論文集抄録
〈Vol.36 No.2 (2000年2月)〉
論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)
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タイトル一覧
[論 文]
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■ 三相誘導電動機の計測用不平衡入力を用いたセンサレス回転速度推定とPWMシステムへの応用
筑波大・岡内祥司,青島伸治
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誘導電動機を用いた制御システムにおいて,その設置範囲の拡大やコストの低減を意図して,センサレス速度推定が行われている.ここに用いられている直交二軸理論は電動機解析に有力で広く用いられているが,相応の知識と計算量を要するものである.対して本論は,基本的な三相交流理論に立脚した簡単な速度推定を目標としたものである.
具体的には,三相誘導機に不平衡電圧を印加し,その応答を計測することにより回転速度を推定しようとするものである.速度推定のために新たな入力を加えており,いわば電動機を速度計測器に見立てているものとも言える.この速度推定はPWM信号で運転されているシステムによく適合する.PWMインバータに運転用と速度推定用の出力を同時に発生させることにより,誘導機を本来の使用目的である電動機と速度計測器の両方に利用することが可能となる.
本論ではその基本原理の説明と実験結果,ならびにPWMシステムへの応用検証について記述した.また本方法からみて都合のよい電動機特性についても検討を加えてある.
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■ 圧縮性流体の圧力変化を利用した液体非定常流量計測
東医歯大・稲岡秀検,東工大・清水優史,東医歯大・石田明允
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プロセス計測の分野においては,より高精度に非定常流量を計測することが望まれている.現在までに,電磁流量計や管路の動特性を利用する手法などの様々な計測方法が提案されている.しかし電磁流量計は流れに電気伝導性を要求し,その他の計測法では,脈動流のように流量や流れの方向が周期的に大きく変化するような流れを高精度に計測することは困難である.そのため流体の物性値や流れの状態に依存せず,高精度に非定常流量を計測する手法の開発が強く望まれている.プロセス計測の現場では,緩衝装置としての空気室がパイプラインに設置され非定常流が平滑化されることが多い.このとき流量の非定常成分は空気室の体積変化により吸収される.よってこの体積変化を精度良く推定できれば,流れの非定常成分を推定できる.本研究では管路に取り付けた空気室の体積変化から管路内の非定常流量を計測する新しい手法を提案する.本手法では空気室内の状態方程式と一次元近似された熱伝導方程式を同時に数値的に解くことで推定された空気室体積の時間微分から非定常流量を求める.この手法は管路内流れになんら仮定を置かないので,流れの状態や流体の物性値に影響されない.本研究では計測手法の妥当性および計測精度を実験により検討する.
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■ 光ファイバ触針の走査による布の認識
東工大・田中正行,曹 麗,大山真司,小林 彬
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布の触感覚情報を抽出するために,人が布をこする動作を模倣した接触動作模擬装置を考案し製作した.この装置は,光ファイバを接触子として,布をなぞったときの接触子先端の微小振動(変位)の時系列データを接触情報として光学的に検出するものである.データの採取に先立ち,微小振動の分散をもとに実験条件の検討を行った.その結果,光ファイバ触針長が長く,走査速度が速いほど顕著に振動が測定できることがわかった.
解析にあたり,同時確率密度関数の概念に基づくSPDF(Simultaneous
Probability Density Function)分析法を提案した.これは,得られた時系列データについて注目する時刻および一定時間後のデータの組を考え,それらの同時確率分布に基づいて分析する手法であり,微小振動波形の局所的な特徴を抽出することを狙いとしている.
絹・綿・毛の3種類の布に対する実験的検討を示しSPDF分析法の有効性を確かめると共に,3種類の布の明確な識別を可能とする1つの特徴空間の構成を与えた.
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■ 陸上競技用スタート動作の検出方式
明星大・横倉三郎
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不正スタート発見装置は,競技者のスタート反応時間を計測し不正スタート(フライングスタート)を判断する装置である.
従来の競技者のスタート動作検出方式は,競技者がスタートする時にスターティング・ブロックを蹴る力がしきい値を越えた時点をスタート開始点と判断するレベル検出方式であり,競技者の蹴る力の大きさや速度による計測誤差や計測できないなどの問題が多かった.
本論文で紹介する新しいスタート動作検出方式は,スターティング・ブロックから得られる入力信号と,入力信号を移動平均演算し平滑化することでノイズを除去しさらに遅延処理した信号の差から,競技者の力の変化量を抽出する方式である.この検出方式を用いると競技者各人のスタート動作を正確に把握することができる.
このスタート動作検出方式によるスタート反応時間の値や判定は,従来の方式に比べ格段に改善され審判員の判定とほぼ同じ結果となった.このスタート動作検出方式を用いた不正スタート発見装置は,実用化に至り世界選手権など多くの競技会で使用されている.
本論文は,新型のスタート動作検出方式を詳述する.
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■ ディスクリプタシステムに対するH∞制御系設計のための等式制約を含まないLMI条件
琉球大・上里英輔,阪大・池田雅夫,Lee Tick
WOON
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ディスクリプタシステムのH∞制御問題では,これまで,等式制約や等号付き行列不等式を用いた可解条件が提案されている.しかし,そのような行列不等式を数値計算によって解く場合,計算誤差により条件の成立,不成立の厳密な判定が困難になる恐れがある.本論文では,ディスクリプタシステムに対するH∞制御系設計のための完全な線形行列不等式(LMI)条件を与えている.すなわち,まず,システムのH∞ノルム条件を等式制約を含まないLMIの解の存在性により与えている.そして,その条件をもとに変数変換型の手法により,等式制約や等号を含まないLMIによるH∞制御問題の可解条件を導いている.また,その可解条件のLMIの解をパラメータとして,ディスクリプタ形式のH∞コントローラのパラメトリゼーションを与えている.
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■ サンプル値H∞制御理論を用いたハードディスクのフォロイング制御
日立・熱海武憲,千葉大・平田光男,アイダエンジニアリング・村瀬明代,千葉大・野波健蔵
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ハードディスクのヘッド位置決め制御系では,制御量である磁気ヘッドの位置情報は,データ記録領域を割く形で磁気ディスク上に直接書き込まれており,全容量の10%以上もの領域を占めている.従って,磁気ディスクに埋め込む位置情報の数を極力減らすこと,つまり制御性能を低下させることなく,サンプリング周期を長くとることができれば,ハードディスクのデータ記録領域を増やすことが可能となる.また,A/D,D/A変換器や制御演算装置にかかるコストを低く抑えることができる.よって,これらを可能とする新しい制御系設計法の確立が望まれている.
そこで本研究では,サンプリング周期が長い場合に特に有効であるサンプル値H∞制御理論をハードディスクのヘッド位置決め制御の1つであるフォロイング制御系に対して適用し,制御性能やロバスト安定性を損う事なく,可能な限り長いサンプリング周期を持つ制御系の構築を目指すこととする.その際,ヘッドの位置情報ははじめから離散信号として得られるためアンチエリアシングフィルタを導入することができない点や,重力などの定常外乱が存在することから1形のサーボ系を構成しなければならない点も考慮に入れる.そして,実験により,実機に搭載されているアナログ制御や連続時間H∞設計に基づく設計手法との比較を行い,本手法の有効性を示す.
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■ コンデンサモータの空隙長及び巻線分布と空間高調波磁束
群馬大・横塚 勉,石川赴夫,松下精工・西村茂樹
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コンデンサモータを小形化,高効率化するには,ギャップの長さGLを小さくするのが有効であるが,GLを小さくすると空間高調波起磁力が重要な問題となる.標準的試験機についてGLとトルクの損失TQの関係を求め,GLが小さい範囲でGLが小さくなるとTQが大きくなることを示す.
固定子スロット,及び固定子巻線等の空間高調波起磁力によるN次の高調波磁束密度BNを斜めスロットを考慮して,簡単に計算する方法を求める.そして,BNからTQを計算する方法を求め,固定子スロットによるトルクの損失TQS,巻線分布によるトルクの損失TQW等の速度特性を示す.
スロットによるBNの次数Nは,固定子1極のスロット数をNS,bを整数とすると,N=2b
NS±1となること,巻線分布によるBNは3次成分が大きいこと等を示す.GL,NS,巻線分布等の設計条件とBNの関係を明らかにする.
BNの大きさが一定とした場合のNとTQの関係を求め,その影響を考慮して等価実効磁束密度BEを提案し,4種類の巻線について,BEを比較する.
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■ オペロン機構の導入によるクラシファイアチェインの効率的な生成
慶應大・嶋田総太郎,安西祐一郎
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複雑な問題領域に対してクラシファイアシステムを適用するためには,チェインなどの複雑な構造をクラシファイアシステム内部に構築する必要がある.しかしながら,従来のクラシファイアシステムは,これを効果的に実現するための機構が欠如していたために,比較的単純な問題領域に対してしか適用されてこなかった.本論文では,クラシファイアチェインの生成を促進する機構を組み込んだクラシファイアシステムOCSを提案する.OCSではまず,チェインの生成に不可欠な条件であるクラシファイアの多様性を維持するために,ニッチ形成メカニズムを組み込んでいる.さらに,成長中のチェインを保護すると同時にその成長を促進させるための機構として,オペロン機構を導入する.オペロンは,チェインを構成するクラシファイア群を1つの単位として結合したものである.われわれは,その基本性能を確かめるために,OCSをWoods問題および論理式問題に適用した.その結果,OCSは非マルコフ環境において従来のクラシファイアシステムの性能を大幅に改善することが確認された.また,ニッチ形成メカニズムのみを組み込んだクラシファイアシステムが予想外に悪い性能を示し,従来のニッチ形成メカニズムがチェイン生成時に及ぼす悪影響について考察を行った.
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■ Iterated Multiple Lake Gameにおける社会的ジレンマに対するプレイヤー群の挙動に関する考察
北大・山下倫央,鈴木恵二,大内 東
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本論文は自己の利得の最大化を目的とするプレイヤー間の相互作用を通じていかにして社会的ジレンマを克服するかという課題に取り組んだものである.
一般的な社会的ジレンマの解消方法はフリーライダーの出現の防止であり,本論文では構造変革アプローチに基づきフリーライダーに対して罰則をかける制度を導入する.
しかし,このアプローチの欠点として,罰則導入,運営のためのコストを負担する必要になることが挙げられる.本論文ではこの欠点を補うため運営役のプレイヤーを導入することを提案し運営役のプレイヤーも罰金により得られる収入の最大化,つまり個人の利益の最大化を目的とする.また運営役のプレイヤーの目的が自己の利益の最大化であると利益獲得のための極端な制度の運営が生じる可能性があるが運営役のプレイヤーを複数置き,競合させることにより防止する.
提案アプローチの有効性を検証するために,社会的ジレンマゲームの1つである「The
Lake」を拡張したIterated Multiple Lake Gameに対してエージェントベースシミュレーションを行い,社会的ジレンマが回避されることを確認した.
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■ ファジィモデル追従制御
電通大・谷口唯成,田中一男
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本論文は非線形追従制御系の安定化を取り上げ,これを実現する1つの方法としてファジィモデル追従制御手法を提案する.このファジィモデル追従制御は非線形制御対象と非線形参照モデルをT-Sファジィモデルで置き換え,対象ファジィモデルの状態を参照ファジィモデルの状態に追従させる制御手法である.本論文では,ファジィモデル追従制御系の設計手法の1つとして誤差システムの線形化を利用する手法を提案し,その基本的な概念を述べる.特に,従来の並列分散的補償(PDC)を拡張した加法型PDCを用いてファジィモデル追従制御系の設計を行う.さらに,線形行列不等式(LMI)を用いることで簡単かつ効果的な設計を実現する.しかし,誤差システムを線形化する条件は一般に保守的になる恐れがある.この保守性を回避するための手法を提案し,簡単な例題を通してその有効性を検討する.本論文で提案するファジィモデル追従制御はレギュレータ設計問題やサーボ系設計問題を特殊な場合として含むことも示す.
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■ 反復して表示情報を読みとる場合の情報獲得量
交通安全研・森田和元,鈴木央一
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自動車用ナビゲーション装置などの車室内表示装置を運転者が見る場合,短時間の注視を繰り返して表示情報を読みとる場合と,連続して1回のみ読みとる場合とが考えられる.著者らは,室内実験を行うことにより,両者の読みとり方法の違いによる情報獲得量の差を調べた.地名群を表示情報として観測者に見させ,表示終了後に観測者が回答することのできた地名数により検討を行った.表示時間に関する実験条件は,大別して
(1) 連続して表示する場合
(2) 0.5秒間の表示を1秒間隔で繰り返す場合
(3) 0.5秒間の表示を2秒間隔で繰り返す場合
(4) 1秒間の表示を1秒間隔で繰り返す場合
(5) 1秒間の表示を2秒間隔で繰り返す場合
の5種類とした.その結果,観測者が実際に表示を見ている時間が同じであったとしても,繰り返して表示情報を読みとる場合のほうが,連続して1回のみ読みとる場合よりも情報獲得量が多いことが明らかとなった.すなわち,観測者が表示を見ていない時間についても,短期記憶貯蔵において情報の保持と処理が行われており,情報を獲得するための有効な時間となっていると推測される.
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■ 簡略化予測器を用いた制御系のロバスト安定解析
広島大・木村純荘,佐伯正美,島根大・西村行雄
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入力むだ時間系のロバスト安定化問題に対して有限時間区間の積分演算による制御が求められている.これは状態予測値をフィードバックする制御である.筆者らは,有限時間区間の積分演算を回避し,必要とするメモリー量を少なくした簡略化予測器を提案しているが,これをロバスト安定化制御に適用したときの特性が明らかでない.本論文では,ロバスト安定化予測制御において有限時間区間の積分演算による予測器にかわり簡略化予測器を適用した制御系のロバスト安定解析を行い,ロバスト安定であることを証明する.これにより,不確かさが存在するような制御対象に対しても簡略化予測器を適用できる.
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■ 統一固定子モデルに立脚した突極形同期モータの並列形鉄損項をもつ新数学モデルの構築
神奈川大・新中新二
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本論文は,突極形同期モータの並列形鉄損項を有する数学モデルとして,整合性のとれた3基本式を備え,かつ固定子鎖交磁束を陽なる形でモデル化した一般座標系上の新数学モデルを,交流モータ共通の固定子モデルに立脚構築し,提案するものである.
一般に,ACサーボモータの高精度,高効率な駆動制御は,ベクトル制御法によることになる.この制御系設計のための合理的な数学モデルとしては,モータ内の瞬時の電磁的ダイナミックスを表現した微分方程式,トルク発生の瞬時関係を表現したトルク発生式,エネルギー伝達・消耗・蓄積の瞬時関係を表現したエネルギー伝達式の3基本式が整合性のとれた形で必要である.
モータ数学モデルを,オリエンテーションすべき磁束選定の自由度,オリエンテーション法の選択自由度,オリエンテーションずれの解析などを含む多彩なベクトル制御法の構築,ひいては高精度,高効率な駆動制御法の構築に資す得るものにするには,これは一般座標系上で構築せねばならない.
本論文は,突極形同期モータを対象に,上記の要請に応え得る数学モデルを新規に,かつ交流モータ共通の固定子モデルに立脚して統一性のある形で構築提案するものである.
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