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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.43 No.12(2007年12月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ Performance Characteristics of Wearable Embedded Hetero-core Fiber Sensors for Unconstrained Motion Analyses

Soka Univ.・Michiko NISHIYAMA,Hiroyuki SASAKI and Kazuhiro WATANABE

 本稿では,ヘテロコア型光ファイバセンサによる新しい無拘束ウェアラブルモーションキャプチャシステムを提案し,安定したシングルモード伝送で構成される特徴を有するヘテロコアセンサの感度,安定性,再現性を評価した.このウェアラブルモーションキャプチャとして,センシングジャケット,リストバンドセンサ,また歩行モニタリングシステムを試作し人体の動作計測を行った.センシングジャケットによる上肢モーションキャプチャでは,肩部に設置された2箇所のヘテロコアセンサは肩の動きである内転/外転と屈曲/伸展を十分に捉え,また肘部に設置された1点のセンサは肘の屈曲角度0°〜120°に対して約3dBの光損失感度を示した.センシングリストバンドはヘテロコアセンサ2点のみで構成され,手の振りと招きの動作をそれぞれ屈曲角度-30°〜+30°と-45°〜+45°の範囲で検知可能であった.さらに,ヘテロコアセンサを用いて膝の屈曲と足裏の接地で構成される歩行動作のリアルタイムモニタリングも実現した.これらの結果は,人体の自然な動きを妨げない無拘束モーションキャプチャ実現における,ヘテロコアセンシング技術の有効性を示すものである.


■ Simultaneous Estimation of States and Unknown Inputs for Multi-output Linear Systems

Hiroshima City Univ.・Takahiko ONO,Fukui Univ.・Tadashi ISHIHARA

 可観測指数が2の厳密にプロパな線形時不変離散時間システムに対して,状態と未知入力を同時に推定する状態・未知入力オブザーバを提案する.このオブザーバの設計では,変数変換が重要な役割を果たす.この変換は,状態の推定誤差に非干渉となる出力の推定誤差方程式を導出するために行われる.オブザーバは,この出力誤差方程式に基づき,状態フィードバック理論を適用することで構成される.本質的に,未知入力の推定精度は,未知入力の増分のみに影響される.よって,未知入力が一定であれば,状態と未知入力を有限時間内に完全に復元可能である.すなわち,従来のオブザーバと同等な基本性能は保証されている.未知入力が任意に変動する場合には,未知入力の増分量に応じた誤差を伴って推定される.しかし,ある条件を満たすようにオブザーバを設計できれば,有限時間内に状態を完全に復元でき,かつ1サンプル前の未知入力を正確に復元することができる.そのためには,出力数をある一定以上確保する必要があることを示す.
 数値例では,連続システムの状態と未知外乱の推定問題に本手法を適用し,有効性を検証する.


■ 線形周期システムの可制御性と状態空間表現の関係

宮崎大学・穂高一条,名古屋大学・軸屋一郎

 線形時変システムが可制御であるための必要十分条件として,可制御性グラミアンの正則性がよく知られている.線形周期システムにおいては,係数行列の周期性によって,その可制御性条件は線形時変システムの場合より限定的な表現が可能である.線形時不変システムにおいては,さらに限定的な表現によってシステムの可制御性を表現することができる.たとえば,システムの係数行列の積からなる行列の階数を求めることによって可制御性を判定できることは周知の事実である.この定数行列の階数による可制御性条件は,より原始的な表現である可制御性グラミアンの正則性と比較して判定に伴う計算が非常に容易である.本論文ではまず,ある条件を満たす線形周期システムを考え,そのようなシステムに対して有効な可制御性条件を提示する.この可制御性条件は,適用することのできる線形周期システムが限定されるものの,システムの係数行列の積からなる周期的な行列によって表現されるものであり,システムの基本行列を含まないという特徴をもつ.そして本論文では,前述の条件を満たすとは限らない線形周期システムが任意に与えられたとき,システムの可制御性とシステムの係数行列を直接的に結びつけることのできる特別な状態空間表現が存在することを示す.


■ 閉ループ環境におけるバイアス補償型最小二乗法

徳島大学・池田建司,最上義夫,下村隆夫

 本論文では,閉ループ環境におけるバイアス補償型最小二乗法を提案する.観測雑音はガウス性白色雑音で,プロセス雑音は存在しないと仮定する.また,対象は線形時不変なフィードバックコントローラにより制御されており,閉ループ系は漸近安定であると仮定する.閉ループ環境における最小二乗推定量の漸近バイアスは,回帰ベクトル生成のために用いたプレフィルタのパラメータと最適なプレフィルタのパラメータの差として表されることを示し,提案するバイアス補償型最小二乗法は不偏推定量を与えることを示す.バイアス補償項の計算は最小二乗推定量の計算に比べて少ない計算量で可能である.提案手法は閉ループ直接同定法における最小二乗推定量に基づいているため,参照入力に関するインフォーマティブ性は仮定していない.これは補助変数法などを用いた既存の手法に対する利点と考えられる.数値例では提案手法の不偏性を示す.


■ ハミルトン系の変分対称性に基づく1脚ロボットの最適歩容生成

名古屋大学・佐藤訓志,藤本健治,科学技術振興機構/ATR・玄 相昊

 筆者らは,力学系の対称性を利用した反復学習制御法を提案している.この方法は,与えられた評価関数を最小とするような最適フィードフォワード入力を,試行実験を繰り返すことで,学習的に生成するものである.本論文の目的は,1脚走行ロボットにこの手法を適用することで,エネルギ効率に優れた最適な走行軌道を生成することである.しかしながら,従来法をそのまま歩容の生成に適用することはできないため,本論文では2つの新しい手法を提案する.まず,擬似共役微分作用素という作用素を用いた拡張方法を提案し,従来法では扱えなかった速度項を含む評価関数に対しても,学習が適用できるようにする.2つ目として,従来法では一定とされていた初期状態の更新則を導出し,入力だけでなく最適な初期状態も生成できるアルゴリズムを提案する.これら2つの手法により,制御対象の詳細な情報や,事前の目標軌道に関する情報を用いることなく,制御入力が最小となる最適走行軌道が学習的に生成できるようになる.最後に,シミュレーションを用いて本手法の有効性を確認する.


■ ハイブリッド型適応機構を用いたロボットマニピュレータの反復学習制御

統計数理研究所・宮里義彦

 未知の制御対象に対して限られた事前情報のもとで追従制御を実現する手法として反復学習制御がある.これは有限時間区間の上で規定された試行を繰り返す過程で,追従制御を実現する入力を逐次的に生成する手法であり,これまでに多くの研究結果がある.これに対して本稿では,未知のロボットマニピュレータに対してハイブリッド型適応機構を用いて反復学習制御を実現する方式を提案する.ハイブリッド型適応機構とは,制御は連続時間形式で実行されるのに対して,調整パラメータの更新は離散時間的に行われる適応制御の形式である.提案する方式では,現在の試行時の制御結果に基づいて更新された調整パラメータが,つぎの試行時の制御パラメータとして用いられる.この試行ごとのパラメータの更新と,H∞制御問題から導出された安定化制御信号により,すべての状態変数が有界となり,試行を繰り返す過程での追従誤差の0への収束が達成される.本手法の特徴は,未知のシステムに適用できる点と,追従する目標信号やその信号が規定される有限時間区間の長さが,試行ごとに異なってもよいという点であるが,これは提案手法のパラメータ推定機構によるものである.いくつかのハイブリッド型適応則の適用により,収束特性の異なる複数の反復学習制御方式を導出する.


■ ウォッシュアウト制御による不確かな平衡点の安定化

大阪大学・滝本 隆,金沢大学・山本 茂

 本論文は,非線形システムの不確かな平衡点を有限次元動的状態フィードバックコントローラによって局所安定化する問題を扱う.不確かな平衡点の安定化問題では,コントローラの定常ブロッキング零点が重要な役割を担う.われわれは,平衡点の不確かさの影響を排除する制御法をウォッシュアウト制御と呼び,入力と同じ次元のウォッシュアウトコントローラを提案する.とくに,提案するウォッシュアウトコントローラの設計法を定数状態フィードバックゲインの設計問題に帰着させる手法について述べる.さらに,非線形離散時間システムの不確かな不動点の安定化問題も扱う.


■ 代理モデル制御則が常に成り立つモデル規範形適応制御系の一構成法

防衛大学校・棚橋清太郎,板宮敬悦

 DyCE(Dynamic Certainty Equivalent)原理に基づくモデル規範形適応制御系(Model Reference Adaptive Control System:MRACS)は,代理モデル制御(Surrogate Model Control:SMC)則と高階調整則(High Order Tuner:HOT)を併用することで,適応速度を増加させるほど制御誤差のL2ノルムを理論的に小さくできることが知られている.一般に,MRACSを構成する場合には,入力合成時の零特異問題の回避や制御系のロバスト化のため,パラメータ射影アルゴリズムを併用した適応則が用いられる.このような理由から,DyCE原理に基づくMRACSもまた,その実現にはHOTに射影動作を伴わせる必要がある.しかしながら,これまでに提案されている方法では射影動作に起因してSMC則が成立しない時間が発生してしまう.これは,DyCE原理に基づくMRACSの特長を活かした制御をすべての時間で行うことができないという意味で問題であると考える.本論文は,可調整パラメータの射影動作を実現しつつ,SMC則が常に成り立つMRACSの一構成法を提案する.構成の鍵は,「滑らかな射影動作を伴うHOT」にある.その有効性は安定解析と数値実験によって検証されている.


■ 離散値入力型制御のための最適動的量子化器の安定性

京都大学・東 俊一,杉江俊治

 本論文では,先に著者らによって提案された離散値入力型制御のための最適動的量子化器の安定性の解析を行った.ここでの成果はつぎの2点である.
 第1は,フィードフォワード系に対し提案された最適動的量子化器の構造を,制御対象の極と零点によって特徴付け,それが安定となるための必要十分条件を導いたことである.その結果,非最小位相な制御対象に対しては,その量子化器は不安定となるか,制御対象との間で不安定な極零相殺を生じるという意味において実用的でないことが示される.
 第2は,非最小位相な場合も含む一般的な制御対象に対し,近似精度を表す評価関数が有界となる動的量子化器の存在性に関する結果を与えた上で,実用的な動的量子化器の導出が,フィードフォワード系に対する数値最適化に基づく解法,もしくはフィードバック系での最適化に基づく方法によって行えることを示した点である.
 これにより,著者らの提案する「離散値入力型制御のための最適動的量子化器」の理論的枠組みが完成する.


■ 入力を陽に含む座標変換による1generator高階非ホロノミックシステムの制御

東京工業大学・相模 毅,三平満司,中浦茂樹

 非ホロノミックシステムの研究の多くは,ドリフト項を持たない,いわゆる対称Affineシステムに対するものが多い.なかでも特に多く研究されてきたのはchained formと呼ばれるシステムであり,1-generatorと呼ばれる可制御構造を持つことで知られている.
 それに対して本研究では,ドリフト項を持つ非対称Affine システムで,chained formと同じ 1-generatorの可制御構造を持つクラスのシステムを対象とし,新たな制御方策を提案する.対象とするクラスには,高階chained formや船のシステムなどが含まれる.
 提案する手法は,入力を陽に含む座標変換を利用するものである.まず,提案する座標変換により,もとのシステムを2つの線形サブシステムへと変換する.この変換により,もとの非ホロノミックシステムの制御問題を,2つの線形システムをある条件下で同時制御する問題に帰着させることができる.


■ A Change-of-Variables Method for Output Feedback Synthesis of Descriptor Systems Based on Realization-Independent LMIs

Hiroshima Univ.・Izumi MASUBUCHI

 ディスクリプタシステムに対する有界実性,正実性やそれらを含めた消散性の解析のための線形行列不等式(LMI)による判定条件が種々提案されているが,近年著者は消散性を判定するLMI条件としてディスクリプタシステムの実現の取り方に依存しないものを示した.本論文では,この新たなLMI条件を用いた,変数変換法による出力フィードバック補償器の設計について述べる.解析のためのLMI条件は従来のものとは異なる構造を持つため,従来の変数変換法をそのまま適用することはできない.本論文ではこれを解決し,変数変換によって設計用のLMI条件を導出している.


■ 受動性に基づいた3次元姿勢協調

東京工業大学・五十嵐裕司,畑中健志,藤田政之

 本論文では,3次元空間内に運動学モデルで表わされる複数の剛体が存在している状況を考え,すべての剛体の姿勢を一致させる姿勢協調問題を扱う.姿勢協調問題は従来,研究されてきた生物の群れ問題を3次元空間へ一般化したものであり,その応用として,モバイルセンサネットワーク,ロボットネットワーク,衛星や航空機のフォーメーション制御などが上げられる.
 本論文では姿勢協調を達成するために,群れ問題で提案されている角速度入力を一般化した角速度入力を提案する.そして,剛体の運動学モデルが受動性を有することを利用して,各剛体のエネルギー関数の総和をポテンシャル関数として定義することにより姿勢協調が達成されることを示す.また,グラフ構造と収束の速さの関係や通信遅れがある場合,リーダが存在する場合,グラフが変化する場合の収束性についてもポテンシャル関数の減少と発散を考えることで解析できることを述べる.最後に数値シミュレーションを行い,本研究の有効性について示す.



[ショート・ペーパー]

■ 非凸制約をもつロバスト可解問題に対するランダマイズドアルゴリズム

神戸大学・和田孝之,藤崎泰正

 本論文では,設計変数について凸とは必ずしも限らないパラメータ依存制約をもつロバスト可解問題を取り扱っている.まず,問題の非可解性を確率的に近似した概念として,確率的非可解性の定義を導入している.そして,それを用いて,設計変数と不確かさをともにランダムサンプルするような,新たなランダマイズドアルゴリズムを提案している.このアルゴリズムは,指定された信頼度で,確率的に厳密な解か,問題が確率的に非可解であることを示して,有限ステップで停止する.また,サンプル複雑さは,問題のサイズの多項式である.


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