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[論 文]
[ショート・ペーパー]
[開発・技術ノート]
計量研・小林正信,佐久間史洋,小野 晃
本論文では広波長帯の放射温度計の温度目盛を,従来よりも正確に表現するための新しい特性式について報告する.黒体校正データのみを用いて温度目盛を設定する従来の特性式に対し,新しい特性式では入手可能な分光応答度に関する情報の利用により,温度目盛りの正確さが向上することを示す.
ゲルマニウムの検出器の分光応答度データ,およびゲルマニウム放射温度計のバンドパスフィルタの分光透過率のデータを用いた放射温度計の数値モデルを例示し,従来の特性式との比較によって新しい特性式を評価した.
ゲルマニウム検出器とバンドパスフィルタを組み合わせた特性を広波長帯の放射温度計の数値モデルに,同検出器のみの特性を広波長帯の放射温度計の数値モデルに用いた.新しい特性式の正確さは,狭波長帯の場合は従来の特性式で最良のものと同等であった.広波長帯の場合は錫点,アルミニウム点,銅点の3点で計算した温度目盛の,数値モデルからの偏差が±1℃以内の範囲は,従来の特性式で最長のものが140〜1140℃,新しい特性式で分光応答度の形に正規分布形を用いた場合が140〜1500℃であった.新しい特性式は補外域において特に優れていたほか,補間域での偏差も最小であった.
九工大・村上周太,西南女学院・井ノ口美佐子,日立電子サービス・北川龍治
本論文では,直接法によるファジィ制御器そのものの記述関数を直接求めて,記述関数法を完全な形でファジィ制御器に適用し,安定性解析を行っている.ファジィ制御器は2入力1出力で,入力変数は3つのファジィ集合に分割され,出力変数は3つのシングルトンをもつ.まず,簡略推論法を用いることにより,ファジィ制御器の出力を解析的に求めた.これによって,直接法によるファジィ制御器の記述関数を解析的に求めることができ,さらに,記述関数の振幅軌跡と制御対象のナイキスト軌跡の位置関係を用いて,ファジィ制御系の漸近安定の条件式を解析的に導いた.この漸近安定条件を用いて,制御対象がむだ時間のある1次遅れの系と2次遅れの系の場合を例として,ループゲインの安定限界の式を導出した.
記述関数法を用いたループゲインの安定限界の値はシミュレーションにおいて求めたループゲインの値とほとんど同じであり,記述関数法はここで用いた直接法によるファジィ制御系の安定性の判別として有効であることがわかった.また,記述関数法をファジィ制御系に適用して得られたループゲインの安定限界の式は,PI制御器にリミッタをつけた系のループゲインの安定限界の式と同じであることもわかった.
Meiji Univ・Junbo SONG, Kazunori KADOWAKIand Yoshihisa ISHIDA
A pracical control scheme of model reference robust control (MRRC) for pneumatic servo system is introduced in this paper. As an important driving element, the pneumatic cylinders are widely used in industrial applications. It is well known the control problem of pneumatic cylinder becomes complex in varying load, travel and environment temperature, because it contains unknown parameters, possible nonlinear uncertainties and additive bound disturbances. The control scheme is essential to achieve the robust stability and performance for time-varying and nonliner systems. The controller requires only measured input and output signals of system, rather than the full state feedback. In order to suit for practical application the neural control parameters estimator was led into controller. Compared with MRAC it makes the controller become simple.
出光興産・谷 哲次,歌代 誠大阪府立大・馬野元秀,金沢大・田中一男
石油精製業で使用される装置では原料切替えや運転モード変更などの過渡状態があり,そのときの系の特性は極端に変化し,かつ時間遅れが大きいため自動化が困難である.このような過渡状態では,装置の運転を熟練運転員の勘や経験に依存することが多い.
そこで本研究では,熟練運転員の操作方法に基づいて自動化を行う.
制御の型としては,系の長期的な動向から平均的な操作を算出する基準器と,系の現状から将来を予測して基準器の出力を適切に修正する補正器と,さらに基準器や補正器の目標値を変更する目標設定器からなる.
1つの方法として,基準器にPID制御,補正器にファジィ推論,さらに目標設定器にファジィ推論を使用した制御方法を提案する.
そして,この制御方法をナスサ脱硫装置の塔頂温度制御に適用し,原料切替えや製品規格変更などの過渡状態においても良好な制御性能を発揮することを実プラントにて実証する.
京都工芸大・大住 晃,泉川岳哉
非線形システムの代表例である倒立振子システムの振子の振上げと安定化に対する従来の多くの研究では,振上げ過程では強い非線形性が現れ,またいったん倒立してしまうと倒立点近傍では線形近似モデルで十分に安定化が可能であることから,振上げと安定化に対してはそれぞれ別々の設計方法により制御則が導き出されてきた.本論文では,システムモデル中に現れる非線形項を微分幾可学的アプローチと一種の等価線形化の考え方を導入することにより振上げと安定化を実現する新しい制御方法を確立した.まず,倒立振子の(4次元)非線形モデルに対して微分幾可学的アプローチに基づき,座標変換と入力変換により線形化を試みるがその相対次数が2であることから厳密な線形化は行えない.そこで,変換されたシステムが非線形出力印加型システムの形になることに留意して,線形化されえない部分に対して一種の等価線形化の考え方により線形近似システムを得た.この線形近似システムに対してLQ問題を解くことにより振上げ―安定化を行う制御則を構築した.さらに数値シミュレーションと実験によりその有効性を確認している.
近畿大・太田光雄,広島女子大・生田 顯
一般に,環境問題など実システムにおける観測データは,標準的計測規則に沿ったり,またディジタル計算機の援用に基づくデータ処理との整合性を考慮して,時間軸上での標本化はもちろん,振幅レベル軸においてもレベル量子化の形態で摂取される場合がきわめて多くなってきた.本論文では,非ガウス型任意不規則ゆらぎの実変動に対し,正変量インテンシティ・スケールでの実計測におけるインテンシティ加算原理による加法性の外来雑音(暗騒音)とシステム・パラメータの内部的変動要因(一般には乗法的ゲイン変動としてとらえうる)の両者を考慮した非線形の混合モデル型離散レベル観測機構に着目し,観測データのディジタル化と高次の階層処理に適した新たな一状態推定アルゴリズムを導出している.さらに,室内音響における実際の状態推定問題に本手法を適用して,その有効性の一端を実験的にも検証している.
機械技研・神徳徹雄,三菱電機・高宗浩一機械技研・小森谷 清,谷江和雄
ロボットの動作教示や仮想現実感システムなどにおいて,力の生成機能を有するディスプレイに対するニーズが高まりつつある.力ディスプレイの研究では,まずモデル世界の物体を人が操作した際に発生する他の物体との干渉を検知し,かつ,そのときに操作物体に作用する力やモーメントを迅速に推定する干渉問題を解決することがひとつの重要な課題となる.
われわれは,既報において多面体障害物が存在するモデル空間の中での点物体の干渉問題を報告してきた.本論文では,本手法を一般的な操作物体に拡張するひとつの方法として,操作物体の自由度に対応するパラメータが張るコンフィギュレーション空間を導入する手法を提案する.このコンフィギュレーション空間でモデル記述により,干渉問題は点と拘束(曲)面との問題におき換えられる.提案アルゴリズムを実験的に検証するため,平面内での並進2,回転1自由度運動に関して具体的な計算アルゴリズムを述べ,それをダイレクトドライブマスタアームに実装した操作実験を通して提案手法の有効性を確認した.
東大・岡谷貴之,出口光一郎
内視鏡の画像から対象物体の立体形状を復元する手法を示す.提案方法は形状復元の手がかりとして,内視鏡の先端から照射される光による陰影を利用する.画像から陰影を手がかりとして立体形状を復元する問題(shape-from-shading)は,長い研究の歴史があり,数多くの方法が提案されている.しかしそれらの方法は,光源が対象物体から遠く離れたところにあることを仮定した方法であるため,この場合には応用できなかった.内視鏡はその先端部から光を照射するため,光源が物体表面に近い位置にくる.この場合には,画像の陰影は,物体表面の面の匂配だけでなく,物体表面の点と光源との距離にも依存してしまう.この困難な問題をうまく処理するため,内視鏡の光学系が,投影中心に理想的な点光源があるとみなせることを利用する.そして,この光源からの距離が一定となるような物体表面の上の曲線に注目する.この曲線について成り立つ幾何学的性質を利用して,立体形状復元の問題をこの曲線の発展方程式を解く問題に帰着する.画像の濃淡を用いてこの曲線を発展させることで,対象物体の立体形状が復元される.数値計算には,等高面の方法と呼ばれる方法を利用し,安定に解を得られるようにした.提案方法の有効性を示すため,医療用内視鏡による実際の人間の胃壁の画像を用いて実験を行ったので,その結果を示す.
京大・荒木光彦
マッチング条件を満たさない非線形の不確定性を含むシステムに対する状態フィードバック則を導き,与えられた上界以下のノルムを持つ任意の不確定性に対して閉ループ系が大域漸近安定になることを証明した.このフィードバック則は,成・柴田の提案を修正したものである.ちなみに,成・柴田の論文の証明は不十分で,厳密性を欠くところがあった.
神戸大・小谷 学,宮武 隆,大阪工大・松本治彌
本報告では,ホップフィールド・ネットワークを用いて,冗長なマニピュレータの先端の速度形状を滑らかなベル型にするような運動軌道計画を目的としている.適用したネットワークは,仮想ネットワークと計画ネットワークから構成される.これらのネットワークにはホップフィールド・ネットワークを用いているが,計画ネットワークではホップフィールド・ネットワークの入力キャパシタンスを時間的に可変としている.軌道を計画する手順はつぎのとおりである.仮想ネットワークにおいてマニピュレータの軌道を仮想的に計画し,得られた軌道計画に関する情報に基づいて,計画ネットワークによりマニピュレータの先端の速度形状をベル型にするような軌道を計画する.シミュレーション実験として,提案するネットワークを平面3関節マニピュレータに適用したところ,先端の速度形状がベル型になることが示された.
姫路工大・亀岡絋一,藤倉ゴム工業・松本紀生,姫路工大・小松源一
ゴルフシャフトのねじり特性を表わすパラメータとしては現在,一定のねじりトルクを与えたときのねじり角(「トルク」と呼ばれる)が用いられている.しかし,この値は,有限要素解析には役立たない.必要なのは,ねじり剛性分布である.
本研究は,ゴルフシャルトのねじり剛性分布測定を念頭において試作した装置に関するものである.シャフトの軸を鉛直方向と平行にして,その上部を固定し,下方の任意位置に円盤を取り付ける.そして,その円盤を適当な間隔ごとに移動するごとにねじり振動数を測定し,その値から各間隔ごとのねじり剛性を計算してねじり剛性分布を求める測定装置を試作している.論文では,その装置の基本構造,測定原理,精度評価について述べている.