SICE九州フォーラム2017
【プログラム】総合司会 和田親宗(九州工業大学)
余永 教授(鹿児島大学 学術研究院 理工学域工学系 機械工学専攻) 脳卒中麻痺肢の共同運動に対し,各関節の自主運動を有効に分離できる(使用頻度に依存する脳の可塑性を用いた)促通反復療法がある.この療法に対する長時間訓練の省力化および訓練精度と効果の向上のために訓練装置を開発した.本装置は,目標運動機能を促通し,促通補助のため振動・電気・視覚・聴覚の刺激を加えることで麻痺肢の目標筋伸張反射を誘発する.さらに,自主的な目標筋随意運動を引き出すとともに,自主運動をパワーアシストし,その効果も評価できる.本講演では,片麻痺指伸展・前腕回内回外・肩上下・膝屈曲の各機能回復訓練装置とその有効性を詳説する.また,随意複合運動リハビリのための片麻痺上肢肩・肘・前腕複合運動や下肢歩行運動の装置等も紹介する. 村越道生 准教授(鹿児島大学 学術研究院 理工学域工学系 機械工学専攻) 人の聴覚は,外耳,中耳および内耳から構成されている.音はこの伝達過程において,巧みな増幅を受けており,これにより我々の鋭敏な聴覚が実現されている.しかし,聴覚器官は頭蓋内に埋め込まれた器官であることに加え,驚くべきことに,鼓膜の振動振幅はわずか二桁のナノメートルのオーダーと極めて微小である.そのためその計測は難しく,聴覚各部位のメカニクスには未だ不明な点が多い.もし聴覚に隠されたこれらの動作メカニズムを理解することができれば,新たな診断装置や治療装置の開発への応用や,その特化した特性を利用したこれまでに無い全く新しい機械システムの創生が期待できる.本講演では,聴覚メカニズムの理解とその応用を目指し,主に力学的アプローチによる我々の取り組みについて解説する. 小野智司 准教授(鹿児島大学 学術研究院 理工学域工学系 情報生体システム工学専攻) 海洋や気象の観測においては長期的な季候変動のメカニズム解明に向けて,大規模かつ長期的な観測が行われており,多様なデータが蓄積されている.観測されたデータの最終的な品質管理は人間によって行われているため,世界規模での品質管理基準の統一が課題となっている.一方,近年の急速な計算性能の向上を背景とした人工知能技術は,その活躍の範囲を急速に拡大している.第3次人工知能ブームの主軸は,画像や音声といった信号から,課題の解決に寄与する特徴を自動的に構築する点にある.豊潤な計算資源を活かして膨大な回数の反復改善を繰り返すことで,人間の専門家の知見を超える結果をもたらすこともある.本講演では,海洋や気象の観測における品質管理や解析を対象として人工知能技術を応用する試みについて紹介する. |