論文集抄録
〈Vol.45 No.5(2009年5月)〉
論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)
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〃 (会員外) 8,820円 (税込み)
タイトル一覧
[論 文]
[ショート・ペーパー]
[論 文]
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■ Adaptive Repetitive Control with On-Line Estimation of Multiple Periods
- Stabilization and Rejection of Periodic Disturbances with Unknown Periods
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名古屋工業大学・山田 学,ブラザー工業・矢吹智康,
名古屋工業大学・水野直樹
本稿では,未知で複数の周期をもつ周期外乱を漸近抑制する新しい繰り返し制御系の設計法を提案する.提案する制御系は,周期推定器と周期信号の内部モデルとこれらの時変要素を安定化する補償器で構成される.本稿の有効性は以下のとおりである.
(1) 提案法では,複数周期のための新しい内部モデルを与える.従来法では,単一周期の内部モデルのみであるため,周期が複数の場合,それらの最小公倍数のむだ時間要素を必要とするため,次数が高く,収束が遅いなどの問題点があった.それに対して,提案法は,並列型の新しい内部モデルを用いることで,むだ時間要素は周期の総和ですみ,その結果,内部モデルをかなり低次で実現でき,制御偏差の収束も早い.
(2) 新しい内部モデルは推定された周期によりむだ時間要素をオンラインで更新する時変要素を複数持つが,それを含む適応制御系を安定化する補償器の簡単な設計法を提案した.安定化問題を,簡単な線形計画問題に帰着させ,設計を容易にした.しかも安定化補償器は,周期とは無関係であるため,推定周期が変わっても変更する必要はない.
(3) 特に制御対象に不安定零点が1つのみある場合の安定化補償器について考察し,方程式を必要としない安定化補償器を陽に与えた.
(4) 制御入力・出力信号から複数の周期を同時に推定する簡単な周期推定器を与えた.提案法はよく知られた逐次型最小二乗推定法からなり,容易である.
最後に,提案法の有効性を数値例により確認した.
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■ 1つの非駆動関節を有するn自由度ロボットの振り上げ制御:設計と解析
岡山県立大学・忻 欣,東京工科大学・余 錦華,
岡山県立大学・山崎大河
本論文では,1つの非駆動関節を有するnリンクロボットを任意の初期状態からすべてのリンクが共に鉛直真上姿勢で静止した真上平衡点の任意の近傍まで振り上げる制御則の設計,ならびにその動きに関する大域的解析を,非駆動関節のすべての配置に対して統一的に行なうことを目的とする.まず,非駆動関節で分けられる2つの仮想合成リンクシリーズの逐次的な構築法を考案するとともに,それらに基づく駆動関節の角度に関する座標変換を提案する.つぎに,その座標変換を用いた振り上げ制御則を設計し,その制御則のもとでのnリンクロボットの動きを大域的に解析する.さらに,2つの仮想合成リンクシリーズを用いて,本論文の振り上げ制御目的が達成できるための制御パラメータの選定法を与える.最後に,4リンク劣駆動ロボットを用い,数値シミュレーションにより本設計・解析法の有効性を確認する.
本論文は,1つの関節が非駆動であるnリンクロボットに対して,仮想合成リンクの逐次的な構築に基づき,その振り上げ制御系を設計・解析する方法を確立した.これは,1つの非駆動関節を有するロボットの振り上げ制御に関する従来の成果を統一的に扱うことのできる理論であり,受動性に着目したエネルギー制御法による多自由度劣駆動ロボットの制御系の設計・解析法に対し,新たな糸口と知見を与えるものと考える.
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■ LQ制御問題の精度保証付き数値計算
九州工業大学・矢野健太郎,古賀雅伸
本論文では,LQ制御問題の解を浮動小数点演算を用いた精度保証付き数値計算で求める手法を提案する.この目的を達成するために,リカッチ方程式を精度保証付きで解くアルゴリズムとLQ制御器検証問題を提案する.提案アルゴリズムはハミルトン行列の固有空間の基底を精度保証付きで求める.また,幅の狭い区間を求めるためにニュートン法の区間演算版として知られているクラフチック法も用いる.LQ制御器検証問題では,求まった数値解がLQ制御器としての条件を満たしているかどうかを検証する検証条件を提案する.さらに,検証付きの解の集合の中から設計仕様に関する評価関数を最小にするLQ制御問題の数値解を求める方法を提案する.最後に数値例を用いて提案手法の有効性を示す.
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■ 環境タスク適応型電力制御を有するロボットシステムの構築に関する研究
芝浦工業大学・小川和哉,水川 真,安藤吉伸
現在開発されているロボットの多くは,機能実現を優先することが第1とされており,エネルギ対策には無関心であった.省エネルギ化に注目する社会的背景からも,今後はRTのための効果的なエネルギ利用法を確立する必要がある.環境タスク適応型電力制御を有するロボットシステムでは,分散制御系を持つ移動ロボットのエネルギ使用方法に着目し,サービス実行時のエネルギ監視と消費エネルギの予測を用いて省電力を実現するシステムである.本稿では,ロボットが確実かつ安全にサービスを実行するためにエネルギを考慮に入れたタスク調停を行うためのシステムフレームワークを提案し,実験によりロボットに搭載したデバイスの電気的特性を記述した電力プロファイルを作成した.そして,電力プロファイルを利用した通常タスクと代替タスクの消費エネルギ取得実験によって,システムの有効性を確認した.
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■ 人間モデルに基づく歩行支援機使用者の動作判別
東北大学・平田泰久,小松田慎二,小菅一弘
本論文では,歩行支援機の使用者を矢状平面内での剛体リンクとしてモデル化することで,使用者の重心位置を実時間で計算する手法を提案する.さらに,歩行支援機を使用している際に考えられる動作を挙げ,それらがどのように遷移するかを表わす状態遷移モデルの例を提示し,提示した状態遷移モデルに基づいて,使用者の動作を判別する実験を特徴的な動作に対して行い,各動作の判別がおおむね実現できることを示す.これより,歩行支援機の使用者の各状態に応じて適切な支援を行うことが可能となると考えられる.
[ショート・ペーパー]
▲ ■ モード切り換え型制御系の評価方法に関する一考察
名古屋工業大学・不破勝彦,豊田工業大学・成清辰生,
名古屋工業大学・神藤 久
磁気ヘッドの位置決め制御技術では,磁気ヘッドを目標トラックへ高速に移動させるシークモードと,ヘッドを目標トラックに位置決めさせるフォロイングモードといった構造の異なる制御モードを切り換えるため,その時点で制御器の内部変数を再設定する初期値補償(IVC)が提案されている.時間応答の視点から,この制御方策は大きく評価関数最小型と極零相殺型の2つの型が報告されている.しかしながら,極零相殺型のIVCゲインにより,どのような重み行列にて評価関数を最小化するかは議論されていない.本稿では,この問題について考察する.その結果,評価関数最小型で指定される制御量応答を記述する重み行列は,極零相殺型のIVCゲインにより最小化される評価関数の重み行列のクラスに属さず,2つ型はともに制御量応答を評価しているにもかかわらず,同じ評価関数では議論できないことが明らかとなった.
▲ ■ UKFによる未知非線形アクチュエータにより駆動される非線形システムの同時推定
慶應義塾大学・服部泰治,足立修一
本論文では,非線形システムが静的非線形をもつアクチュエータによって制御される状況を考える.このとき,非線形システムの動特性は既知,アクチュエータの非線形が未知であると仮定する.本論文では,アクチュエータの非線形性を多項式近似で記述できると仮定し,その多項式の係数と非線形システムの状態量をUKF(Unscented Kalman Filter)を用いて同時推定する方法を提案する.数値実験例を用いて,提案する同時推定法の有効性を明らかにする.
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