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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.43 No.6(2007年6月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ スライディングモードを利用した離散入力システムの制御

早稲田大・神谷 慶,内田健康

 ハイブリッドシステムの1つのクラスである「離散入力を持ったアファインシステム」の制御問題に焦点を当てる.離散入力のあるシステムの具体例としてはトランジスタスイッチによって制御されるスイッチングコンバータが挙げられる.こういったシステムは,スイッチング条件を適切に決めることで任意の状態へとシステムを平衡させることを制御仕様としている.本研究では,このようなすでに離散入力によって安定化可能だとわかっているシステムを対象とした一般的な制御法を提案する.
 提案手法は,「システムの目標値近傍に平衡点を持つようにスライディングモードを引き起こし状態を目標値付近へと収束させる」,というものである.こうすることでシステムの状態をスライディングモード超平面上へと拘束し,最終的に目標点へ持っていくことが可能となる.
 さらに本研究では実機への適用も考慮に入れ,スイッチングにヒステリシスを導入しXuping Xuらによって定義されているε-practical安定性を実現するための十分条件を導出する.また,実際にスイッチングコンバータを製作し,手法の有効性の検証をも行う.


■ 線形ジャンプシステムに対する出力フィードバックによる予見H∞追従制御

大阪大・名倉 剛

 本論文では有限時間区間における線形時変ジャンプシステムに対する出力フィードバックによる予見H∞追従制御問題について考察している.おもに目標信号があるあらかじめ設定された予見時間においてコントローラー設計のために利用可能である問題について考察し,予見時間がない場合と終端時刻まですべての時間間隔で予見可能な場合を含めて3種のH∞追従制御問題に対する出力フィードバック則を提案している.さらに数値シミュレーションにより,予見時間を増やすことにより追従性能が改善されることを示した.本論文は線形連続時間および離散時間システムに対するH∞追従理論を線形ジャンプシステムへ拡張したものである.この理論はゼロ次ホールドの入力をもつサンプル値制御系へも適用可能である.


■ 非線形なベクトル場を持つハイブリッドオートマトンの切り替え条件の最適設計−PLCを用いた制御システムへの適用

名城大・小中英嗣

 PLC(Programmable Logic Controller)は産業界で幅広く用いられている制御器であり,ON/OFF型のセンサ・アクチュエータの使用を想定しているのがその特徴である.
 PLCを用いた制御系において,センサパラメータはセンサのON/OFFを決定する重要な要素であり,制御系全体の性能に大きな影響を与える.しかし,その設計はこれまで試行錯誤的な手法が大半であり,系統的な手法についての議論はほとんど見当たらない.この問題に対し,本論文では,PLCを用いた制御系をハイブリッドオートマトンに変換する手法を示し,その切り替え条件の設計がPLCにおけるセンサパラメータの設計と等価であることを示す.提案する設計手法では,ベクトル場の線形化や離散化を必要としないため非線形ベクトル場をもつ制御対象にも適用可能である.また状態変数の係数として表われるパラメータも設計可能である.さらに,試行錯誤的な手法の本質的な問題であったパラメータの見落としもない.提案手法と試行錯誤的な手法をシミュレーションにより比較し,計算結果・計算時間双方の面で提案手法が有用な点を確認する.


■ 切換制御系の確率的設計

神戸大・和田孝之,藤崎泰正

 本論文では,線形切換系を対象に,安定化切換則の設計について考えている.この設計は,Multiple-Lyapunov 関数を探索する問題に帰着され,状態変数の各値について,複数の制約条件の少なくとも1つを満足する設計変数を求める問題として定式化される.この問題を解く上での困難さは,状態空間のすべてにおいて制約条件のうち1つを満足しなければならない点と,状態変数を固定した際に得られる複数の制約条件を満足する集合は凸とは限らない点である.そこで,これらの困難さに対処するために,複数の制約条件を個別に扱う確率的楕円体法に,分枝操作を組み合わせた解法を提案している.このアルゴリズムは,有限回の分枝を伴う反復の後,指定した信頼度で確率的解を見つけるか,ある確定的な意味で解なしと出力して停止する.このときの更新回数の上界も具体的に与えている.提案アルゴリズムでは,複数の制約条件を個別に扱い,1サンプルあたりの解の更新回数を増やすことで,ランダムサンプル数をより減少させ,分枝数の増加を抑えている.数値例では,可解な問題,可解でない問題の両方について,提案アルゴリズムが適切に働くことを確認している.


■ Robust Stability/Performance Analysis for Linear Time-Invariant Polynomially Parameter-Dependent Systems using Polynomially Parameter-Dependent Lyapunov Functions

JAXA・Masayuki SATO, LAAS-CNRS・Dimitri PEAUCELLE

This paper addresses robust stability, H2 performance, and H∞ performance analysis for Linear Time-Invariant Parameter-Dependent (LTIPD) systems using Parameter-Dependent Lyapunov Functions (PDLFs). The statespace matrices of the LTIPD systems are set to be parameter-dependent in negative as well as positive power series with respect to parameters, and PDLFs are also set to be parameter-dependent in negative as well as positive power series with respect to parameters. Our results are derived using “slack variables” and restricting them to be parameter-independent, therefore, they are only sufficient conditions for the original analysis problems. However, we demonstrate the effectiveness of our results with randomly generated numerical examples and several numerical examples which are borrowed from existing papers.


■ Robust Stability/Performance Analysis for Linear Time-Invariant Polytopically Parameter-Dependent Systems using Polynomially Parameter-Dependent Lyapunov Functions

JAXA・Masayuki SATO, LAAS-CNRS・Dimitri PEAUCELLE

This paper addresses robust stability, H2 performance, and H∞ performance analysis for Linear Time-Invariant Parameter-Dependent (LTIPD) systems using Parameter-Dependent Lyapunov Functions (PDLFs). The statespace matrices of the LTIPD systems are set to be polytopically parameter-dependent, and PDLFs are set to be polynomially parameter-dependent with respect to parameters which represent vertices of the polytope. Our results are derived using “slack variables” and restricting them to be parameter-independent, therefore, they are only sufficient conditions for the original analysis problems. To compare our methods with existing methods, we introduce many examples borrowed from existing papers and demonstrate the effectiveness of our results with them.


■ 極配置問題におけるフィードバックゲインの構成とその応用

名工大・不破勝彦,豊田工大・成清辰生,名工大・神藤 久

 多入力系での極配置問題において,フィードバックゲイン行列に自由度が存在することが知られている.この行列は自由度を記述する任意のパラメータ行列と,それに依存するある行列の逆行列との積により構成される.したがって,パラメータ行列に依存する行列は正則でなければならないが,そのクラスについては明確にされていない.そこで,本稿では正則性を保証するパラメータ行列の1つのクラスについて考察する.まず,フィードバックゲイン行列が存在するための問題を,制御対象およびパラメータ行列に関係するものとに分離して定式化する.つぎに,この定式化のもとでパラメータ行列の構造を明らかにし,フィードバックゲイン行列が存在することを保証するパラメータ行列のクラスを導出する.逆にいえば,フィードバックゲイン行列が存在しないパラメータ行列を比較的容易に求めることが可能となり,自由度を極配置以外の設計目的で用いる応用上の視点からも有用であると考える.得られたパラメータ行列の適用例として,unity-rankアプローチに基づく極零点配置問題を解く.極および零点を配置するためのフィードバックゲイン行列のパラメータ行列が容易に与えられることが示される.



■ 連続時間区分的アファインシステムのモデル予測制御と事前計算による高速解法

東工大・田崎勇一,井村順一

 本論文は連続時間区分的アファイン(CTPWA)システムのモデル予測制御を取り扱う.はじめに,CTPWAシステムの有限時間最適制御問題が(ある程度の準最適性をもって)モード系列と中間目標状態列の最適化問題に帰着されることを示す.つぎに,事前計算のテクニックに基づいた解法を提案する.本手法では,オフラインに各モード系列に関連付けられた実行可能初期値集合および評価値の下界を計算し,オンラインの各サンプル時刻では事前計算情報を利用して最適なモード系列および最適な中間目標状態列を決定する.計算をオフラインとオンラインとに効果的に分配することによって,事前計算情報のサイズとオンラインでの計算時間との良好なバランスが実現できる.本手法の有効性を簡単なCTPWAシステムに適用し,数値シミュレーションにより評価した.


■ 入力制約を有する不連続な非線形システムに対する制御Lyapunov関数を用いた制御則の設計と制御検証実験

奈良先端大・中村文一,加藤健一,中村奈美,西谷紘一

 入力制約を有する非線形システムに対して,制御Lyapunov関数を用いた逆最適制御則が提案されているが,議論はシステムが連続な場合に限られ,実機による有効性は示されていない.そこで,本論文では喜種らの制御則を可測な非線形性を有するシステムに適用した場合における制御系の安定性および逆最適性を明らかにする.つぎに,逆最適制御則と制御Lyapunov関数の微分を最小化する制御則を接続することで,安定化可能領域全域での漸近安定性の保証と原点近傍におけるロバスト性を両立させた制御則を提案する.さらに,Coulomb摩擦が存在する1リンクのロボットアームを用いた実験により,提案した制御則の有効性を検証する.最後に,摩擦を有するメカニカルシステムに対して有効であると考えられているスライディングモード制御と提案手法を比較することにより,提案手法の有効性を明らかにする.


■ 電極間クロストーク情報に基づく多チャンネルEMG動作識別法

広島総研西部工技センタ・大賀 誠,
     産総研・卜 楠,広島大・杉山利明,辻 敏夫

 EMG信号をユーザインタフェースの入力信号として使用する際には,少ない電極数で,多くの動作を識別することが望まれる.本論文では,限られたEMG信号からより多くの情報を得る目的で,2つの異なる筋に電極を配置し複数の筋にまたがって差動計測するクロストークEMG信号を利用した識別法を提案する.この方法では,計測したクロストークEMGの周波数分布をフィルタバンクを用いて特徴ベクトルに変換し,この特徴ベクトルを統計構造を組み込んだニューラルネットワークを用いて識別することにより,操作者が意図する動作を推定する.
 提案法を用いて,前腕8動作の識別実験を11名の被験者に対して実施した.その結果,従来の同一筋での差動計測に比べ,少ないEMG電極数で,高い識別率を実現することができた.また,どの筋に配置した電極を組み合わせてクロストークEMG信号を構成するのが有効かという問題に対して,各電極で計測した整流平滑EMG信号間の偏相関係数が小さい組み合わせが有効であることを実験により明らかにした.筋間のクロストーク信号を積極的に利用することにより,少ない電極数で効果的なユーザインタフェースを構成できる可能性がある.



[ショート・ペーパー]

■ 定量フィーダのセルフチューニング制御

兵庫県立大・佐藤孝雄,亀岡紘一

 定量フィーダの制御では,制御量が追従すべき参照入力はランプ信号であるため,ランプ状の参照入力に定常偏差なく制御量を追従させるために,前置補償器を用いた一般化最小分散制御系の新しい前置補償器の設計方法を提案する.また,提案手法の有効性を確認するために行った実機実験の結果についても報告を行う.


■ 免疫回路網式強化学習法

山口大・小川長久,大林正直,小林邦和,呉本 尭

 生体の免疫処理機構は,個々の細胞が互いに刺激・抑制という相互作用をしながらネットワーク(免疫ネットワーク)を形成し,さまざまな抗原をシステムレベルで認識している.この刺激・抑制という相互作用が侵入した抗原に対する適切な抗体の適量産生に寄与している.この免疫ネットワークの自律分散的な抗体産生調節機能に着目し,工学的にモデル化された免疫ネットワークでは抗原,抗体をそれぞれ現在の環境,現在の環境に対する適切な行動の候補とし,抗体間の相互作用(刺激・抑制作用)を通じてボトムアップ的に適切な抗体を選択する.適切な抗体を得るためには抗体間の相互作用をどのように設定するかが課題であるが,石黒らは受け取った報酬と罰の回数に応じて抗体間の相互作用を学習するという簡単な強化学習法を用いた免疫ネットワークを障害物回避問題に適用した.本研究では,従来の免疫ネットワークの学習方法では経路,すなわち行動の時系列を記憶することができないという問題点に着目し,強化学習の分野の知見のひとつである適格度を導入することでこの問題点を克服した免疫回路網式強化学習法を提案するものである.そして提案法を簡単な迷路問題に適用し,その有用性を確認した.


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