物質のおよそ60〜70%は我々が住む世界では固体状態を呈します。したがって、各種材料の生産プロセスでは固体を取り扱うことが多く、固体粒子と流体が混合した混相状態あるいは固体粒子集合体である粉体状態で固体のプロセス処理がなされます。最近の新しい機能を有する材料の開発にともなって、この固体粒子が関与するプロセスの高度化に対する要求が強く、固体粒子を処理するプロセスの成否が新しい材料創製のキーを握っているとも言われます。固体処理プロセスの高度化に対するプロセスの計測と制御技術の重要性については言を要しませんが、気体や液体を扱う流体プロセスに比べて大きく遅れておりました。しかし最近になって、その自動化が進み、製品品質の安定化、省資源、コストの低減に大きな貢献を果しております。
とくに、最近のコンピュータの発達により、非線形性、離散性が強い固体粒子群流動挙動のシミュレーションが進み、プロセスの設計と制御にも利用され、大変な注目と期待を集めています。そこで、本講習会では固体(粉体)が関与するプロセスを中心として、プロセスの設計と制御に対するシミュレーションの基礎ならびに現状と課題について、この分野の第一線でご活躍の講師の方々により平易に解説していただきます.ふるってご参加ください。
日 時: 平成11年6月30日(水) 9:20 〜 16:40
場 所: ホテル アウィーナ大阪 金剛(東)の間(4階)
大阪市天王寺区石ヶ辻町19番12号 電話(06)6772-1441
(近鉄上本町駅下車あるいは地下鉄谷町9丁目駅下車)
挨 拶 | 計測自動制御学会関西支部 支部長 | 吉川 恒夫 | ||
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講 義 | 粉体プロセス計測と制御技術の最近の進歩 | 京都大学大学院工学研究科 | 増田 弘昭 君 | |
混相系ならびに粉体系シミュレーション法の基礎と新技術の動向 | 大阪大学大学院工学研究科 | 辻 裕 君 | ||
高炉内シミュレーションにもとづく高炉の制御と人工知能化
〜熱と物質の移動、化学反応をともなう系のシミュレーション〜 |
新日鉄(株) プロセス技術研究所 製銑プロセス研究部 |
内藤 誠章 君 | ||
画像形成シミュレーションによる電子写真プロセスの設計と制御
〜電磁場における固体粒子の帯電ならびに流動シミュレーション〜 |
富士ゼロックス(株)総合研究所 | 川本 広行 君 | ||
混相系ならびに粉体系シミュレーションのためのツール | アールフロー(株) アイ・イー・エー・ジャパン(株) |
竹田 宏 君 樋口 俊章 君 |
講義内容
「粉体プロセス計測と制御技術の最近の進歩」
京都大学大学院工学研究科 教授 増田 弘昭 君
粉体は従来から医薬,食品等の多くの工業で扱われており,多種多様な粉体プロセスがあるが,最近では特殊な粒子が電子機器,ディスプレイ,情報機器等に利用されるようになってきた.さらに,有機溶媒を使わない粉体プロセスを実用化することが環境保全のためにも必要である.これらの要求に応えるには,粉体としても粒子の特性をより精密に制御する必要がある.ここでは,粉体プロセスのオンライン計測と制御技術の基礎,ならびに最近の進歩と課題について解説します.
[講師紹介]
1966年広島大学工学部化学工学科卒業,1968年同大学大学院修士課程修了,1972年京都大学大学院博士課程修了,1973年京都大学助手,1979年広島大学助教授,1986年広島大学教授,1989年京都大学教授.1987年から1年間西ドイツ大気エアロゾル研究所にフンボルト研究員として留学.専門分野は粉体工学,エアロゾル工学および静電気.粉体工学会副会長,編集委員長,粉体工業技術協会理事,計装・測定分科会コーディネーター.1980年化学工学会論文賞,1985年粉体工学会論文賞,1991年エアロゾル学会論文賞,1995年エアロゾル学会井伊谷賞,1996年静電気学会功績賞,1998年化学工学会研究賞,1998年KONA Award.主な著書は粉体プロセスの自動化,日刊工業新聞社(1975),Powder and Bulk Solids Handling Processes, Instrumentation and Control, Mercel Dekker,Inc.(1998),微粒子工学,オーム社(1992).工学博士.
大阪大学大学院工学研究科 教授 辻 裕 君
固体粒子群の流動挙動をシミュレートする離散要素法ならびに固体粒子―流体混相系のシミュレーション法の基礎、それらの方法によるシミュレーション例(空気による固体粒子の輸送、流動層、混合、造粒など)とプロセス設計と制御に対するシミュレーションの利用法について解説します。つづいて、新しいシミュレーション技術の動向、CG,アニメーション技術などシミュレーション結果の視覚化についても詳述します。
[講師紹介]
1968年大阪府立大学工学研究科航空工学専攻修士課程終了、1970年同博士課程中退、1970年大阪大学工学部助手、1977年大阪大学工学部助教授、1989年大阪大学工学部教授.現在大阪大学工学研究科機械物理工学専攻教授
固―液二相流に関する光学的測定ならびに混相流の数値シミュレーションなどについて研究。1985年粉体工学会上滝論文賞受賞、1992年日本機械学会論文賞受賞
新日鉄 プロセス技術研究所 製銑プロセス研究部 内藤 誠章 君
鉄鉱石とコークスが高温の高炉内を降下する過程で、鉄に還元され,溶融して銑鉄を生成する高炉プロセスは,固体粒子、熱、流体の移動と反応が関与する複雑なプロセスである。このプロセスのシミュレーションは10年以上前に一応完成し、実際に高炉の制御に使われ、世界的にも高い評価を得ている。このシミュレーションの基礎と高炉の制御の実際と課題、操業の人工知能化の実際に関して詳述します。
[講師紹介]
昭和57年大阪大学大学院工学研究科治金学専攻博士課程修了.同年4月新日本製鉄入社,生産技術研究所(昭和58年第三技術研究所に改称)へ配属.昭和60年広畑技研兼務,平成元年大分製鉄所在勤を経て平成4年から現所属であるプロセス技術研究所に勤務.平成8,9年東京工業大学非常勤講師.工学博士.
昭和57年〜平成4年までは,高炉内での原燃料(焼結鉱,ペレット,コークス等)の反応挙動の調査・解析を主業務とし,高炉モデルの構築改良を実施.高炉燃料比低減を指向した炉内反応の効率化研究に取り組む.平成4年以降は高炉研究以外に,スクラップ・ダスト処理,廃車シュレッダーダスト処理,廃プラスチック処理等のプロセス開発に従事.高炉モデルのさらなる精度向上,高炉制御への発展に向け,開発推進中.
富士ゼロックス(株)総合研究所 川本 広行 君
情報化社会の進展にともない情報の出力端であるプリンターあるいは複写機には、高速化、高画質化、カラー化と小型化が厳しく求められている。とくに画像の保存性や専用紙を必要としない特徴を持つトナーによる画像形成方式の技術開発には、粉体トナーが関係する現像部の小型化、トナーの帯電、画像形成の安定化が求められる。この電子写真プロセスのシミュレーションの基礎と電子写真システムの設計に対する応用について詳述する。
[講師紹介]
昭和47年3月広島大学工学部電気工学科卒業,昭和58年工学博士(東京工業大学).昭和47年4月日立製作所入社,同社原子力開発部にて,ウラン濃縮用遠心分離機,電力貯蔵用ナトリウム硫黄電池などの研究開発に従事.平成3年4月富士ゼロックス入社,現在同社総合研究所主幹研究員として,電子ビーム印刷ヘッド,レーザプリンタ用スキャナモータ,自励振動,イオン帯電器,磁性現像系などの研究を経て,“電磁粒体力学”の観点から,画像形成工学を体系化するモデリング,シミュレーション,生産技術研究に従事.昭和50年機械学会奨励賞,平成4年7th Int.Microelectronics Conf.にてBest Paper賞,平成6年発明協会より発明奨励賞受賞.工学博士.
アールフロー(株) 竹田 宏 君
アイ・イー・エー・ジャパン(株) 樋口 俊章 君
高い濃度の固体―気体または固液二相流あるいは粉体流動挙動の解析を目的として個別要素法による汎用粒子流動挙動の解析ソフトおよび粒子分散系熱流動解析ソフトを開発し、市販している。それらの詳細と適用例を詳しく紹介する。
[講師紹介]
「竹田 宏君」
1975年 東京大学理学部地球物理学科卒、1980年 東京大学工学系大学院物理工学専攻博士課程修了その後,株式会社リクルート勤務を経て現在,株式会社アールフロー 代表取締役 工学博士 リクルート勤務時に,商用流れ解析ソフトの開発を手がけ,以来,10年に渡り,熱流動解析ソフト「RFLOW」の開発を行なっている.
「樋口俊章君」
1988年東京農工大学材料システム工学科卒業、1990年東京農工大学工学研究科材料システム工学専攻終了。大学では、分子動力学法による蛋白質分子の酵素―基質間相互作用に関して、スーパーコンピュータによる大規模数値解析研究を実施した。1990〜1993年三井石油化学工業(株)計算科学室にて構造解析、樹脂流動解析、ポリマーアロイ設計研究など各種数値解析手法を用いたCAEや研究業務などに従事した。1993年〜現在、(株)アイイーエージャパンにて、離散要素法を用いた粉粒体解析システムの開発や熱流動解析などに関するコンサルティングなどに従事している。
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