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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.43 No.7(2007年7月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 実生活での有限レベル変動に整合した音環境評価法と幹線交通騒音への適用

県立広島大・生田 顕,広島大・太田光雄
     広島保健環境センタ・宇津正樹

 実音環境における不規則信号は非ガウス型のさまざまな変動分布を示し, しかも任意分布型の外来雑音(たとえば暗騒音)がしばしば混入してくる. しかも, 実生活では, 計測器のダイナミックレンジや実験的標本数の有限性にも基づいて, 現実に摂取でき信頼性のある振幅レベルの変動範囲としては, 有限のレベル範囲内に限定された情報であるのが実情である. 本研究では, 従来の構造的解析法では, その系統的解析がかなり困難であった複雑・多様な実音環境に着目する. 特に, レベル変動区間が有限範囲内のみに限られた観測データに基づき, 対象信号の揺らぎ分布情報を評価するための手法を静的と動的の対照的な2つの立場から提案している. その際, 対象信号の変動域に対する有限性に対応できるようヤコビ多項式を導入し, さらに対象信号に関する低次および高次の各種統計量に対する機能モデルの採用の下, 公知の最小自乗法を適用することにより, 新たな出力分布予測法および状態推定法を理論的に導出している. さらに, 提案した手法の有効性を実験的に検証するため, 広島市内の新幹線トンネル付近で測定した低周波音および国道で計測した道路交通騒音へ適用した.


■ ベイズ的アプローチによる量子化誤差に伴う不確かさの決定

産総研・佐藤浩志,榎原研正

 測定データが比較的そろっている場合において,量子化を伴う測定データの不確かさ推定についてベイズ的アプローチを利用して検討した.本手法では,量子化される前の測定値の母集団は正規分布であると仮定し,有限個の測定データから分布を特徴付ける母平均と母標準偏差を確率変数と見なし,ベイズ推定を行う.
 本論文では15回以下の繰り返し測定の場合で,かつ最大で連続する3値の測定結果が得られる場合について,2種類の事前確率から演算および考察を行った.
 その結果,測定データがすべて同じ値を示す場合では,測定回数が5回未満のときは慣例的に行われているBタイプの不確かさ評価は過小評価となる可能性を示した.さらに,測定データが連続する2値を示す場合では,Aタイプの評価方法による推定値と本手法による推定値とでは,大きな差異が生じることを示した.


■ Simultaneous Detection of Multiple Reflecting Planes in Concrete Using Ultrasonic Sensor

Yamaguchi Univ.・Muhammed Mazharul ISLAM,
     Hiroya YAMAMOTO, Shogo TANAKA

Conventional inspection methods for concrete cracks using ultrasonic sensors have low reliability as the detection is performed by viewing the A-mode image of the sensor’s output with bare eyes. The methods particularly fail when multiple numbers of cracks reside close to each other, because the reflections from the cracks are overlapped and hat each reflected wave has a spindle oscillatory shape.
For detecting a single crack, a simple and effective method has been developed by the authors previously. The method uses a multi-reflected wave model of the sensor output to effectively detect a single concrete crack.
The present paper proposes a new method for detecting multiple numbers of concrete cracks. In this method, the sensor output is modeled using the signal propagation model and the time of flights of the reflected waves from the cracks are obtained using a pattern matching of the modeled and the actual sensor outputs. The pattern matching, however, involves optimization with respect to five parameters and requires much computational time. Hence, the paper furthermore develops an optimization method to reduce the computation time drastically and thus rendering the method useful for real time crack detection. Experiments showed that the method is also applicable for detecting the strongly pressed interface of different materials very accurately.


■ 随意運動の終点誤差分散最小モデルに対する双対性からのアプローチ

東工大・白根一登,井村順一

 人間の随意運動のモデルとして,終点誤差分散最小モデルが知られている.これは,人間の脳から神経を通じて筋肉へ発せられる運動指令信号にはその信号の大きさに依存するノイズが印加されるものと仮定し,このノイズの結果として生じる運動の誤差を最小化するように人間は運動生成を行っている,とするモデルである.本論文では,制御理論において知られている制御と推定の双対性の観点をこの信号依存ノイズのもとでの運動生成問題に適用することによる人間の持つ情報処理機能へのアプローチを提案する.
 まず,終点誤差分散最小モデルで考えられている制御問題を改めて定式化し,これがノイズのないシステムに対して時変入力重みを持つ評価関数を最小化する最適制御問題と等価であることを示す.続いてこれと双対関係を持つ最適推定問題を定式化し,制御問題に存在した時変入力重みが推定問題では時変の分散を持つノイズとして現れることを確かめる.さらに,この時変の分散を持つノイズは,出力信号に依存する信号依存ノイズとして解釈できることを示す.その上で,移動物体を人間に見せてその速度を推定させる実験を行い,その結果からこの推定機能に実際に信号依存ノイズが存在する可能性があることを示す.


■ ステアリングを持つ3叉移動機構の経路追従フィードバック制御法

青山学院大・山口博明

 本論文では,4つのステアリングを持つ3叉移動機構の経路追従フィードバック制御法を提案した.具体的には,曲率が2階微分可能な任意の経路を1つの座標軸とし,この経路の接線に直交する直線をもう1つの座標軸とする座標系において,3叉移動機構の機械要素の一部を仮想的な機械要素に置き換え,また,3叉移動機構に仮想的な機械要素を取り付けることで,仮想的な状態変数を新たに定義し,その運動学的方程式が微分幾何学に基づいて,正準系であるFive-Chain, Single-Generator Chained Formへ変換可能となることを示した.このように機械要素の一部を仮想的な機械要素で代替し,さらに,仮想的な機械要素を付け加えることで運動学的方程式を再構成し,そのChained Formへの変換を可能にした成果はこれまでに報告されておらず,本研究は十分な新規性を有していると考えられる.このChained Formに基づいて,3叉移動機構の経路追従動作を達成するためのフィードバック制御法を導いた.これにより,3叉移動機構を経路に沿って移動させながら,経路の接線の向きに応じてその姿勢を制御することができる.これらの変換と制御法の有効性はシミュレーションにより検証されている.


■ An Approximation Method for the Stabilizing Solution of the Hamilton-Jacobi Equation for Integrable Systems

Nagoya Univ.・Noboru SAKAMOTO,
     Univ. of Groningen・Arjan J. van der SCHAFT

 本研究では可積分な制御対象に対し,シンプレクティック幾何学とハミルトン摂動法を用いて,ハミルトン・ヤコビ方程式の安定化解の近似解法を提案する.可積分な系のハミルトン系への持ち上げが再び可積分になるという事実を用いると,ハミルトン・ヤコビ方程式に付随するハミルトンの正準方程式は,可積分なハミルトン系が制御入力と密接な関係のある摂動を受けたものとみなすことができる.線形近似から得られたリッカチ方程式が安定化解をもつことを仮定し,求める安定化解に対応するラグランジュ部分多様体近傍の安定なハミルトン流を近似的に構成し,これによって安定化解の近似を求める.


■ 停留時間付き切り替え制御によるデータレートと制御性能の保証

東京大・吉田 匠,石井秀明,津村幸治

 制御対象と制御器が通信路を介して接続された制御系をネットワークを介した制御系と呼ぶ. ネットワークを介した制御系の問題点として, データレートの有限性が挙げられる. このような通信容量が有限である制御系において, 所望の制御目標を達成するデータレートの下限はどれほどかということは興味深い問題である. 本論文では, センサとアクチュエータが有限なデータレートのネットワークで繋がれた制御系を扱い, 線形連続時間フィードバック系において, 要求された制御性能を保証する問題を考える. 量子化器として対数型量子化器を用い, 連続時間の切り替え制御で生じるチャタリングの問題を防止する手法の1つである停留時間付き切り替え制御則を導入し, 要求された2次形式の評価関数に基づく制御性能を保証する制御器の設計を行う. また, データレートと制御性能の関係について解析する.



■ 腹腔鏡下手術支援用Scrub Nurse Robotの開発

東京電機大・吉光喜太郎,宮脇富士夫,
     貞弘晃宜,大沼健太郎,
     埼玉医科大・橋本大定,東京大・正宗 賢

 医療手術現場における慢性的な看護師不足は世界的に深刻な問題となっている.そこでわれわれは器械出し看護師の不足を補い,その代替として外科医の手術作業を支援するScrub Nurse Robot (SNR)システムを提案し,その開発をおこなっている.SNR1号機を開発に際して,手術室における外科医と器械出し看護師の動作計測システムを構築した.動作解析で得られたデータを考慮して製作し,動作検証にて,器械出し看護師と比較すると,電気メス・血液吸引管ロボットR-1は器械出し看護師より早い動作を遂行したが,他の鉗子類を扱うR-2は器械出し看護師より2秒弱の遅れることを確認した.しかし,ロボットを用いることで常に安定的に器具の授受が達成できることを確認した.また最小駆動領域は1.68[m2]であった.そこで狭い作りの手術室でも使うことも考慮して,最小駆動領域を0.31[m2]に縮小したSNR2号機(ASULA)を製作した.ASULAは単体のロボットとして1号機が2台で担当していた作業を1台でおこなう.ユーザインタフェースとして,外科医と器械出し看護師との会話から出てきた言葉を集積し,音声認識データベースを作成することで,不特定話者音声認識・音声発話システムを導入した.


■ 表面痛のモデリングとロボット回避運動への応用

熊本大・松永信智,川路茂保

 人間は「痛み」を感じ学習する機能を備えて怪我や事故から身を守る行動ができることから,痛みは安全性の確保のための重要な感覚となる.このような主観的な痛みをロボットに理解させる試みは,人間とロボットが共存する中での安全システムの構築における新たな指標となりえると考えられる.
 本研究の目的は,ロボットを含む機械に人間の痛みを模擬したメカニズムを実装することにより,機械の擬人化を行い安全・安心な人間−機械系を実現することにある.本論文では,痛みの中でも人間とロボットの衝突や接触により発生する表面痛の発生現象をモデル化し,痛みと触信号の神経経路の切り替えを有する新たな表面痛モデルを提案し、ロボットの回避運動に応用する.
 まず,最も痛みを感じやすい部位の1つである示指に対して,衝撃力の印加により発生する表面痛の定量化を行う.この痛みの特徴に基づき,痛みの発生を2質点系でモデル化する.つぎに,痛みの生成過程を神経の相互作用という視点で模擬したゲートコントロール説に基づき,痛みの伝達特性をモデル化する.最後に,本論文で提案した表面痛モデルをロボットの衝突における回避動作問題に応用し,その有効性を示す.


■ 幾何学的拘束を受けるマニピュレータの学習適応制御

福井大・仲田純人,浪花智英

 本論文では,手先が幾何学的な拘束を受けるマニピュレータに対して,手先の位置と手先に加わる抗力を正確に制御するための学習適応制御則を提案する.学習適応制御については,現在までに手先が拘束されないマニピュレータに対していくつかの手法が提案されており,その制御精度の高さが示されている.われわれも以前にrepetitive controlとModel-Based適応制御を組み合わせた学習適応制御則を提案した.一方,手先が拘束を受けるマニピュレータに対して学習制御や適応制御を適用する研究が行われているが,学習制御と適応制御を組み合わせる研究はほとんど行われていない.しかし,学習適応制御を用いることで手先位置と手先の抗力を同時に精度よく制御することが可能であると考えられる.そこで,本研究ではマニピュレータの手先位置と抗力を正確に制御するためのフィードフォワード入力を獲得するために,われわれがすでに提案した学習適応制御則を拡張し,手先が拘束を受けるマニピュレータに対する学習適応制御則の構築を行う.また,制御則の安定性の証明を行うとともに,シミュレーションによって手先位置と抗力を同時に制御する場合においても高精度な制御が可能であることを確認する.



[ショート・ペーパー]

■ 積分制御のループ切断に対する確率的ロバスト性

茨城大・山中一雄,堀井一朝

 安定な制御対象を含む積分制御系は,適当に小さな積分ゲインによって安定化でき,定値外乱に対して定常偏差を生じないことは周知である.本論文では,フィードバック信号伝達経路に不規則な切断を生じる場合でも,積分制御系のこのような性質が保持されることを示す.すなわち,不規則な切断の生起がエルゴード的であるならば,あらかじめ十分小さいゲインを設定すると,切断確率が1に等しい場合を除き,確率1で定常偏差が0になることが示される.


■ モード切り換え型制御系における最適性を考慮した初期値補償設計

名工大・不破勝彦,神藤 久,西川竜矢

 モード切り換え型制御系は,制御器の切り換え時にその内部変数を再設定する初期値補償制御が行われている.この制御方策には,切り換え後の閉ループ系の状態に関するL2ノルムを最小化する評価関数最小型,零入力応答に関する伝達関数の極と零点とを相殺する極零相殺型の2つが提案されている.制御量応答に対して極零相殺型における配置可能な零点のクラスは明らかにされているものの,操作量応答に対しては明らかにされていない.また,極零相殺型において,配置可能な零点の個数が制御器の次数未満である場合,初期値補償ゲインの設計に自由度が存在するものの,従来法はこの自由度を考慮したものであるとは言い難い.そこで本稿では,まず操作量応答に対して配置可能な零点のクラスを明らかにする.得られた結果は,制御対象の極や制御器の零点と関連づけたものとなっており,制御量応答の結果と比較して,制御対象と制御器の対応が入れ替わっているところが特徴である.つぎに,配置すべき零点の個数が制御器の次数未満である場合,ある2次形式評価関数を最小にするような初期値補償ゲインの設計法を提案する.速応性に加え,振動を抑制するといった評価関数最小型と極零相殺型との両者の特徴が,数値例により確認される.


■ 適応オブザーバを用いたプロセス系の故障診断

岡山大・井上 昭,ケ 明聡,
     高松高専・吉永慎一,岡山大・岡崎 聡

 不確かさを有するシステムに対する故障診断手法として,外乱推定オブザーバと適応オブザーバを組み合わせた手法を提案する.外乱推定オブザーバでは,観測対象システムと故障信号モデルとの合成系に対して,状態推定オブザーバを構成する.本稿では,不確実性を表わす信号がPIフィードバックによって入力項に混入するとして,システムの強正実性を満たすように構成可能となり,適応オブザーバの全信号の安定性と,推定の収束性を保障される.


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