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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.45 No.9(2009年9月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 代数的アプローチによる雑音下における減衰正弦波のオンライン同定

東京理科大学・新田益大,鈴木拓人,加藤清敬

 本論文では,減衰正弦波の固有振動数と減衰比を高速高精度に推定する手法を提案する.周波数推定法の多くは正弦波を想定しているが,実環境ではエネルギーの散逸により減衰正弦波が観測されることがあり,この際は推定精度が劣化する.そこで信号が減衰する場合でも精度良く推定できるようなオンライン同定アルゴリズムを開発する.
 まず,減衰正弦波の信号発生器として線形微分方程式を導き,Laplace変換を用いることで,これと等価な積分方程式を導出した.そしてそれが恒等式であることを利用して減衰正弦波の同定問題を連立方程式の解法に帰着させた.
 つぎに,実用を考えると雑音下においても正しく推定されることが求められるため,雑音の影響を考慮した同定アルゴリズムを開発した.分析対象の信号に雑音が重畳する場合,通常は前処理を行って事前に雑音を除去するが,本論文ではアルゴリズムが積分に基づくことから後処理という,積分後の信号に対する雑音除去の方策を導いた.
 最後に数値シミュレーションによって高速高精度に減衰正弦波の固有振動数と減衰比が推定できることを確認した.


■ 非線形出力レギュレーション問題における中心多様体の近似解法

名古屋大学・鈴木秀俊,坂本 登
     Academy of Science of the Czech Republic/Czech Technical University・Sergejv CELIKOVSKY

 非線形出力レギュレーション問題では,偏微分方程式と代数方程式からなるいわゆるレギュレータ方程式を解く必要がある.特にシステムの零ダイナミクスが双曲的な場合は,レギュレータ方程式を解くことが零ダイナミクスに対する中心多様体を求めることに帰着できることが知られている.
 本論文では,常微分方程式の解析的近似解法として知られる逐次近似法が中心多様体の解析的近似解法にも適用できることを示し,零ダイナミクスが双曲的な場合のレギュレータ方程式の近似解法としてこの逐次近似法を用いた手法を提案する.そして倒立振子の例を用いて提案手法の有効性を検証する.中心多様体の逐次近似法は動的システム理論分野においても知られておらず,従来のテーラー展開法に代わる新しい手法といえる.


■ 量子ノイズレスサブシステムの大域的安定化

東京工業大学・西尾和記,加嶋健司,井村順一

 量子情報処理技術を実現する際のおもな難しさは,量子情報を有する系と系の外部環境が相互作用しやすく,われわれが有する量子系の状態に関する情報が容易に失われてしまうことにある.その結果,情報処理に必要な量子状態を長時間保持することが困難となり,情報処理の性能が著しく劣化してしまうことが問題となっている.一方,量子系の中の低次元システムとして定義される量子サブシステムにおいては,相互作用の性質によっては情報が永久的に保存されることが知られている.このような特定の条件のもとで情報が消失しないようなサブシステムをノイズレスサブシステム(以下,NS)と呼ぶ.本論文では,量子フィードバック制御によるNSの安定化制御問題を考える.NSの安定化制御は,NSを用いた量子情報処理のための初期状態準備において必要となる.本論文では,まずNSの概念について説明する.つぎに,本論文の主結果であるNSの安定化制御器を導出し,安定性の証明を行う.最後に,3量子ビット系の制御問題により,提案手法の有効性を示す.


■ ゲインスケジュールド制御におけるフィルタを通したパラメータの利用について

広島大学・増淵 泉,川崎重工業・倉田伊織

 ゲインスケジュールド制御は,非線形性や時変の動特性変動をもつ制御対象に対する現実的な制御系設計の枠組みとしてその有用性は広く認められている.パラメータ依存LMIを用いたゲインスケジュールド補償器の従来の設計法においては,制御性能を向上させるためにリアプノフ行列をスケジューリングパラメータに依存させることが有効であることが知られていたが,他方その結果として補償器の実現にパラメータの微分が含まれることが欠点であった.従来法では,リアプノフ行列の一部を定数とするか,あるいは近似微分を用いるなどの必要があるが,前者では保証される制御性能が保守的になり,後者では制御系の性能や安定性の保証はされないことになる.
 本論文ではこの問題を解決し,リアプノフ行列をフィルタを通したスケジューリングパラメータの関数とすることを提案する.これにより,補償器においてスケジューリングパラメータの微分を用いる必要は単純に回避される.他方,スケジューリングパラメータとは異なるパラメータにゲインスケジュールド補償器が依存することになるが,これについて解析を行い,その結果として従来微分を用いるゲインスケジュールド補償器でのみ保証されていた制御性能に任意に近い制御性能をフィルタを通したスケジューリングパラメータに依存するゲインスケジュールド補償器で達成できることを示した.


■ 階層化合意形成における階層間接続行列のランク特性と収束性能

東京大学・清水 光,原 辰次

 ネットワーク技術の進歩により,工学が扱う対象は大規模・複雑化してきており,近年マルチエージェントシステムに関する研究が盛んに行われている.しかし,現在はさまざまなアプローチが検討されている段階であり,このようなシステムを解析・設計する統一的な手法の確立が望まれている.その中で,各エージェントが互いに情報交換し,分散処理だけによってなんらかの合意を得る合意形成問題がある.
 本論文では,この合意形成問題を対象に階層化構造を導入し,階層間を接続する行列の性質に着目した解析を行っている.まず,自己相似性をもつ階層化システムの比較的一般的な表現形式を与える.つぎに,階層間の接続を表わす行列の性質として,接続行列の低ランク性に焦点を当て,階層間の情報伝達における情報縮約の重要性を指摘している.具体的には,巡回型の情報取得が可能な自己相似構造をもつ合意形成問題を対象として,階層間接続行列のランクが1の場合に対して,固有値解析を行うことにより,収束速度と減衰率の2つの指標の観点から合意形成の性能を理論的に評価している.結果として,情報縮約の機能をもたないフルランク階層間接続と比較して,低ランク性をもつ階層間接続の優位性を示し,シミュレーションによりその性質を確認検証している.


■ 回復時定数に着目した虚血ダイナミクスの評価と指先への応用

大阪大学・内田亮平,水田知宏,東森 充,金子 真

 生体組織表面に外力を加えて組織下の血管を圧迫すると血流が妨げられ,結果として組織表面が白く変色する.この現象を圧迫性虚血と呼ぶ.生体組織に矩形波状の力を印加した場合,力除去時の血流回復時定数によって組織の活性度を評価することができる.虚血に着目するメリットは組織の活性度を色情報の変化に置き換えることができる点である.ところが,虚血は組織の変形によって作り出されるため,色情報の変化には,結果的に虚血による色変化と組織の変形による照明の反射条件の変化に起因する色変化を含むことになり,両者を分離する必要がある.本論文では,虚血応答と組織の変形応答の間に時定数差があることに着目し,両者を分離する方法について提案し,その有効性を指先実験により確認している.



[ショート・ペーパー]

■ 線形不確定システムの可制御性と可観測性の双対不変構造

大阪大学・橋本智昭,摂南大学・雨宮 孝

本稿では,線形時不変不確定システムの可制御性および可観測性について考察する.特に,システムが任意の大きさの不確定変動幅に対して可制御であることおよび可観測であることを,可制御不変及び可観測不変であると定義し,システムが可制御不変かつ可観測不変であるための不確定要素配置に依存した構造条件を導出する.既存の結果で示されている構造条件に対応する双対構造を新たに導入し,おのおのの構造条件における不確定要素の許容配置構造には整然とした対称性があることを示す.


 
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