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 論文集抄録
 

論文集抄録

〈Vol.36 No.3 (2000年3月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]
■ 歪ゲージを用いた呼吸及び心拍の無拘束無侵襲自動計測

山口大・田中正吾

 高齢化福祉社会を迎え,健康モニタに関する種々の要望が出されつつある.この一環として,心機能のモニターについては,患者に与える心理的・肉体的負担をやわらげる観点から,これまでの電極を体に貼り付ける方法から,ベッドに電極板をセットしたり浴槽に電極をセットするなどして就寝中あるいは入浴中に心電図データを採取する無拘束心電図計測システムが研究されている.しかしながら,体が電極板から離れたり,あるいは浴槽を離れれば計測できなくなることから,これらはまだ完全に無拘束とは言い難い.

 一方,呼吸機能のモニターに関しては,これまで鼻の先に(息の流れを検知する)サーミスタ型呼吸ピックアップを取り付けたり,あるいは体にワイヤ状の呼吸ピックアップを巻き付けるなどして呼吸数をカウントすることが行われてきた.また,最近では,圧電センサを敷きつめたシートをベッドに敷き,この上に被検者を寝かせ無拘束に呼吸数や体動を計測する研究もされている.しかしながら,前者のピックアップ方式は正常な就寝を妨げるだけでなく,特にワイヤ状のものは巻き方が正しくなければ,計測ができないなどの欠点がある.また,後者の圧電センサ方式は,無拘束計測が可能になるものの,システムが大掛かりになりコストが高くなる欠点がある.

 このようなことから本論文では,低コストで呼吸及び心拍の無拘束無侵襲計測が可能となるよう,ワイヤ状呼吸ピックアップをエアーマットに貼り付け,これを被検者の敷物あるいは枕として用いる呼吸及び心拍の無拘束無侵襲自動計測システムを提案する.そして,呼吸数,心拍数(共に1分間当たりの回数)だけでなく,時間的に変化する呼吸周期や心拍周期も高精度にリアルタイムで計測できることを示した.


■ センサアレイによる複数スポット光位置の高速同時検出法

岡山大・馬場 充,大谷幸三,小西忠孝

 各種自動システムでの計測制御において物体の位置は最も基本的な空間情報であり,スポット光を用いた光学的手段が良く用いられている.このような,位置検出に用いられる光学センサには,(1)高分解能,(2)高速検出,(3)複数点同時検出の3つの特性が同時に要求される場合が多い.しかし,現状用いられているPSD(Position Sensitive Detector)やCCD(Charge Coupled Device)では原理的あるいは実際的な面から上記の(1)〜(3)の条件のすべてを同時に満たすことができないのが実情である.そこで,本研究では複数のセンサ素子がリニア状またはマトリックス状に配置されたセンサアレイによる複数スポット光位置の高速同時検出を可能にする方法を提案した.その基本原理はセンサアレイを用いて,基準電圧の降下による1回の走査ですべての極大値を出力するセンサ素子を検出し,それらの極大値を元に,実際のスポット光位置を2次曲線でアナログ補間して,高分解能でスポット位置を検出することにある.それにより上記3つの条件を満たすことが可能となった.本方式の特徴は,(1)PSDと異なり複数点を検出する場合でも光源などに変調などの操作を加える必要がない,(2)CCDと同様のアレイ型センサでありながら,アナログ補間演算の採用により,位置測定分解能がセンサ素子サイズセンサ素子間隔に制限されない,という点にある.

 本研究では,提案した原理に基づき実際にフォトダイオードアレイを用いたセンサシステムを試作した.試作システムは,1 μm以下の分解能,1点当り約6 μsの検出時間,4点の同時検出という特性を示した.これより,本方式は複数スポット光位置の測定が要求される1次元位置測定システムに適用でき,2次元測定が必要な自動計測システム,レンジファインダ,モーションキャプチャなどの測定への適用が期待でき,その応用範囲は広いものと考える.


■ Constructive Design Approach to Robust H∞ Control of Nonlinear Systems with Gain Bounded Uncertainty

Sophia Univ.・Tielong SHEN, Lihua XIEand Katsutoshi TAMURA

  This paper presents a novel approach to the robust H∞ control problem for uncertian nonlinear systems with stable zero-dynamics. The uncertainty is described by unknown but gain bounded functions of the state variables. A parametrization of a class of robust stabilizing control laws is derived for the uncertain systems, and a solution to the robust H∞ control problem is obtained by constructing a storage function based on the Lyapunov function of robustly stable zero-dynamics.


■ Numerical Solution to a Class of Parameter-Dependent Convex Differential Inqualities

Kobe Univ.・Izumi MASUBUCHI

  In this paper, we propose a numerical solution to a class of parameter-dependent convex differential inequalities(PDCDIs), including parameter-dependent LMIs formulated in analysis and synthesis of control systems based on linear parameter varying system representations. To solve such inequality problems involving infinite inequalities corresponding to the values of the parameter, we provide a procedure to derive from a given PDCDI a finite set of inequalities that can be formed to be solvable whenever the PDCDI is solvable, and from any solution to the derived finite set of inequalities a solution to the PDCDI is obtained. Numerical examples for a parameter-dependent LMI are provided to examine the proposed numerical solution.


■ シンプレクティック幾何学によるハミルトン・ヤコビ方程式の解法,安定化解の存在条件,そして解構造の解析

名大・坂本 登

 ハミルトン・ヤコビ方程式は,非線形制御理論における基本方程式であるが,その解法や,解の構造などについて現在わかっていることはきわめて少ない.本論文では,シンプレクティック幾何学を用いてこれらを明らかにする.

 まず始めに,1階偏微分方程式の理論をハミルトン・ヤコビ方程式に必要な形で概説する.ここで,実際の求解の手順が示される.それは,ある性質を満たすLagrange 多様体を構成することであり,常微分方程式を解くことに帰着される.つぎに,この解の幾何学的理論が,実はリッカチ方程式のよく知られた固有値分解法等の理論の自然な拡張であることを示す.さらに,安定化解が存在するための幾何学的必要十分条件を与える.最後に,解の構造,特に最大解・最小解について論じる.これもまた,リッカチ方程式においてよく知られた性質の拡張である.このために,まず(非線形)Lyapunov 方程式について解析を行う.


■ 一般線形システムの構造的非干渉化条件

金沢工大・古屋栄彦,小林伸明,古河電工・尾山一隆, 足利工大・中溝高好

 非干渉系を構成できるか否かを議論する問題に関して,システムの情報伝達構造から,非干渉化を達成するための条件がLinnemannらによって検討された.これは,システムの構造情報に着目することで,パラメータ値に依存せず,情報伝達というシステムの固有の特性から,非干渉化を達成できるか否かを明らかにするというものである.しかし,情報伝達構造を論じる際には,パラメータ間の独立性が保証されていなければならない.そのため本論文では,システム変換によるパラメータ間の従属性が生じないように,システムの物理構造をそのままの形で表現する中間標準システムを扱うことにより,従来の結果を含む一般的な条件を導出した.また,グラフ表現を用いることで,複雑な計算をすることなく視覚的に非干渉化の可否を判定するための手順を明らかにした.この結果から,制御系設計の初期の段階で,制御方式の選定や非干渉制御のための重要なパラメータを知るのに有効な手段とすることができる.


■ ハールウェーブレットによるインパルス応答の同定精度の向上

九工大・楊 子江,児玉義広

 本論文は,入力信号が出力信号のサンプリング周期の複数倍の時間間隔でゼロ次ホールドされる場合のサンプル値系のインパルス応答の同定について考える.このとき,われわれが同定したい周波数帯域幅に対して,システムの入力信号が相対的に帯域制限信号となるので,インパルス応答の同定問題が悪条件になりやすい.そこで,本論文は,悪条件下でもインパルス応答を精度よく同定できる手法を提案する.まず,ゼロ次ホールド入力システムの離散時間インパルス応答がもとの連続時間系のインパルス応答のpiecewise-constant近似であると指摘し,それとハールスケーリング関数との関連性を明らかにする.つぎに,ハールスケーリング関数およびウェーブレット関数とゼロ次ホールド入力システムの離散時間インパルス応答との関係に基づき,インパルス応答を低周波領域の部分空間から高周波領域の部分空間へ階層的に同定していくことが可能であることを理論的に示す.各周波数領域において,インパルス応答の長さをBICによって決めているので,とくに雑音に敏感な高周波領域では,同定すべきパラメータの個数を大幅に低減できる.しかし,同定できたインパルス応答は,幅の異なるハールスケーリング関数で表現されるので,滑らかさに欠けるという欠点がある.この問題を克服するために,ハールスケーリング関数をその幅に対応するガウス基底関数に置き換え,入出力データからもう1回パラメータを推定することによって,なめらかな連続時間インパルス応答を得る手法も提案する.最後に,提案する手法の有効性をシミュレーションを通して明らかにする.


■ 線形相補性問題に基づく多剛体操り系の接触状態遷移に関する動力学解法

防衛大・八島真人,山口秀谷,平野祐治

 本論文は,3次元多剛体操り系の接触状態遷移の動力学問題の解法について提案したものである.多指ハンドによる対象物の操りでは,接触点における対象物と多指ハンドの相互作用が,接触点での運動(滑り,転がり,離脱)を発生させる.したがって,対象物の操りを計画する場合,多指ハンドの運動に対して接触状態がどのように遷移するかを推定することは大変重要となってくる.まず,接触点法線方向の相対加速度と接触力の間には相補性条件が成り立つことに着目し,多剛体操り系の動力学モデルを線形相補性問題に帰着する解法を示した.線形相補性問題でよく知られている定理を用いて,多剛体操り系が静定となるための条件と接触状態遷移の解が導出できるための条件を明らかにした.さらに包み込み把握による操り問題を例に取り上げ解法の有効性を検証するとともに,接触状態遷移と動摩擦係数,関節駆動トルクとの関係を考察した.


■ 可能性測度に基づく確信度によるセンサ選択と研削加工システムへの適用

名大・小林 太,新井史人,福田敏男,小野田 誠,堀田裕三

 近年,製造の分野において,システムに多くのセンサを実装し,システムや環境の様々な状態を計測している.しかし,システムが複雑になるにつれて,計測すべき状態は複雑で多数となっており,その計測法もまた複雑になっている.そこで,多くのセンサ情報から必要となる状態量を推論するセンサフュージョン手法が注目されており,さらに状況に応じて柔軟にセンサ情報を選択する手法が求められている.そこで,本論文においてセンサ情報の評価を行い,その評価によりセンサの選択を行う新たなセンサフュージョンシステムを提案する.本手法では,センサの測定範囲,精度といった特性を考慮し,ファジィ測度の一種である可能性測度によりセンサ情報の評価を行い,その評価によりプロダクションシステムによりセンサ情報の選択を行う.また,その選択されたセンサ情報の融合をリカレントニューラルネットワークを用いて行う.これは,センサフュージョンにおいては時系列データを取り扱うことが多く,リカレントニューラルネットワークにより効果的に融合が行えるためである.この提案するセンサ融合手法の有用性を示すため,本手法を研削加工システムに適用し,対象物1個を加工したときの研削加工粗さを推論する.


■ 遺伝的アルゴリズムを用いたモジュール型動的ニューラルネットの構造決定法

神戸大・小澤誠一,龍谷大・堤 一義,大阪教育大・馬場則夫

 本論文では,ダイナミックスをもつモジュール型ニューラルネットに対し,そのネットワーク構造を決定するアルゴリズムを提案する.モジュール型ニューラルネットとして,ホップフィールドネットが相互結合したクロス結合ホップフィールドネット(CCHN)を採用する.CCHNの構造は,モジュール数,各モジュールのユニット数,モジュール間結合の形態などの構造パラメータによって表わされる.本アプローチでは,これら構造パラメータを個体の表現型として扱い,その遺伝子型に対して遺伝的アルゴリズムを適用することで適当なモジュール構造を探索する.最も単純な直接コーディング法では,ユニット数Nに対して遺伝子長がO(N2)となるのに対し,提案したコーディング法ではO(N)の遺伝子長でよい.提案した構造決定法の有効性を検証するため,CCHNを連想記憶に適用する.本アプローチでは,単に連想記憶が高いときだけでなく,より簡単な構造をもつときに適用度が大きくなるような適応度関数を定義する.シミュレーション実験の結果,提案したアルゴリズムによって構造が単純でかつ高性能なCCHNが見出されたことを示す.


■ 固有受容感覚を用いた中点指示による空間知覚

北大・片野康生,高橋 誠

 優れたヒューマンインタフェースを構築する上で,人間の特徴を抽出し,行動を予測,分析するヒューマンモデルを作成することは重要な意味を持つ.本研究は心理物理実験に基づき,人間の視覚と固有受容感覚における空間知覚に関するヒューマンモデルを構築する上での基礎的知見を得ることを目的としている.われわれで視覚的な入力情報に対する空間知覚特性を検証する実験(VV,VP実験)を行ってきた.その結果,デスクトップ空間という限定された領域ではアフィン変換を用いた線形モデルで近似可能で,視覚から固有受容感覚への情報伝達の際に約1.2倍に拡大する傾向を持つことを示した.そこで本研究では,今までと情報の流れが逆となる固有受容感覚的な入力情報に対する空間知覚特性を検証するための2つの実験(PP,PV実験)を行った.その結果,PP,PV実験では,VV,VP実験と異なりアフィン変換では近似できず,約0.9倍に縮小する傾向を示す結果となった.このことから固有受容感覚的な知覚空間では座標系の線形性が失われ,その知覚空間の特性は入力された感覚に大きく依存することがわかった.また,PP,PV実験における座標系表現を検証するために変動係数で比較を行った結果,関節座標系を用いることによって再現

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