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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.45 No.10(2009年10月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 電磁型締め装置の分布定数モデリングと制御

東京工業大学・石崎孝幸,加嶋健司,井村順一,住友重機械工業・加藤敦,森田洋

 電磁石による型締め装置の分布定数モデリングとPI制御系設計を行う。この装置は、電磁石を構成する鉄心内部に渦状の電流が分布して流れることから分布定数系として捉えられる。しかし分布系特有の性質から、従来通りの試行錯誤的な制御器調整では所望の応答を実現することは難しい。よって本研究では、鉄心の空間離散化によって次元可変な集中定数近似モデルを導出し、モデルの妥当性と特性を実機試験との比較により考察する。また、モデルの次数を大きくとった場合の漸近挙動を、偏微分方程式を用いた議論によって理論的に考察し、モデリングの手法によらない物理系の本質的な構造を理解する。そして、得られた漸近分布定数系から新たに設計用モデルを導き、一般化KYP補題を用いた周波数整形によってPI制御器を設計し、その性能限界について議論する。


■ 空気噴流印加時における角膜の凹部変形を考慮したダイナミックセンシング

大阪大学・山田憲嗣,山崎直幸,五所卓巳
広島大学・木内良明,竹中丈二
大阪大学・東森 充,金子 真

 従来の眼圧測定法は,ヒトにより角膜剛性に差がないという条件下でしか精度が保障されていない.また,角膜剛性の影響を調べる研究は静的な状況でしか行われていない.本論文では,角膜剛性の評価を行うことを視野に入れ,1台の高速度カメラ,仮想高速度カメラを作成するミラー,赤外線スリットおよび非接触式眼圧計からシステムを構成し,空気噴流印加時における角膜の動的な挙動を測定し,凹部形状を評価する上での糸口を見出した.


■ 離散構造制約条件付き最適化問題に対するPSOを用いた進化計算

慶應義塾大学・小熊祐司,古澤敦郎,相吉英太郎

 本論文では,制約領域が互いに分離した多くの部分集合からなる連続変数最適化問題を,本来組合せ最適化問題の解法であるMemeticアルゴリズムの概念を拡張した手法を用いて解くことを提案している. Memeticアルゴリズムとは,組合せ最適化問題の大域的最適解探索の計算特性を向上させるために考案された,遺伝アルゴリズムを中心とした進化型アルゴリズムと局所的探索手法とのハイブリッド手法である.本論文で提案する計算手法は,Memeticアルゴリズムにおける進化型アルゴリズムに相当するものとして連続変数最適化手法であるParticle Swarm Optimization(PSO)を採用し,局所的探索手法に相当するものとして離散構造制約条件の種類に応じた各種の許容化アルゴリズムを対応づけている.  また,本論文では,Memeticアルゴリズムを構成する2種類の進化方略,すなわちラマルク型進化方略およびボールドウィン型進化方略の構造的な違いについての検討をふまえたうえで,ラマルク型/ボールドウィン型の各進化方略により構成した提案手法を種々のベンチマーク問題に適用し,提案手法の有効性,および両進化方略の特性について考察している.


■ 対話コミュニケーションにおける2種類の発話タイミング構造

金沢工業大学・山本知仁,阿部浩幸
東京工業大学・武藤ゆみ子,三宅美博

 これまで対話コミュニケーションにおける発話リズムなどの時間的構造は,身体的相互作用の観点から解析されていることが多く,認知的な側面からの解析はあまり行われてなかった.本研究ではこれら2つの側面を考慮し,指示発話と応答発話からなる対話を解析した.結果として,指示者の発話速度変化が小さく,被指示者がその変化を認知しにくい時には,指示発話長と交替潜時長間の相関係数が正から負まで広い分布になるのに対し,指示者の発話速度変化が大きく,被指示者がその変化を認知しやすい時には,それらの相関係数が正に偏る,つまり両時間長の間で同調傾向が現れることが明らかになった.これらの結果より,指示発話と応答発話からなる対話において,発話速度変化とそれに対する被指示者の認知状態が異なる2つの発話モードを生み出すことが示唆され,そのメカニズムについて議論した.


■ 視覚フィードバックとロバスト制御による大道芸「くわえ撥」の実現

松江工業高等専門学校・加藤健一
奈良先端科学技術大学院大学・平田健太郎,水野貴志,山田晃平

 本論文では,日本固有の文化として古来受け継がれている伝統芸能の一つ,「くわえ撥(バチ)」を模擬した大道芸ロボット“DKG-MS1”の開発結果について述べる.
 “DKG-MS1”は,撥に見立てた水平方向に回転するアームと,アーム上に取り付けられた視覚の役割を果たす汎用のUSBカメラで主に構成され,急須や毬に見立てた発泡スチロール製のブロックの積み増しに対してバランスを崩さない柔軟な動作を実現することが目的である.通常このような不安定メカトロ系を制御しようとした際には比較的短いサンプリング周期が要求されるが,ここではサンプル値H∞制御理論を用いることによって,低フレームレートのカメラを用いた際に問題となる低いサンプリング周期とセンシングに関するむだ時間の影響を補償する.さらにブロックの個数変化に対するロバスト性を要求仕様として加えることで,安価なシステム構成のもとでの大道芸「くわえ撥」を実現する.シミュレーションおよび実験においてはその有効性を示す.ブロックをアーム上に設置する際のずれが大道芸ロボットとしてのユニークな振る舞いを生んでいることを制御理論的に解析する.



         

[ショート・ペーパー]

■ 線形離散時間系に対する逆システムに基づいた反復学習制御とインタラクタ

大阪工業大学・加瀬 渡

 試行回数を重ねるごとに目標値に対する誤差を小さくしていく反復学習制御は,同じく目標値に対する追従を目標とするモデルマッチング制御と比べてといくつかの利点がある.そのひとつに,インタラクタと呼ばれる多項式行列を必要としない点が挙げられる.しかしながら,学習ゲイン行列の決定の際に擬似逆行列を利用する方法では,サイズこそ異なるものの,同様の擬似逆行列を計算してインタラクタを導出する方法が報告されている.本稿では,擬似逆行列を求める方法では暗にインタラクタを計算していることを示すと同時に,その場合の学習ゲインの意味を明らかにすることを目的とする.


■ 相互相関関数を利用した最小二乗法による多変数制御器の直接設計

三重大学・弓場井一裕

 本論文ではMIMOシステムに対して適用可能な相関法を利用したモデルフリー制御器設計法を提案した.相関法を利用することで取得した入出力データに雑音が混入している場合においても良好なパラメータ調整が可能であり,実用上大きな利点を有していると言える.従来のIFT,CbTなどのモデルフリー制御器設計法ではパラメータ調整の過程でGauss-Newton法などの非線形最適化を用いているため勾配の更新のためにデータ取得を繰り返し行う必要があるが,提案手法では制御器の構造をPID制御器のようなパラメータ行列に対して線形な構造に限定することで,制御対象の入力の次元と同じ回数の入出力データの取得のみでの調整を可能にした.また,取得した入出力データに適切な重みをかけることで,モデル参照制御問題と同等の評価が可能であることを示した.提案する手法の有効性は数値例を用いて確認した.


 
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