論文集抄録
〈Vol.45 No.3(2009年3月)〉
論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)
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タイトル一覧
[論 文]
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■ 振動型接触プローブを用いた特徴点計測による高速寸法測定システムの開発
増井 陽二,三好 孝典,寺嶋 一彦(豊橋技術科学大学)
本論文は,3軸からなる計測器に測定プローブとして振動型接触プローブを用いた寸法計測について提案する.
振動型接触プローブは圧電素子により構成され,構造が単純で剛性が高く,高加速度で駆動できるという利点を有する.
本プローブを倣いプローブとして用いた場合の有効性の検証も行なわれているが,本論文ではタッチプローブとして用いた高加速,高速な寸法検査の手法について検証する. 寸法検査とは対象物の数点のみを計測するように制御する手法である.
ここで計測時間を短縮するためには,対象物近傍までの移動と対象物との接触移動を効率よく行う必要がある. 最初に測定プローブとして用いる圧電素子から構成される振動型接触プローブの特性について述べる.
次にスイッチングコントローラの概要,計測結果について述べる. 実験結果から,120[mm]の寸法に対して 94[μm]の誤差で,88.1[mm]の寸法に対して 24[μm]の誤差で計測できた. また 3.4[s]で 120[mm]×88.1[mm]の測定対象物を計測した.
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■ 初期化の不要な反復学習とその連続時間システム同定への応用
京都大学・丸田一郎,杉江俊治
本稿では,反復毎のシステムの初期化を必要としない反復学習制御と,これに基づく連続時間システム同定法を提案する.提案する反復学習制御は,本稿で新たに導入する信号の部分空間におけるシステム表現に基づくものであり,このシステム表現は,従来静的なものとして扱われていた部分空間上での入出力信号の関係を,動的な関係に拡張するものである.これによって,反復毎の初期化を伴わない連続時間システムの同定が可能となり,従来の手法と同様の観測ノイズへの高い耐性を実現することができる.一方,提案法による同定では,ゲイン減衰型フィルタを新たに導入することにより,観測ノイズの存在下における同定結果の収束を保証している.これは,従来用いられていた学習ゲインの減衰に基づくパラメータ推定をより一般化したものであり,新たに加わった自由度によって収束特性を容易に調節することが可能となっている.この自由度を活用して,反復同定における収束速度をより高めることが可能である点も提案法の特長となっている.
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■ ニュートラルステア特性実現のための直接ヨーモーメント制御
岡島 寛(熊本大学),松永 信智(熊本大学),川路 茂保(熊本大学)
近年の自動車技術の発展に従って,騒音や排気ガスへの対策として電気自動車が発達している.電気自動車において実現可能な技術としてインホイールモータがあり,この実現によって左右輪の駆動力差によりヨーモーメントを発生できる.このとき,駆動力差で発生するヨーモーメントを有効に活用するためには,ハンドルだけでなく各輪の駆動力も操作する必要があるが,人が操作可能な入力数には限りがある.従来研究ではこの冗長性に対し,主に車体の安定性の向上を目的としたDYC(直接ヨーモーメント制御)の手法が提案されている.しかし,操舵とは独立してヨーモーメントを発生できるDYCの特徴を考えれば,操舵性能の向上を目的としてDYCを用いることも有効と考えられる.そこで本論文では,基本的な操舵特性の一つであるニュートラルステア特性をDYCにより実現させる手法を提案する.提案手法では,曲率を出力とした規範モデルを与えることで非線形状態フィードバック則として制御則を導出している.さらに,提案手法の有効性を実車パラメータを用いた数値例により検証する.この結果,通常は車体構造から決まる操舵性能を自動制御により実現することが可能となる.
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■ ランダムに現れるターゲットに対する周期的最適探索制御
東京工業大学・齊藤 護,畑中健志,藤田政之
探索問題とは,利用可能な資源のもとでターゲットを捜し出すためにエージェントを展開する問題である.一般に,連続空間における探索問題は解くことが難しく,空間的・時間的に離散化する手法が提案されてきた.また,探索を行う際のエネルギー消費を考慮した問題は少ない.
本研究の目的は,連続空間における最適な探索制御のためのエージェントの動きについて解析することである.本研究においては,ターゲットはある時刻においてある位置にランダムに現れ,ある一定時間動かないものと仮定する.このとき,ターゲットを発見する確率を最大にし,かつ制御エネルギー消費を抑えるための最適な制御入力を求める問題として,最適探索制御問題を定式化し,その準最適解を得るための解法を与える.さらに,ターゲットを発見するまでのターゲットの出現回数の期待値と,エージェントの状態の軌道および制御入力の軌道が周期軌道に収束するための必要十分条件を与える.最後にシミュレーションにより,その有効性を示す.
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■ LPガス用エネルギー回収型圧力調整器の開発
法政大学・栗原陽介,見澤圭吾,渡辺嘉二郎,小林一行
近年,エレクトロニクスデバイスの小電力化が進み,小さな電力でデバイスを運用できるようになってきた.しかしながら,アプリケーションによっては,デバイスの小電力化だけでは不十分なこともあり,必要最低限以外の機能や動作期間を制限し,電池の寿命を延ばしている.したがって,エレクトロニクスデバイスの周辺環境に存在するエネルギーを回収し,電力として再利用できれば,電池の寿命を延ばしたり,機能や動作期間の制限を無くすことができる.
本論では,一例としてLPガスで用いられるマイコンメータの電力源を回収する問題を考える.LPガスを充填したタンク内のガス圧を減圧し,一定圧に調整する圧力調整器が廃棄するエネルギーに注目し,入力圧力と出力圧力の圧力差のもとでのLPガス流れのエネルギーを回収する方法を提案する.その結果,入力圧力が0.6MPaのとき,最大で9.12W,0.1MPaでは最大で0.31Wの電力を回収することが可能となった.これらは,エネルギーの回収率としては,約14%〜17%であった.また,入力圧力が0.1MPaを除いて,負荷抵抗値を調整することで,出力圧力を従来の圧力調整器が調整する2800±500Paの範囲に調整することが可能となった.
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■ 画像ポインティングによる不整地移動ロボットの遠隔操縦における目標ベクトルを用いた経路誘導と到達判定法の提案
田村祥,前山祥一(岡山大学大学院 自然科学研究科)
移動ロボットの遠隔操縦を行うインタフェースに画像ポインティングを用いた研究はこれまでにも行われている.しかしながら,従来の研究は,対象とする環境を平らに舗装された路面,もしくは,移動体の大きさに対して路面の起伏が十分小さい路面を想定し,高さ変動がないものと仮定している.したがって,環境が不整地と予想される災害現場では適用できない場合も考えられる.
本研究では,従来の手法を三次元に拡張し,起伏面を含む不整地においても目標地点へ到達できる「画像ポインティングを用いた遠隔操縦システム」の開発を行った.本論文で提案する手法は,ロボットの到達目標を三次元ベクトルである「目標ベクトル」で表現する.到達目標をベクトル表現することにより,未知の不整地においても到達目標を設定できる.ロボットの到達目標への走行制御には,この「目標ベクトル」と三次元の自己位置推定に基づき,「目標ベクトル」をx-y平面に投影した直線を追従走行させることで実現する.到達判定は,境界面の上側に到達したことを内積を用いて判定することで行う.さらに,緩斜面を含む環境において実機を用いた走行実験を行い,提案手法の有用性を確認した.
▲ ■ 超音波エコーを利用したフレキシブル筋量評価システムの開発
九州大学・福元清剛,
産業技術総合研究所・福田 修,椿井正義,
九州大学・村木里志
近年,本邦において高齢者の健康問題が大きな社会問題になっており,自立したADLの遂行が重要になっている.ADL能力における評価指標の1つとして筋力があるが,高齢者の筋力測定では高負荷による筋や関節の疾患を誘発することが懸念される.そこでわれわれは筋力と高い相関がある筋量をフィールドにおいて計測可能な超音波を用いた筋量評価システムの開発を行った.本システムでは,多関節のリンク機構先端に超音波探触子を取り付け,それを体表面に沿って動かすことで,さまざまな計測姿勢や部位に応じることができる.また,撮影された断片画像は1枚の完全な横断面画像に合成される.画像合成には空間コンパウンド法を用い,アーチファクトやスペックルの影響を低減させることで,個々の筋を評価可能とした.開発したシステムの妥当性・再現性と計測能力を評価するために実験を行った.実験では,リンク機構の位置および繰り返し精度を確認するとともに,超音波画像とMRI画像を比較し,妥当性の検証を行った.また,空間コンパウンド法による画質の鮮鋭化についても評価した.いずれの実験においても,その有効性を確認できた.
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