論文集抄録
〈Vol.38 No.8(2002年8月)〉
論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)
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タイトル一覧
[論 文]
[ショート・ペーパー]
- ▲ ■ 走行車両の軸重計測
応用計測工業・福田謙吾,阪神道路公団・鳥取久治,姫路工大・亀岡紘一,
岡山理大・小野敏郎,岡山県立大・吉田浩治
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走行車両の軸重計測には軸重計が用いられ,軸重はその荷重センサ出力信号を処理することにより得られる.その信号は,車両振動に起因するノイズ成分を含み,かつデータ長がきわめて短いため,軸重値の高精度計測には適切な信号処理方法が不可欠となる.本論文では,1)車両タイヤが完全に計量台上にある時間区間における荷重センサ出力信号は,定数と正弦波の重ね合わせで記述できる定常振動であり,2)荷重センサ出力信号に関する差分方程式の解が,定数と正弦波の重ね合わせで表現できるように構成した正規方程式を用いて軸重推定式を導出し,これに基づく軸重推定法の実用性を確かめるために,キャブオーバ型ダンプトラックを対象として種々の走行条件下で実験を行い,得られた結果について述べている.
- ▲ ■ Robust Control of Robot Manipulators under Parameter Perturbation and
External Disturbance with Adaptive Gravitational Compensation
RIKEN・Yingjie YIN Nagoya Univ.・Kazuya OGATA, Yoshikazu HAYAKAWA
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We consider the tracking problem for robot manipulator with unknown and time-varying and disturbances belong to L2. Proposed state feedback adaptive robust controller consists of a nonlinear compensation based on nominal parameters, a linear and a nonlinear state feedback, and an adaptation algorithm for adjustment of the gravitational parameters. The effects of time-varying parameters and disturbances on the tracking performance can be attenuated within a prescribed level. And asymptotic tracking can be achieved for vanishing disturbances, constant parameters, and set point problem. By adding feedback input to penalty variable, high gain feedback can be strategy avoided.
- ▲ ■ ニューラルネットによるHamilton-Jacobi方程式の解法と非線形システムの最適フィードバック制御則
慶大・志水清孝,中山慶一,松本周平
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本論文ではニューラルネットを用いた状態フィードバック型コントローラを,非線形システムの最適レギュレータ問題に対して考えている.非線形の最適フィードバック制御則は,Hamilton-Jacobi方程式を3層ニューラルネットで解くことにより求められる.Hamilton-Jacobi方程式の解である値関数は,最適制御器を構成するのに必要である.Hamilton-Jacobi方程式の近似解を得るために,われわれはニューラルネットの結合重み行列としきい値を決定するような最適化問題を解く.結合重み行列としきい値に関する勾配関数がLagrange未定乗数法によって明快に計算され,ニューラルネットの学習に用いられている.またわれわれはニューラルネットによるHamilton-Jacobi方程式の近似解が,求める値関数に収束するような工夫をする.種々の非線形システムに対するシミュレーションによって,提案手法の有効性が確認された.
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- ▲ ■ ディスクリプタ表現を利用した多目的ゲインスケジューリング―LMI非共通解からのアプローチ―
舞鶴高専・川田昌克
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ディスクリプタ形式のLPVシステム対するゲインスケジューリングでは,従来,ディスクリプタ変数を状態変数のみに選ぶことが多かった.この場合,パラメータpに関して高次のパラメータ依存LMIを解く必要があり,変動(p,p2)を保守性なく凸多面体で囲むことができないため,有限個のLMIに帰着すると各設計仕様を保守的に評価してしまうことになる.それに対し,ディスクリプタ変数を単に状態変数とするのではなく,状態変数の時間微分などもディスクリプタ変数に含ませることによって,各設計仕様に関するパラメータ依存LMIをpに関する1次式で表わし,有限個のLMIに帰着する際の保守性に対処することが提案されている.
また,多目的制御を行う場合,各設計仕様に関するパラメータ依存LMIを連立させる必要があるが,従来の方法では,本来共通でなくてもよい解も共通としているため保守的な設計となる.一方,下村らは状態空間表現の枠組みであるが,LMIの共通解をコントローラのゲインのみとし,収束が保証される反復計算により保守性の少ない設計法を提案している.
本論文では,下村らの考え方をディスクリプタ形式のLPVシステムに拡張し,保守性の少ない多目的ゲインスケジューリング(特に,極配置条件つきH∞制御を実現する手法を提案する.提案法では,従来の結果と異なり,ディスクリプタ変数の選び方を工夫してコントローラのゲインを見かけ上,定数とする.その結果,共通解をコントローラのゲインのみとすることが可能なパラメータ依存LMIはpに関して1次となり,有限個のLMIへ帰着する際の保守性に対処できる.また,倒立振子への応用した実機実験により提案法の有効性を検証する.
- ▲ ■ 擬似極配置法によるPIDコントローラ調整法
慶大・志水清孝,本城仰太,山口 毅
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本論文は新しいPIDコントローラ調整法に関するものである.制御対象は1入力1出力の可制御・可観測なシステムとする.本論文の前半部分では2通りの方法で最適サーボ問題を考えている.それぞれの方法で最適状態フィードバック則が最適レギュレータの理論によって求まり,このときの閉ループ系の最適な極が計算される.後半部分では,PID制御則による閉ループ系の極を用いたコントローラ調整法を考えている.状態フィードバック則とは違い任意極配置はできないが,PID制御による閉ループ系の極をできるだけ最適な極に近づける問題を考える.この手法をわれわれは擬似極配置法と呼ぶ.この問題は等式付非線形計画問題となるが,外点ペナルティ法などによって解かれる.最後に5次元安定限界システムに対するシミュレーションの結果を報告し,本論文の有効性を示す.
- ▲ ■ 大型宇宙構造物の変位の簡単な動的フィードバックによる最適制御
神戸市立高専・小林洋二,阪大・池田雅夫 神戸大・藤崎泰正
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本論文では,センサ/アクチュエータ・コロケーションされた大型宇宙構造物の位置と姿勢の制御問題を対象として,宇宙構造物の剛体モードが可制御かつ可観測であることを前提に,藤崎,池田,三木によって提案された変位の簡単な動的フィードバックを用いて最適レギュレータを構成できることを示している.そのために,まず,藤崎,池田,三木が提案した,構造物の変位出力のみを入力とするコントローラを,変位出力とともに構造物への操作入力をも入力とする形に等価変換する.そして,得られた閉ループシステムが最適レギュレータとなるためにコントローラのパラメータが満たすべき条件を与えている.つぎに,この制御則によって制御されたサブシステムを,バネとダンパで柔結合することによって構成される閉ループ全体システムを,サブシステムごとに分散制御する場合についても閉ループ全体システムが最適レギュレータとなるために局所コントローラのパラメータが満たすべき条件を与えている.あわせて,本論文で提案する変位の簡単な動的フィードバック制御とDVDFB(Direct
Velocity and Displacement FeedBack)制御の関係を明らかにしている.
- ▲ ■ 規範モデル追従形スライディングモード制御を用いた自動車用空調システムのための圧縮機可変容量制御
能開大・島田 明,千葉大・野波健蔵,甲斐 勇
セイコーインスツルメンツ・時 永偉,井尻 誠,鈴木静一
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自動車用空調システムのヒータによる再加熱,クラッチの開閉,駆動トルクの減少を目的として,圧縮機の容量制御が考案され,普及が図られているが,現状の容量制御の多くは,試行錯誤によりゲインを調整するPID制御を用いており,数学モデルを用いないため,ゲイン設定値の根拠に欠け,不具合時の対策が立て難い.同システムの数学モデル化も多くの研究者たちにより行われているが,システムが複雑であり非線形性も強く,数学モデルを制御系設計に用いることができる形式での表現が容易でない.システム同定と現代制御理論とを組み合わせた制御実施例も報告はされているが,制御系がかなり複雑な構成となり,複数のセンサを必要とする問題も挙げられる.
これらの問題点を解消するために,本論文では,自動車用空調システムを1つの集中定数モデルとしてとらえ,システム同定理論を用いてモデリングを行い,得られた数学モデルを未知外乱の存在を前提としたノミナルモデルと位置付け,外乱オブザーバを併用した規範モデル追従形スライディングモード制御系および同制御系の各状態量の実機に即した初期値設計法を提案し,シミュレーションと実験によりその有効性を示すものである.
- ▲ ■ 車両操舵系に対する構造系とロバスト制御系の同時最適設計
筑波大・河辺 徹
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本論文は,自動車の4輪操舵システムを対象に,構造系とロバスト制御系の同時最適設計法とその効果について考察したものである.まず,同時最適設計問題のための評価規範として,入力偏差と操安性キャパシティの両方にペナルティーをもつ新たな評価関数を提案する.続いて,操安性キャパシティが操縦性に対する指標であると同時に構造系の最適設計のための規範であり,一方,入力偏差が横滑り0化制御という安定性,乗り心地性の指標であるとともに,おもに制御系設計のための規範であることを明らかにする.そして,この両者を含む評価関数を用いることで,構造系とロバスト制御系が同時に設計できるだけでなく,安定性と操縦性の2つの仕様に対して高性能な4輪操舵車両を設計することが可能となる.さらに,定式化された設計問題はいくつかの制約条件を伴った多峰性関数を目的関数とする最適化問題となるため,これを効率的に解くための解法アルゴリズムとして適応符号化戦略を用いた遺伝的アルゴリズム(GA)を用いる.
最後に,提案手法による設計例を示すとともに,シミュレーションにより,従来法によるいくつかの設計結果との比較を行い,本手法の有効性を示す.
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- ▲ ■ ILQ法による永久磁石同期モータの最適電流制御
九州大・高見 弘
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永久磁石(PM)モータはブラシレス構造で特別な励磁機構を必要とせず,メンテナンスフリーであり,近年,PMの高性能化と制御技術の高度化によって,小型・軽量で高性能,高効率なPM同期モータの応用が急速に拡大している.しかし,制御周期が比較的長い鉄道車両などへの応用では,制御遅れによる性能低下や不安定現象を防ぐために,遅れ要素をもつ非干渉化補償によってdq軸システムを厳密に非干渉化する必要がある.
ILQ設計法は,LQ問題の解を重みを与えずに簡単な極配置計算から求める方法で,各入出力間の伝達関数が漸近的に個別に設定でき最適性も保証され,従来の制御系設計法にはない見通しのよい制御系を構成できる.
著者は,ILQ設計法によって,PM同期モータの電流制御系の最適解と最適条件を解析的に求め,ILQ制御則には変動の大きい電機子巻線抵抗がパラメータとして含まれず,従来のPI制御に比べ非常にロバストであることを明らかにした.
本論文は,電流のステップ応答によって,すべてのモータパラメータの変動に対する制御系のロバスト性を検討し,ILQ最適電流制御系が電流制御に対して非常にロバストであり,優れていることを明らかにする.さらに,高精度トルク制御への適用において,2個のパラメータのみ同定すればよいことを明らかにする.
- ▲ ■ シグモイド型パルスジェネレータを取り入れたPulse-Coupled Neural Networkによる注視点探索法
埼玉大・渡辺 隆,田中 勝 産総研・栗田多喜夫,埼玉大・三島健稔
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本論文では生体情報処理システムを模倣した注視点探索法について提案する.猫の視覚皮質で発生するニューロン群の同期発火現象を説明するモデルとしてPulse-Coupled Neural Network(PCNN)が提案されているが,本論文ではこのPCNN内部で使用されているステップ関数をシグモイド関数に置き換えて注視点探索法に利用した.このシグモイド関数を利用したモデルの出力は0から1までの連続値となり,この出力は出力パルス列に含まれるパルスの数に比例したものであるとみることができる.
シグモイド関数を利用したPCNNの有効性を示すため,PCNNを利用した注視点探索法について実験を行った.オリジナルのPCNNを利用して提案されている注視点探索法は,PCNNの出力に対してローパスフィルタを作用させ,注視点を選択している.これは,オリジナルのPCNNの出力は0もしくは1に限られているためである.一方,シグモイド型PCNNを利用すると,出力は0から1の連続値で得ることができる.このため注視点探索法においては,オリジナルのPCNNは前処理として利用されていたが,シグモイド型PCNNは中心的機構として利用することができる.
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- ▲ ■ 湿式ガスメータの水蒸気圧補正の研究
シナガワ・小林 駿,森田謙三 産総研・高本正樹,工学院大・小宮勤一
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湿式ガスメータは,回転計量ドラムと置換封液(水またはオイル)によりガスを計量するものである.計測原理上ガスの粘土・比重が変わってもガスを正確に計量できる.また,計量範囲が広い等の特徴を有し,幅広く使用されている.
平成5年の新計量法施行により,流量標準供給としての湿式ガスメータ(湿式基準器)の精度が問われるようになってきた.中でも,実ガスの計量にあっては,封液がオイルの場合にガスが溶解するため水が使用されている.旧計量法では,水封式の湿式ガスメータの場合,水蒸気圧補正値について規定しているが,その裏付となる資料がないため,水蒸気圧補正を実施していない使用者も多いこともわかった.
このたび,中小企業総合事業団により委託開発の中で実験を行い,水蒸気圧補正に関する湿式ガスメータのメカニズムの解明と水蒸気圧力補正式を実験により確立できた.
広く使用者にご活用いただき,計量精度の向上のために役立つことを目的とした論文である.
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- ▲ ■ ストーカ式ごみ焼却炉の周期燃焼制御
愛知県立大・渡邉教博
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ストーカ式ごみ焼却炉ではフィーダの前後進によってごみを炉内へ投入し焼却し,その際発生した燃焼熱によってボイラを焚き,蒸気を発生させている.そして,蒸気流量を常に目標値の近傍に保つようにリレーを用いてフィーダのオンオフ制御を行い,ごみの供給量を制御している.この際,カオスが発生することがある.ごみ燃焼制御においてカオス振動は好ましくない挙動であるため,カオスが発生しないような新たな制御系の開発が望まれている.フィーダの運転機構から蒸気流量を常に一定値に保つ制御は不可能である.そのため,本論文では蒸気流量そのものを制御するのではなく,フィーダの運転周期当たりの蒸気流量の平均値を目標値に保つ制御方策を提案している.数値シミュレーションによる検討の結果,提案手法を用いるとカオス振動を避けることができるとともに,従来の制御方法に比べて蒸気流量の変動幅を約1/8に抑えることができた.また,目標値変化に対する応答特性および外乱に対する特性も大幅に改善された.
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