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[論 文]
セレンディ・杉浦のぞみ,大阪ガス・西垣雅司,神戸大・池田裕二,中島 健
側壁のない流体振動型ガスメータ内の流れを明らかにし器差の要因を解明するために,LDVによる流れの計測と可視化を行った.計測には作動流体として空気を用い,ガスメータ内の624点で,5流量における2次元の流速を測定した.その際,振動の周期をノズル出口の両側の圧力差によって検知し,流体振動と位相を同期させた.各流量について流速ベクトルおよび渦度を計算し,流れ模様を描いた.
振動流の基本的な流れパターンは流量に関わらず同じであった.レイノルズ数が約300以上ではターゲットの後流で周期的な渦放出が観測されたが,レイノルズ数約150では渦の発達は見られなかった.また,ストローハル数はレイノルズ数約300で最大になり,これより低流量側ではターゲット後流における渦の発達とストローハル数との相関性が示唆された.レイノルズ数約300〜800におけるストローハル数の変化は,ノズル内の流速分布の変化で説明された.レイノルズ数800よりも高流量側では,流れ模様およびノズル内流速分布がほぼ同一であるので,これ以外の要因,すなわち乱れやCD値の流量依存性などについて検討する必要があると考えられる.
高松高専・大西 巍,三菱重工・高橋哲郎,神奈川県衛星研究所・吉田芳哉
食品や医薬品工業において,菌体の検出は製品の品質を維持し安全を確保するうえで重要である.多くの場合,この検出には寒天培養により生成するコロニーを数える培養法が採用されているが,培養のため2〜数日の時間がかかる.このため,最近,菌体計測の簡便性や迅速性を特徴として,菌の濃度と超音波の減衰,菌の呼吸活性,静電容量などのマクロな関係を利用した測定法が検討されている.しかし,これらの方法では高濃度の菌の計測のみ可能であり,また特殊な種類の菌を他の種類の菌と区別して検出することはできない.
蛍光試薬を付加した抗体は検出対象の生体細胞のみに選択的に反応し,励起光の照射により固有の蛍光を発する.蛍光抗体法はこの現象を利用してフローセルにより光パルスとして連続的に個々の菌体を検出する方法であり,精度よく低濃度まで菌を迅速に測定することを狙いとしている.本研究では,蛍光抗体法により連続的に菌体を検出する装置の構成を述べ,この装置を用いて乳酸菌の一種であるLactobacillus Fermentumを対象とした検出試験を行った結果について報告する.試験結果,他の種類の乳酸菌の存在にかかわりなく,対象菌のみを4時間程度の短時間で102〜104個/mlの低濃度の領域で計数できることが確認できた.
島根大・岡本 覚
排ガスエコノマイザに発生した騒音・振動を管群内の流れと関連づけて実験的に解析し,共鳴騒音の発生機構について考察した.さらに,発生騒音の低減対策として,ダクトの中央位置にバッフル板を設置しその効果を確認した.それらの結果,つぎのようなことがわかった.すなわち,排ガスエコノマイザ内に生じる気柱共鳴騒音および管群の共振現象は,管群から流出するうずによる励振によって引き起こされ,それらの周波数の間には密接な関係がある.また,管群に直角な面内には,固有周波数の共鳴音,すなわちダクト側壁で音圧の腹,中央部で節となる1/2波長モードの定在波音場が発生する.さらに,排ガスエコノマイザに流入する流速が上昇するほど,発生騒音の音圧レベルは増大する.一方,ダクトの中央位置にバッフル板を設置することにより,定在波音場の発生を防止することができ,その結果,発生騒音の音圧レベルが約16〜18dB低減される.
島根大・岡本 覚
本論文では,千鳥配列の管群から発生した空力騒音を管外を流れる気流と関連づけて実験的に解析し,流体制御の観点から,管群の間隙内の渦形成に最も大きな影響を及ぼすと考えられる管群の主流方向ピッチを変化させて空力騒音を計測し,その発生機構について考察した.その結果,つぎのようなことがわかった.すなわち,発生騒音の周波数分析の結果,管群からの渦放出に伴う音の周波数は,共鳴の発生時における音の周波数とは一致しない.また,管群ダクトに流入する流速が上昇するほど,発生騒音の音圧レベルは増大する.一方,管群からの渦放出に伴う音の周波数は,管群の主流方向ピッチの影響を受け,ストローハル数で整理される.さらに,共鳴騒音の発生は,管群ダクトにより固有に決定される共鳴パラメータによって予測することができ,主流方向ピッチが大きいほど共鳴しやすい.
福井大・白川芳幸,新日鉄・堀越清美
本論文では,より高精度で安定した高炉操業の要求に対応した多変数計測の可能性について論じる.この計測の基本的な考え方は,中性子とガンマ線を利用した高炉内部の原料(鉄鉱石とコークス)の状態に関する複数の情報を獲得することである.
252Cf線源,中性子減速材,鉛遮蔽,ビスマスジャーマネイト検出器,ステンレスケースおよび制御部より構成されるセンサが試作され試験された.実験室の試験では原料の状態を評価するのに必須の諸量を計測することができた.具体的には鉄からの熱中性子捕獲γ線を計数することによって,鉄鉱石とコークスを明確に識別でき,同時に鉄鉱石の鉄分かさ密度を求めることが可能であった.また原料からのコンプトン散乱γ線を計数することによって原料のかさ密度が計測できた.さらに鉄分かさ密度と原料かさ密度を利用して鉄鉱石の還元率を計算することができた.これらの計測の相対精度は実用上,十分なものであった.
以上により,このセンサの実現可能性が検証された.今後は実炉での試験が期待される.
安川電機・● 双暉,九工大・辻 輝生
本研究では,入力の係数ベクトルが既知であり,さらに,未知非線形関数が入力との積となっている制御系を対象とする.ただし,すべての未知非線形スカラ関数は既知非線形関数ベクトルと未知パラメータベクトルとの内積で表現できるものとする.さらに,この系は一般的な相対次数をもつものとする.制御目的としては,連続かつ十分微分可能な目標軌道を追従することとする.
以上のような問題の設定に対して,まず,同次元規範モデル,および制御系のすべての状態量を推定するための同次元適応非線形オブザーバを設計し,それに基づいた適応線形化フィードバックを生成する.つぎは,同次元規範モデルおよび同次元適応非線形オブザーバによって得られた誤差システムの出力を利用し,一種の拡張誤差を生成する.また,この拡張誤差を用いて,未知パラメータを推定するための時変不感帯を含む適応則を設計する.さらに,設計された適応非線形制御系に対する安定性の解析を行い,誤差システムが漸近安定となるための十分条件を明確にする.最後に,例題についてシミュレーションを行い,提案された適応非線形制御系の有効性を確認する.
バブコック日立・田沼正也,沖村仁志,芝田健二,川瀬隆世
4000要素以上のブロック線図で表現される発電用の変圧・貫流ボイラモデルの多面的解析を実現するため,非線形ブロック線図の安定つ効率的な解析法である準状態変数法の拡張と実装法の検討を行った.準状態変数法の拡張に関しては,固有値解析,周波数応答解析などの線形解析を可能とする線形状態変数モデルの自動生成法の導出とグラフ指向アプローチを用いて時間応答,定常解析と合わせて3種類の計算モデル生成スキームの統一を図った.さらに,準状態変数法を実装したブロック線図シミュータXsimを試作した.Xsimはデータ作成支援インタプリタ,グラフアルゴリズム利用前処理,時間応答解析機能・定常解析機能・線形状態変数モデル生成と係数行列テキストファイル出力機能を有する.この出力機能を利用して,MATLAB (The MATHWORKS Inc.社製)と接続して,線形解析機能を実現した.Xsimにより大規模・非線形かつ固い(スティッフ)系である発電用の変圧・貫流ボイラモデルの時間応答解析を行い,高次モデルを用いても安定なシミュレーションが実現できることを確認した.また時間応答解析モデルをベースにMATLABにより固有値解析や周波数解析等の線形解析が行えることを示す.
東京農工大・小畑秀文,富士写真フイルム・村上正行
アイリスフィルタとは,注目点の近傍にマスク領域を定め,その内部の点における勾配ベクトルがどの程度注目点に集中しているのか,その集中度を出力するフィルタである.フィルタのマスク領域はフィルタ出力が最大になるように局所的に適応的に変化する.本論文は,このアイリスフィルタの理論的な特性について明らかにしたものである.おもな解析結果は以下のとおりである.
1) 等輝度線が同心円で与えられる領域(これを円形凸領域と呼ぶ)に対しては,中央で1,辺縁では1/πの出力を与える.
2) かまぼこ形の領域に対しては,中央で2/π,辺縁で1/πの出力を与える.
3) アイリスフィルタのマスク領域は,円形凸領域およびかまぼこ形領域共に,その領域そのものに一致する.
4) 上記の性質はアイリスフィルタの定義により,原画像のコントラストおよび対象領域の大きさによらない.したがって,低コントラストの領域の検出に非常に有効である.
5) アイリスフィルタの出力は正規化されており,かつ上記4)の性質があるため,円形凸領域のみの検出,あるいは領域の辺縁の検出などに用いるしきい値を理論的に決定できる.特に辺縁では背景に対してステップ状の変化が生ずるため,しきい値の設定が容易になるという利点がある.
以上の性質を実画像により検証した.
日立・青野俊宏,藤井健二郎,初本慎太郎,神谷敬之
ディファレンシャルGPSと光ファイバジャイロ,車輪エンコーダを用いて移動体の位置を計測し,この位置をもと移動体を制御したい.このために十分な精度の位置計測を行うには,@D-GPSの遅れ時間と不連続性,A光ファイバジャイロのドリフト,B車輪1回転あたりの進行距離の変化,C内界計測の基準点とGPSのアンテナの位置のずれによる影響,を考慮する必要がある.本研究では,この4つの要因を考慮に入れたセンサの観測モデルを提案する.このモデルに基づき,各センサデータが与えられたときに位置を推定する方法を開発した.この位置推定方法をインプリメントした自律移動芝刈機を試作し,走行実験を行った.この実験において,GPSのデータに計算機内でノイズを加えることでさまざまな精度のGPSを模擬し,直線区間の平行性,直線区間の間隔の一様性,直線区間の直進性の観点からGPSの精度と自律移動機の性能の関係を調べた.その結果,GPSの融合は平行性の維持に顕著な効果を表わし,さらにGPSの精度が1m程度以内であれば間隔の一様性も向上することがわかった.1mの精度のGPSを用いるなら,0.2m程度のオーバーラップ幅をもたせれば刈残しなく刈れる見通しがたった.
中菱エンジニアリング・都丸隆夫
1入力1出力系について厳密モデルマッチングの代数解を求める方法を報告した.可約な有理多項式を用いてフィードバック要素の次数を上げることによって,厳密モデルマッチングの制御則の代数解を導いた.この厳密モデルマッチングの解法により対象特性や目標特性に対応した調整が容易になる.計算例によってその有効性を示した.
Tottori University・Byeongdeok YEA,Tomoyuki OSAKI, Kazunori SUGAHARA,Ryosuke KONISHI
A new operation method of a semiconductor gas sensor is proposed to improve the gas selectivity and temperaturehumidity characteristics of the sensor. In the method the heater voltage of the sensor is changed periodically, named periodic operation, for a certain time interval after inflammable gases were introduced. The method is examined in discriminating five kinds of inflammable gases with a three-layered BP neural network, and high discrimination rate (average 98%) is achieved.