論文集抄録
〈Vol.36 No.7 (2000年7月)〉
論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)
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タイトル一覧
[論 文]
[ショート・ペーパー]
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■ マイクロフローセンサを用いた管内一点の流速からの気体の振動流量計測
都立高専・川嶋健嗣東工大・舩木達也,藤田壽憲,香川利春東京ガス・温井一光
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気体の非定常流量計測は工業的に非常に重要である.しかし,その計測は容易でなく,簡易で有効な方法の確立には至っていない.
最近非常に微小なマイクロフローセンサが市販され,気体用質量流量計に応用されている.この流量計は管内壁面近くにマイクロフローセンサを配置し,管内の1点の流速から流量を求める構造である.センサ自体の動特性は大変優れていることから非定常流量計測への応用が期待される.しかし,非定常流量の場合には定常の場合と流速分布が変化することが予想され,非定常流量を精度よく計測できる保証はない.そこで本研究では,レイノルズ数が2000程度までの層流に対して,マイクロフローセンサを用い管内1点での流速から空気の正弦波振動流を定常流量計測の際に求めた換算値を用いて精度よく計測することを試みた.数値解析および実験によって助走区間におけるセンサの取り付け位置が測定精度におよぼす影響を検討した.なお,基準となる流量の発生には著者らが提案した非定常流量発生装置を用い,その流量と比較することで測定精度の検討を行った.実験によって10Hzまでの正弦波振動流が管内1点の流速から定常と同じ換算値で精度よく計測できることがわかった.
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■ 非正方システムに対するインタラクタの直接的かつ数値安定な状態空間設計法
岡山県立大・忻 欣,東工大・南 澤槿,美多 勉
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本論文では非正方システムに対するインタラクタの直接的かつ数値安定な状態空間設計法を提案する.非正方システムのシステムペンシルに対して,Kronecker正準形を利用せず,Dooren(1979)の数値安定なアルゴリズムによって導出された正準形から,そのシステムペンシルの無限固有構造の新たなかつ重要な性質を示し,そこからインタラクタの直接的表現を導出する.ここで,Copelandら(1992)で用いられた煩雑なステップ(たとえば伝達関数領域における無限零点の構造を解析するなど)を利用せず,簡便で直接的かつ数値安定なインタラクタの導出法が構築できる.また,状態空間において,非正方システムとインタラクタによって補償されたシステムとの関係も,補償されたシステムの状態空間実現の可制御性または可安定性とインタラクタの零点との関係も得る.このため,本論文のインタラクタ設計法は非正方システムが無限零点をもつため設計ができない制御問題の解の導出および計算などに有効に利用できるものと考えられる.
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■ むだ時間系に対するIMC構造を用いた閉ループ同定と補償器の繰り返し設計
明治大・阿部直人,市原裕之
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IMC(内部モデル制御)は,化学プラントのように入力にむだ時間を持つシステムに対して有力な制御構造である.近年,集中系に対してIMC
と既約分解表現を利用した閉ループ同定法を交互に繰り返して閉ループ系の性能を高めていくwindsurfer
approach が知られるようになった.この方法は,IMC
の評価関数を小さくするように閉ループ系の同定を行っており,制御と同定の両面から実際のプラントに対するIMC
の評価関数を小さくしている,という意味で優れた設計法である.しかし,この方法を入力むだ時間系に適用しようとすると,多項式環上での既約分解表現の形式での同定モデルを考える要がでてきてしまい,実際の同定は困難である.そこで,本研究では,入力にむだ時間をもつ同定モデルに対して,閉ループの性能を向上させるという観点から,むだ時間を含むモデルを閉ループ系の評価から定める繰り返し設計法について述べる.同様な観点でもむだ時間が既知であったり,むだ時間のみを先に正確に同定しておくことも考えられるが,ここでは,むだ時間を含めて上記のような観点から同定モデルを求めている.IMC
の概略を示した後,設計手順を述べ,求まるモデルの性質をスペクトル解析を使って検討する.最後に,数値例を示す.
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■ 非線形系の標準構造:状態2次表現へのはめ込み可能性条件
阪大・大塚敏之
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さまざまな非線形系の入出力関係を,単純な構造のシステムで表現することの可能性を考察する.具体的には,有理式,多項式,もしくは2次式の構造をもつシステムによる表現を考える.まず,元のシステムと等価な入出力関係をもつシステムを与えるはめ込みと呼ばれる写像を定義する.つぎに,有理式,多項式,2次式それぞれの構造をもつシステムへのはめ込み可能性が等価であることを示す.すなわち,与えられたシステムの入出力関係が,有理式の構造をもつシステムによって表現可能であれば,そのシステムの入出力関係は,たかだか2次の非線形性を有するシステム(状態2次表現と呼ぶことにする)によっても表現可能である.さらに,与えられた非線形系の入出力関係が状態2次表現によって表わせるための必要十分条件と,状態2次表現の構成方法も示す.その条件はきわめて緩やかな条件であり,実用上ほとんどのシステムが状態2次表現をもつと考えられる.状態2次表現を用いると,一般性を失わずにシステムの構造を限定できるので,同定や制御系の解析・設計に有用であると期待される.
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■ 最小二乗評価関数に基づく非構造的な不確かさを考慮したパラメータ推定誤差の上界を用いた入力信号の設計
理研・佐野滋則,名大・尾形和哉,早川義一
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制御系設計を行うにあたり,よいモデルを得ることは重要である.ここで同定実験により,モデリングを行うことを考える.一般に同定結果は,同定モデルや同定手法の選択,観測データの独立性,外乱や無視したモデル化誤差の影響によって大きく左右される.よいノミナルモデルを得るためには,同定対象に適したモデル構造や同定手法を選択することが重要であるのと同様に外乱や無視したモデル化誤差の影響を受けにくく,データの独立性も十分あるような観測データを作成することも重要である.本論文では観測データの作成に着目し,外乱信号や非構造的な不確かさが存在する場合におけるパラメータ推定誤差の上界を明確にする.同定法としてよく用いられている最小二乗法を使用し,「最小二乗評価関数を未知パラメータに関して1階微分したものに推定値を代入すると零である」という必要条件に基づいて,パラメータ推定誤差の上界を表現する.この値は観測データの良し悪しを決める指標として利用できるので,最適な同定入力信号を決定するのに利用できる.本論文では連続時間系の最小二乗法を用いているが,離散時間系の最小二乗法を用いた場合への拡張は容易である.
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■ 多関節ロボットアームの非線形分離型主軸位置同期輪郭制御法
佐賀大・後藤 聡,中村政俊,山中慎司,近畿大・九良修郭
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本研究では,多関節ロボットアームのすべての動作可能領域で高精度輪郭制御を実現するために,以前提案した線形主軸位置同期輪郭制御法を,非線形分離の考え方を用いて多関節ロボットアームへ適用できるように拡張した,非線形分離型主軸位置同期輪郭制御法を提案する.非線形変換の導入で,主軸位置同期を作業座標系ではなく関節座標系において行うことにより,多関節ロボットアームにおいても高精度輪郭制御を実現できる.本手法は,多関節ロボットアームのモデルを非線形スタティクスと線形ダイナミクスに分離してモデル化し,そのモデルに対して制御器を構成するため,非線形制御器となる.本方法を用いることによって,多関節ロボットの動作可能領域全域において,高精度輪郭制御が実現される.本方法はロボットアームへの角度入力信号を目標軌道から修正するのみで,既存の産業用ロボットアームのハード構成を変更することなく高精度輪郭制御が実現されるため,産業界で容易に利用可能である.本方法の有効性をシミュレーションと実機多関節ロボットアームによる実験結果から確認した.
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■ A New Method Based on Determining Error
Surface for Designing Three Layer Neural
Networks
Kyushu Univ.・Baiquan LU, Junichi MURATAand
Kotaro HIRASAWA
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A method is proposed for designing three
layer neural networks that gives relevant
network structures which assure global minimization
of learning errors for small training sets
and small learning errors for big training
sets both irrespective of the initial values.
A condition on network structure is considered
to achieve the above purpose, and a number
of possible structures are provided together
with their learning algorithms. Also, the
generalization abilities of the network structures
are discussed to guide the choice of structures
in practice. All of the proposed structures
for small training sets have zero errors
after learning by a gradient-based algorithm
and thus solve the local minima problem.
The difference between them is in the level
of locality and generalization abilities.
For a big training set,first, the structure
with zero learning errors for part of training
data is obtained, then all of training data
are used to train the network of the given
structure, which improves the generalization
abilities. Numerical examples are provided
that support the present approach.
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■ 不完全な内部モデル表現形式による手先軌道予測の比較検討
長岡技科大・櫻庭尚良,科学技術振興事業団・大須理英子国際電気通信基礎研・中野恵理,長岡技科大・和田安弘科学技術振興事業団/ATR・川人光男
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平面上における腕の多関節2点間到達運動では,手先の軌道は身体に対する位置によっては緩やかに曲がるという特徴がある.この理由としては,(@)「中枢神経系において,計画される軌道自体が曲がっている」という説と,(A)「計画される軌道は直線であるが,実現される軌道が軌道計画以外の理由で曲がる」という説の2つに大別される.われわれはこの後者の説の中でも特に,まだ定量的に検討されていない「中枢神経系による内部モデルが不完全なため,実現された手先軌道が曲がる」という説について検討した.本論文では,不完全な内部モデルを(1)パラメトリックな解析的表現,(2)ニューラルネットワークによる表現,(3)テーブルルックアップ法を用いた表現で表わし,人の計測データと比較した.その結果この仮説では,2関節運動における手先軌道の特徴を,(@)説である「指令トルク変化最小規範」ほどには,よく説明することはできなかった.
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■ Audio Feedback Systemを利用した技術試験衛星Z型の運用に関する研究
電通大・永井康史,通信総研・土屋 茂,飯田尚志,木村真一
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宇宙システムを運用するときに最も重要なのは安全性と信頼性であることを,技術試験衛星Z型(ETS-Z)搭載のロボットアームの運用を通してわれわれは学んできた.ロボットアームによる事故,またそれに起因する障害は,現状では宇宙空間において修理することはほぼ不可能である.それゆえに宇宙ロボットを操作するオペレータには大きな負担がかかっているのが現状である.このような負担がオペレータの判断ミスや操作ミスの原因となる危険性がある.
そこでわれわれはこれらの負担を軽減し宇宙ロボットの操作環境を改善することにより事故を未然に防ぐサポートツールを考え,開発した.それがテレメトリデータの一部を聴覚情報へ変換し,オペレータへ提示するオーディオフィードバックシステムである.本研究ではETS-Z搭載のロボットアームを使用した通信総合研究所のアンテナ結合機構実験にこのオーディオフィードバックシステムを適用した.またその評価はオペレータの視線の動きを記録するEye-Mark-Recorder(EMR)を用いて行った.その結果,オーディオフィードバックシステムは運用時間を短縮する効果,ストレス軽減の効果があることが分かった.また,本研究は宇宙ロボットのオペレータの心理状況を評価する初めてのケースであり.これらの評価結果の重要性を示す.
- [ショート・ペーパー]
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■ 混合分布モデルを用いた脳磁図の解析
生命研・熊谷 徹,宇津木明男
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脳波・脳磁図計測の誘発反応計測においては.不可避的に発生する眼球運動などに由来するアーチファクトを除外することが.計測の精度を高めるうえで重要である.本論文では.この問題に対して.混合因子分析を用いて計測データからアーチファクトを含まず誘発反応を含むデータをクラスタリングする手法を提案し.単純加算平均法.およびk-meansによるクラスタリングと比較して.有効性を示した.提案手法は.背景脳波の存在にかかわらず有効であり.未知のアーチファクトにも対処でき.事象関連反応の解析等において広い応用範囲を持つと考えられる.
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■ 単層パーセプトロンの許容パラメータ領域の計算アルゴリズム
東大・篠原一成,菊地俊一郎,大石泰章,木村英紀
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本論文では.単層パーセプトロンの許容パラメータ領域を.線形計画法を使って効率良く求めるアルゴリズムを提案する.このアルゴリズムは.許容パラメータ集合が有効例題と呼ばれる例題の部分集合によって表わされる点に着目し.例題を1つ増やすごとに有効例題の集合を更新する方法をとる.また.このアルゴリズムにおいては線形計画問題を繰り返し解く必要があるが.その回数は与えられる例題の数に比例する.さらに本論文では.数値実験によってこのアルゴリズムの有効性を実証し.求めた許容パラメータ領域にもとづいて未知の出力を予測する方法についても考察する.
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