,オフラインでのPIDゲイン調整で十分にその目的を達成できることが多いが,パラメータが未知,あるいは変動する場合もあり,制御系の安定性,ならびに所望のパフォーマンスを達成するためにもPIDゲインをオンラインで調整する方法が提案されている.
未知パラメータを含むプラントをオンラインで制御する有効な方法として適応制御手法があるが,制御器の構成は従来のPID制御器の構成とは著しく異なっており,また設計の指針も決して見通しの良いものではない.
そこで,本論文ではオンラインで適応的にPIゲインが調整されるPI制御法を提案する.これは制御系の構造が簡単となる適応制御手法として知られているハイゲイン適応制御法を応用したものである.本手法によればPIゲインは対象の出力とステップ状目標値との誤差によりオンラインで調整される.さらに,プラントの相対次数が1で最小位相系であればプラントの安定性にかかわらず,プラントの出力とステップ状目標値の誤差が零へ収束することを示す.また,制御系内の全ての信号の有界性が保証できることを示す.また,相対次数が2以上のプラントにも本制御則が適用可能となる手法について述べる.
東洋電機製造・呉 優,藤川 淳,小林弘和
本稿では産業プラントや産業用ロボットなどにおけるモータドライブシステムをとりあげる.このシステムは電動機と負荷機械が低剛性の軸で結合され,変速装置にギアバックラッシを含む多慣性ねじれ軸系では共振系となり,軸ねじれ振動ギア振動が発生し問題となる.
バックラッシ補償手法は従来から数多く提案され,軸ねじれ振動とギア振動の抑制に有効であるが,いずれも制御系の構造が複雑である.
本稿で提案する手法は,ギアのバックラッシ振動を抑えるために,PI速度制御に,さらに外乱オブザーバによる推定したギアトルクをPD(比例-微分)フィードバックするものであり,構造が簡単である.
ギアバックラッシモデルとした不感帯要素を記述関数で線形化することによって,提案の補償器各ゲインの設計は閉ループ系の極配置より求めることができる.極配置の解析により,推定ギアトルクの微分フィードバック補償は高次モードのギア振動抑制に有効であることがわかる.
本稿では従来のPID(比例−積分−微分)制御と提案手法につき,シミュレーションと実験で比較検討し提案手法の有効性を確認できた.
防衛大・金子 達,日産・安達和孝,防衛大・越智徳昌,金井喜美雄,日産・渡邉 晃,浅野伸宏
トルクコンバータは自動車の自動変速機において快適性の面などで重要な役割を果たすが,同時にエンジントルクの損失を招く要因となっている.このため,ほとんどの自動変速機システムはエンジンと駆動系を直結状態にできるロックアップ機構によりこの損失を防ぐような構成となっているが,低車速運転時にロックアップするとこもり音や振動が発生し運転性能を悪化させる問題がある.そのような問題が生じない必要最小な滑り量でスリップさせながらロックアップクラッチを使用することで低車速運転時にも高い伝達効率を達成することが可能となり燃費の向上が期待できる.本稿ではこの目的のためにエンジンとタービンの回転速度の差であるスリップ回転速度の制御系の構成について検討する.まず,油圧制御系の差圧指令値からスリップ回転速度までの動特性をモデル化する.実験結果から確認された制御対象の性質を利用することで低次の線形モデルが得られた.制御系は2自由度系とし,開ループ制御器はチューニングを容易にするためにモデルマッチングにより,閉ループ制御器は動作条件の範囲や予想される経時変化などに対するロバスト性を考慮して設計する.実車実験を行い設計したスリップ制御系の有効性を確認した.
東工大・松尾芳樹,日立製作所・坂本博史,稲葉 毅
運転条件や外乱の性質が状況によって大きく変化するシステムの制御には,状況に適した複数のコントローラを用意し,それらを切り換えて用いるマルチコントローラシステム(MCS)が有望である.しかし,従来のMCSではループ内のコントローラを切り換えているため,安定性の確保や制御モード切り換え時の過渡応答の抑制に工夫を要する.
そこで本論文では,YJBKパラメータを直接切り換えることにより,安定な開ループ補償要素の切り換えと等価な,新たなMCSの構成法を提案する.本方式は,安定な線形制御系の全クラスをカバーし,すべてのコントローラに常に入力を接続しておける完全並列型となる.これにより,状況の変化に即応可能,補償要素自身は切り換えによる過渡応答を生じない,制御モードによって異なる目標を容易に与えられるなど,MCS本来の並列性の利点が活かせる.
さらに,既約分解の自由度を利用して,制御モード切り換え時の過渡応答を抑制する設計法を導く.これは,等価的にフィードバック補償となるので,状態量が検出できない場合や,変動する入力のもとでも有効である.最後に,大型商用車用アクティブキャブサスペンションへの適用を検討し,シミュレーションにより本手法の有用性を示す.
阪大・田村坦之,柴田智裕,日立製作所・益永健一郎,神戸大・鳩野逸生,阪大・富山伸司
本論文では,ジョブショップスケジューリング問題の近似解法として,遺伝的アルゴリズム(GA)とラグランジュ緩和(LR)法を併用した手法を提案する.本手法では,問題の解空間の部分空間を,同一リソースを共有するオペレーション間の先行関係を用いて構成する.本空間表現を用いてより良い部分空間の探索を行って部分空間の精度を保持し,部分空間を構成する先行関係を段階的に付加していくことによって探索空間を限定していく.部分空間の探索はGAを用いて行う.GAにおける部分空間の有望性の評価は,LR法によって得られる下界値と部分空間の構成による段取替えの最低値に基づいて行う.本手順で最終的に得られる部分空間において許容解を求める.また,本論文では,ジョブショップスケジューリング問題を対象にして,ラグランジュ緩和法を節点評価に用いたビーム探索法との比較を行ない,より短い時間で同等の解が得られることを示した
広島大・畠山真明,土肥 正,尾崎俊治
経済時系列データの変動制(ボラティリティ)を推定する問題は財務分析における重要な課題である.最近では,ボラティリティが確率的に変動する自己回帰条件付き分散変動モデルなどの統計的モデルが数多く提案されており,現実の証券価格予測などに広く応用されている.本論文の目的は,時系列データのボラティリティの変動構造を予測評価に取り入れた新しいタイプのリカレントネットワークを提案することである.最終的に,実際の株価指数データを用いて,提案されたネットワークモデルと従来との比較を行う.結果として,本論文で提案されたネットワークモデルはボラティリティの変動構造を有するデータに対しては良好な予測能力を発揮することが示される.
日立製作所・森 正勝,松尾博文,小坂満隆
情報ネットワーク技術の進展により,さまざまなデータを収集/利用できるようになった.そこで,マーケットニーズをすばやく反映できるように企業のサプライチェーンを見直し再構成する動きが盛んである.これを実現する一つの方法として,本論文では,知的エージェント技術を利用することにより,マーケットニーズに応じてフレキシブルに生産資源配分を行う方式を提案する.知的エージェント技術を使えば,分散システム環境において自律的にデータを収集し判断することが可能になる.このことは,変化するマーケットニーズに対応して生産計画をフレキシブルに変え,よりきめの細かいサプライチェーンマネジメントを行える可能性を示している.提案方式では,まず,数理計画法を用いて全体最適化を行う.つぎに,リアルタイムで収集したマーケットニーズを持つ知的エージェントがそれぞれの利益を最大にするようなオークションを行い,全体最適化で得られた解を調整する.さらに,シミュレーションスタデイにより,提案方式の有効性を確認する.
[新規性・有効性]
*知的エージェント技術が分散システム環境において自律的にデータを収集し判断することに注目して,サプライチェーンマネジメントにおける知的エージェント技術を利用した資源配分の一方法を提案した.
*具体的には,数理計画法で求められた最適解を,エージェントが収集した顧客情報を基にオークションを行い最適化する方法であり,エージェントの収集する顧客情報として,商品を購入できないときの顧客の購買行動を推定し,その情報に基づいて顧客毎の販売機会損失を使用する方法を提案した.
*計算実験を通して,提案手法によって顧客減少型の市場モデルにおいて効果的に顧客を維持することを示した.
*これによって,顧客情報を使用して生産計画を立てることができるので,マーケットニーズに即したサプライチェーンマネジメントを実現できることが期待される.
Keio University・Lianming SUN, Akira SANO,Xi'an Jiaotong University・Wenjiang LIU
A new identification approach based on an over-sampling scheme is proposed for a Hammerstein model which consists of a nonlinear element followed by a linear dynamic model. Making use of an observation set of the system input and over-sampled output, the unknown linear transfer function model can be identified independently of identification of the nonlinear element. Therefore, it can be clarified that the consistency of the parameter estimates of the linear dynamic part is assured. The nonlinear element is given by a mapping between a given input and recovered intermediate input. The prior information of the nonlinear element is not necessary in the new algorithm.
東工大・池田貴幸,電通大・田中一男
ファジィモデルに基づく制御系設計が行われている.これらの設計法を用いると安定なファジィシステムが設計できるが,設計された制御系は必ずしも性能の良いものとは限らない.一般に,システムが安定化可能ならば安定化制御器は無数に存在する.したがって,これら無数の安定化制御器のクラスの中から性能の良いものを選ぶ必要がある.そこで,ある適当な制御指標を考えて,それに基づいて安定化制御器のクラスの中から選択することが考えられる.制御指標の例として,ロバスト安定性や2次形式評価関数などが挙げられる.本論文では,不確かさを有するファジィモデルに基づくロバストファジィ制御系設計法を提案する.また,2次形式評価関数値をできるだけ小さくするファジィ制御系の設計法を提案する.さらに,この両者を考慮する混合設計問題についても考察を行う.とくに,この両者の設計問題がLMI条件で記述できる利点を最大限に生かして,LMI条件を制約とする形で混合設計問題を定式化する.最後に,この設計法を簡単な例題に適用し,その有効性を示す.
広島大・辻 敏夫,加藤荘志,柴田智章,金子 真
ヒトの関節運動がインピーダンス特性(スティフネス,粘性,慣性)で表現できることはよく知られている.このインピーダンス特性は,神経系による骨格筋の収縮により調節されている.本論文の目的は,(1)関節インピーダンスの推定と伸張反射の誘発とを同時に行う方法を開発し,その方法で,(2)ヒトの手首関節におけるインピーダンス特性が,等尺性筋収縮力や伸長反射活動によりどのように変化するのかを検討することである.
まず,被験者を1自由度のリニアモータ軸テーブルの前に座らせ,手首関節を力センサを取り付けたハンドルに対して等尺性に屈曲させる.そして,インピーダンス推定と伸張反射の誘発のために,運動中にハンドルを強制変位させる.インピーダンスは最小自乗法により求め,伸張反射は橈側手根屈筋から記録する.実験結果から,以下のことが明らかとなった.
(1) 既知の物理量に対する推定実験から,本論文で開発した推定法の妥当性を確認した.
(2) 手首関節トルクの増大に伴い,伸長反射の反射利得はほぼ比例的に増加した.
(3) 手首関節におけるスティフネスと粘性は,伸長反射活動の増大とほぼ線形関係にあった.
(4) 手首関節トルクの増大にともない,固有角周波数と減衰係数はともに増大した.
徳島大・最上義夫,大阪教育大・馬場則夫,大日本スクリーン製造・石留敬典
未知環境中において動作する大規模かつ複雑なシステムへの適用を目的とした学習オートマトンとして,学習オートマトンを木構造に組み合わせた階層構造学習オートマトンが注目されている.ある問題に階層構造学習オートマトンを適用するときにその出力となり得るもの,すなわち,問題の解となり得るものを学習目標と呼び,それらの集合を目標集合と呼ぶことにすると,従来行われてきた研究はいずれも,目標集合の要素が学習開始時にすべて与えられて確定しており,それらに対するreward(評価)の確率分布のみが未知である場合について考察している.
しかし,実際の問題に階層構造学習オートマトンを適用することを考えるとき,rewardの確率分布のみならず目標集合の要素数および内容もが未知であるような環境中において動作する階層構造学習オートマトンについても考察することが必要である.このような問題に対して最上は可変階層構造学習オートマトンを提案し,その学習アルゴリズムを構築するとともに学習特性について考察したが,より広範囲の問題を考えるならば,より一般的な環境である非定常環境においても可変階層構造学習オートマトンを構築することが重要になると考えられる.
そこで本論文では,各レベルにS-モデル非定常環境をもつ可変階層構造学習オートマトンについて考察し,そのときに生じる問題点を指摘する.そしてこの問題点を解決するためにrewardパラメータを導入し,このパラメータを組み込んだ可変階層構造学習アルゴリズムを構築するとともに,本可変階層構造学習アルゴリズムによって最良目標パスが見出される確率はいくらでも1に近くすることができることを理論的に示す.さらに数値シミュレーションによって,本学習アルゴリズムの有用性を検討する.
岩手大・恒川佳隆,岩脇 充,千葉晃司,三浦 守
本論文では,われわれが先に提案した分散演算を適用した状態空間ディジタルフィルタ用VLSIプロセッサの低消費電力形アーキテクチャを提案した.状態空間ディジタルフィルタにおいてはその高精度性により必要語長を最小化できる.すなわち,処理時間が語長のみに依存する分散演算を用いた本アーキテクチャでは,高次および多入出力の場合においても高速処理が可能であり,なおかつ滞在時間の大きさを極力抑えることができる.また,分散演算の関数に冗長性があることに着目して,関数生成用のROMを最適化された論理ゲート回路に置き換えることで,処理速度一定のまま,大幅な低消費電力化が可能となる.さらに,この回路の性質に着目してフィルタ構造を適用することによって,なお一層の低消費電力化が図れる.
その結果,16次のフィルタにおいて3.9MHz(0.6 μmCMOSスタンダードセル,電源電圧5V)というきわめて高い処理速度を実現しながら,約2.1Wと従来の構成と比べて大幅な低消費電力化が可能となった.他の実現法では高次・多入出力の場合処理速度が大きく低下してしまうのに対し,本提案法は高いサンプリングレートを保ったままで低消費電力なVLSIプロセッサの構成が可能となる.
香川県工業技術センター・高原茂幸,筑波大・宮本定明
本稿では,組合せ最適化問題において用いられる解法であるメタ戦略の中でも,特に有効であると考えられるシミュレーテッド・アニーリングをベースにして,知識ベースを用いることなく,かつ様々な問題への適応性を持たせた,適応型シミュレーテッド・アニーリングを提案する.この方法では,与えられた問題の性質を過去の探索から判断し,探索戦略を適応的に変えていく方法をとる.これにより,問題に依存せず,なおかつその特徴を生かした有効な探索が可能となる.
そして,適応型シミュレーテッド・アニーリングの有効性を示すために,この手法を最適配置問題に適用する.これまでに,この問題に対してはメタ戦略を用いたアプローチが取られているが,配置の対象としている部品は矩形に限定したものが多い.本稿では,さらに任意形状部品の配置が可能となるアルゴリズムを提案し,現実的な問題に対しても役立つものとした.また,シミュレーテッド・アニーリング,タブー探索,遣伝アルゴリズムなど他のメタ戦略と比較し,その有効性について示した.
広島大・諸星知広,辻 敏夫,大竹久夫
細菌は非常に小さな単細胞生物にもかかわらず環境刺激に応じて泳ぐ方向を変えることができる.このような誘引物質への集積,忌避物質からの逃避を走化性と呼ぶ.この細菌細胞は生命体ソフトウェアの解読を試みる上で最も単純なモデル系であり,刺激入力から運動出力に至るまでの内部情報処理経路がわずか数種類のタンパク質によって実現されているという事実も非常に興味深い.
本論文では細菌細胞のうち大腸菌(E. coli)を取り上げ,外部刺激の入力から内部情報処理ネットワークを介して鞭毛モータに運動信号が伝達されるまでの走化性全体の機構をモデル化するとともに,最適化アルゴリズムを用いて内部パラメータを調節した.その結果,E. coliの走化性を現実の細菌の運動に近いところまでコンピュータ上で再現することができた.またE. coliが環境変化や時間変化に対して示す特徴的な挙動についても,本モデルを用いてある程度再現できることを確認した.本モデルは走化性解析用ソフトウェアとして有用であり,細胞内タンパク質の機能解析や特異的な挙動を示す細胞個体のシミュレーションなどをコンピュータ上で容易に行なうことができるという特徴を有している.
熊本大・鳥越一平
容器の代表長さが温度境界層厚さδに較べて十分に大きい場合には,容器の音響コンダクタンスは,容器内表面積に比例した大きさとなる.このことを利用して,容器の音響インピーダンスを測定して内表面積を知ることができる.しかし,容器の代表長さが小さくなった場合,特に容器内に物体を置いて内表面積の「増分」から物体の表面積を測定する場合,端や隅の影響が無視しえなくなってくる.本報告では,音圧が加わったときに容器内に生じる温度変動の分布を数値的に求め,端と隅の存在が音響インピーダンスに与える影響を計算した.その結果,端の在る物体の音響的にみた表面積は,物体の端までの長さが0.6δだけ延長された値に見えることが分かった.また,容器に隅が存在すると,内表面積が,壁面の長さが1.28δだけ短くなった値に見えることが分かった.
都立科技大・雨宮 孝
マッチング条件を満たさない不確定システムの安定化制御に関し,柴田・成等はリアプノフ関数に修正を加えた制御を構成する手法を開発した.しかしながらこの手法においてはリアプノフ関数のなめらかさが失われ,同時に制御が不連続に変化する故に,制御の切り替えのための超平面において,スライディングモードが生じる可能性がある.安定化条件の構成にはこの状況を考慮する必要性があることを指摘した.
徳島大・久保智裕
集中定数部分と分布定数部分が結合した構造をもつ系(混成系)を制御する問題を扱っている.このような系の状態は集中定数部分の状態と分布定数部分の状態とを合わせたものになる.これらのうち,前者を観測することは比較的容易であるが,後者を観測することは一般に容易ではない.そこで簡便な制御方式のひとつとして,前者の情報のみをフィードバックに利用する集中定数部分制御が知られている.
本稿では混成系制御の一例として,先端にアクティブマスダンパを取り付けた片もち梁の振動抑制制御を考えている.最近,この系に対して集中定数部分制御を施すことにより最適レギュレータが構成できることがわかってきた.そこで本稿では,そのような制御のクラスの中でH∞ノルムをあらかじめ指定した値以下に抑制するにはどのようにフィードバックゲインを選定すればよいか考察している.この制御対象は無限次元系であるが,本稿に示す条件に基づいて制御系設計を行う場合,無限次元リカッチ方程式を解く必要がないという特徴がある.
最後に設計例を示し,制御の効果を確認している.
九州工大・関本勝也,神戸大・岩山隆寛,東大・堀田武彦,九州工大・緒方純俊
本研究では,マルチタスクOSの負荷変動がフラクタルであり,そのフラクタル次元がある範囲に分布することを見出した.フラクタル発生構造を考察するために,M/D/1待ち行列を基に,負荷発生の構造をモデル化した.このモデルに基づくシミュレーションを行い,入力の分布を定めるパラメータとフラクタル次元が対応していることを確かめた.待ち行列が生み出すゆらぎに対して,フラクタル的なアプローチが可能であることを示唆した.