委員会活動
活動内容
第1回委員会 2023年7月14日(金)
講演:「社会ー生態システムを考える」日浦勉先生(東京大学)【概要】
第2回委員会 2023年9月14日(木)
講演:「経済実験・マルチエージェントシミュレーションを用いたサービス工学の展開」西野成昭先生(東京大学大学)【概要】
第3回委員会:2023年10月27日(金)
講演:「人新世におけるTrans-disciplinary 研究の役割 ー 気候変動にどう立ち向かうか ー」安岡善文先生(東京大学)【概要】
第4回委員会:2023年12月18日(月)
話題提供:「生体情報計測可能なスマートテキスタイル」児山祥平委員(信州大学)
講演:「未来志向の生体情報工学 ー マルチモーダル生体信号の活用とデータ駆動型研究」湯田恵美先生(東北大学)【概要】
第5回委員会:2024年4月19日(金)
話題提供:「製造現場におけるヒューマンデジタルツインの実現に向けて」渡邉るりこ委員(早稲田大学)
講演:「カーボンニュートラル実現に向けたエネルギーシステム研究とその含意」大槻貴司先生(横浜国立大学)【概要】
第6回委員会 2024年6月20日(木)
話題提供:「高齢者見守り向け転倒検出機能開発事例紹介」村上拓也様/堀淳二委員(三菱電機)
講演:「錯覚と身体性がもたらす身体意識の境界線-身体意識の拡張技術の可能性-」前田太郎先生(大阪大学)【概要】
第7回委員会 2024年9月26日(木)
話題提供:「触覚感性を持つ人工指の開発/アシストスーツ用空気圧エネルギー回生システム」吉満俊拓委員(神奈川工科大学)
講演:「データで社会を計測する」鳥海不二夫先生(東京大学)【概要】
第8回委員会 2024年10月29(金)
講演:「地球システムモデル、地球ディジタルツインの現状と人新世とのかかわり」河宮未知生先生(海洋研究開発機構∕東北大学)【概要】
講演会詳細
第1回委員会 2023年7月14日(金)
講演:「社会ー生態システムを考える」
日浦勉先生(東京大学)
第2回委員会 2023年9月14日(木)
「経済実験・マルチエージェントシミュレーションを用いたサービス工学の展開」
西野成昭先生(東京大学大学院工学系研究科・技術経営戦略学専攻)
概要:サービス工学は設計工学を源流として発展してきた研究分野であり、近年ではセンサー等を用いて実フィールドでサービスを観測・分析し、新しい仕組みを現場へ適用するなど、様々な取り組みが行われている。それに対して我々は、サービス工学の新しいアプローチとして、経済実験とマルチエージェントシミュレーションの方法を用いて、既存のサービスの仕組みを解明したり、新たなサービスの設計などの問題に取り組んでいる。本発表では、その方法論の概説とともに、現在取り組んでいる研究事例を紹介する。
第3回委員会 2023年10月27日(金)
「人新世におけるTrans-disciplinary 研究の役割 ー 気候変動にどう立ち向かうか ー」
(東京大学名誉教授・横幹連合会長)
概要:「人間の影響が、大気、海洋、および陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がない」、昨年発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次報告書(IPCC AR6WG-1)では気候変動における人間活動による影響をこう表現しました。昨今の世界
各地における異常な気象現象や、それに伴う気候災害をみると、その表現に頷かざるを得ません。IPCC の発足(1988年)から、気候変動における人間の影響をここまで踏み込んで表現するのに30年以上を要したことになります。人間社会を含む地球システムの複雑さにより、その挙動の評価や予測が難しかったからに他なりません。持続可能な地球システムを実現するためには、この複雑なシステムをより精緻に記述・評価・予測し、気候変動に向けた評価・適応策、緩和策の立案に繋げ、早急に社会を変革することが
求められます。
近年、その一つのアプローチとして、科学技術を社会に繋ぎ、社会と協働することにより課題解決の道筋をさぐるTrans-disciplinary 研究を進める試みが始められました。まだ、歴史は浅く(20年弱)、その研究の方法論も定まってはいません。 本話題提供では、Trans-disciplinary研究の考え方を概説し、SATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力)やFuture Earthなどの具体的な研究プログラムにおける方法論や成果の現状を紹介します。
第4回委員会 2023年12月18日(月)
「未来志向の生体情報工学 ー マルチモーダル生体信号の活用とデータ駆動型研究」
湯田恵美先生(東北大学大学院情報科学研究科)
概要:本講演では、生体信号処理と生体ビッグデータ解析の研究に関する重要なテーマを取り上げる。近年、長時間のヒトのモニタリングやリアルタイム処理が可能となっており、生体信号解析によるヒトの状態推定技術は、米国や中国を中心に遠隔診療やAI診断に応用されている。そこで、現代社会において急速に進展する医工学技術のなかで、マルチモーダルな生体信号処理の重要性とその応用について解説する。
心拍情報や生体加速度を含む生体信号処理技術の進歩は、健康科学領域に新たな展望をもたらす。近年普及しているウェアラブルセンサは、体表温や発話量など人体が発するさまざまな情報を得ることができる。これらの信号を適切に捉えて解析することは、疾患の早期スクリーニングや治療の最適化など、ヒトの健康に関わる重要な課題解決につながる。
また、近年データ駆動型研究が注目されており、累積した大量のデータを活用して社会的価値を生み出していくことが求められている。そこで、Allostatic State Mapping by Ambulatory ECG Repository(ALLSTARプロジェクト)を中心とした心電図ビッグデータ研究を中心として、データ駆動型研究における成果と発展可能性、生体情報を取り扱う際の課題についても解説する。
個別の生体特性に基づく健康管理や異常検知手法の開発を行うためには、システム科学の視点からヒトを把握・分析し、学際的で異領域をつなぐ事のできる可能性を見出すことが重要である。未来社会の技術革新に対する展望について議論したい。
第5回委員会 2024年4月19日(金)
「カーボンニュートラル実現に向けたエネルギーシステム研究とその含意」
大槻貴司先生(横浜国立大学)
概要:産業革命以降、地球の平均気温は約1.09℃上昇したとされる。人為的な温室効果ガス排出の大部分は化石燃料のエネルギー利用に起因するため、気候変動問題の解決にはエネルギーシステムの抜本的な転換が必要である。他方で、再生可能エネルギーや原子力、CO2回収貯留などの低炭素技術には、資源賦存量や経済性、法制度、社会的受容性などの様々な課題があり、将来のエネルギーのあり方を検討することは容易ではない。そのような複雑なシステムを整合的・定量的に捉え、実現可能な道筋を検討するためのツールとして、数理計画法に基づく「エネルギーシステムモデル」の開発が進められている。本講演では、エネルギーシステム研究やその含意について紹介する。
第6回委員会 2024年6月20日(木)
「錯覚と身体性がもたらす身体意識の境界線-身体意識の拡張技術の可能性-」
前田太郎先生(大阪大学)
概要:科学技術はヒトの可能性を拡大する方向に発展してきた。道具は自身の身体の機能を拡張するために作られ、感覚や運動の範囲を拡げていく。近年、バーチャルリアリティや能動装具を用いることで新たに身体を追加・拡張するような身体拡張技術が注目されている。この際に、身体を拡張するだけではなくこれを認識する身体意識もまた拡張されることになる。この講演では感覚提示技術を用いた身体意識の誘導事例を紹介し、身体意識の成り立ちとこれを誘導する感覚提示技術の設計論について述べる。
第7回委員会 2024年9月26日(木)
「データで社会を計測する」
鳥海不二夫先生(東京大学)
概要:高度情報化社会を迎え、我々の社会はデータに溢れている。「計測なくして制御なし」と言われているが、社会システムを構築制御するうえでも、データに基づく計測が必要不可欠であろう。本講演では、ビッグデータから社会を計測する手法について紹介する。
第8回委員会 2024年10月29日(火)
「地球システムモデル、地球ディジタルツインの現状と人新世とのかかわり」
河宮未知生先生(海洋研究開発機構/東北大学)
概要:気候科学の分野で、「地球システムモデル」(ESM)、「地球デジタルツイン」(地球DT)と称する地球環境シミュレーションモデルの開発・応用が盛んになってきている。ESMは、気候を形成する物理過程の方程式を離散化して構築する気候モデルに、炭素を始めとする気候形成に重要な物質の循環に関わる生物・化学過程を、経験的に定式化して組み込んだもので、人為起源の気候変動予測や古気候の研究に用いられる。地球DTは、ごく最近になって取り沙汰されるようになった術語で定義もあいまいであるが、高解像度を追求した気候モデルで天気予報や気候変動予測を行い、生成AIも絡めて社会に情報発信していこうとする活動のベースとなるシミュレーションモデルを指すことが多い。人類が地球環境に有意な影響を与えるようになった時代区分を指す人新世の概念との関わりに関しては、ESMについては地質学的タイムスケールの気候変動と現在の気候変動との比較を通した人間の存在そのものの地球史への位置づけ、地球DTについては集中豪雨や台風といった極端現象の変化予測は早期警戒システムの構築を通した「新しい常態」への対応、といった側面を挙げることができる。ESMと地球DTは、人新世における地球環境変化の理解と対策立案を推進する基盤として、車の両輪をなしていくことになろう。