部会の目的
ライフサイエンスにおける学際融合研究では,生体の生理的・病理的情報を,マルチスケールあるいはマルチレベルにわたって,インシリコ,すなわち計算機内で,定量的かつ網羅的に統合する研究が進みつつある.これまでの要素に還元することで生命を理解する研究にとどまらず,システム理論や情報科学を駆使して,システムとしての生命の理解を目指す新しい潮流が生まれたことを示している.
こうした統合生命科学・統合生体工学研究は,統合生理学,統合計算生理学,フィジオーム,システムバイオロジー,システム生理学,あるいはバイオインフォマティクスなどと呼ばれている.これらの新規融合学問分野を推進するために必要なITインフラストラクチャ(生体機能の数理モデルのデータベースやシミュレーションプラットフォーム 等)の構築が,世界各国および地域において精力的に行われている.
統合情報生物工学の発展は,経験と予想に基づく従来の医学に変革をもたらし,国 民の健康と福祉の増進,さらには,知識集約型の新しい医療関連産業の創出につながる.国内外の教育・研究機関との協調・協働を通じて,工学,情報 科学と医・歯・薬学の融合領域研究を推進する統合情報生物工学に関する活動の拠点となることを本部会の設置の目的とする.
カバーする研究分野
統合情報生物工学は,計測,制御,情報,システム工学の理論・手法を中心にして,工学,情報科学と医・歯・薬学の融合領域研究の推進を目的とする.
このため,本部会が担当する研究分野は多岐にわたる.具体的には,ゲノム情報科学,蛋白質計算科学,システムバイオロジー,計算生物学,計算 生理学,計算バイオメカニクス,オミックス医学など,計算機を用いた生体機能の研究を通して,細胞生理工学,細胞バイオメカニクス,組織工学,診 断医工学など融合領域を含めた広範な分野を担当する.
これらの領域を通じて,機能発現に関わるミクロからマクロに至る様々なスケールの生命現象を 統合的に理解し,新しい医工学の発展,関連産業の創出を目指した活動を行う.