SICE 社団法人 計測自動制御学会
Top
新着情報
学会案内
入会案内
部門
支部
学会活動
学科行事
お知らせ
会誌・論文誌・出版物
学会誌
論文集・バックナンバー
英語論文集
産業論文集
学術図書のご案内
残部資料頒布のご案内
リンク
その他
サイトマップ お問い合わせ
 会誌・論文誌・出版物
 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.46 No.2(2010年2月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ ポート・ハミルトン系の漸近的経路追従制御

名古屋大学・藤本健治,谷口 充

 従来の軌道追従制御は,時間移動する目標点を設け,その目標点にできるだけ近づけようとするものが多い.しかしながら,自動溶接機などのように系が動いた軌跡がどれだけ目標経路に近いかが重要なアプリケーションもある.こうした制御目的に対する制御手法として,架空のポテンシャル関数と速度場を用いて受動的に制御する手法がDuimdamらによって提案されている.しかし,この手法の対象となる系は全駆動系に限られており,速度の指定も困難であるという問題がある.そこで,本論文ではこの手法を拡張して,全駆動系および非ホロノミックな速度拘束を持つハミルトン系に対して,指定した速度のもとで系を目標経路へ漸近収束させる手法を提案する.本手法では架空のポテンシャル関数と目標余接ベクトル場を用いて制御を行い,余接空間を扱うことで,非ホロノミック系を含む広いクラスの対象が扱えるようになる.また,閉ループ系のエネルギに注目することで,速度の大きさの指定も可能にする制御法を与える.


■ サンプル零点の展開式と配置法

中部大学・十河拓也

 0次ホールドとサンプラによるサンプル値系の伝達関数は,もとの連続時間系の零点とは対応しない離散化零点と呼ばれる零点を持ち,それは不安定零点であることが多い.さらに,その離散化零点は一般に閉じた式で表すことができない.このため,逆系に基づいたフィードフォワード制御をサンプル値系に適用できる場合は限られていた.その一方,近年の研究で離散化零点はサンプル周期を小さくするにつれてEuler-Frobenius多項式の零点に近づくという規則的な性質があることが示された.本研究では,この事実に基づき,近年性能が飛躍的に向上した数式処理ソフトウエアを援用して離散化零点のサンプル周期についての展開式を導く.さらに,その展開式を利用して不安定または安定限界付近の離散化零点を再配置し,フィードフォワード制御特性を改善する一手法を提案する.また,相対次数2の場合の連続時間系についてサンプル値系の離散化零点の展開式の計算例をいくつか示し,その結果から一般に単純な法則が予想されたので報告する.


■ 周期的通信制約をもつネットワーク化制御系のモデル化と構造的性質

宮崎大学・河野通夫,岐阜大学・鈴木達雄,
      宮崎大学・高橋伸弥,佐藤 治

 近年,プラントとコントローラがネットワークを介して接続されたネットワーク化制御システム(NCS)に関する研究が活発に行われている.通信バスの帯域制約を考慮し,プラントの入出力ベクトルの一部を事前に定められた順序で周期的に送受する制御方式に関する研究が行われており,定係数離散時間システムで与えられたプラントおよびホールド回路、スイッチおよびネットワークを含めたモデルを周期係数離散時間システムとして定式化し,安定化を試みる手法が提案されている.
 本稿では,まず,NCSにおけるホールド回路挿入の意義を説明する.次いで,コントローラは過去にプラントに加えた入力ベクトルの値が利用可能であるという点に着目し,これを観測出力に加えたNCSモデルを提案する.プラントのシステム行列の固有値が通信列特性多項式のゼロ点と異なるという条件のもとで,プラントの可制御性と可安定性は提案モデルにおいても保存されることを示した.また,出力通信列が許容可能であるという条件のもとで,プラントの可再生性と可検出性は提案モデルでは各時刻において保存されることを示した.


■ オブザーバに基づく機械系の確率的軌道追従制御について

名古屋大学・佐藤訓志,藤本健治

 筆者らのアプローチは,不規則雑音を含む確定システムを確率システムと見なし,確定システムを対象に設計された補償器に対して,確率システム制御理論を用いて付加的な条件を与えることで,外乱を陽に考慮した制御を行うことである.本手法では,確定システムの補償器をそのまま利用することができ,システムに作用する外乱ポートの構造と,その外乱構造の下で制御目標を達成するための補償器に関する定量的な条件を与えることができる.
 本論文では不規則雑音を含む一般的な機械系を,伊藤型確率微分方程式を用いて確率システムとしてモデル化し,オブザーバを用いた軌道追従制御について確率システム制御理論に基づく考察を行う.本論文では,Berghuis らによって提案された補償器とオブザーバを用いて,指定した確率以上で追従・推定誤差を任意の大きさに抑制するための補償器とオブザーバのゲインと外乱構造に関する定量的な条件を与える.さらに,誤差システムが確率有界安定となっていることを,確率リアプノフ関数を用いた確率解析と,伊藤型確率微分方程式の解過程がもつ性質の1つであるマルチンゲールを利用して示す.最後に,シミュレーションにより提案手法の有効性を確認する.
 実際の機械システムでは,速度情報は直接計測できないシステムも多く存在する.位置情報の差分から計算した近似的な速度情報を利用した状態フィードバック補償器は,センサノイズ等の外乱下では,しばしば性能劣化を引き起こすため,提案手法のように位置情報のみを用いた確率制御手法は有効であると考えられる.


■ マルチスケ−ル画像解析にもとづく自己相似性の検出

大阪工業大学・亀島鉱二

 自己相似性を有する形態事象を確率的に評価するしくみを導出した.まず,形態事象を縮小写像のランダム選択を形成規則とする描画過程ととらえ,描画過程の同定を形態形成規則と観測画像との対応付けとして定式化した.ついで,この形態形成規則とパタ−ンの類似性を計量する尺度として,自己相似則に関する条件付き確率を導入した.この条件付き確率は拡散システム上に表現され,その解過程は形態形成規則に関して不変な特徴を生成する.このように得られた特徴点上であてはめを繰り返すことにより,形態形成規則候補を逐次限定してゆくアルゴリズムを求めた.最後に,検出アルゴリズムの妥当性を実験的に確かめた.


■ 人間の眼球−関節運動特性に基づく自動車インテリア・パッケージの解析評価

広島大学・田中良幸,楽松 武,
     マツダ・堀上正義,宮崎 透,西川一男,農沢隆秀,
     広島大学・辻 敏夫

 本論文では,人間の眼球運動と関節運動の特性に基づいた自動車インテリア・パッケージの新しい評価法を提案する.まず,長時間の高速直進運転を想定して,1) 視界確保に影響する頭部運動と眼球運動の分担比率,2) 基本となる運転姿勢の維持に要する関節負担,3) 運転者が四肢先端で発揮可能な操作力の大きさに関する評価指標を定義する.そして,評価指標に必要な頭部・眼球運動比率と頸部関節トルク特性の計測とモデル化を行う.最後に,同クラスの市販車2台を評価対象とし,自動車に精通した成人男性4名で基本姿勢の計測実験を実施し,提案手法による評価結果が自動車業界で一般的に定着している主観的な評価と上手く一致することを示す.



[ショート・ペーパー]

■ フレキシブルマニピュレータの最適軌道計画(駆動エネルギーと残留振動を最小化するためのアプローチ)

旭川工業高等専門学校・阿部 晶,笹森和典

 これまでのフレキシブルマニピュレータに関する研究においては,望ましくない振動を抑制することに主眼が置かれており,振動抑制と省エネルギー化の両立を目指したアプローチは十分になされていない.そこで本論文では,1リンクフレキシブルマニピュレータのPTP制御問題を扱い,駆動エネルギーと残留振動を最小化する多目的最適化に基づく軌道計画法を提案する.最適化の手法としては多目的遺伝的アルゴリズムを用い,目的関数として残留振動の最大値と駆動エネルギーの2つを設定した.数値シミュレーションから,駆動エネルギー最小化と残留振動抑制の間にトレードオフの関係があることを明らかにした.また,数値シミュレーションとモデル実験結果の比較から,提案された軌道計画法は残留振動と駆動エネルギーを同時に抑制する軌道を生成し,有効かつ実現性を有するものであることを確認した.


 
copyright © 2010 (社)計測自動制御学会