論文集抄録
〈Vol.45 No.8(2009年8月)〉
論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)
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タイトル一覧
[論 文]
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■ 選択走査方式を用いた省配線・分布型触覚センサ
電気通信大学・西野高明,下条 誠,東京大学・石川正俊
近年,人型ロボットの研究開発に伴いロボットの全身を覆うような触覚センサの研究開発が盛んになってきている.これらの用途では,柔らかくて丈夫で広い面積が覆えること,自由曲面にも取り付け可能などの条件が要求される.また,実際の使用を想定するとロボットの表面全体に荷重が分布することはほとんどなく,全身のごく一部に荷重が加わる場合が主となる.このため,全検出点の荷重を毎回走査する従来の手法は,応答速度,データ処理量からすると効率が悪い.
本論文では,アナログ回路網から構成される荷重分布の中心位置と総荷重を掲出するネット状触覚センサに,走査回路を組み合わせ,2次元的に分布する荷重情報を取得可能としたセンサを提案した.その特徴として,センサからの出力配線は検出素子数やセンサ面積に関わらず7本のみであること,また選択走査方式により接触部分の荷重情報のみを検出するため,ロボット全身被覆のような大面積かつ接触部分が比較的少ない場合において応答速度を大幅に短縮することができる.これらから本センサは,ロボット全身被覆のような大面積かつ接触部分が比較的少ない場合に,配線数,応答速度,データ処理量の面で優位性があるといえる.
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■ 予測時刻間の障害物回避を考慮したモデル予測制御に基づく軌道計画法
京都大学・根 和幸,福島宏明,松野文俊
本論文では,モデル予測制御に基づく障害物回避を考慮した軌道計画問題を取り扱い,予測時刻間においても障害物回避の保証を与える2つの手法を提案する.モデル予測制御に基づく軌道計画では予測時刻間での障害物と衝突してしまう可能性があった.本論文で提案する2つの手法は予測時刻間の障害物回避を陽に考慮し,その保証を与えるものである.1つは移動体の最大移動速度に着目し,障害物の近傍では最大移動速度を制限する手法である.もう1つは有効になる障害物回避制約の遷移に着目し,その変化に対して制約条件を付加する手法である.これら提案手法では予測時刻間の障害物回避も制約条件として表現されるため,既存の方法と異なり繰り返し問題を解くことなく障害物と衝突しない軌道を得ることができる.また,提案手法の有効性を数値例と実験により検証する.
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■ 理想乱流の制御に関する研究: Time-delayed Chua回路における定常解の安定化と同期
名古屋大学・鈴木雅康,坂本 登
非線形境界値条件をもつ波動方程式によって記述される物理システムに対し,その定常解の安定化を試みる.このシステムはSharkovskyらによって導入された理想乱流を発生させる分布定数システムである.システムの振る舞いは非常に入り組んだ構造をもつが,その動特性の解析は,d'Alembertの解を用いることによって有限次元の差分方程式の解析に帰着させることができる.本報告では,このd'Alembertの解を用いた解析法に基づき,システムのもつ定常解(平衡解と周期解)の安定化と,2つの同一システムの同期を達成する制御則を提案する.
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■ 確率重みつき複数ARXモデルの同定と運転行動解析への応用
名古屋大学・田口 峻,鈴木達也
三重大学・早川聡一郎,名古屋大学・稲垣伸吉
本論文では,まず第1に複数のARXモデルが確率重み関数によって合成されたモデルである,Probability weighted ARX (PrARX) モデルを提案する.提案するPrARXモデルにおいては,PWARXモデルで使用される確定的なモード分割の代わりに,`softmax関数'で表わされる確率的なモード分割表現を用いる.すなわち,PrARXモデルにおけるモード分割はsoftmax関数に含まれるパラメータによって特徴づけられることになる.また,softmax関数が微分可能な連続関数であることから,PrARXモデルのパラメータ推定問題は最急降下法に基づく単一の最適化問題として定式化でき,PrARXモデルの具体的なパラメータ推定アルゴリズムが容易に導かれる.さらには,softmax関数で規定される確率的なモード分割をもつPrARXモデルを,対応する確定的なモード分割を持つPWARXモデルに変換するアルゴリズムを示す.このとき,得られたPWARXモデルの分離超平面はPrARXモデルのsoftmax関数のパラメータを用いて定義されることになるが,提案する変換アルゴリズムにより定義される分離超平面は回帰ベクトル空間における完全分割を与えることが示される.したがって,提案手法は段階的な推定を必要としない新たなPWARXモデルのパラメータ推定手法の1つとみなすことも可能である.最後に,運転行動のモデル化にPrARXモデルを適用し,その有用性を検証する.
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■ 衝突回避を考慮した複数ロボットのデッドロックフリー軌道追跡制御
電気通信大学・桜間一徳,中野和司
本論文では,複数ロボットに対して衝突回避を考慮した軌道追跡制御を考える.軌道追跡とは,ロボットをある与えられた目標軌道上を指定速度で走行させることである.このとき,ロボットの位置と目標軌道の偏差 (幾何偏差) やロボットの速度と指定速度の偏差 (速度偏差) がある場合は,これらを減少させることが望まれている.ただし,これらの偏差は衝突回避を考慮すると必ずしも減少させることはできない.ここでは,軌道追跡を完全に実現することは諦め,偏差を含んだ評価関数を抑制することを考える.そのために,まず目標軌道を軌道パラメータによって表現し,目標軌道の形状を修正しそれに追従させるコントローラによって衝突回避を実現する.つぎに,軌道パラメータの調整によって評価関数を抑制するために,評価関数の時間微分に関する min max 問題を解くことで,軌道パラメータの調整則を導出する.なお,幾何偏差を考慮することでデッドロックが起る可能性があるため,ペナルティ関数を評価関数に組み入れることでデッドロック回避を実現する.最後に,3台の移動ロボットによる数値例によって提案法の有効性を検証する.
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■ 双曲型分布定数系の有限次元モデル規範形適応H∞制御
統計数理研究所・宮里義彦
集中定数系に対する適応制御はこれまでに多くの研究成果が得られている.一方で,適応制御をさまざまな分布定数系に拡張する試みも,いくつかの研究結果が報告されているが,特に有限次元制御器や有限次元近似モデルを用いた際のスピルオーバーの問題(無限次元モードの影響)について,十分な議論が行われてきたとは言い難い.これに対して本稿では,双曲型分布定数系に対して,有限次元補償器でモデル規範形制御系を構成する手法を述べる.提案する制御機構は,制御対象の有限次元部分モデルに対応する通常型の有限次元補償器と,有限次元モデルに含まれない無限次元モード(スピルオーバー)の影響を抑制するフィードバック項から構成される.後者の項は,無限次元モードの影響を外乱と見なした仮想的なH∞制御問題の解として導出され,スピルオーバーによる不安定要因の安定化と,外乱抑制作用による制御誤差の低減化を行う.実現された制御系においては,このスピルオーバー項と一般化出力(制御誤差と安定化信号から構成される)の間のL2ゲインが設計変数で陽に規定され,この設計変数の適切な選択により,スピルオーバー存在時でも有限次元補償器で制御誤差の影響を任意に小さくすることができる.
▲ ■ カテーテル先端用曲げセンサの開発―脳動脈瘤コイル塞栓術におけるペインティングの検出―
名古屋工業大学/NTN・永野佳孝
名古屋工業大学・佐野明人,藤本英雄
カテーテル治療は,患者の身体的負担の少ない低侵襲治療として幅広く行われている.本治療の代表例である脳動脈瘤コイル塞栓術において,カテーテル先端のペインティング現象の把握は,デリバリーワイヤとカテーテルとの連携操作にきわめて重要である.本研究では,カテーテル先端の曲率測定のために,プラスチックファイバを用いた体内曲げセンサを開発した.本論文では,開発した曲げセンサの基本特性を示し,模擬瘤を用いたコイル塞栓実験を実施し,デリバリーワイヤの手元挿入力との比較から,本センサの有用性について議論した.その結果,ペインティングを高感度に検出できることがわかった.
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