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 論文集抄録
 

論文集抄録

〈Vol.38 No.3 (2002年3月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文] [ショート・ペーパー]
■ 流体温度測定プロープがオリフィス流量計の差圧測定に与える影響

東京ガス・温井一光,工学院大・小宮勤一, 東工大・香川利春

 一般的に流量測定はいろいろな分野で最も多く測定される量であり,その中でも測定可能な流体の種類,流量範囲も広く,ある不確かさで測定できるオリフィス流量計を都市ガスのガス製造装置の流量制御,品質管理用の流量測定にも使用している.
 オリフィス流量計の流量値の計算には流体の粘度,密度などの物性値が必要であり,気体の流量測定には,温度,圧力の測定値の不確かさが流量値の不確かさに影響をする.
 オリフィス流量計の温度測定は温度プローブを配管内へ挿入することにより,流れに与える影響があるため,できるだけオリフィスの設置位置から離し,特に下流側に設けることが推奨されている.このため,温度測定位置とオリフィス取付け位置が離れるため,温度差の発生を防ぐこと困難である.この温度値がオリフィスの設計条件の値から偏ってしまい,流量値に大きな不確かさをもたらすことになる.
 一方,近年の技術の進歩によるシース型温度センサをオリフィス近傍に取付け,温度プローブがオリフィスの差圧測定に影響を与えることがなく温度を測定することが可能なことを示し,流量値の不確かさの軽減に寄与することのできる温度プローブと一体型のオリフィス流量計を提案する.


■ Wave-Based Analysis and Wave Control of Damped Mass-Spring Systems-Characterization from the Propagation Constants-

Nagoya Univ.・Hirotaka OJIMA, Kenji NAGASE and Yoshikazu HAYAKAWA

  This paper concerns with active vibration control of non-uniform damped mass-spring systems by the wave control. Especially, this study considers clarifying a class of a damped mass-spring system that can be analyzed by the wave-based analysis. Because the wave properties are determined by the propagation constants, three conditions for the propergation constants are considered. Necessary and sufficient conditon for the physical parameters to hold the three conditions is obtained. Moreover, for this class of damped mass-spring systems, properties of the propagation constants and the characteristic impedances, which achieve the impedance macthing, are studied. Numerical examples are shown to prove efficiency of the impedance matching controller.


■ 区間行列変動を有する行列二次システムのロバストD-安定化を達成するフィードバック制御器の設計

山口大・藤井文武,和田憲造

 本論文では,区間行列変動を有する行列二次システムに対して閉ループ系の全特性根を複素左半平面上の与円の境界を含まない内部に配置する,ロバストD-安定化を達成するフィードバックコントローラの設計について検討した.
 提案する手法では,まず,係数行列の区間変動として与えられる二次システムの不確定性を,該二次システムに対応して定まる二次多項式係数の区間変動として評価することで,考察対象の設計問題が区間多項式のロバストD-安定化問題に帰着されることを示した.ついで,これに筆者らが従前の研究で得た,多項式の全零点が複素左半平面上の与円内に拘束される場合にその係数が満たすべき条件不等式を組み合わせることで,設計の検討を行った.
 これにより設計条件としてフィードバックゲインに関する無限個の非線形連立不等式群が得られるが,極配置目標領域の円がKharitonov領域であることに留意すれば,最終的には16個の連立不等式を解くことが必要十分であると示される.
 最後に提案した設計アルゴリズムの実施例として,電動車椅子に対するモデルフォローイング制御系の設計例を示した.


■ 周波数応答制約のあるl1制御への双対定理の適用

阪大・太田快人

 本論文は,複数の制御仕様を満足させる多目的制御の1つである周波数領域の制約のついたl1最適制御について考察する.これは,閉ループ伝達関数の周波数点でのゲインの大きさを制約しながらインパルス応答のl1ノルムを最小化する補償器を計算する問題である.この問題に関して従来は無限次元問題となる主問題と双対問題を構成して,それぞれを有限次元変数で近似して解く方法が提案されていた.しかし双対問題の変数を有限長で打ち切る近似をすると変数の長さをいくら大きくしても双対問題の値は主問題の最適値に収束せず双対ギャップが生じる例が報告されている.本論文では,双対ギャップを生じない双対問題の有限次元近似の方法を新たに提案する.双対ギャップのない有限次元近似が可能になると主問題の有限次元近似と併せることにより,最適値との差を任意の値以下におさえる補償器を有限次元空間で計算できることになる.理論展開には,いわゆる階数補間条件の性質が重要であることがわかる.この結果は,主問題の実行可能解の集合と原点を中心とした球の間の分離超平面を探す可分な空間を構成していると解釈することができる.


■ 時変系のための一般化最小分散制御―時刻シフトをともなう多項式演算を取り入れたDiophantine方程式の適用―

防衛大・土井正好,森 泰親

 一般化最小分散制御(GMVC)は,提案当初,時不変系において開発されてきた.このため,時変系に適用させるにはプラントパラメータの時間変動に合わせた制御則を必要とする.しかし,オンラインで変動パラメータを考慮しただけでは,制御量を目標値に追従させることができない.なぜなら,予測制御手法で用いられるDiophantine方程式および導出される制御則中には多項式積が存在し,時変系において従来の制御則ではこの積を正確に計算できないからである.本論文では,時変多項式積の計算アルゴリズムについて解析する.また,GMVCのサーボ系を設計するために前置補償器を設置するとフィルターΔを含む時変多項式積が現れる.このときの計算アルゴリズムの改良についても考察する.提案する制御則は従来に提案されたDiophantine方程式を用いない時変系用GMVCと比較して,雑音特性において優れていることを明らかにする.


■ 常圧蒸留装置のワンスポットチューニングPID制御

出光興産・藤井憲三,広島大・山本 透

 近年,コンピュータ技術や制御技術の急速な発達により,モデル予測制御に代表される高度な多変数制御技術を適用して,さまざまな制約のもとで,最適に制御する制御系設計が展開されている.しかし,システムが高度化するにつれ,制御システムのブラックボックス化が進み,運転員の理解を得ることが困難になってきている.また,モデル予測制御等によりプラント全体の制御を実施する場合,制御技術とプロセス技術に精通した技術者が必要となり,経験を積んだ専門家による設計開発が不可欠であった.このことから,制御システムの開発費用や保守費用がかさみ,投入費用に見合った効果が期待できる装置のみへの適用とならざるをえなかった.
 本論文では,複雑で運転が困難なプラントでも,安定化ができる実用的なワンスポットチューニングPID制御方式を提案する.本手法は,本来プロセス制御が目指すべき装置全体の安定化や,自動化に対して有効であるばかりでなく既存資産(DCS)を有効に活用できることや,開発期間や開発費用の大幅な削減が実現できるという利点を有している.


■ 技術試験衛星[型による軌道上システム同定実験のための予備検討―定常制御中のステップ応答時の姿勢情報を用いた同定―

航技研・山口 功,葛西時雄,電通大・木田 隆 NASDA・児子健一郎,砂川 圭,池田正文,井川寛隆

 2004年頃に打上げを予定している技術試験衛星[型(ETS-[)は移動体衛星通信技術や高精度時刻基準装置による衛星測位技術の習得を目指して開発が進められている静止3トン級の大型柔軟構造衛星である.その構造は外径約19mの大型メッシュ展開アンテナ2基と片翼約18mの大型太陽電池パネル2基が搭載される大型柔軟なものであり,全系の柔構造特性を地上試験で取得することができない.このため全系の軌道上での柔構造特性が同定できれば,設計時見積もりの柔構造特性の評価や制御系チューニングが可能となるものと期待される.そのため衛星打ち上げ後の初期の運用段階で軌道上システム同定実験が計画されており,衛星運用上,危険性が少なく,かつ効率的で,できる限り定常運用状態で実施可能な軌道上同定法について検討が重ねられている.本稿では定常制御中のステップ応答時の姿勢角や姿勢レート情報から衛星の柔構造特性パラメータを同定するための特異値分解を適用したアルゴリズムについて検討する.ここで検討しているステップ応答は通常の衛星運用時に得られるデータであり同定のために衛星を意図的に加振する従来の方法と比較して安全であり,効率的である.提案する手法の妥当性はETS-[の数値モデルを用いた数値シミュレーションにより数値的に確認する.


■ 伸展する宇宙構造物の安定性と安定化

電通大・岡野竜太郎,木田 隆

 大型の宇宙構造物は何個かに分割したモジュールを軌道上で組み立て,その後,一部を伸展させることによって構築される.このとき,伸展の途中でも構造物の姿勢が安定であることが望ましい.宇宙構造物は低軌道上に建造されることが多いが,低軌道上では重力傾度トルクが支配的な外乱トルクとなる.伸展しない衛星では重力傾度トルクを利用した受動的な安定化が行えることが知られている.しかし伸展する構造物は時変システムとなりこのような安定化は実現できない.そこで,本論文では時変フィードバックゲインをもつ状態フィードバック制御で伸展構造物を安定化することを考え,閉ループ系が漸近安定となるためにゲインが満たすべき条件を求める.閉ループ系は時変の係数行列をもつ2階行列微分方程式で記述される.このような方程式の安定性については,すでにいくらかの結果が報告されているが,いずれも保守的な条件を与えるものであり,われわれの制御系設計の目的にはそのままでは適用できない.そこで,新たに漸近安定となる条件を求め,それを使ったフィードバックゲインの設計法を示す.簡単な数値シミュレーションを行い得られた設計法を検証する.また宇宙構造物の物理パラメータにモデル誤差がある場合にも安定化制御則を,同様の方法で設計できることを示す.


■ Boundary Location Using Control Theoreic Splines

Tokyo Denki Univ.・Satoru TAKAHASHI, Washington Univ.・Bijoy K. GHOSH and Texas Tech. Univ.・Clyde F. MARTIN

  In this paper we use the theory of dynamic splines to reconstruct from noisy directional data the boundaries of a room. We show that we can determine the location of the corners and walls of the room with high accuracy. The dynamic splines that are used are periodic and are obtained by optimizing over both control and initial data.


■ ジレンマゲームにおける価値観の発生とその解析

筑波大・山口佳樹,セコム・山内 敦 筑波大・丸山 勉,星野 力

 本論文では,社会形成する各個体により集団の価値観がどのような過程で形成され,また各個体の行動が形成された集団の価値観からどのように影響を受けるのか,定量的な解析手法を提案し解析することを試みた.
 現在までに行われてきたジレンマゲームを用いた研究は,モデル内の各個体が行動選択にジレンマをもつ点では人間社会をモデル化しているが,ゲームルールである利得行列は常に一定であるため人間社会において常に変動する価値観をモデル化しているとは言いがたい.
 そこで利得行列が固定である従来のモデルとは異なり,本論文では囚人のジレンマの利得行動を進化させることで利得行列が個体の戦略に合わせて進化を行えるようにしている.
 このモデルでは,個体としてIPD(Iterated Prisoner's Dilemma)の個体を,集団の価値観としてIPDの利得行列を用いている.また本論文ではそれぞれの進化を,「Lindgrenのモデルを用いて進化する個体から構成される層(個体層)」と「遺伝的アルゴリズムを用いて進化する利得行列から構成される層(利得行列層)」の2層に明確にわけることで,個体と価値観の振る舞いをより詳細に解析できるようにした.
 本論文はこのモデルの実験を通して,さまざまな利得行列の進化に各個体がどのような影響を与え,またその利得行列の進化によって個体がどのような過程で進化していくのかを解析した.


■ プロセス制御におけるマルチエージェントシステムの合意形成手法

東大・片岡一朗,中田圭一,古田一雄

 本稿では,プロセス制御のためのマルチエージェントシステムの構成法およびエージェントの信用度を合意形成によって算出するモデルを提案し,適用性について検証する.エージェントの信用度は,評価可能な他のエージェント間の意見を統合することにより決定する.信用度計算モデルは重心モデルと反射効果モデルを提案し,モデルの効果についてシミュレーションを行った.プロセスとして,タンクの液位を一定に保つことを目的とするタスクを設定し,タンクに取り付けられたエージェントの故障が発生したとき,他のエージェントが信用度を計算し,故障への対応を行う.故障に対して,診断エージェントがプロセスと関係する制約式をもとに他のエージェントに対して評価を行い,信用度を算出することで故障同定する.エージェント故障と区別して,プロセス異常を同定するためにタンクエージェントを設定し,診断エージェントからの評価をもとにエージェント故障かプロセス異常かの判断を行う.シミュレーションの結果,エージェントの故障が発生した後,他のエージェントは故障したエージェントの信用度を低く評価することにより,制御への影響を回避することを示した.また,プロセス異常が発生したとき,タンクエージェントの信用度が低下することでプロセス異常を検知することができた.


■ 歩行介助を目的とする人間―ロボット協調系における共創出過程の解析

東工大・武藤 剛,三宅美博

 人間は相互に適応し合うことを通して,さまざまな協調動作をリアルタイムに創り上げることができる.本研究では,このような人間―人間系に特徴的である「共創出」過程を理想として,人間―ロボット協調系の新しい在り方を提案することを目的としている.特に,本論文では,われわれがすでに提案してきた共創出モデルを実装した歩行介助ロボットを具体例として,そのような協調系を特徴づける共創出ダイナミクスの実験的解析を行った.その結果,歩行介助ロボットと人間の協調歩行において,両者の間に類似した時間発展が実現されることが示された.ロボット側においては,共創出モデルの構成要素である身体モデルと内部モデルの相互拘束プロセスとしての創出プロセスが観察されたが,それと対応するプロセスが,人間側における脚の歩行運動と腕振り運動の間においても観察された.また,これらがいずれもサイクリックな過程であることと,人間とロボット双方においてほぼ同期しながら進行していることが明らかになった.これらの結果は,創出プロセスが両者の間でタイミングを合わせつつ共創出的に進行していることを示すものであり,共創出モデルの妥当性を示唆するものである.


■ 回転系に固定された回転軸と回転角で表わした回転モデル

長谷川律雄

 剛体の回転運動はEulerの運動方程式で記述され,この方程式を解くと角速度ベクトルが得られる.角速度から回転を求める微分方程式は回転のモデルごとに異なる.
 古典力学において,剛体の回転は回転軸(Euler軸)とその周りの回転角(Euler角)によって表わされる.この回転軸は物体に固定された軸でなく,回転運動によって決まる軸である.しかし,ロケットや人工衛星の回転運動を扱うとき回転系に固定された回転軸とその周りの回転角で表現した方が実際の回転運動を理解しやすい.
 この論文では回転系に固定された回転軸の方向を表わす2個のパラメータと,その回転軸周りの回転角との3個のパラメータで回転を表わす方法を示し,この回転モデルの一般的な微分方程式を導いた.


■ ILQ法による永久磁石同期モータ最適電流制御系の一設計

九州大・高見 弘

 永久磁石(PM)の高性能化と制御技術の高度化によって,小型・軽量で高性能,高効率なインバータ駆動PM同期モータの応用が急速に拡大している.制御周期が比較的長い鉄道車両などへの応用では,制御遅れによる性能低下や不安定現象を防ぐために,dq軸干渉したシステム方程式を厳密に非干渉化する遅れ補償を付加する必要がある.
 ILQ設計法は,LQ問題の解を重みを与えずに簡単な極配置計算から求める方法で,各入出力間の伝達関数が漸近的に個別に設定でき最適性も保証される.したがって,従来の制御系設計法にはない見通しのよい制御系を構成でき,遅れ補償を付加することなく,高速でシンプルな制御系を構成できる.
 本論文は,ILQ設計法によって,PM同期モータの電流制御系の最適解と最適条件(ゲイン調整パラメータの下限)を解析的に求め,ゲイン調整パラメータに対する根軌跡法を用いてILQ最適電流制御系の特徴を明らかにする.そして,従来のPIサーボコントローラとILQ設計法で設計されたILQサーボコントローラによる電流制御の応答を比較することによって,ILQ設計法の優位性を示す.ILQサーボコントローラの制御則には変動の大きい電機子巻線抵抗がパラメータとして含まれず,ロバストであることを明らかにする.


■ Two-Stage Tabu Search for Solving Parallel Machine Problems

Kyoto Inst. of Tech.・Yuedong XU, Kyoto Univ.・Yajie TIAN, and Kyoto Inst. of Tech.・Nobuo SANNOMIYA

  Two-stage tabu search is proposed to solve parallel machine problems. At the first stage the candidate list is employed and the jobs assigned to each machine are ordered by NEH. At the second stage the best solution obtained at the first stage is improved by enlarging its neighborhood


■ 時系列予測ネットワークにおける長期変動推定部の検討

トム通信工業・古屋貴之,拓殖大・金田 一,小川毅彦

 現在までに得られた時系列データから将来のデータを予測することは重要な問題であり,これまでにさまざまな方法が提案されてきた.最近では,ネットワークの学習能力に着目して,ニューラルネットワークを用いた予測も行われるようになってきた.一般にフィードフォワード型の多層ネットワークでは,与えられた学習データ以外に汎化能力がどこまで期待できるのかという問題点がある.この問題を解決するために,著者らは入出力ポートの荷重値として解が得られるAnswer-in-weights構造のニューラルネットワークの研究を行っている.本稿では,Answer-in-weights構造を用いた時系列予測ネットにおいて,長期変動推定部の検討を行い,予測結果の改良を試みた.その結果,従来のステップ状関数群から三角関数を含む連続関数群を用いる方式に変更したことで良好な予測結果を得ることができた.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会