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第1号 [論 文]
■待ち行列ネットワーク理論を用いたAGV搬送システムの最適設計論
東大・星野智史,太田 順,三菱重工・篠崎朗子・橋本英樹
港湾物流における搬送システムに要求される制約として,「貨物船により運ばれてきた荷物をいかにして時間内に蔵置場所へ運びきるか」という問題が存在する.本研究ではこの搬送制約に対し,搬送システムの最適設計を行うことで,当該問題を解決する.
本設計問題は組合せ最適化問題として考えることができる.すなわち,(1) 各作業エージェントの最適台数,(2) エージェント間で荷物の受け渡しを行う際に必要となる最適作業経路数をそれぞれ最適に設計する必要がある.その際,1. マルチエージェントシステムとしての搬送システムのモデル化および大域的なシステムの最適設計,2. シミュレーションベースのみの手法に比べて組合せ最適解を高速に算出できる方法論の提案,3. 設計したシステムの性能評価,について考慮する必要がある.
そのため,本研究では待ち行列ネットワーク理論を適用する.しかしながら,待ち行列ネットワーク理論のみでは数理モデル化誤差までを考慮したシステムの最適設計が困難である.そこで本研究では,提案手法において待ち行列ネットワーク理論とシミュレーションベースによる最適化手法とを融合させ,繰返し設計を行うことで,モデル化誤差までを正確に考慮した設計方法論の提案および,その有効性の確認を行う.(2005年2月公開)
第2号 [論 文]
■入出力線形化法を応用した熱交換器の適応型非線形モデル予測制御
東北大・吉田雅俊,小尾秀志,Tipaya LEELAKIATESAKUL,山下善之,松本 繁
本論文は,入出力線形化法を応用した非線形プロセスの適応型モデル予測法を提案している.プロセスの非線形物理モデルを,テイラー展開により時間に関して離散化し,離散化モデルで予測した1ステップ先の被制御変数を,目標値に一致するような操作変数を算出するモデル予測制御系を構成する.入出力線形化法を用いることで,適切な操作変数を最適化問題を解くことなく,直接求めることができるのが本方法の特徴である.さらに,モデル誤差を補償するため,物理モデルに含まれるパラメータをオンラインで更新する適応型モデル予測制御を提案した.本方法を二重管式熱交換器の温度制御に適用したところ,PID制御より優れた制御性能を示した.特に,適応型モデル予測制御は,外乱によるモデル誤差を補償して良好な制御性能を示した.このことから,本方法はモデル誤差に対してロバストであることが示された.
(2005年3月公開)
第3号 [論 文]
■ビル快適空調制御システムの開発と実用化
東芝・米沢憲造,和田祐功,花田雄一,西村信孝
ビルにおける空調制御では,快適な環境の確保が必要であると同時に,省エネ法改正や地球環境保護の観点からいっそうの省エネ化が求められている.このため,ビル監視制御システムの新しい技術として,快適性指標PMVを用いて快適性と省エネを両立させる快適空調制御を開発し実用化した.本論文では,まずビル全体をトータルに運営管理する統合ビル管理システムの分散制御における空調制御システムの特徴を述べ,その中心的機能である快適空調制御機能について述べた.さらに,シミュレーションによる事前検討結果および平成12年よりデパートおよびオフィスビル10数か所の一部フロアに,快適空調制御を加えたシステムを導入して検証試験を行ってきた結果例について述べた.また検証試験の省エネ効果の結果などが認められ,多くのビルに本格導入していただき,快適空調制御を活用してビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS)を実現している例についても述べた.東芝本社ビルでも全館適用し,H15年度の省エネルギー優秀事例大会((財)省エネルギーセンタ)において,経済産業大臣賞を受賞した.大きい省エネ効果の実現と,BEMSを活用した快適空調制御が国の省エネ推進施策にマッチしていることで高い評価を得たことが本受賞につながった.(2005年6月公開)
第4号 [論 文]
■ヘテロコア型光ファイバセンサを応用したマルチ環境モニタリングシステム
創価大・佐々木博幸,久保田 譲,渡辺一弘
ヘテロコア型光ファイバセンサを応用して,各種の環境情報を1システムでモニタリングする光ネットワーク型マルチ環境モニタリングシステムを製品モデルとして初めて開発し,実環境下での使用を前提に総合的性能の評価した.本システムは,複数・直並列構成で,各種のモジュールを多点構成で混在させてモニタリングできる初めてのシステムである.10日間にわたる実環境下の計測では,昼夜の温度変化によって約10〜20℃を繰り返す中,融着接続した標準変位センサモジュールの計測誤差は±2μm程度,光コネクタ接続のセンサの計測誤差は±10μm程度であった.光コネクタによる接続が温度影響を受け計測誤差に比較的大きな影響を与えているが,融着接続することによって使用するOTDRの計測誤差限界近くまで測定可能であった.擬似亀裂検出実験では,各標準変位センサモジュールの計測結果を用いて,擬似亀裂状況を作り出している2枚のベース板の相対位置関係を幾何学的計算から算出し,PCにモニタリング結果として表示させた.本システムでは各種環境モニタリング用センサとして高性能歪センサモジュール,圧力センサモジュール,バイナリスイッチモジュール,液体検知モジュールを開発し,それらの基本構成と仕様・特性,実用性についても明らかにした.(2005年6月公開)
第6号 <特集号 産業界における自律分散システムの新しい展開>
[論 文]
■鉄鋼プロセス制御におけるオープン系自律分散システムとその更新
新日本製鐵・住田伸夫
製鉄所における計算機システムは,膨大なプロセスや設備を対象として多種多様な品種を高品質で造り込むために,大規模な階層システムを構成している.一方,コスト削減とIT技術を応用した多様なシステム構築も強く求められており,従来の高機能だが高価な専用プロセス制御用コンピュータ(プロコン)に代わって,オープン仕様のコンピュータ(パソコンサーバ等)の適用範囲を拡大している.本稿では鉄鋼プロセス制御システムのプロコン分野において,オープン系自律分散システムの概観と,長期連続運転での高可用性を確保するプロセス制御用ミドルウェア,これに自律分散技術のコンセプトを取り入れたシステム診断機能の開発,また既存APソフトのオープン系への変換機構と手法,各種開発/テスト支援ツールにより更新した事例を紹介する.現在,既存の専用プロコンの老朽更新やシステムの新設に際し,このマルチベンダー選択が可能なオープン系プロコンは社内外に広く普及し(サーバ台数360台以上),多大なコスト削減を達成した.また最新IT技術を応用したタイムリーなシステム提案と構築も可能となった.
(2005年7月公開)
第7号 <特集号 産業界における自律分散システムの新しい展開>
[論 文]
■ICカード乗車券システムにおける自律分散高速処理技術とそのアプリケーション
JR東日本・椎橋章夫
高密度輸送におけるピーク時の乗降客に対応するための重要な課題の1つとして「自動改札機の処理速度向上」がある.一方,金券である乗車券を処理するため信頼性が不可欠である.このため,高速処理と高信頼性の両方を備えた乗車券システムが必要不可欠である.乗客の利便性向上やメンテナンスコスト低減のために無線通信方式のICカード乗車券システムが望まれる.しかし,このシステムでは無線通信による改札機との処理を行うため,改札時にデータ処理の信頼性が低下すると言う問題がある.
本論文においては,無線通信方式IC乗車券システムにおける高速処理と高信頼性という要件を満たすための自律分散処理技術を提案する.「ICカード」「自動改札機」「センターサーバ」を自律させたシステムとしている.高速処理性を実現するためのICカードと自動改札機による「運賃計算の自律分散アルゴリズム」を提案する.また,高信頼化のために各サブシステムでの「自律分散整合化技術」を示す.さらにこれらを実効あるものにするため「無線通信エリア拡張技術(タッチ&ゴー方式)」,「データ高速処理用コマンドシステム」について示す.これらの技術をJR東日本のSuicaシステムに導入しその有効性は実証済である.(2005年8月公開)
第9号 [論 文]
■HA法を用いた化学プラントにおけるシステム化対象項目評価法
名古屋工業大学・江口 元,橋本芳宏,伊藤利昭
これまで化学プラントにおいて数多くの生産支援システムが工場内に導入されて実績をあげてきた.その際,どのシステムを優先して導入するかを決めるために投資利益率による評価を行うのが一般的である.しかしここでは金額による評価はせず,運転スタッフの業務負荷をシステム化によって削減し,その業務負荷軽減効果の大きいシステムをシステム化の対象にするという評価法を開発した.運転スタッフの業務負荷を軽減すれば,技能の熟練度を高めたり新たな技能を身に付けたり,また業務スパンを広げたりすることが可能になる.その際に運転スタッフのどの業務がどのシステムの導入でどの程度削減できるかを業務分析して得た時間で評価し,さらに体系化した3つの技能(オペレーション,メモリ,コミュニケーション)を用いて職位に応じた技能の重視度を規定し,重視されないものからシステム化の対象にするというやり方で評価を行う.これらの評価は新たに開発したHA法(Hierarchical
Analysis)を用いて行う.最終目標は複数のシステム化対象項目に優先順位をつけることである.HA法では人の意思決定過程を最終目標(業務負荷軽減),評価基準(体系化した3つの技能による評価および負荷が軽減できる業務の2階層),代替案(システム化対象項目)の階層構造(全体で4階層)ととらえ,各階層のつながりを求める.ある階層を構成する複数の要素がそれぞれもつ重みを,一対比較あるいは実測値に基づく計算で求め,最終的に代替案の優先順位を求める.(2005年8月公開)
第10号 [論 文]
■γ-正実化問題とε1-修正則を用いたセンサレスベクトル制御誘導モータのロバスト適応制御
中部大学・長谷川 勝
本論文は誘導モータの速度センサレス制御における新たなロバスト適応制御系とその設計法を提案する.誘導モータは瞬時トルク制御法の1つであるベクトル制御の適用により,DCサーボモータを凌駕する性能を実現する.高機能化,低コスト化,適用範囲拡大の観点から,速度センサレスベクトル制御が実用に供されている.しかし,低速運転さらには回生領域での運転が困難なことが指摘されており,その原因の1つに入出力信号の
PE 性の次数が低下するためであることが知られている.本論文はこの運転領域における適応同定のロバスト安定化を目的に,γ正実化問題とε1-修正則を用いたロバスト適応制御系を提案する.すなわち,ベクトル制御自体のロバスト性,および適応オブザーバの安定性を考慮しつつ,γ正実化問題を適用した適応オブザーバの設計法を示す.つぎに,零周波数駆動を困難にする要因が速度適応ループ内に存在する不安定な極零相殺であることを示し,これをε1-修正則により回避してさらなるロバスト安定性改善を図る.最後に実機実験を行い,従来に比してセンサレスベクトル制御の安定運転範囲を拡大することができることを示す.(2005年10月公開)
第11号 [論 文]
■4輪制駆動,ステア統合による車両運動最適制御
豊田中央研究所・服部義和,トヨタ自動車・鯉渕 健
本研究は通常領域から限界走行領域に至るまでの車両の操縦安定性の向上を目的とした,制駆動力とステアの統合制御手法について述べるものである.
1980年代以降,種々の車両運動制御システムが提案され,制動力左右差を利用した車両のアクティブヨーモーメント制御システム(DYC)の実用化により,限界領域における車両安定性を大幅に向上させることが可能となった.しかしながら,これまでの報告ではDYCを実現するための各輪のタイヤ発生力制御についての詳細な検討はされていない.タイヤ発生力は非線形な飽和特性をもち,車両の走行条件により変化する.そのため制御対象の特性や制約条件を常に正確に知ることは難しい.さらに通常から限界まですべての走行領域でシームレスに車両の操縦性・安定性を向上させるため,ロバスト性と最適性をうまくバランスした設計が必要である.
本報告では,まず階層型の車両運動制御システムを提案する.つぎに,逐次2次計画法に基づき,本来車両に与えたい前後横力,ヨーモーメントを実現するための最適な4輪制駆動力制御手法について述べる.さらに上記アルゴリズムを,前輪アクティブ操舵を統合したシステムに拡張し,シミュレーションと実車実験によって統合制御による制御効果を検証する.(2005年10月公開)
第12号 [論 文]
■帳票のイメージデータ化と疎結合コンポーネント接続方式による銀行営業店後方事務処理システムの開発
日立製作所・染谷治志,森 有一,阿部正弘,日立オムロンターミナルソリューションズ・町田 勇
日立製作所・長谷川 篤,早稲田大学・吉江 修
銀行営業店は「営業」主体のセールス拠点へのシフトが求められており,徹底した事務の合理化が要求されている.事務合理化にあたって,多くの時間と人員を要している後方事務をどのようにシステム化するか,またそのシステム構築コストをいかに低減するかが課題である.
本稿では,帳票をイメージデータとして直接コンピュータ内に取り込み,集中事務処理センタに伝送して後方事務を集中処理するシステム化方式を提案する.この方式により,営業店の後方事務の合理化と事務コストの低減を図ることができる.また,多種多様な帳票を処理するアプリケーションの開発コストの低減を目的に,疎結合コンポーネント接続方式を導入し,画面および画面遷移をXML文書で記述するだけでアプリケーションを開発できる,帳票処理クライアントアプリケーションアーキテクチャを提案する.提案アーキテクチャにより,コンポーネントの再利用性が高まり,ユーザ開発も可能となり,開発コストを低減することができる.
本稿で提案する方式により,銀行営業店の集中事務処理システムを開発した.本システム導入による事務合理化効果を定量的に確認するとともに,提案アプリケーションアーキテクチャの生産性検証評価を実施し,その有効性を確認した.(2005年10月公開)
第13号 [論 文]
■ Javaによる高炉統合シミュレータと統合可視化システム
早稲田大学・小川雅俊,大貝晴俊,九州工業大学・古賀雅伸,新日本製鐵・伊藤雅浩,松崎眞六,
早稲田大学・内田健康,ニッテツ北海道制御システム・田島和典
近年,鉄鋼業の製銑分野では,高炉設備の大型化と良質原燃料の枯渇に伴い,以前よりも操業不調を発現させる要因が増加しており,高炉操業を予測し,現場の操業を支援するシステムの開発が求められている.本論文では,既存の完成されている高炉の部分モデルや新たに開発したモデルを組み合わせ,Javaで統合して大規模な高炉統合シミュレータを構築すること,およびその計算結果と実測データの両者を統合して表示することや複数の計算結果を自由に選択して表示することを実現する高炉統合可視化システムを提案した.異なるコンピュータ環境(プラットフォーム)に存在する部分モデルや異なるプログラミング言語による部分モデルを統合するためにJavaのRMI(Remote
Method Invocation)とJNI(Java Native Interface)を応用した。その結果,高炉統合シミュレータは,既存の部分モデルを有効に活用し,Javaによって統合したことで利用しやすい大規模なシミュレータを実現した.また,高炉統合可視化システムにおいて高炉統合シミュレータの計算結果と実測データの両者の統合表示やFocus+context手法を参考にした自由な選択表示が実現され,システムの有効性が確認された.(2005年10月公開)
第14号 [論 文]
■ 自動コンテナターミナルにおける運用を考慮したAGV搬送システムの設計
東京大学・星野智史,太田 順,三菱重工業・篠崎朗子,橋本英樹
港湾自動コンテナターミナル(ACT:Automated Container Terminal)における高効率な運用方法論の確立は,港湾管理者側にとって重要な課題となっている.そこで本研究でもこの課題を考慮し,ACTにおいて無人搬送車(AGV:Automated
Guided Vehicle)を適用した搬送システム(AGV搬送システム)に注目した.そして,作業エージェント群の協調行動,コンテナ蔵置スケジューリング,コンテナ搬送計画などといった,AGV搬送システムに対する詳細な運用モデルの構築を行う.そして,これら運用モデルを実装したAGV搬送システムの最適設計を行う.コストパフォーマンスを評価するため,それぞれ構築されたAGV搬送システムの比較を総合構築コストならびに運用モデルの有効性に基づいて行う.そして,AGV搬送システムの設計問題および運用問題を統合的に解決する.(2005年10月公開)
第15号 [論 文]
■時間軸変換によるトロイダル型無段変速機の変速比サーボ系の設計
九州大学・川邊武俊,日産自動車・ミシェル メンスレ,城 新一郎
自動車に無段変速機(CVT)を用いるとエンジンを高効率な動作点で運転することが可能となり,燃費性能が向上する.大トルクを伝達できる構造上の特徴があり高出力なエンジンや大型の乗用車に適しているトロイダル型CVT(以下T-CVTと略す)の変速比制御法を提案する.ここで取り扱うT-CVTは後進のとき不安なので,フィードバック制御による安定化が必要である.しかし,T-CVTの変速比は,回転部分に取り付けられたエンコーダが一定の角度を回転する度に発生するパルスから計測されているので,車速が低下するにつれ,パルスの発生周期は限りなく長くなる.このため,一般的な一定周期のサンプリング時間による離散時間制御系では,変速比の安定化が難しい.そこで,T-CVTの独特な動特性を利用し時間軸変換を基に制御系を構成した.この制御系が実用に耐えることを実験で確認した.(2005年10月公開)
第16号 [論 文]
■ サーモパイルを用いた2波長式スラグ温度計の開発
三菱重工業・野間 彰,原田朋弘,山下一郎,井上敬太
プラズマ灰溶融炉はごみ焼却などで発生した有害な灰を1500℃程度の高温に加熱して無害なスラグに変換し,土木資材などに再利用する設備として近年ニーズが高まっている.溶融スラグが高温であることおよびスラグの強い侵食性から耐火物の耐久性が問題となっており,スラグ温度を管理する必要がある.しかし,保護管付き熱電対は数時間で溶損し,市販の放射温度計は炉内煤塵雰囲気のために使用できない.新技術は炉内煤塵雰囲気を透過する2波長域の赤外光をサーモパイルで検出し,スラグ液面の温度を計測する技術であり,非接触連続計測が可能である.波長選定のために灰溶融炉内のスラグから放射される光をFT-IRによって分光し ,煤塵や炉内ガスの影響のない波長域を把握した.また,実際の焼却灰溶融スラグを用いた電気炉試験によりスラグの放射率の波長依存性や温度依存性を考慮した較正式を作成した.実炉において消耗型熱電対と同時計測を行い,2波長式スラグ温度計の有効性を確認した.スラグ温度を管理することによって耐火物寿命を向上することができ,灰溶融炉の実用化に貢献できた.
(2005年12月公開)
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