平成9年度計測自動制御学会関西支部講習会
『ザ・マイクロマシン――マイクロセンサ、マイクロアクチュエータ、光マイクロマシンの最新技術』
マイクロマシンの研究は、半導体集積回路技術を応用した歯車やモータの微小化から始まりましたが、 機械部品と電子素子さらには光素子を集積したシステムの研究へと進んできています。また、1991年から10年計画のナショナルプロジェクトがスタートし、着実に成果が積み重ねられています。マイクロマシン技術は21世紀に入ると産業の基盤技術となり、市場が急拡大するとの予想も行われています。そこで、本講習会では、マイクロマシンのシステム化について、最近の開発事例などを通して迫っていきます。更に、光のポテンシャルを活用した光マイクロマシンの可能性を探ります。第一線でご活躍の先生方に基礎から最近の動向までをわかりやすく講義していただきますので、奮ってご参加下さい。
日 時: 平成9年6月26日(木)9:20 〜 16:45
場 所: ホテル アウィーナ大阪 金剛(西)の間(4階)
〒543 大阪市天王寺区石ヶ辻町19番12号 電話(06)772-1441
(近鉄上本町駅下車あるいは地下鉄谷町9丁目駅下車)
挨 拶 | 計測自動制御学会関西支部 支部長 | 高森 年 | ||
講 義 | マイクロエレクトロメカニカルシステムと センシング |
東北大学 工学部 | 江刺 正喜 氏 | |
マイクロアクチュエータとエネルギー供給 | (株)デンソー | 服部 正 氏 | ||
光マイクロマシン | 立命館大学 理工学部 | 浮田 宏生 氏 | ||
光アクチュエータと光マニピュレーション | 大阪大学大学院 工学研究科 | 河田 聡 氏 | ||
工業技術院産業技術融合領域研究所内 アトムテクノロジー研究体 |
杉浦 忠男 氏 |
講義内容
マイクロエレクトロメカニカルシステムとセンシング
東北大学工学部 江刺 正喜
半導体集積回路の製作技術を発展させた「マイクロマシニング」と呼ばれる微細加工技術によって、光や機械さらには機能材料などを融合し多数の異なる要素が集積化された高機能なセンサやマイクロマシンを実現することができる。例えばセンサ・回路・アクチュエータなどの異種要素が多数分布した柔らかく動く機械、加速度センサ・ジャイロなどの集積化慣性計測システム、超小形化した高感度なセンサなどを紹介する。
マイクロアクチュエータとエネルギー供給
(株)デンソー 服部 正
マイクロマシンの分野では、数多くのアクチュエータが研究されている。加速度センサにおける振動子、微量な流体を制御するポンプやバルブ、光学システムにおけるスキャナや焦点調節機構等、目的によって構造や方式も様々である。伸縮屈曲アクチュエータは、作業や移動等に必要な外部に力を発揮するアクチュエータとして開発が進められた。その動作原理について詳述するとともに、その応用例としてマイクロマニピュレータ、可変焦点レンズを紹介する。 また、マイクロマシンへのエネルギー供給技術として、産技プロ第2期で目指しているマイクロ波を利用した配管内無索検査マシンを例に、その現状を紹介する。
光マイクロマシン
立命館大学理工学部 浮田 宏生
光技術とマイクロマシニングをドッキングすることにより、新機能デバイスの提案、新駆動制御法の開発、新微細加工技術の提供などが期待されている。このような技術結合の背景には、半導体産業で培った集積化技術を微小機械の作製に使用できることがある。本講演では、マイクロマシンへの光技術の取り込みレベルを(1)マクロスケールでの技術結合―光アシストエッチング、フリースペース微小光集積素子、DMD他―および、(2)ミクロスケールでの技術融合―光集積ヘッド、光振動子センサ、波長可変半導体レーザ―の観点から概説する。
光アクチュエータと光マニピュレーション
大阪大学大学院工学研究科 河田 聡
工業技術院産業技術融合領域研究所内アトムテクノロジー研究体 杉浦 忠男
フォトンには質量はないが、運動量を持っている。したがってフォトンが物質にあたってはねかえると、運動量保存則に従って物質は動く。例えば、3mWのレーザーを(10μm)3のキューブに下からあてると、重力に逆らってそれを浮き上がらせることができる。10μmは赤血球の直径である。もっと軽い原子ならたった1つのフォトンで毎秒3cmの速度で走らせることができる。本講演では、これらのフォトン力学の原理を解説し、そのマイクロアクチュエーター、マイクロマニピュレーションへの応用について述べる。非放射な電磁場を構成するエバネッセントフォトンによる新しいフォトン力学や非線形光学に基づくマイクロマシニングについても、話題を展開する。
【お断り】 講師にお願いしておりました大阪大学の河田聡先生が日本学術振興会からドイツへ出張されることになり、河田先生の講義は、河田先生の共同研究者であった杉浦忠男氏(現在、工業技術院産業技術融合領域研究所内アトムテクノロジー研究体)にお願いすることになりました。従いまして、4件目の講義は河田先生と杉浦氏の連名とし、講習会当日は杉浦氏にお話しいただくということにさせていただきます。
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