SICE 社団法人 計測自動制御学会
Top
新着情報
学会案内
入会案内
部門
支部
学会活動
学科行事
お知らせ
会誌・論文誌・出版物
学会誌
論文集・バックナンバー
英語論文集
産業論文集
学術図書のご案内
残部資料頒布のご案内
リンク
その他
サイトマップ お問い合わせ
 会誌・論文誌・出版物
 論文集抄録
 

論文集抄録

〈Vol.36 No.5 (2000年5月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


■ 最適クラスタによる旋回多目標用の航路型MHT

三菱電機・小菅義夫,辻道信吾

 多目標の同時追尾法であるMHT(Multiple Hypothesis Tracking)では,全空間の現在および過去の観測ベクトルすべてが処理対象である.しかし,これらの一括処理は計算機負荷の面できわめて困難である.このため,MHTでは,クラスタの概念を導入して広域の大きな問題を互いに独立な小さな問題に分割している.ところで,航跡型MHTは,従来のMHTの改良版であり,追尾開始機能を向上させている.ここで,航跡は各サンプリング時刻よりたかだか1つの観測ベクトルを選んだ時系列データである.しかし,航跡型MHTでのクラスタが最適なのかどうかが明らかになっていない.また,旋回する多目標の追尾維持性能を有する航跡型MHTの構成方法が明らかになっていない.本論文では,航跡型MHTのクラスタが,観測ベクトルを共有する異なる航跡は同一クラスタに属するとの条件のもとで最も細かい分割であるとの意味で,最適であることを示した.また,等速直線運動モデルに異なる定数加速度ベクトルを付加した複数の運動モデルを並列で使用する航跡型MHTの構成方法を示した.また,この構成方法の有用性を示すため,旋回多目標追尾維持性能に優れた従来の追尾法と等価となる航跡型MHTの準最適化方法を示した.


■ 超音波流量計の測定部形状と流量特性

計量研/カイジョー・石川博朗,計量研・高本正樹,カイジョー・清水和義,筑波大・文字秀明,松井剛一

 本研究は,超音波流量計の測定部形状を変えて,測定部内部の流動特性と流量特性の関係を明らかにし,実用に供せる低流量用超音波流量計開発の設計指針を得ることを目的として行った.試験測定部として円管測定部および流路幅の異なる矩形管測定部を製作し,流れが十分発達した位置で,測定部内部の流動特性と流量計の流量(出力)特性の関係を詳細に調べた.その結果,流路幅の狭い矩形管測定部の場合には,層流から乱流へ流れが遷移しているにもかかわらず,流量特性の直線性がほぼ一定(±1.5%以内)となった.また,その上流に,曲がり流路を取り付け,流入条件を変えた場合の流量特性を測定した.流れが十分発達した場合との流量特性の差は,1%以下であった.広い流量範囲にわたって流量特性がほぼ一定となり,流量計として,非常に都合の良い測定部であることがわかった.また,超音波パルスの発射幅,経路の広がりを考慮した面音源による数値計算を行い,流量特性がほぼ一定となる物理的な解釈の検証を行った.

 流路幅の狭い矩形管測定部を採用することで,流量特性の直線性が±1.5%以内となり,広い流量範囲にわたって,高い精度で計測できる低流量用超音波流量計の実用開発が可能となった.


■ 組合せはかりにおける組合せに関する確率・統計的現象

姫路工大・亀岡紘一,中谷 誠,乾 徳夫

 複数のはかりで測定した品物のそれぞれの質量値を組合せ,その組合せ質量値が許容範囲内にある品物の組合せを得ることを目的とする計量システムを,組合せはかりとよぶ.本研究では,品物Aを測定するはかりが1台,品物Bを測定するはかりが8台で構成された組合せはかりにおいて,組合せ過程において生じる,ある特異な確率・統計的現象(協力現象)を計算機シミュレーションを援用して考察した.すなわち,本研究対象である部分替え方式で生じる組合せ結果を,仮想的な総替え方式による結果と比較し,また,組合せ過程の連を調べることにより,その現象の性質と発生メカニズムの詳細を明らかにしている.


■ 偏光輝度を利用した常温付近における光沢金属の放射測温法

東洋大・井内 徹,石井啓貴

 本論文は,常温付近の製品段階の光沢ある金属の真温度を計測することを目的とした放射測温法に関するものである.放射測温法は比較的高温物体に対して有力な非接触温度計測法であるため,本論文のような測温領域と対象についての研究例は少ない.

 常温付近で光沢金属を測定対象にした場合,その放射輝度が同じ温度の黒体に比較してはるかに小さく,逆に反射率が高いので,センサに入射する背光放射が相対的に大きくなる.したがって,本研究は放射測温法の本質的な問題点が浮き彫りになる条件下での計測を対象にしたものであり,この条件下の対象の真温度を放射測温で計測することは非常に困難であると見なされていた.

 本論文は,測定角度を80度以上に設定することによってp-偏光放射率が著しく高まることを理論と実験の両面から確認し,これを利用し検出波長の選択と基準黒体光源の設置によって測定対象の真温度と放射率を測定する原理を提案したものである.その結果,研究室レベルでは±3K程度の誤差で真温度を測定することができた.本論文では,本測定原理の限界について言及するとともに,工業プロセスでオンライン実用化するための考察をして将来への展開に備えた.


■ ディスクリプタ形式を利用した動的システムのmixed-μ解析

阪府大・陳  幹,京大・杉江俊治,阪府大・藤中 透,柴田 浩

 構造化特異値μは制御系の安定解析や補償器設計において重要な役割をはたすが,その真値は解析的に求めることができず,一般にはその上界が代用されてきた.また,μは定数行列と不確かさから定義されるものであり,動的システムに対しては多数の周波数点においてこの上界を計算する必要がある.しかし,μの値が周波数に対して不連続に変化するケースや,鋭いピークをもつケースが報告されており,周波数各点での上界は動的システムに対して常に上界を保証するわけではない.この問題に対してLyら,川西ら,筆者らなどが周波数各点での計算を必要としない,状態空間上での厳密な上界を提案しているが,これらには以下の問題点がある.1. Lyらの上界はD-Gスケーリングより保守性が高い.2. 川西らの上界は実数の不確かさに対して二次安定を考えている.3. 筆者らが提案した上界は複素数の不確かさに対して定数スケーリングH∞問題を考えている.二次安定,定数スケーリングH∞問題は時不変の不確かさだけでなく,任意に速い時変の不確かさに対しても安定性を保証する.不確かさが時不変の場合,川西ら,筆者らの手法は保守的になる可能性がある.本論文ではこれらの問題点を改善する.具体的には柔軟なシステム表現能力を有するディスクリプタ表現を利用して,複素数の不確かさ,実数の不確かさをともに時不変と扱い,かつ,D-Gスケーリングよりも保守性が低くなる可能性がある,動的システムに対するmixed-μの上界を提案する.


■ Stability Analysis for a Class of Switched Systems

Wakayama Univ.・Guisheng ZHAI and Kazunori YASUDA

  In this paper, we study stability property for a class of switched systems composed of several subsystems, where each subsystem's vector field is composed of a linear time-invariant part and a nonlinear norm-bounded perturbation part. It is assumed that the linear subsystem matrices are commutative pairwise, and there exists a linear convex stable combination of unstable linear subsystem matrices. First, in the case of no perturbations, we propose a switching law under which the entire switched system is globally exponentially stable. In the switching law, Hurwitz stable subsystems (if exist) are activated arbitrarily while unstable ones are activated in sequence with their duration time periods satisfying a specified ratio. Secondly, under the same switching law, we analyze qualitative property of the switched system in the case where nonlinear norm-bounded perturbations exist. Some numerical examples are given in the paper to demonstrate the results.


■ 状態むだ時間非線形システムの有限極配置

都立大・小口俊樹,渡辺 敦,足利工大・中溝高好

 厳密な線形化や入出力線形化は,非線形制御系の有効な設計手法として確立した.しかし,実システムがむだ時間を有する場合,これらの手法は適用できない.これは,むだ時間システムのもつ無限次元性を,有限次元空間に基づく微分幾何学を用いた制御系設計手法では直接扱うことができないためである.一方,有限極配置法は状態むだ時間線形システムに対する有効な制御系設計の1つであるが,非線形システムには適用できない.

 そこで本論文では,厳密な線形化の手法を拡張して用いることにより,非線形システムの有限極配置法を提案する.まず,状態むだ時間非線形システムに対する有限極配置問題を定式化した後,微分差分方程式に対するLie微分,Lie bracketの拡張を用い,その問題が可解であるための十分条件を静的フィードバックを用いた場合について導出する.さらに,過去の入力を含む動的なフィードバックを用いることにより,条件が緩和されることを示す.本論文で提案した手法は,厳密な線形化の状態むだ時間システムへの拡張であると共に,有限極配置法の非線形システムへの拡張となっている.最後に,提案した手法の有効性を2つの数値例を挙げて示す.


■ 構造の簡単な適応制御系の設計法とそのロバスト性

統数研・宮里義彦

 正実性の概念を用いて安定なモデル規範形適応制御系を構成するときに,相対次数が2次以上の場合の対処法が問題となる.厳密に安定性を保証するのに拡張誤差法,高階調整法,バックステッピング法などが知られているが,そのいずれも相対次数の値に適応系の構造が大きく依存し,また一般に相対次数が大きくなるにつれて適応系の構成は複雑になる.一方,並列補償器を導入して制御目的を修正して一般の相対次数に対処する単純適応制御の考え方もあるが,未知の制御対象に対して適切な並列補償器を求めることは,必ずしも簡単な問題ではない.

 これに対して本稿では両者の中間に位置づけされるようなモデル規範形適応制御系の設計法を提案する.相対次数が大きくなっても構成が複雑にならない簡易設計法であること,構成の条件が2つのパラメータの特定化に帰着されること,非構造的不確定性が存在しない理想的な環境下では制御誤差の大きさがそのうちの1つのパラメータを使って任意に指定できること,および小さな非構造的不確定性が存在するときでも局所的な有界性が保たれる(ロバスト適応制御の特性)ことに,提案する手法の特徴がある.


■ 特性変動をともなう空調システムへのPID制御の適用

小山高専・笠原雅人,山武ビル・松葉匡彦,東京農工大・葛生克明,山崎敬則,東洋熱工業・橋本幸博,山武ビル・神村一幸,小山高専・黒須 茂

 ビル空調において,冷房モードで運転する室内の温度制御を考える.冷たい空気を供給する空調機(操作部)において,冷水バルブの開度が操作部であり,操作量の変化に対する応答を実測すると,プラントの特性が大幅に変化している.この問題に対して,ゲイン・スケジュールや動的フィードフォワード制御などを付加してその変動を抑制した例もあるが,空調プロセスのような複雑な系では,依然としてPIDコントローラの簡便な調整法が必要不可欠となる.

 本論文では,室内の温度制御モデルを1次おくれ+むだ時間系で近似し,プラントの特性値(定常ゲイン,時定数,むだ時間)が変動したときでも,良好な制御性能が保てるようなロバスト性(頑健性)をもったPIDコントローラを設計する.モデル誤差に対して設計したPIDゲインを,従来からの限界感度法による調整値を基準にした修正率を示し,ロバスト性を考慮に入れたPIDコントローラの簡易調整法を提案する.それぞれの制御方式の特性を比較検討し,本論文で提案した方法の有用性を確認する.


■ フーリエ変換を利用した繰返し制御によるブラシレスDCモータのトルク振動抑制制御

三重大・服部知美,石田宗秋,堀 孝正

 ブラシレスDCモータは,構造や保守が簡単,高効率などの理由で,産業用・家電用の可変速制御用モータとして広く用いられている.しかしながら,モータ回転時には,構造上の問題や制御系の不完全性に基づく脈動トルクが発生し,振動・騒音などの原因となり,制御性能への影響も避けられない.

 本論文では,フィードフォワード制御によるブラシレスDCモータの振動抑制制御法と,モータフレームに取り付けた加速度センサにより検出される振動加速度信号から,フーリエ変換および繰返し制御を利用して,フィードフォワード制御用補償信号を生成する方法を提案する.

 加速度センサにより検出される振動加速度信号には,モータトルク振動や,機械系の共振現象によりさまざまな振動成分が混在するため,このような振動加速度信号を直接利用し,すべての周波数成分に対して繰返し制御系を安定に動作させるのは不可能である.そこで,振動加速度信号から脈動トルクに起因する周期的な振動周波数成分のみを抽出し,振動周波数成分ごとに繰返し制御を実行することを提案する.さらに,モータ動作点変動や制御対象のパラメータ変動に応じて,オンラインで補償信号を更新させるため,繰返し制御パラメータ自動選定法を提案する.また,本制御系の有効性を実験結果により示す.


■ 似顔絵における表情作成について

甲南大・宮崎光二,中山弘隆

 人の表情は喜び,悲しみなどの単純な表情だけではなく,これらが入り混ざった複雑な表情も多くある.似顔絵を描くときにはそれらの複雑な表情をも正確に把握し,かつある程度誇張して表現する必要がある.これまでの似顔絵作成方法は単純な表情のみを対象としているものが多い.本論文では表情認識を行い,その認識結果にもとづいて誇張量を決めることによって,表情豊かな似顔絵を作成する方法を提案する.

 具体的にはニューラルネットワークを用いて基本表情を学習させておき,似顔絵として描きたい顔画像の表情認識を行う.そして出力結果の感情の方向に誇張して似顔絵を作成する.表情認識の結果を用いることにより,ひとつの感情だけでなくいくつかの感情が入り混ざった複雑な表情の似顔絵を描くことが可能になり,より表情豊かな似顔絵が作成可能になる.似顔絵例をいくつか作成して本手法の有効性を示した.

[ショート・ペーパー]


■ 情報量最大化アルゴリズムに基づく独立成分分析を用いた音声信号処理

神戸大・小谷 学,通信総研・前川 聡,神戸大・小澤誠一,赤澤堅造

 未知の独立な信号源により混合された信号を統計的に独立な信号に変換する手法に独立成分分析がある.独立成分分析を行うネットワークの学習アルゴリズムに情報量最大化に基づく方法が提案されている.本研究では情報量最大化アルゴリズムに基づく独立成分分析が日本語音声データからどのような物理的特質を抽出するのかについて検討したところ,つぎの結果が得られた.学習後得られたほとんどの基底関数は,時間的にも周波数的にも局所化し,これらはウエーブレット基底と類似している.また,音声の物理的特性と対応する基底関数が学習によって生成されていた.さらに,復元された独立信号も母音や子音などの音素と対応していることが確認された.


■ 複数のレーザ光の同期走査による金属微粒子の配置法

四国工技研・田中芳夫,徳島大・三澤弘明,木内陽介

 微小対象物の非接触な操作技術のうち,光の放射圧を利用する方法は,Ashkinによりはじめて報告されて以来,光ピンセット技術として実用化されている.光ピンセット技術は,原理的に周囲の媒質より低屈折率の微粒子や光を反射,吸収する微粒子を捕捉できなかったが,筆者の1人らにより開発されたレーザ走査型マニピュレーションにより金属や低屈折率微粒子の捕捉に適用できるまでに至っている.本論文では,このレーザ走査型マニピュレーション技術を拡張し,複数のレーザ光を同期走査することで,光を反射する金属微粒子を配置する方法を提案している.1本のレーザ光を2つの偏光ビームに分解し,この2本のビームの同期走査により,金属微粒子を直線および円弧状に配置制御した実験結果を示している.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会