(注:2008.5.12.新宿区より南千住に移転し、義肢装具サポートセンターと改称。本文は2006.3.6現在です。)
とてもたくさん教えていただいたのですが、そのほんの一端をご紹介します。
最初に所長さんらにセンターの概要や義肢装具の現状、工学的技術支援の観点での理想のお話を伺い、次に見学、その後にまたいろいろお話を伺いました。
現在、整形外科医2名、理学療法士(PT)1名、義肢装具士(PO)26名がいる国内有数の義肢装具を作る場所で、義肢装具を作る技能集団とリハビリ施設を有している素晴らしい国内唯一の施設です。
要請に応じ近隣に及ばす外国にも義肢装具を作る手伝いをしに行っていました。見学させていただいたときも、多くの方々が病院などに出かけていました。
頂いた平成16年度の資料では、1年間で製作した件数は、義手328件、義足695件、装具3351件です。その他、義肢・装具の修理は1006件、杖や断端袋等の取次・修理の扱いが862件あり全部で6242件です。
義肢装具をつけてのリハビリ訓練できる場所は意外と少ない。一般病院では、諸処の事情で、義肢装具の専門的なリハビリ訓練が困難な環境であるとことが多く、治療が主目的で十分な訓練を受ける前に退院する場合などがある。また、当センターは切断された境遇の方々が多くいるので、自然とお互いに励ましあうような面もあり、精神的な部分で大いに助けとなる場や機会でもある。
義肢装具士が常にいるので、注文や義肢装具のやり取りなどの対応が迅速に行える。
他の会社では、分業制が多く、1人ですべての面倒を見られないため、全体の調整や個人の生活パターンや希望、適合など細かい対応が難しい場合があるのではないかと察せられる。
その人がバスに乗りたければ、バスに乗る訓練を、レストランで食事をしたければ、外食するなど、リハビリ訓練室の外に出ての訓練も希望に応じて行う。
義肢の装着訓練の仕方や義肢の説明を受け、理学療法士の方との会話中、何か工学関係が貢献できそうな話で印象に残ったのは、 「義足の足裏の感覚を利用者に感じさせるようなもの」があると歩行に活かせるのではないかと思われるとのこと。ただし、視覚情報での提示は、いつもそれを見ていないといけないので困る。
型取りの仕方、石膏型を作るところ、義肢装具を作るところを見学させていただき、作業中の4名の義肢装具士にお話を伺った。皆、作業の手をほとんど休めることなく説明してくださいました。
石膏包帯を断端部に巻いて雌型をとり、それを使って石膏の雄型を作る。その際、段端に青いペンでつけた印が、石膏型にそのまま写し取られる。
足のソケット作成の石膏型を作っているところを見学。義肢の継ぎ手より先端のハードウエアはどんどんよい製品がでてくるが、足を包む部分(ソケット)はそれに比べ変化が遅い。ソケットのデザインが体に負担の少ないように変わったり、足を入れる前に靴下を履くようになったり、日本では公的施設などの義肢装具士が研究しているそうです。また来年度から、日本の大学で初めて義肢装具専攻ができるとのこと(北海道工業大学)。
部品の素材を個人の形に合わせる加工・組み立てを行っている。足(股下から全部)の図面に合わせて装具の形をデザインし、それにあうように手で細長い板の形を曲げて作っていた。図面は必ずしも足がまっすぐに伸ばせるとは限らないとのこと。生身の形を図面に写し取るのも技術も必要と思った。
アクリルでソケットを作っているところを見学させていただいた。今は、ソケットの素材では、ポリエステルの利用は少ない。プラスチックは軽いが、伸びようとする性質があるので、細かい形がでにくい。凸凹のあるソケットの場合、石膏型を壊してソケットを取り出す。
手術後の断端の形が時間とともに変わる、また入院・車椅子生活のため関節の動きが固くて動ける範囲がせまくなっているため、それがもとのように動けるようになりきれいに歩けるようになるのは時間がかかり、そのリハビリ期間中にその人の状態に合わせた義肢の調整が必要となり、仮の義足の状態が1年位かかる人もいる。
最新の義肢を見せていただいた。ドイツ(オットボック社)、アイスランド(オズール社)から良い義肢が世界に発信されている。
ご説明・ご対応いただいた、齋藤所長、臼杵指導訓練課長、臼井義肢研究員、梅澤さん(PT)、宮永診療所所長、他4名の義肢装具士の皆様、ご多忙にも関わらず、本当にありがとうございました。感謝いたします。(文責 小野栄一)