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[論 文]
[ショート・ペーパー]
東洋大・井内 徹,鶴川屋智之,田添 晃
放射測温法で放射率の変化は測温誤差を生じさせる深刻な問題である.本研究は金属を対象として,その放射輝度の角度依存性を利用して対象物体の放射率を求め,さらに真温度を得る新しい原理に基づく放射測温法に関するものである.
金属の放射率は一般に小さいが,その面法線から測った天頂角θが60°あたりから徐々に増大し,80°すぎでピーク(法線方向の放射率の数倍)に達し,その後急激に減少する.一方,金属表面の酸化により酸化被膜が生成したとき,放射率は一般に大きな値を示すが,同時に角度θの増大とともに単調に減少する.これらの性質はそれぞれ光学定数の変化に対応しており,Maxwellの電磁波方程式によって説明できる現象である.また,これら対象物は放射輝度に関してLambertの法則に従わない放射体であることを示している.そこで,2つの異なる角度,たとえば20°と80°での対象物の分光放射輝度の比をとると,その値は金属酸化による表面状態に強く依存しており,したがって対象物の分光放射率を推定するすぐれた指標となる.
上述した現象に基づいて,筆者らは放射率補正放射測温法を提案した.この方法は鉄鋼やアルミニウムなど金属製造工程でのオンライン温度計測に有望である.
熊本大・鳥越一平,計測科学研・石井 泰
物体と周囲の気体との間に熱伝導によって流れる熱量が,物体の表面積に比例することを利用した,表面積測定の原理を提案する.本論文では,原理の実現形態の1つ,容器の音響インピーダンスを利用する方法について述べる.
気体の満たされた容器に容積変動を加えると,容器内の気体の圧力と温度もまた変動する.このとき,容器の壁面と気体の間に熱流が発生し,容器の音響インピーダンス―容器内の圧力変動(音圧)と容積変動速度(体積速度)との比―には,容器内壁の表面積に比例した抵抗分が現れる.この現象を利用して,音響インピーダンスから容器の内表面積がわかる.あらかじめ内表面積のわかっている容器に物体を入れて内表面積を測定すれば,物体の表面は音響的には容器の内壁と同じだから,中に置かれた物体の表面積も測定することができる.以上の測定法に関して,まず理想的な条件のモデルで容器の音響インピーダンスを計算し,内表面積と音響インピーダンスの関係を示す.つぎに,容器壁面の実際の熱的特性と容器形状を考慮した場合に,表面積測定にどのような影響が出るかを検討する.最後に,原理上考えうる他の影響量を列挙し,その影響についてまとめる.
東大・岡田昌史,京大・杉江俊治
従来よりシステム同定と補償器設計を繰り返すことによって望みの仕様を満たす制御系を設計する同定と補償器の統合化設計が注目されているが,この方法では同定における周波数重みが中心的な役割を果たしている.一方,近年有力な同定の手法として部分空間同定法が提案されており,これは多入出力システムに対しても有効で従来の予測誤差法に変わる方法として注目されている.しかし,この方法には明確な評価関数が存在しないため周波数重みを用いることは困難である.
そこで本論文では,)筆者らが先に提案した「公称モデルを用いた部分空間同定法」に基づいて,周波数重みを用いた部分空間同定法を提案し,)同定と補償器の統合化設計に適した周波数重みの選択法を与える.さらに,数値例によって提案手法の有効性を検証する.
阪大・黒江祐希,藤井隆雄
ILQ設計法は,最適レギュレータの逆問題の結果を応用した最適サーボ系の設計法であり,これまでに,参照入力と制御対象に関しておのおの一般化が行われてきた.
本稿では,従来のILQ設計理論のいくつかの結果を統合して,一般の参照入力のみならず,直達項をもつ非最小位相系をも取り扱える統一的な最適サーボ系の設計法を提案する.この拡張の意義は,現実には少なからず存在する非最小位相系のプラントや直達項をもつプラントに対応できるだけでなく,検出遅れに起因する入出力間むだ時間を,パデ近似する場合に現れる不安定零点,あるいは,離散時間モデルを連続時間モデルに変換する場合や高次モデルの低次元化によって現れる直達項など,モデリングの際にしばしば起こる問題にも対応できる設計法を確立することにある.
本論文では,まずはじめに,制御対象と参照入力を一船化した場合の非干渉化法および最適サーボ系の構造を示す.非干渉化においては,重複不安定零点を考慮していなかった従来法の問題点を,まったく別のアプローチで完全な証明を与えている.つぎに,これらの2つの結果を結合してILQ最適サーボ系の2つの特徴的な構造を明らかにし,その構造に基づいて2種類のILQフィードバックゲインの実用的な設計法を示す.これらのゲインは,1つは“基準最適ゲイン”と呼ばれるもので,制御対象のパラメータと設計パラメータを用いて解析的に記述される.もう1つは“調整パラメータ”と呼ばれるもので,サーボ系のLQ最適性を保証するように決定される.最後に,本設計法の有用性を数値例で確認する.
北陸先端大・望山 洋,示村悦二郎,法政大・小林尚登
超多自由度マニピュレータは,非常に多くの自由度をもつロボットマニピュレータであり,拘束の厳しい環境での作業や,さまざまな大きさ・形状の物体をアーム全体を使って把持するなど,従来のマニピュレータではなしえなかった高度な作業を達成する潜在能力を有する.このような高度な作業を達成するためにはマニピュレータ全体の形状を制御する必要があるとの観点から,著者らは超多自由度マニピュレータの形状制御を提案してきた.形状制御とは,マニピュレータの目標として3次元空間上の曲線を与え,手先およびすべての関節位置をその目標曲線上に到達させる制御である.
本稿では,目標形状がパラメトリック曲線で与えられた場合に問題を拡張し,それに対して,曲線パラメータ推定に基づく形状制御則を提案した.目標がパラメトリック曲線で与えられた場合には,よく知られた作業空間PD制御則では各関節および手先の目標位置に対応する曲線パラメータを得るために,制御を行う前にあらかじめ,ある非線形方程式を数値的に解く必要が生ずる.提案する制御則では,その代わりに,マニピュレータの運動する3次元空間上の幾何的な解釈が可能である非常に簡単な曲線パラメータ推定則を,制御を行いながら計算するだけでよい点が大きな長所である.
三菱電機・今井祥人,高橋悌史,森田 温
近年,CO2レーザ加工機は穴あけや切断だけでなく溶接,表面処理,シート材の高速切断などの分野にも利用されつつあり,生産性向上のためにレーザ加工機の加工速度や加工品質の改善がますます強く求められている.本論文では,レーザ発振器のレーザ出力応答の改善を図るために,従来のフィードバック制御に適応型フィードフォワード制御を付加したレーザ出力制御系を提案した.そして,フィードフォード制御に必要なーザ出力特性の逆システムとして,ガスが受ける放電エネルギに着目し,新しくレーザ出力に関与する有効電力とレーザ発振のしきい値電力をパラメータとするモデルを検討した.このモデルは,合理的で,しかもガス劣化などに伴うレーザ出力特性の変動に対して容易に修正が可能である.提案した制御系ではレーザ出力応答を従来の数百msからオーバーシュートなく10ms以下に高速化できることを確認した.さらに,薄板切断加工では,従来必要であった加工条件切り替え時の待ち時間をなくしても従来の加工品質を維持できることを明らかにし,穴あけ加工では加工速度を約30%改善できることを示した.
慶大・吉田和夫,瀬戸信治,日立・牧野俊昭
高速鉄道におけるパンタグラフでは,架線不整や揚力などの外乱を大きく受けるため,架線とすり板の間の接触力を一定に保つことが難しくなる.したがって,集電装置の接触力を制御する必要がある.碍子より上部では高電位のためにセンサを設置することが現状ではできない.本論文では,まず低周波数領域では,架線不整と揚力の外乱を分離推定することが困難であることを指摘し,これらの外乱の周波数帯域を分離して推定する方法を与える.また,H∞制御理論を用いた2つの接触力制御の方法を示す.1つは,抗力から揚力を推定し,接触力をH∞サーボコントローラを用いて制御する方法である.このコントローラを用いて,1.5Hz以下の架線不整による接触力変動が抑えられ,抗力から揚力を正確に推定すれば,揚力による接触力変動も抑えられることを示す.もう1つの方法は,それぞれの外乱を周波数帯域で分離するH∞レギュレータのコントローラを用いる方法であり,これにより,0.2Hzから6Hzの架線不整による接触力変動を抑え,0.1Hz以下の揚力による接触力変動を抑えることが可能であることを示す.また,高電位部のすり板部に光学的な変位センサが設置できる場合には,揚力,架線不整の外乱を分離推定し,さらに接触力変動が抑えられることを確認する.
東海大・大内茂人,千葉大・劉 康志,富士電機総研・佐藤昭二,東工大・美多 勉
炭鉱の斜坑巻き上げ設備は,作業者を坑底まで運ぶための人車と呼ばれる数両編成の車両,車両の巻き上げ・巻き下げを行うロープ,ロープを巻くための巻ドラムと,ドラムを回転させる電動機により構成される.このような設備においてはロープが長いほど,人車の加速,減速,停止あるいは坑道の傾斜角の変化時等においてロープの伸縮振動が発生するため,ロープ寿命を短くし,さらに人車停止時にはローリングが発生するという問題があった.本論文で紹介する世界最長(約6700m)の斜坑においては,従来,人車ローリングを極力小さく抑えるため,6700mの半分の長さの巻き上げ設備を2本使用して採掘現場まで移動していたが,乗り継ぎ時間等の余分な時間が必要であった.そこで設備を1本化することにより採掘現場までの移動時間を短縮することが計画されたが,人車ローリングをいかに抑制するかが課題となっていた.
本論文では,この斜坑巻き上げ設備に2自由度H∞制御を適用することにより,人車停止時のローリングを抑制することに成功,人車運行速度においても世界最高速の420m/minを達成し,従来,要していた時間を2/3に短縮するという顕著な効果を確認した.
豊橋技科大・広田光一,金子豊久
仮想空間を利用したアプリケーションとして,手術シミュレーションなどの具体的なものが検討されるようになってきた.このような,アプリケーションにおいては力の感覚のフィードバックの必要性が指摘されているが,力のフィードバックには,仮想物体の力学モデルが不可欠である.また,柔らかな臓器などの表現においては,対象が操作に対して現実的な変形をすることが望まれる.このような背景をふまえて,本研究では仮想空間における柔らかい仮想物体の力学的モデルに関する検討が行われる.
筆者らは,有限要素法で確立されている弾性力学に基づくモデルと,質点要素を加速度運動させる一種の差分法を組み合わせることで,物理的定数が反映できかつ実時間での計算が可能な手法が得られることを示す.また,これを従来の方法と比較し,その利点と問題点を明らかにする.さらに,上述のモデルに対する直接的な操作を行うことができる仮想環境を試作し,このモデルが実時間性の高い作業に適用できることを示す.
徳島大・最上義夫,大阪教育大・馬場則夫,三菱電機・松下正樹
学習オートマトンを大規模な問題に適用するときには,出力数の増加につれてその学習回数が飛躍的に増加するという問題点が存在する.この問題点を克服するために,現在のrewardのみならず過去に得たrewardをも学習に利用することによって,学習回数の減少を計ることが考えられるが,この概念に基づいてThathachar and SastryによってEstimator Algorithmが提案された.
本論文では,このEstimator Algorithmを拡張することによって新しい可変階層構造学習アルゴリズムを構築する.そして,ある特性を満たす環境のもとでは,初期構造として部分構造を採用するならば,本学習アルゴリズムによって最良目標パスが選択される確率は,パラメータを適切に選ぶことによっていくらでも1に近くすることができることを理論的に示す.
また,数値シミュレーションによって,本可変階層構造学習アルゴリズムによる学習が,現在時刻の出力とrewardのみに基づいて学習を行うLR-Iタイプの可変階層構造学習アルゴリズムと比較して少ない学習回数で最良目標パスを見出すことを確認する.
東レ・赤塚武昭,奈良先端大・古松伸夫,西谷紘一
新しいプラントの設計や生産計画を立案するときにはシミュレーションを行ってプラントの操業状況を予測し,評価するのが最も実際的な方法である.プラントの中の化学プロセスと制御システムは連立微分方程式と代数方程式で表現される.したがって連続系のシミュレーションはこれらの方程式を解いていけばよいことになる.しかしプラントは通常シーケンス制御で制御されたり,操作員によって運転されるが,これらのことは離散的な事象として表現される.このため連続・離散混合系シミュレーションが必要となる.
本論文では連続プロセスと離散事象の混合系をシミュレーションするために必須な機能を満足する新しく開発したシミュレーションの手法について述べる.ここでの対象のプロセスは連続プロセス,離散事象とシーケンス制御系の3要素によってモデル化する.シーケンス制御系は離散事象と連続プロセスの中間的な性格であるが第3の要素として取り扱う方がシミュレーションのためのモデル化にはより有効である.ここで開発したシミュレーションプログラムはバッチと連続系の混在したプロセス,パイプレス・バッチプラントや合成繊維製造プロセスのような大規模で複雑なシステムのシミュレーションには強力な手段となる.
神戸大・田川聖治,浪越孝宏,羽根田博正
マルチプロセッサシステムによりロボット制御則の並列処理を効率よく行うためには,ロボット制御則の計算を処理単位であるタスクに分割するアルゴリズムと,それらのタスクを各プロセッサに割り付けるスケジューリング・アルゴリズムが必要となる.従来,タスクの決定は,ロボット制御則に対する深い知見に基づき人為的に行われてきた.本論文では,数式処理システムによりスカラの式として導出した任意のロボット制御則から,適切なタスクを機械的に生成するアルゴリズムを提案する.このアルゴリズムの特徴は,代数的な計算手法を用いた数式の変形と分割にある.まず,ロボットの動的モデルに基づく制御則は,一般に長大で重複する演算を多く含むことに着目して,部分的な因数分解などによる数式の簡単化を行い,ロボット制御則から冗長な演算を削除する.つぎに,このロボット制御則を,その計算のもつ本質的な並列性が引き出されるように,いくつかの計算式(タスク)に繰り返し分割する.また,提案したタスクの生成アルゴリズムに基づき,与えられたロボット制御則から,実際のマルチプロセッサシステムにより実行可能な並列計算プログラムを自動的に生成する自動並列化コンパイラを試作する.
京都工芸大・青木 淳,飯間 等,三宮信夫,富士ファコム・小林靖宣
最近,遺伝アルゴリズムを用いて最適生産スケジューリング問題を解く試みが多くみられるようになった.スケジューリング問題では条件設定の変更がしばしば生ずるので,解法として変更に対する柔軟性が要求される.本研究ではそのような課題を検討するために,すべての作業を処理できる多機能機械が1台付加されたジョブショップ問題を考察する.この問題では,各作業について処理機械を選択しなければならないので,通常のジョブショップ問題よりも探索空間が拡大される.本研究では,従来のジョブショップ問題に対する個体表現に染色体を1本追加する方法,および個体表現は従来のままでヒューリスティック操作を導入してデコーディングを行う方法の2種類の方法を提案して,機械選択を含む問題の解決を図る.計算結果によれば,後者の方が有効であることがわかり,本解法は新たな制約条件の追加に対して,デコーディング法のわずかな修正で対応できることが示された.
広島工大・北山正文,広島修道大・高木敬雄,NTT・中島雄三
新聞の折り込み広告や包装紙等のイラストが人間に与える印象は,商品販売上重要な役割を果たしている.これらのイラストが,人間に与える快さを評価しようとするとき,色配列によって生じる1/fゆらぎも重要な要素の1つである.われわれは,このようなイラストを色配列の側面から評価するシステムの基礎的研究として,白い紙の上に円形の4つの色を規則性をもたせて配列した場合の快さを計測するシステムの研究を行った.
このシステムは,4つの色が色の配列によって相互に影響を及ぼし合うポテンシャルエネルギーをもつと考え,そのエネルギーを定義して計算し,その値を用いて模様の快さを計測することにした.今回,提案したシステムを使って,前述のような規則性をもった16種類のサンプルの計測値と,複数の人間の集団に対するアンケート結果を比較し,本システムの妥当性を確認した.
豊田工大・山田陽滋,西垣 勝,黄 声揚,梅谷陽二
柔軟なロボットハンド表面に触覚センサ素子を装着する場合,皮膚本来の柔軟性を損なうことのないように,素子の構造や形状を決定しなければならない.この観点から,本研究では,筆者らがこれまで提案してきた動的触覚センサ素子の構造と形状に再検討を加えた.すなわち,各センサ素子のさらなる小型化を見込むことができ,しかも独立分離配置できるような機能を付加する目的で,スルーホール配線構造と,凹形4角錐斜面に感圧トランスデューサを貼ってさらに4角錐チップをかぶせる形状の素子を開発した.この2点の採用により,小型化された素子からの信号配線を下方に延伸させることができ,柔軟皮膚となるシリコンゴム材等とともに自由な配置で成形できるようになった.また,素子間をまたがる配線もないため,力学的干渉が問題にならないという点で本研究での提案は非常に有用である.本論文では,以上のセンサ素子の製作について示し,また,3軸力党,滑り振動覚の両特性について実験的な評価・検証を行った.その結果,PVDFトランスデューサ検出部で得られる出力が線形特性を示し,最大誤差0.18Nで検出できること,接触外力ベクトルの天頂角の変化が理論と整合して求められ,その検出誤差が最大7.6°であることがそれぞれ判明した.
京都工芸大・三井 修,飯間 等,三宮信夫
本研究では,製品が追い越し可能な2工程フローショップシステムにおける最適スケジュール問題を考察する.両工程はそれぞれ並列に機械が配置されているが,その運転の仕方はまったく異なっている.また,両工程間で追い越し可能のために,前工程だけでなく後工程の製品加工順序も求めなければならない.これらの点を考慮して,この問題を解くための遺伝アルゴリズムの構成法を提案する.構成法として,システムの特徴を取り入れて前工程の加工順序のみを遺伝アルゴリズムで求め,後工程をヒューリスティックスで定める方法と両工程とも遺伝アルゴリズムで探索する方法を取り上げ,両者の比較を行う.その結果,後工程の加工時間が長く,2工程間で待ち時間が大きくなる事例では,ヒューリスティックスによらず両工程とも遺伝アルゴリズムを用いる方法の優越性が示された.
金沢大・谷口唯成,田中一男
ファジィ制御は多くの分野に適用されており,最近では,モデルに基づくファジィ制御も試みられている.一方,線形制御では,状態方程式表現の他にデイスクリプタ表現が知られている.状態方程式では解析的に扱いやすいという利点がある反面,システムの物理的構造が保存されないなどの欠点がある.対して,ディスクリプタ方程式は状態方程式に比べて一般に冗長な変数を含み解の一意性が保証されない,特有のインパルスモードが生じる点で解析的に扱いにくいが,物理的な構造の保存がしやすくパラメータ変動に対して適切な記述ができる,広いクラスでのシステムが表現できるという点で優れている.ファジィ制御系の安定性については多くの研究があるが,ファジィディスクリプタシステムを定義し,その制御系の安定性を考察したものはない.
本論文ではファジィディスクリプタシステムを定義し,行列Eの正則性を仮定せずファジィディスクリプタシステムの安定条件に関する考察を行う.さらに,LMI条件に基づくファジィ制御器の設計法について述べ,導出した安定条件についての考察を行う.