論文集抄録
〈Vol.38 No.2 (2002年2月)〉
論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)
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タイトル一覧
[論 文]
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■ ジャイロ式力(フォース)測定器の開発―理論解析とシミュレーション―
九工大・児玉一裕,大和製衡・安達元之山武ビル・神村一幸,小山高専・黒須 茂
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本論文は,3次元的に加わる微小な力を測定するために,ジャイロスコープを用いた力(フォース)センサを開発し,力センサとしての可能性を確認するための基礎資料を得ることを目的としている.そのために測定原理に基づき動作方程式を導き,その力学的解析から得た力センサに関する知見をまとめている.
力測定の原理はすでに著者らが公表した「ジャイロ式はかり」を3次元の力センサに改良したもので,「風見鶏」の原理を利用して,サーボ系によって力の入射方向を示すように制御して力の大きさを知るものである.動作方程式から測定器としての特性値が角運動量,慣性モーメントなどの力学量と制御ループのゲインによって決まり,まさつなどの未知外乱の影響を受けないことを示している.また,力学的な解析から測定器のもつ系統的誤差を定量的に明らかにし,主たる誤差がサーボ系による入射角の推定誤差から生ずることを確認している.理論的に得られた測定精度は,入力0.3[N]の力に対して,力の大きさでは10-7[N]以下の精度,力の入射方向は0.1°以下の精度である.また,測定時間は10[s]以内である.
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■ M配列位相差の高速検出法
熊本大・柏木 濶,くまもとテクノ産財・椛 一喜
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本論文では,偶数次のM配列にはオール0の列が存在するという性質と,あるM配列から位相が遅れたM配列は,元のM配列の行,列を操作して得られるという性質を利用して,2つのM配列間の位相差を高速に求める方法について述べる.2つの方法を提案しており,1つは,M配列のオール0の列の位置が一致するまで一方のM配列の列を右シフトし,そこから行が一致するまで行を下方シフトすることで位相差を求める行一致法,他の1つは,オール0の列の検出に列の最小値を用い,行の一致に行同志の相互相関関数が最大となるように行を下方シフトする方法を用い,雑音に対しても有効な行相関法である.行一致法と行相関法の位相差検出の速度については,いくつかの偶数次の原始多項式を用いて通常の相関法と演算時間を比較した.行相関法の耐雑音性ではノイズの割合を変化させた14次のM配列において,通常の相関法と位相差の検出の可否を比較するシミュレーションを行った.その結果,位相差検出速度は通常の相関法より行一致法と行相関法が高速であるということ,行相関法の雑音に対する位相差検出は,通常の相関法にさほど劣らないということがわかった.本方法は,画像処理等においてM配列同志の位相差を求める高速な方法として幅広い応用が期待できる.
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■ 回転磁界と差動磁界を用いたモーションキャプチャの開発
東北大・江村 超,熊谷正朗,野村亮太
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本論文は,バーチャルリアリティを目的として開発した新方式による磁気式モーションキャプチャに関する論文である.本手法では,検出対象を含む空間に回転する磁界と,位置により振幅の異なる磁界(以下,差動磁界という)を生成し,検出対象に取り付けたピックアップコイルに誘起した信号を処理することで,6軸の姿勢角と位置を検出する.
姿勢角の検出には回転磁界を用いた.回転磁界中に置かれたピックアップコイルに誘起した信号の位相は,その姿勢角に依存するので,励磁する原信号と相関演算を行い,位相差を検出することで姿勢角を求める.位置の検出には差動磁界を用いた.ピックアップコイルに誘起する信号の振幅は,位置とその姿勢角によって定まるため,同様に相関演算によって振幅を求め,演算によって位置を得る.これらの計測は複数の周波数を用いて同時に行うため,応答性が高い.また,磁界の生成には空間を囲む立方体形状の大型励磁コイルを用いるため磁界はほぼ均一となり,計測範囲を広く確保できる.
本手法では姿勢角が高精度に直接得られ,その精度は検出空間の大きさに依存しない.そのため,頭部の姿勢検出が必要なバーチャルリアリティ用途に加えて,人体の運動計測にも応用可能である.
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■ パラメータ依存リャプノフ関数の幾何学的方法
千葉大・大形明弘,山本将利,劉 康志,斎藤制海
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本論文では,実スカラーの時間的に変化しない不確かさをもった線形システムに対するパラメータ依存リャプノフ関数を求める新しい方法を提案する.まず始めに,不確かなシステムが与えられたときに,それに対するパラメータ依存リャプノフ行列が,すべてその上の曲線としてあらわされるような曲面を定義する.つぎに,不確かなシステムが安定であるための必要十分条件を,この曲面の部分集合の弧状連結性として導く.さらに,その曲面上に,あるリーマン計量を定義すれば,パラメータ依存リャプノフ行列が測地線として求まることを示す.この方法は従来の方法と違い,パラメータ依存リャプノフ行列の不確かなパラメータに関する構造を制限していない.実際に測地線としてパラメータ依存リャプノフ行列を求めた数値実験の結果を示す.またこの方法を応用して,不確かなシステムのL2ゲインを保証する数値実験,さらに不確かなシステムを安定化する状態フィードバックゲインを求める数値実験の結果も示す.
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■ 動的計画法による一般化予測制御系とその等価性
神奈川大・江上 正,新潟大・愛田一雄,北大・土谷武士
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本論文では通常の一般化予測制御(GPC)で用いられる評価関数に対して,動的計画法によるGPCを導出している.そして状態空間法による従来型のGPCの制御則を分解して,プラントの拡大系の次数(制御対象の次数+1次)の再帰型Riccati方程式を用いて表現することで両者を比較し,両者の完全な等価性を一般的に示している.これは同一の最適化問題を解くことに相当するが,得られた数式上の表現が大幅に異なっているため,従来この等価性を明確に示した例は見られていない.さらに従来法でGPCを設計する場合には,評価区間に比例した次数の逆行列を求める必要があり,この次数が大きくなるのは設計上望ましいことではない.しかし本論文の結果を用いることにより,評価区間に関係なく常にプラントの拡大系の次数の制御則でGPCが設計できることになる.
つぎにGPCでは一般に安定性が保証されないが,本論文では通常のGPCに用いられるものに新たに制御ホライズンでの終端項を付加した評価関数を用いて,動的計画法により安定性を考慮したGPCの導出を行い,この特殊な場合が予見制御になることも示している.これによりGPCと予見制御との関係も完全に明確としている.
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■ 線形放物形分布系に対する出力安定化
神戸大・南部隆夫
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線形放物形分布系に対する通常の状態安定化においては,よく知られているように,再配置したい固有値λi,1●i●nに対応する可観測行列Wiと可制御行列Hiに対して,互いに独立した条件:rankWi=rankHi=mi,1●i●nを仮定することにより,安定化則が構成できる(miはλiの多重度).そのためには,十分な数Nの観測重み関数とアクチュエータが必要である.すなわち,N●max1●i●nmiとなるように設定する必要がある.それでは,Nが小さい場合(N
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■ ハミルトン・ヤコビ不等式に基づく非線形システムの幾何構造
東大・山本直樹,津村幸治
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非線形H∞制御問題を解くためには,ハミルトン・ヤコビ(HJ)不等式なる1階の偏微分不等式を求める必要がある.本論文では,この不等式の解が集合をなすことに着目し,2つの独立な解析を行った.まず第1に,HJ不等式の解が存在するような「可解領域」を定義し,非線形H∞制御問題の制御仕様であるゲインパラメータに関する可解領域の大きさの単調性を示した.つぎに,数値的に得ることが容易な「準可解領域」を定義し,その性質および存在条件を調べた.準可解領域は可解領域を含むものであり,「制御が不可能である点」についての情報を与えるものである.この領域は可解領域と同様ゲインパラメータに対して単調性を有し,また,弧状連結である.第2の解析として,HJ不等式の解が集合をなすことを利用して,状態空間に非ユークリッド的な計量を導入し,与えられた(アファインな)非線形システムを,ある拡大された多様体の部分多様体と対応付けた.このとき,部分多様体の曲率はHJ不等式の解の等高線の曲率と対応付けられる.さらに,SISO線形システムに対応する部分多様体が平坦であることを示した.また,2次の場合に具体的に計量を構成し,例題に対して数値シミュレーションを行った.
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■ 保守性を軽減したむだ時間システムの線形行列不等式型ロバスト安定条件
神戸大・西平直史,和歌山大・安田一則
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本論文では,線形むだ時間システムに対して,保守性の少ない線形行列不等式(LMI)型のロバスト安定条件を与えている.このようなLMI型のロバスト安定条件は,数値計算の効率がよいことから,従来から多くの研究がされているが,LMIで条件を与えることを優先させた結果,ほとんどが保守性の大きいものになっている.そこで,保守性を大きく緩和させるために,対象とするシステムの他に未定の線形システムを導入し,これらによって構成される拡大系を用いて安定条件を導出するというアプローチをとった.この補助システムはマルチプライヤのような働きをし,これによって供給された余分な変数が保守性の軽減を実現していると考えられる.そして,このことを確かめるために,数値例とスカラ系を用いて従来の条件と比較し,得られた安定条件の有効性を確認している.
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■ メモリーレスフィードバックによる中立型むだ時間系の最適レギュレータ
徳島大・久保智裕
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本稿では,中立型むだ時間系に対しメモリーレスフィードバック則を構成するための一方法を提案している.そして構成される閉ループ系が漸近安定となるだけでなく,結果としてある評価関数に対する最適レギュレータとなることを示している.またその閉ループ系は有限次元最適レギュレータと同様に,あるクラスの静的非線形摂動またはあるクラスの動的線形摂動に対してロバスト安定性をもつことも示している.本方法では,ある有限次元の行列不等式の解からフィードバックゲインを計算するが,この解を線形行列不等式の解から計算する方法についても述べている.そして数値例を用い,本方法の有効性を検証している.本方法は遅れ型むだ時間系に対して著者らが提案した同様の方法を中立型むだ時間系に対して拡張したものになっている.
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■ トライアック駆動コンデンサモータの一解析法
群馬大・横塚 勉,石川赳夫,佐藤伸一,川島崇信
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トライアックでコンデンサモータを可変速運転する回路にはトライアックの接続位置によって3種類の方法がある.すなわち,トライアックを主巻線と直列に接続する主相制御,補助巻線と直列接続する補相制御,両相を並列接続して電源との間にトライアックを接続する両相制御がある.
コンデンサモータを正弦波電圧で駆動したときの特性は一般に対称座標法で解析するので,トライアック駆動時の特性も対称座標法で解析するのが望ましい.特性解析で最も基本となるのは制御相の端子電圧を正確に求めることにあり,OFF期間の誘導起電力を考慮して消弧角β,および正相電流I●P,逆相電流I●N等を求める.主相制御では,OFFの期間の端子電圧eTは,正相と,逆相回転磁界による誘導起電力eFに等しいとして,この電圧を,外部から印加すると考える.補相制御のeTは補助巻線相の誘導起電力eFAと,βにおけるコンデンサ電圧VCの和から求める.両相制御では,両相の誘導起電力の差V●Dを求め,両相巻線からなる閉回路にV●Dを挿入して対称座標法を適用する.
3つの回路について点弧角αおよびsとβの関係,αと制御相の端子電圧の関係等を求める.
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■ 周波数成形された出力フィードバックによるスライディングモード制御系とプロセス系の追値制御への応用
福岡工大・李 義頡,庄司文啓,鶴岡 久関東学院大・宮崎道雄,早稲田大・秋月影雄
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状態空間内に超平面を設定し,高速な切換機能をもつ制御入力により状態を超平面に拘束することによって,外乱やパラメータ変動にロバストな制御を実現するスライディングモード制御が注目され,モーションコントロールを中心にその応用が行われている.しかしながら,プロセス制御においても,目標値を時間の関数として与え,この時変目標値への敏速な追従性,またある種の制御対象における製品品質の劣化をもたらす温度のオーバーシュートの抑制,さらには化学プロセス一般における正確なモデル化の困難さやパラメータ変動に対するロバスト性の完備等の要請がある.
そこで本研究では,プロセス系への適用を念頭においた出力フィードバックによるスライディングモード制御系の設計法を提案するとともに,スライディングモード制御系の弱点の1つであるチャタリングの発生に対して,切換超平面を周波数成形することでチャタリングを抑制する.一般に制御対象の入出力数が等しいとは限らず,このとき等価制御入力を構成するためにMoore-Penrose逆行列を導入する.また,状態を任意の初期状態から超平面に到達させるための最終階層制御入力を定義し,その切換条件を導いている.さらに,実際の化学プラントの1つのモデルプラントを対象に追値制御実験を行い,提案した設計法の有効性を示している.
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■ 解候補の遺伝子表現を適応的に探索する共進化型遺伝的アルゴリズム
神戸大・村尾 元,山本晃生,玉置 久,北村新三
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本論文は解候補と同時にその遺伝子表現である染色体の探索を行う共進化型遺伝的アルゴリズムを提案する.提案手法は協調する2つの集団から構成され,一方は遺伝子の値を探索し,他方はその配列を探索する.解候補の染色体はそれぞれの集団に属する個体を組み合わせることで生成される.このとき,染色体は,これを復号化して得られる解候補が評価されるという意味で,評価の対象とはなるが,遺伝的操作の対象とはならず,遺伝的操作は各集団に属する個体に対して施される.よく知られたスキーマ定理に基づけば,短いスキーマは,遺伝的操作による影響を受けにくく,結果として,そのようなスキーマを含む染色体の将来における増加が期待される.このため,効率的な探索を行うためには,より良いスキーマがより短く記述されるように染色体を定義する必要があるが,一般的な遺伝的アルゴリズムにおいては,そのような染色体を予め,すなわち問題に関する先験的知識がない状態で決定しなくてはならない.提案手法では解候補の染色体に直接遺伝的操作を施さないため,遺伝的操作に頑健な遺伝子の配列を,解候補の探索とは独立に探索することが可能である.論文中では,遺伝子の値とその配列から解候補の染色体を生成する代表的な2つの手法を定式化し,スキーマ長の観点から議論を行った.またこれらの手法をGoldbergが提案した3ビット騙し問題に適用した.計算機実験の結果,提案手法は同等の計算時間で単純遺伝的アルゴリズムより良好な結果を示した.また,進化過程における部分解の変化を解析し,提案手法の特にを適応的に獲得するという機能の有効性が確認された.
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■ グラフ上の波動による歩行パターンの生成に関する研究
東大・稲垣伸吉,東大/理研・湯浅秀男,東大・新井民夫
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本論文は,CPG(セントラル・パターン・ジェネレータ)モデルの構築方法を提案するものである.CPGは均質な神経振動子群であり,歩行運動における脚のリズム生成を行う.本手法におけるCPGモデルは,ネットワークの位相幾何学的構造に固有な波動パターンを生成する.さらに,ネットワークのエネルギーを変化することにより,波動パターンを遷移させる.このネットワークのエネルギーはある種の歩行誘発信号と対応する.
われわれはまず,CPGをグラフで表現し,2つの発展方程式系を導入する.1つは,ハミルトン系を構成する波動方程式であり,他方は勾配系である.前者は固有振動モードを生成する.この固有振動モードは歩行パターンと対応付くことになる.後者は,ポテンシャル汎関数の分岐現象により,固有振動モードの選択と遷移を起こす.そして,上記のハミルトン系と勾配系を合成した系が目的のCPGモデルとなる.
本論文では,12個の振動子(6脚×2)からなるCPGモデルが6脚の歩行パターンを生成できることを,コンピュータシミュレーションにより示す.そして,そのシミュレーションにおいて,歩行パターンの遷移を実現できることを示す.
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■ 操作者とのインタラクションを考慮した人工物モデリングに関するオントロジカルな考察
京大・須藤秀紹,川上浩司松江高専・堀内 匡,京大・片井 修
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近年,機能一辺倒の開発中心型の反省からユーザを中心とした設計の考え方が注目を集めている.この考え方に基づいた人工物の1つに,人工物と操作者の対話の成立を重視した対話型人工物を挙げることができる.対話型人工物の設計と運用に不可欠な基礎的考察として,われわれはすでに目的論的様相・因果論的様相・時間論的様相の視点から切り分けた対話型人工物の階層型表現モデルを提案している.本研究では,このモデルの中心的な概念である「操作」と「物理因果」に対してオントロジー工学で構築されているトップオントロジーに基づく考察を加え,それらの概念を規定するクラスを定義する.このモデルにおいて操作は「操作とその前後の状態」として表現されており,これらの概念は行為クラスと事実クラスのサブクラスとして規定される.また,物理因果は「物理因果連鎖網」を用いて表現されており,これらを構成する各事象に対する概念は状態クラスの,構造的成立条件に対する概念は事実クラスのサブクラスとしてそれぞれ導かれる.導入した各クラスを用いてモデルを記述することによって,設計者・操作者間に共通の概念を与えられるため,対話型人工物の設計に有効である「参加型デザイン」への応用が可能となる.
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■ 自律分散系の適応アルゴリズムによる強化学習のための関数近似
東大・小林祐一,東大/理研・湯浅秀男,東大・新井民夫
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強化学習における関数近似では,離散化の単位などの関数近似の要素が,近似関数の複雑さに応じた分解能で配置されていることが学習性能に影響を与える.本研究では,グラフ上の反応拡散方程式に基づき,ノードで表わされた近似超平面を適応的に再配置する手法を提案する.勾配変化を用いて関数の複雑度を定義し,位置・勾配をもったノードの近傍における複雑度を均一にするようにノードを移動させることで,勾配変化の大きい領域には密に,小さい領域には疎にノードが分布させる.従来の逐次的状態空間分割法と異なり,同じ要素数に対しても動的に適切なノード配置を実現することが可能であり,自律分散システムであることからノードの動的な追加・削除も容易に行える.シミュレーションにおいて,定常関数近似問題,強化学習の例題に提案手法を適用し,関数近似の効率化および強化学習の性能向上が可能である例を示した.
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■ 確率離散型Riccati代数方程式の可解性
宮崎大・唐 一兵,河野通夫,三菱重工・鈴木達雄
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本稿では,離散時間システムのギャランティードコスト制御について現れる,任意な非負のパラメータを含む行列2次代数方程式の解の存在性について考察している.パラメータが0の場合には,この方程式は離散型Riccati代数方程式に線形項を付加した形に帰着される.連続型Riccati代数方程式に線形項を付加した方程式は確率連続型Riccati代数方程式とよばれ,乗法的ノイズ(状態依存性ノイズ)がある場合の連続時間確率最適制御において出てくることが知られている.本稿では,前期の方程式を確率離散型Riccati代数方程式と呼んでいる.本稿のおもな結果は確率離散型Riccati代数方程式に解が存在するための十分条件を与えたことである.すなわち,可制御,可安定かつ付加項が大きすぎないという仮定の元で,半正定解の存在を保証している.
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■ 建設機械用多気筒ジーゼルエンジンにおける不燃気筒の予防診断
九工大・桐本賢太,北大・川村洋平,氏平増之九工大・緒方純俊
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本論文は,建設機械用12気筒ジーゼルエンジンの燃焼状態の効果的な予防的診断方法について述べる.気筒側面に取付けた加速度センサーで振動波形を計測し,ウェーブレット変換によって解析する.時間−周波数表示によって各気筒の燃焼状態を診断するとともに,信号強度の実効値表示による簡便な診断方法を示す.
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