SICE 社団法人 計測自動制御学会
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 会告:2004年度計測自動制御学会学会賞の贈呈

 2004年度計測自動制御学会学会賞贈呈のため,舩橋誠壽副会長を委員長としする学会賞選考委員会において慎重に選考の結果,下記論文賞9件,技術賞4件,著述賞2件,新製品開発賞2件,教育貢献賞1件が推薦され,理事会の決定を経て8月5日,SICE Annual Conference 2004 会場(北海道工業大学)において,贈呈式を行い,受賞者に賞状・メダル・賞金が贈呈された.

 
[論文賞]9件
(論文賞・蓮沼賞)
○マイクログラビティ環境下における質量測定法−被測定物が剛体でない場合に関する検討− (計測自動制御学会論文集Vol.38,No.4で発表)
産業技術総合研究所 藤井雄作君
(論文賞)
○自動的なスケールの選択を伴うボックス・カウンティング法による2値画像のフラクタル次元の高精度な推定 (計測自動制御学会論文集Vol.39,No.11で発表)
宮城工業高等専門学校 佐藤喜一君
○はめ込みによるモデル構造簡略化の代数的特徴づけ (計測自動制御学会論文集Vol.39,No.12で発表)
大阪大学 大塚敏之君
○ハミルトン・ヤコビ不等式に基づく非線形システムの幾何構造 (計測自動制御学会論文集Vol.38,No.2で発表)
東京大学 山本直樹君,津村幸治君
○グラフ上の反応拡散方程式による交通信号網の自律分散型制御 (計測自動制御学会論文集Vol.39,No.1で発表)
 東京大学 杉 正夫君,故 湯浅秀男君,新井民夫君
○進化的recruitment戦略を用いた強化学習による自律移動ロボットの制御器設計 (計測自動制御学会論文集Vol.39,No.9で発表)
東京工業大学 近藤敏之君,伊藤宏司君
○共創出型介助ロボット“Walk-Mate”の歩行障害への適用 (計測自動制御学会論文集Vol.39,No.1で発表)
東京工業大学 高梨豪也君,三宅美博君
○ツール伝達関数の安定性に基づく人間−機械協調作業系の制御系に関する一考察 (計測自動制御学会論文集Vol.39,No.10で発表)
 東海大学 稲葉 毅君,東京工業大学 松尾芳樹君
○ヒステリシスの大きな空気圧式調節弁に使用する電子式ポジショナの高性能化 (計測自動制御学会産業論文集Vol.2,No.5で発表)
早稲田大学 涌井徹也君,橋詰 匠君横河電機(株) 西島剛志君,石井 実君
[技術賞]4件 
(技術賞)
○車両制御(VSC)用半導体式G一体ヨーレートセンサ (SAE 2004 World Congressで発表)
トヨタ自動車(株) 中谷英一君,長尾 勝君,渡辺 光君,橋本雅人君,白井浩司君,青山浩二君
○超高感度リアルタイムPCBモニタリング技術の開発 (Environmental Science & Technology,ほかで発表)
三菱重工業(株) 出口祥啓君,野田松平君,福田憲弘君,土橋晋作君,窪田隆博君,篠田克彦君,田中隆一郎君,猪澤祥規君,吉良雅治君,国立環境研究所 森田昌敏君
(技術賞・武田賞)
○H∞制御およびLMI解法によるATロックアップクラッチ・スリップシステムのロバスト設計 (計測自動制御学会制御部門大会,ほかで発表)
(株)豊田中央研究所 日比野良一君,大澤正敬君,トヨタ自動車(株) 河野克己君,伊藤 寛君
(技術賞・友田賞)
○高速対象追跡ビジョンチップの開発 (IEEE trans Electron Devices,ほかで発表)
 東京大学 石川正俊君,小室 孝君,広島大学 石井 抱君,日本プレシジョン・サーキッツ(株) 吉田 淳君,稲田喜昭君,小宮泰宏君
[著述賞]2件
○制御工学の考え方 (2002年・講談社ブルーバックス)
東京大学 木村英紀君
○工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック (2003年・日本工業出版)
株式会社山武 調節弁ハンドブック編纂委員会
[新製品開発賞]2件
○ネットワークベース生産ソリューション「STARDOM」
横河電機株式会社
○マイクロフローセンサと質量流量計シリーズ
株式会社山武
[教育貢献賞]1件
○エンジニア教育への多大の貢献に対して
筑波大学 青島伸治君



受賞者略歴および受賞論文概要
ふじい ゆうさく
藤 井 雄 作 君
(正会員)
 1991年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了,同年川崎製鉄(株)入社,95年工業技術院計量研究所入所,2002年群馬大学工学部助教授.慣性質量と光波干渉計を利用した力学量の高精度高機能測定法の研究に従事.日本応用物理学会,IEEE,ASME,SEMなどの会員.
受賞論文「マイクログラビティ環境下における質量測定法−被測定物が剛体でない場合に関する検討−」
 建設が始まっている国際宇宙ステーションなどに代表されるマイクログラビティ環境下においては,国際単位系(SI)の5つの基本単位(m,kg,s,A,K)の中で質量(kg)だけが,地上で通常使われている測定器では測定ができない.これまで提案,研究されてきた方法と比較して,本論文が提案しているSpace Balanceは,運動量保存則を用いた質量測定器であり,非測定物の重心速度の測定に光波干渉計をうまく用いることにより,高精度化を達成している.特に,重要な要素技術として,被測定物体が減衰振動する場合における衝突後の重心速度の推定方法を提案し,その妥当性を実験的に検証した.これにより,被測定物体が減衰振動する場合であっても,基本原理に基づいた質量測定が0.1%程度の不確かさで可能であることを示した.また,液体,粉,動物など,より一般的な物体を測定対象とした場合における,開発の指針について議論した.

さとう よしかず
佐 藤 喜 一 君
(正会員)
 1997年東北大学大学院情報科学研究科博士課程前期2年の課程修了.同年より宮城工業高等専門学校電気工学科助手.現在,東北大学大学院教育情報学教育部博士課程後期3年の課程に在学中.画像処理・教育測定の研究に従事.日本テスト学会,日本行動計量学会などの会員.
受賞論文「自動的なスケールの選択を伴うボックス・カウンティング法による2値画像のフラクタル次元の高精度な推定」
 画像のフラクタル次元はボックス・カウンティング法(box-counting method, BCM)により推定されることが多い.しかし,BCMによるフラクタル次元の推定値は不正確になりがちである.そこで,本論文では,その原因を考察し,フラクタル図形が埋め込まれた2値画像のフラクタル次元を精度よく推定できるように,BCMの改良版であるBuczkowskiらの手法をさらに改良した.提案手法では,対象画像において利用可能なすべてのスケールを用いてボックス・カウンティングしたあと,推定精度を低下させる原因となるスケールを自動的に取り除く.理論的考察から,提案手法の計算量はBuczkowskiらの手法と同じかそれより少ないことがわかった.また,典型的なフラクタル図形とユークリッド体に対し,提案手法と従来法との推定精度を比較した.その結果,提案手法はBCMやBuczkowskiらの手法より推定精度が高いことがわかった.

おおつか としゆき
大 塚 敏 之 君
(正会員)
 1990年東京都立科学技術大学工学部航空宇宙システム工学科卒業,95年同大学大学院工学研究科博士課程修了.同年筑波大学構造工学系講師.99年大阪大学大学院工学研究科講師,2003年同助教授,現在に至る.この間96〜97年カリフォルニア工科大学客員研究員.主として航空宇宙工学および機械工学に応用をもつ制御理論の研究に従事.博士(工学).日本航空宇宙学会,日本機械学会,システム制御情報学会,AIAA,IEEEの会員.
受賞論文「はめ込みによるモデル構造簡略化の代数的特徴づけ」
 本論文は,幅広いクラスの非線形系を対象として,入出力関係を厳密に保ちながら有理式や多項式という単純なモデル構造に変換する問題を解決している.線形系と異なり非線形系の状態空間表現はさまざまな関数を含みうるが,はめ込みと呼ばれる高次元空間への写像を用いることで,入出力関係が等しい単純な構造の状態空間表現へ変換できる場合がある.本論文ははめ込みの定義と性質を整理し,有理式や多項式さらには2次までの多項式からなる状態空間表現へのはめ込みが存在するための必要十分条件を明らかにしている.この条件はシステムの観測空間が実数体上有限生成な体に含まれるか否かのみで与えられ,実用上ほとんどの非線形系が満足する緩い条件である.しかも,体の生成元からはめ込みは容易に得られる.さらに,有用な十分条件として,システムの状態空間表現が微分代数関数のみを含めば有理式や多項式,2次式の状態空間表現へはめ込み可能であることも示している.

やまもと なおき
山 本 直 樹 君
(正会員)
 1999年東京大学工学部計数工学科卒業,2004年同大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了.2003年4月より日本学術振興会特別研究員.現在カリフォルニア工科大学客員研究員.量子制御理論,システム解析の研究に従事.博士(情報理工学).
つむら こうじ
津 村 幸 治 君
(正会員)
 1992年東京大学大学院計数工学専攻博士課程修了,同年千葉大学情報工学科助手,96年同講師,98年東京大学大学院計数工学専攻講師,2000年同助教授,現在同大学大学院情報理工学系研究科助教授.制御理論,システム解析の研究に従事(博士(工学)).システム制御情報学会,IEEEなどの会員.
受賞論文「ハミルトン・ヤコビ不等式に基づく非線形システムの幾何構造」
 非線形H∞制御問題は,ハミルトン・ヤコビ(HJ)偏微分不等式の求解問題として解かれる.本論文では,HJ不等式に基づいた,2種類の集合の幾何構造を解析した.第1の解析は,HJ不等式の可解領域を拡大し,数値的に得ることを容易とした「準可解領域」についてである.定義から,その補集合はHJ不等式の非可解領域となる.領域は弧状連結であり,その大きさは制御性能ゲインについて単調である.また,補集合が空集合となる必要十分条件を求めた.第2の解析は,非線形システムの集合についてである.この集合は,ある多様体の部分多様体を構成し,その曲率はHJ不等式の解の等高線の曲率と対応付けられる.まず,SISO線形システムの部分多様体が平坦であることを示した.そのためシステムの非線形性が,部分多様体の曲率として現れる.そして,2次の場合に具体的に計量を構成し,例題に対して曲率を計算した.

すぎ まさお
杉   正 夫 君
(正会員)
 1998年東京大学工学部計数工学科卒業,2000年同大学大学院工学系研究科修士課程修了(精密機械工学専攻),03年同研究科博士課程修了(精密機械工学専攻),博士(工学).03年より東京大学大学院情報理工学系研究科特任助手.自律分散システム,生産システムの研究に従事.IEEE,日本ロボット学会,精密工学会の会員.
ゆあさ ひでお
故 湯 浅 秀 男 君
(正会員)
 1986年名古屋大学大学院博士前期課程修了(情報工学専攻).同年名古屋大学工学部情報工学科助手,92年同電子機械工学科講師.93年より理化学研究所バイオ・ミメティックコントロール研究センターフロンティア研究員を併任(非常勤).99年東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻助教授.2002年9月逝去.システム理論,ロボット工学の研究に従事.博士(工学).
あらい たみお
新 井 民 夫 君
(正会員)
 1970年東京大学工学部精密機械工学科卒業,77年同博士課程修了,工学博士.79年英国エディンバラ大学人工知能学科研究員.87年東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻教授.2000年人工物工学研究センター長.産業用ロボット言語の標準化活動を推進.自動組立,クレーンとロボットとの協調制御,距離画像,移動ロボットの群制御,自律分散システム,ホロニック生産システム,サービス工学などの研究に従事.RoboCup Legged Robot League参加.精密工学会,IEEE,CIRP,日本ロボット学会などの会員.
受賞論文「グラフ上の反応拡散方程式による交通信号網の自律分散型制御」
 自動車台数増加による交通事情の悪化を受けて,道路を効率的に利用するための交通信号制御が研究されている.従来法ではオフライン計画によって得た解を集中管理によって実現するが,拡張性や交通流の動的変化への対応等に問題がある.一方で自律分散的手法による信号網制御が試みられているが,信号網の制御において重要なオフセット(隣接信号との青信号開始時刻の差)の扱いが不十分である.本研究は信号網を自律分散システムとして扱い,各要素が局所情報をもとに行動することで全体として適切な信号パターンを形成することを目指している.具体的には信号網を非線形結合振動子系でモデル化し,グラフ上の反応拡散方程式でダイナミクスを規定することにより,オフセットおよびスプリット(信号が各方向に割り当てる青時間の比)を交通状況に応じて動的に制御する.これにより定常的な交通状況に対して高い安定性を実現するとともに,動的な交通状況に対して柔軟に対応することを目指す.シミュレーションを行い,提案手法の有効性を確認した.

こんどう としゆき
近 藤 敏 之 君
(正会員)
 1999年名古屋大学大学院工学研究科計算理工学専攻博士課程後期課程修了.博士(工学).同年,カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員(日本学術振興会特別研究員).2000年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻助手,現在に至る.複雑適応システムのロボット工学への適用に関する研究に従事.本会システム・情報部門学術講演会2002優秀論文賞受賞.日本ロボット学会,IEEEなどの会員.
いとう こうじ
伊 藤 宏 司 君
(正会員)
 1969年名古屋大学大学院工学研究科修士課程応用物理学専攻修了.70年同大学工学部自動制御研究施設助手.79年広島大学工学部第2類(電気系)助教授,92年豊橋技術科学大学情報工学系教授を経て,96年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻教授,現在に至る.運動・行動の学習と制御,自律ロボット,人間共存ロボット,義肢制御に関する研究に従事.日本ロボット学会,電子情報通信学会,IEEEなどの会員.工学博士.
受賞論文「進化的recruitment戦略を用いた強化学習による自律移動ロボットの制御器設計」
 強化学習のように行動政策が不確定な状態から探索的学習を行う場合,可能な限り状態空間を低次元化して学習初期の探索効率を向上させることが不可欠である.しかしながら,初期の状態分割は不確実で偏りのあるデータに基づいて行われるため学習の進展とともに適宜修正される必要がある.本研究では未知環境を能動的かつ探索的に移動するロボットが,遂次的に得られる入出力データと外部評価(報酬)に基づいて環境の内部状態表現の更新と行動学習を同時並行に行う強化学習手法を提案する.ここではNGnetを用いてロボットの状態評価器・制御器を関数近似し,その結合荷重の更新にはTD学習を用いた.また,状態の内部表現(RBFの形状・位置ならびに個数)の仮説的生成―評価ループを実装するために,分類子システムの発展戦略を参考にした進化的recruitment戦略を提案した.本手法では各RBFを自律個体とみなし,その評価値を参照頻度,TD誤差への寄与率から算出する.評価に基づいて局所的に個体比較を行い,RBFの追加,選択・淘汰ならびに中心・分散パラメタの突然変異操作を繰り返し行うことで学習器の構造最適化を試みた.提案手法を移動ロボットのPeg押し課題に適用し,シミュレーションならびに実機による実験の結果,その有効性を確認したので報告する.

たかなし ひでや
高 梨 豪 也
(正会員)
 2000年東京工業大学工学部機械知能システム学科卒業.同年東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻に入学.2002年同研究科修士課程修了.同年キヤノン(株)入社.現在に至る.
みやけ よしひろ
三 宅 美 博 君
(正会員)
 1989年東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了(薬学博士).金沢工業大学情報工学科助手,講師,助教授を経て,96年より東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻助教授.99年よりミュンヘン大学客員教授併任.主として生命的自律性の研究に従事,生物物理学会,IEEEなどの会員.
受賞論文「共創出型介助ロボット“Walk-Mate”の歩行障害への適用」
 高齢者の歩行介助では,介護士と被介護者の歩行運動が相互に適応する中で,安定かつ柔軟な歩行運動がリアルタイムに創出される.われわれは,このような人間−人間系に特徴的である共創出過程としての歩行介助を,人間−機械系において実現するために共創出型介助ロボットWalk-Mateの開発を進めてきた.本研究は,それを実際の高齢歩行障害に適用し有効性評価を行うことを目標としている.特に,高齢者特有の片側性障害に対する,歩行支援効果を検証する.第1段階として,健常者に身体的拘束を施した擬似歩行障害における介助効果を調べた.その結果,歩行運動における平衡性の向上(歩容の非対称性の緩和)と,円滑性の向上(歩行周期ゆらぎの減少)の両面から評価できることが明らかになった.第2段階として,実際に高齢障害者へ適用した結果,歩行運動における平衡性と円滑性が共に改善される傾向が確認された.このことはWalk-Mateと高齢障害者との協調歩行によって歩行運動が安定化され,介助効果が得られたことを意味している.これらの結果から,われわれの提案する共創出過程としての歩行介助の有効性が示された.

いなば たけし
稲 葉   毅 君
(正会員)
 1991年東京工業大学大学院理工学研究科制御工学専攻修士課程修了.92年同大学工学部助手.2003年より東海大学電子情報学部コンピュータ応用工学科講師.博士(工学).人間−機械制御系,メカトロニクスシステムの制御に関する教育・研究に従事.IEEE,電気学会,日本人間工学会会員.
まつお よしき
松 尾 芳 樹 君
(正会員)
 1984年東京工業大学大学大学院博士課程制御工学専攻修了(工学博士).同年同大学工学部助手,90年同助教授,現在同大学大学院理工学研究科機械制御システム専攻助教授.メカトロニクスシステムの制御,群ロボットシステム,および人間−機械制御系に関する教育・研究に従事.IEEE,電気学会,日本ロボット学会,日本人間工学会,日本シミュレーション学会会員.
受賞論文「ツール伝達関数の安定性に基づく人間−機械協調作業系の制御系に関する一考察」
 本研究では制御された動力機械を人間が物理的に直接操作し,対象物に搬送や加工などを行うシステム:人間−機械協調作業系の,操作性を重視した制御系設計について検討した.まず,制御機械が対象から離れている場合の操作力から操作点の運動までの伝達関数:ツール伝達関数の安定性を前提とした人間−機械協調作業系の制御系の一般構造とその設計自由度が2であることを導き,制御系の主要伝達関数間の関連性などを明らかにした.さらに,人間−機械協調作業系における操作者の動特性自己整形特性と操作性との関連性を実験で確認した.そして,この自己整形の性質を利用して望ましい操作伝達関数を明示的に指定し,それとは独立に,対象の特性変化を操作者に伝える感度:対象変化伝達関数を作業内容に応じて適切に調整する手法を提案した.最後に,対象の特性変化境界面のならい作業を想定した例題に本手法を適用し,望ましい操作伝達関数と対象特性変化を認識しやすくするような対象変化伝達関数とを同時に実現することで,ならい作業が行いやすくなることを実験で確認した.以上から,本手法が操作性を考慮した人間−機械協調作業系の制御系設計において有効であることを検証した.

わくい てつや
涌 井 徹 也 君
(正会員)
 2001年早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).1999年日本学術振興会特別研究員,早稲田大学理工学総合研究センター助手を経て,2003年同客員講師,現在に至る.エネルギーシステムの最適運用に向けた計測制御システム,フィールド機器の開発・研究に従事.日本機械学会,電気学会などの会員.
はしづめ たくみ
橋 詰   匠 君
(正会員)
 1979年早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了.工学博士.76年同大学理工学研究所助手,同専任講師,同助教授を経て,87年同教授,現在同大学理工学総合研究センター教授.エネルギー・動力システムに関する研究等に従事.日本機械学会,電気学会,日本フルードパワーシステム学会などの会員.
にしじま たかし
西 島 剛 志
(正会員)
 1981年東京都立大学理学部物理学科卒業.同年(株)北辰電機製作所(現 横河電機(株))入社.これまでに,バルブポジショナ,電磁流量計,温度伝送器など,フィールド機器の開発に従事.現在に至る.
いしい みのる
石 井   実
(正会員)
 1999年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了.在学中,バルブポジショナの高性能化に関する研究に従事.同年,横河電機(株)入社.これまでに航空宇宙分野における電気および機械設計に従事.現在に至る.
受賞論文「ヒステリシスの大きな空気圧式調節弁に使用する電子式ポジショナの高性能化」
 近年,空気圧式調節弁の高度な制御を実現するために,電子式ポジショナの開発が進められているが,高温・高圧ラインにおけるヒステリシスの大きな調節弁に使用する場合には不具合を生じることが少なくない.不具合の改善には機器のさらなる改良・高性能化が求められるが,電子式ポジショナの離散演算部での制御手法の改良のみでこれを実現できればより実用的である.そこで本論文では,空気圧式調節弁・電子式ポジショナを一制御系(システム)と捉え,まず,調節弁のヒステリシスが大きな場合に生じる不具合の発生要因を実験調査により抽出した上で,制御性能を向上させるための制御手法を開発し,その有効性を実証している.具体的には,ステム位置制御調節計の積分器入力信号のみにギャップを設けて微小偏差を許容し,さらにダイヤフラム室内圧力の制御ループを付与したカスケード制御系を導入することで,その制御性能が著しく向上することを明らかにしている.

なかたに えいいち
中 谷 英 一 君
(正会員)
 1986年九州大学工学部情報工学科卒業.同年トヨタ自動車(株)に入社,現在,第3電子技術部に勤務.マイクロマシニング応用センサの開発に従事.
ながお まさる
長 尾   勝 君
 1987年名古屋大学大学院修士課程修了(応用物理学).同年トヨタ自動車(株)に入社,現在,第3電子技術部に勤務.車載用カスタムIC,半導体センサ開発に従事.自動車技術会会員.
わたなべ ひかる
渡 辺   光 君
 1986年名古屋大学大学院修士課程修了(電気電子工学).同年トヨタ自動車(株)に入社.第3電子技術部に勤務.車載用カスタムIC,アナログ集積回路の研究開発に従事.電子情報通信学会,IEEE会員.
はしもと まさと
橋 本 雅 人 君
 1986年東京大学教養学部基礎科学科卒業.同年トヨタ自動車(株)に入社,現在,第3電子技術部に所属.マイクロマシニング応用センサの研究,パワーデバイスの開発に従事.自動車技術会会員.
しらい こうじ
白 井 浩 司 君
 1991年筑波大学大学院修士課程修了(物質工学).同年トヨタ自動車(株)に入社,現在,第2電子技術部に勤務.シャシ制御系センサの設計・開発に従事.
あおやま こうじ
青 山 浩 二 君
 1984年早稲田大学理工学部電気工学科卒業.同年トヨタ自動車(株)入社,現在,電子生技部に勤務.パワーエレクトロニクスの生産技術に従事.
受賞論文「車両制御(VSC)用半導体式G一体ヨーレートセンサ」
 半導体マイクロマシーニング法により製造するセンサ素子を用いた,半導体式G一体ヨーレートセンサを開発した.本センサの特徴は,1つのセンサ素子からヨーレートのみでなく加速度も検出できる点であり,従来の車両用センサにはない初の試みである.センサ素子は,機械的に結合し音叉のように動く2つの振動子で構成される.振動子は静電力により駆動し,その変位は容量値で検出する.ヨーレートと加速度の分離は同期検波により実施する.もう1つの特徴は,高精度A−D(Analog-to-Digital)変換方式として知られるΔΣ(デルタシグマ)変調型A−D変換を採用し,新しく開発した信号処理ICにΔΣ変調器を組み込み,センサユニット内のマイコンによる,センサ特性のディジタル演算調整を実現した点である.これらによりセンサユニット構成を簡素化し,低コスト化を実現.VSC(vehicle Stability Control)用として実用化した.

でぐち よしひろ
出 口 祥 啓 君
(正会員)
 1985年豊橋技術科学大学エネルギー工学科卒業,90年同大学総合エネルギー工学課博士課程修了.工学博士.同年三菱重工業(株)技術本部 長崎研究所 入社.2004年先進技術研究センター主席研究員となり現在に至る.飛行時間型質量分析法,レーザ誘起蛍光法,レーザ誘起ブレークダウン法,半導体レーザ吸収法などのレーザ計測技術開発に従事.96〜97年航空宇宙技術研究所客員研究官,2004年国立環境研究所共同研究員.日本機械学会,日本燃焼学会,日本航空宇宙学会,日本可視化情報学会,OSA会員.96年日本機械学会奨励賞,98年可視化情報学会技術賞を受賞.
のだ まつへい
野 田 松 平 君
 1973年慶應義塾大学工学部計測工学科卒業,75年同大学大学院工学研究科計測専攻修士課程終了,同年三菱重工業(株)技術本部 長崎研究所 入社,95年基盤技術研究所 基礎工学研究室長,99年長崎研究所 応用物理研究室長を経て,2002年長崎研究所主幹研究員となり,現職に至る.この間,レーザ分光応用計測技術開発,プラズマ応用薄膜太陽電池製造技術開発に従事.日本機械学会,応用物理学会会員.
ふくだ のりひろ
福 田 憲 弘 君
 1994年大阪大学工学部応用物理学科卒業,96年同大学大学院工学研究科応用物理学専攻修士課程修了.96年三菱重工業(株)長崎研究所入社,現在に至る.量子化学シミュレーション,レーザ計測技術開発に従事.
どばし しんさく
土 橋 晋 作 君
(正会員)
 1996年東京理科大学理学部応用化学科卒業,98年東京工業大学大学院総合理工学研究科電子化学専攻修士課程修了.同年三菱重工業(株)技術本部長崎研究所に入所.現在に至る.レーザ分光分析技術開発に従事.廃棄物学会および日本分析化学会などの会員.
くぼた たかひろ
窪 田 隆 博 君
 1998年鹿児島工業高等専門学校電子制御工学科卒業後,同年4月に三菱重工業(株)技術本部長崎研究所入社.第一実験課物理チーム勤務.入社以来,現在までレーザ装置を適用した新規計測技術(画像認識装置,有機物濃度計測装置)の開発に従事.
しのだ かつひこ
篠 田 克 彦 君
 1980年京都大学工学部精密工学科卒業,82年京都大学大学院工学研究科修士課程修了.同年三菱重工業(株) 長崎造船所入社.現在,長崎造船所 火力プラント設計部 エネルギー・環境技術課 主席技師.PCB等難分解性有機物の処理設備の開発・設計に従事.技術士(機械部門).
たなか りゅういちろう
田 中 隆一郎 君
 1986年青山学院大学工学部機械工学科卒業,88年同大学大学院機械工学系修士課程修了,工学修士.88年三菱重工業(株)入社.長崎造船所で陸用ボイラ設計職に従事し,97年燃焼技術課主任,2000年よりエネルギー環境技術課でPCB関連設備設計に従事し現在に至る.
いざわ よしのり
猪 澤 祥 規 君
 1987年九州工業大学制御工学科卒業,89年同大学院(工学研究科制御工学専攻)修士課程修了,同年三菱重工業(株)入社.現在,火力発電プラントの計装・制御,PCBモニタリング装置などの設計に従事.
きら まさはる
吉 良 雅 治 君
 1974年九州大学工学部造船学科卒業,同年三菱重工業(株)入社後,船舶設計業務(コンテナ船・貨物船等)に従事.79年環境装置部門に移り,以降はおもに都市ゴミ焼却プラントの燃焼,排ガス処理,エネルギー回収,自動制御の設計・開発業務に従事.90年技術士(衛生工学部門).2002年三菱重工業(株) 機械事業本部 環境ソリューション・輸出部次長として都市ゴミ焼却プラント等の環境従来製品に加えてPCB処理,土壌浄化も担当.03年より三菱重工業(株) 機械事業本部 環境ソリューション部新製品担当部長.
もりた まさとし
森 田 昌 敏 君
 1967年東京大学理学部化学科卒業,71年同大学大学院工学系研究科合成化学博士号課程修了,工学博士.71年東京都衛生研究所 水質研究科研究員,78年国立公害研究所 計測技術部生体化学計測研究室主任研究員,89年国立公害研究所計測技術部長,90年国立環境研究所 化学環境部長,95年地域環境研究グループ統括研究官,2001年より(独)国立環境研究所 統括研究官となり現在に至る.分析化学,環境化学,毒性学に従事.日本環境化学会会長,日本内分泌攪乱化学物質学会事務局長.
受賞論文「超高感度リアルタイムPCBモニタリング技術の開発」
 PCB(ポリ塩化ビフェニール)は,その分解処理が法的に義務付けられ,現在,日本各所でPCB処理プラントが計画・稼動されてきている.PCB処理では,周囲へのPCB漏洩がないことを確認する必要があるが,従来の公定分析法では応答性に問題があり,安全管理上,より高感度・迅速なPCB分析技術/装置が求められていた.
 本研究では,ガス直接導入式レーザイオン化飛行時間型質量分析法を新たに開発し,排ガス,作業環境大気等を対象にPCBを1分以内(従来2日以上)で計測可能とした.本方法では,ピコ(10-12,ナノの1/1000)秒レベルの短パルスレーザ光を用いて,PCBのイオン化効率を向上すると共に,イオントラップ技術を用いて,選択性を向上し,PCBの排出基準値の1/10以下:0.01mg/Nm3の検出感度を十分に達成した.本成果は,世界初のPCBモニタリング装置として,実機採用されている.

ひびの りょういち
日比野 良 一 君
(正会員)
 1989年名古屋大学工学部航空学科卒業,91年同大学大学院工学研究科航空工学専攻修士課程修了.同年(株)豊田中央研究所入社,現在まで自動変速機のロバスト制御技術,最適設計プロセスの開発・研究に従事.日本機械学会,自動車技術会の会員.
おおさわ まさたか
大 澤 正 敬 君
(正会員)
 1977年名古屋大学工学部航空学科卒業,79年同大学大学院工学研究科航空工学専攻修士課程修了.同年(株)豊田中央研究所入社,現在,動力伝達システム研究室室長.エンジン・変速機の制御手法,動力伝達系の高性能化技術の開発・研究に従事.自動車技術会の会員.
こうの かつみ
河 野 克 己 君
(正会員)
 1980年上智大学理工学部機械工学科卒業.同年トヨタ自動車(株)入社,無段変速機,自動変速機などの研究開発,製品開発に従事し,理論応用を進める.現在,第2ドライブトレーン技術部ドライブトレーン制御技術室室長.自動車技術会技術開発賞(96年)受賞.自動車技術会の会員.
いとう ひろし
伊 藤   寛 君
(正会員)
 1971年慶應義塾大学工学部計測工学科卒業,73年同大学工学研究科計測工学専攻修士課程修了.同年トヨタ自動車(株)入社,同社技術部にて,自動変速機および駆動系の研究・製品開発を31年担当.現在,同社理事.自動車技術会技術賞(78年),同会技術開発賞(96年)受賞.日本機械学会,自動車技術会の会員.
受賞論文「H∞制御およびLMI解法によるATロックアップクラッチ・スリップシステムのロバスト設計」
 AT(Automatic Transmission)トルクコンバータ内ロックアップクラッチのスリップ制御は自動車の燃費向上,CO2削減に着実に貢献する技術であるが,性能を十分に発揮するにはスリップ速度の精密な測定が必要である.しかし運転条件の違いによる入出力特性の変化が大きく古典的なPID制御では十分な性能が得られない.そこで本研究ではH∞制御およびLMI解法をベースとする新たな手法を開発した.これは,ロバスト安定性の尺度として相補感度関数のピーク特性に着目しループ整形することにより,優れたロバスト安定性と目標値追従性を達成可能とするものである.また同時に,モデルとコントローラを各集合の端点特性とその補間により簡素化表現するとともに互いの補間パラメータを双対な関係とすることで,モデルの同定後ただちにコントローラを導出可能とし,大幅な設計時間短縮を実現した(厳密なモデル化を行う従来法との比較で1/3以下).これらにより,低燃費なシステムの迅速な展開が可能となり,新設計法は現在数多くの車種に採用されている.

いしかわ まさとし
石 川 正 俊 君
(正会員)
 1977年東京大学工学部計数工学科卒業,79年同大学大学院計数工学専門課程修了.同年通商産業省工業技術院製品科学研究所入所,同所主任研究官を経て,89年東京大学工学部計数工学科助教授,99年東京大学工学系研究科計数工学専攻教授,2001年東京大学情報理工学系研究科システム情報学専攻教授.現在の研究内容は,超並列・超高速ビジョンチップ,光コンピューティング,センサフュージョンなど.
こむろ たかし
小 室   孝 君
(正会員)
 1996年東京大学工学部計数工学科卒業,98年同大学大学院修士課程了,2001年同大学大学院博士課程了.現在,同大大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻助手.博士(工学).現在の研究内容は,ビジョンチップ,並列プロセッサ,リアルタイムコンピュータビジョンなど.
いしい いだく
石 井   抱 君
(正会員)
 1992年東京大学工学部卒業,94年同大学工学系研究科修士課程修了,96年同大学工学系研究科博士課程中退.同年同大学工学系研究科助手,2000年東京農工大学工学部講師,助教授を経て,03年広島大学工学研究科助教授.博士(工学).現在の研究内容は,高空間解像度・高速ビジョン,実時間センサ情報処理など.
よしだ あつし
吉 田   淳 君
 1986年東京工業大学工学部電子物理工学科卒業.同年(株)精工舎(現セイコープレシジョン(株))入社.おもに画像処理機器の研究開発に従事.98年日本プレシジョン・サーキッツ(株)転籍.現在のセンサ関係のIC開発,ファームウェア開発に従事.
いなだ よしあき
稲 田 喜 昭 君
 1999年東京理科大学理工学部電気工学科卒業.同年日本プレシジョン・サーキッツ(株)入社,同社商品設計部にて超並列・超高速ビジョンチップの研究・開発に携わり,回路設計および評価基板などの開発を手がける.2004年日本プレシジョン・サーキッツ(株)を退社.現在は,ソニー(株)セミコンダクタソリューションズネットワークカンパニーにてイメージセンサの開発に従事.
こみや やすひろ
小 宮 泰 宏 君
 1982年東京工業大学理学部情報科学科卒業.同年(株)精工舎入社,ビジネスコンピュータ,ワードプロセッサ等のOS開発に従事.89年(株)ナイス入社,LSIマスクレイアウトエディタ,タクシー配車システム等のアプリケーション開発に従事.91年(株)ソフトシステム入社,建築構造計算アプリケーション,各種組込み制御ソフト.94年日本プレシジョン・サーキッツ(株)へ出向,米テキサスInfinite Technology CorporationにてReconfigurable Arithmetic Datapathの共同開発に参加,2001年より,ビジョンチップ開発に参加.評価用ソフトウェアおよび応用アプリケーションの開発を担当.
受賞論文「高速対象追跡ビジョンチップの開発」
 高速に対象物体の領域抽出と位置検出ができるビジョンチップを開発し,レンズ付きビジョンセンサモジュールSR3300の名前で製品化した.ビジョンチップはイメージセンサの画素ごとに処理回路を搭載することで,1000fps以上の高速視覚処理をワンチップで実現するデバイスであり,特に本チップは用途をトラッキングに限定することで,構成をシンプルにし,装置の小型化を実現している.本チップをFA機器やロボットなどに組み込むことで,視覚を用いたフィードバック制御が容易に実現され,作業効率を飛躍的に向上させることができるほか,危険回避などのような機械の知能化にも役立つと期待される.日本プレシジョンサーキッツ(株)から商品化されたSR3300は,1/6型の光学系に対応しており,小型レンズがパッケージにあらかじめ取り付けられている.画素アレイを制御するコントロール回路もチップに内蔵されており,最大4つまでの対象を自動トラッキングすることができる.

きむら ひでのり
木 村 英 紀 君
(正会員)
 1965年東京大学工学部計数工学科卒業,70年同大学大学院博士課程修了,工学博士.同年大阪大学基礎工学部助手,72年同講師,73年同助教授,88年大阪大学工学部教授,95年東京大学工学系大学院教授,2004年(独)理化学研究所バイオ・ミメティックコントロール研究センター チームリーダー.
受賞図書「制御工学の考え方」
 制御工学について一般の読者を対象に書かれた「たて書き」の最初の教養書.制御工学の歴史と,それが近代科学技術の発展に果してきた役割を,例を中心に述べ,つづいて制御の機能を「合わせる」「保つ」「省く」に分類し,それぞれの特徴と実例を示している.制御が対象とするダイナミックスの世界の奥深さと不思議さを説明し,具体例を通して制御系を設計することの難しさと面白さを読者が体得できるようにしてある.家電やロボット,自動車など身近な商品に制御がどのように生かされ,商品価値を高めているか,また製鉄,半導体などの産業で制御がモノつくりにいかに貢献しているかを述べ,最後に,無限に開け行く制御工学のフロンティアについて著者の展望を語っている.
 制御工学は現代技術のキーテクノロジーのひとつであることは間違いないが,電気,機械,化学など「老舗の」工学に比べると典型商品がなく,業界も弱体であり,一般の人にはわかりにくい.この役割の大きさと評価の低さのギャップは制御工学の専門家にとっては半ばあきらめの気分をもって受け入れている事実であり,仲間同士のナルシズムの対象でもあった.この状態を少しでも改善し,制御工学の重要性とその真の姿を非専門家に知ってもらうために長い年月を費して書かれた本である.

株式会社山武
調節弁ハンドブック編纂委員会
 当委員会は,調節弁に関する技術開発や製品設計,品質管理,応用設計および保守・管理にいたる広い範囲の知識,経験などを集大成すべく,(株)山武においてそれらを専門とする技術者20名によって構成された.
受賞図書「工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック」
 工業プロセス用調節弁は適用範囲やそれにもとづく機種が多岐にわたっているため,本書は基礎から応用にいたる広汎な技術をできるだけ取り上げ,実技の上で役立てようと企図されたものである.
 したがって工業プロセス用調節弁について,その基礎的な概括はもとより各種特性の理論的解説を行い,さらに調節弁選定上重要な最新のバルブ・サイジング方法や騒音計算,圧力・温度定格,各部材料の選定および関連法規,規格,規制やインテリジェント形ポジショナやそれを用いた診断なども記述した.
 また,工業プロセス用調節弁は制御機器のなかの一要素でありながら,一方ではプラントそのものに組み込まれる流体機械としての厳しい機能・性能を要求されることに対しても意を用いた.
 したがって,これらの弁は千差万別のアプリケーションに対して仔細にわたる仕様の検討が必要であることや,その要点とその機能や性能を維持するために重要なメンテナンスと復旧のためのトラブル・シューティングにも言及した.

 さらに実技面で有用であろうと思われる,各種資料を巻末に付け読者の便を図った.

受賞製品「ネットワークベース生産ソリューション「STARDOM」」
横河電機株式会社
 横河電機では,ブロードバンドやワイヤレス通信の一般化にあわせて,ネットワークを中心とした制御システム,ネットワークベース生産ソリューション「STARDOM」を開発しました.STARDOMは,独立性の高いコンポーネント群から構成され,これらは単独での使用,組み合わせての使用が可能であるだけではなく,他社の製品と組み合わせることも可能となっています.
 STARDOMのコンポーネントとしては,インテリジェントと高信頼性を兼ね備えた自律型コントローラ「FCN」「FCJ」,WebベースHMIを実現したSCADAソフトウェア「ASTMAC VDS」,高度な制御を提供するエンジニアリング部品「APPF」が用意されています.

 これらをネットワーク上で組み合わせることで,「ネットワークによる情報の統合」や「機能要求への迅速な対応」,「高信頼化による安定操業」が実現できます.
 また,今後もさらなる充実を図るよう開発を重ねてまいります.

受賞製品「マイクロフローセンサと質量流量計シリーズ」
株式会社山武
 マイクロマシニング技術を結集したマイクロフローセンサは流量測定に必要な温度センサ,ヒータ類を1チップ化して気体の質量流量を直接計測できるようにしたものであり高感度(1mm/sの低流速検知),数ms以下の高速応答などの特長をもっている.(株)山武では一般産業市場にこのセンサを搭載した気体用質量流量計,コントローラを提供し従来の計測技術では困難なアプリ課題の解決に寄与してきた.
 省エネ管理や課別課金などの用途では計量メータに準じた広範囲での高精度測定が求められるが小流量測定用にCMSシリーズ,大流量測定用にはフルスケールの3000分の1まで測定可能なCMLシリーズ等の質量流量計の特長が活かされている.また一般産業ガスの流量制御を目的として開発されたマスフローコントローラCMQシリーズは従来の半導体産業向けのマスフローコントローラでは対応できない高速制御および低圧供給ガスでの安定した制御が要求されるガラス加工やロー付けなどのバーナ空燃費制御,ガス充填量制御,工業炉雰囲気ガス制御などの一般産業市場で性能を発揮している.マイクロフローセンサの特長を活かし適合したアプリはさまざまな分野,市場にますます広がりを見せており今後も市場からの新たなニーズに応えていきたいと考えている.

あおしま のぶはる
青 島 伸 治 君
(正会員)
 1943年生.70年東京大学大学院工学系研究科応用物理学専門課程博士課程修了.同年東京大学宇宙航空研究所助手.75年熊本大学工学部助教授.79年筑波大学物理工学系助教授,89年同教授,99年同機能工学系教授.日本音響学会佐藤論文賞,日本機械学会論文賞受賞.計測制御工学の教育と研究に従事.工学博士.
受賞教育活動「エンジニア教育への多大の貢献に対して」
 長年にわたり,計測自動制御学会の計装エンジニア(現計測制御エンジニア)委員会において認定試験ならびに講習会に,また教育認定委員会においてJABEE制度および技術者継続教育制度への対応に尽力され,学会のエンジニア教育に多大の貢献をした.
copyright © 2004 (社)計測自動制御学会