自動車の製品開発の分野ではMBD(Model Based Development)が進行している.
これはエンジンやトランスミッションなどの設計に使うFEMのモデルから制御系設計に使う簡易モデルを作成し, そのモデルに対する制御アルゴリズムを開発するModel
Based Designを出発点にする. そのモデル化されたコンポーネントをコンピュータ内で動作検証を行うSILS(Software In the Loop
System), ハードコンポーネントも含むHILS(Hardware In the Loop System)などのツール連携による開発が行われている.
これがMBDである. この製品開発で確立したMBDツールが生産ラインの設計にも使われ始めている. そこでは3次元CADと融合して,
このようなツールが動作することが期待されている. その意味で, MBDは従来は別物と扱われていた開発と生産を結びつける役割を果たす鍵となる可能性を持っている.
ここでは, この流れの実際について講演する.
キーワード:MBD, 開発, 生産, 保守, 3次元CAD
変化の大きい市場ニーズにいち早く対応し, お客様にご満足頂けるクルマをご提供するために, 効率的かつ高品質な開発・製造は自動車会社の重要な課題であり,
従来から多くの取り組みが成されてきた. 効率化の最初のステップとして試作初号車の質の確保(試作車一発OK)が挙げられ, CAD の高機能化や CAE
の目覚しい進化などにより開発技術・量産技術の進歩と両者のシームレス化が可能となり, 一定の枠内での短期開発が実現された. また,
プラットフォーム統合など開発初期段階の戦略的な効率化が成されている. 本報では, 車両運動性能開発の分野で, これらを支える開発技術を MBD(Model
Based Development)という技術スコープから見た場合の具体事例で紹介する.
キーワード:サスペンション, ステアリング,
モデリング, シミュレーション, mHIL
SysMLによるシステムのモデル化/日本IBM(株) 石川 浩君
機能実現のソフトウェア化が進むに伴い, 航空機, 自動車, 電気製品などのシステムの複雑さが急増している. 複雑さを克服するには,
システム開発の初期段階にて, 設計対象を共通の表現でモデル化し, イメージを明確化するとともに開発者間で共有することが重要である. 2006年にUMLを拡張し,
システム記述に向けたモデル言語Systems Modeling Language (SysML)がOMGにて制定された. ソフトウェアに加えて, 機械,
電気を含むシステムに適した, 構造, 振る舞い, 制約を表現できるようにUMLの記述力を向上させた. 例えば,
連続的な物質および情報の流れ(フロー)を記述可能とし, またシステムに対する制約を数式等で与えることが可能となった. 加えて, 設計の前提となる要求,
およびそれらと設計要素との関連を指定する表現を持った. 本講演では, UMLから拡張された表現を中心に, SysMLの概要を説明する. 同時に,
昨年7月にSICEの下に発足したSysML調査研究会における成果を踏まえ,
SysMLによりシステムがどのようにモデル化されるかをいくつかの例題により解説する.
キーワード:SysML, UML, モデリング,
システム設計
身体運動の解析, 支援におけるモデルベース・アプローチ/名古屋大学 大日方 五郎君
人の筋骨格モデルは, 拘束を有する剛体リンク系と紐タイプのアクチュエータで近似的にモデル化することが可能である. 身体運動の実験に基づく解析では,
リンク間に作用する力、モーメントなどを直接計測することは難しく, モデルに基づいた解析を用いないと必要な変数の値を知ることができない. 一方,
運動を支配する脳・神経系はきわめて複雑であり, 現状そのすべてをモデル化したり, シミュレートしたりすることはできない. しかし,
特定の運動や機能における神経支配の様子がわかるようになってきている. 神経系と筋骨格系を統合することによって,
一部の運動はシミュレーションすることができるようになった. 本講習では, 筋骨格系のモデル化, それを用いた逆動力学計算に基づく運動状態推定,
神経系との統合による歩行と眼球反射のシミュレーションについて解説する. これらの技術は, ユーザーへの個別対応が求められる車椅子, 義肢,
装具などの設計に有効であり, 人の状態に適応する機械やロボットの設計開発の基礎を提供する.
キーワード:筋骨格モデル, 逆動力学計算,
運動シミュレーション, 反射運動, システム同定