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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.41 No.12(2005年12月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 瓦礫撤去レスキューロボットの路面抗力を用いた転倒安定性評価

富山大・羽多野正俊,SONY EMCS・菅野昌伸,富山大・小原治樹

 本研究の目的は,瓦礫撤去レスキューロボットの路面抗力を規範とした転倒安定性評価法を提案することである.
 近年多発する災害現場において,レスキューロボットの実現が望まれている.現在行われているレスキューロボットの研究は探索に関するものが多いが,われわれは被災者の上に覆い被さった瓦礫の撤去作業を行うロボットシステムの実現を目指す.災害現場では瓦礫の質量や作業路面形状が未知であり,瓦礫がロボットの可搬質量以上の場合は,各リンクのアクチュエータが目標角を実現するために発生した力は直鎖リンク構造を介してロボットのボディに伝わり転倒運動を引き起こす.
 本論文では,ロボットが路面から受ける抗力を規範とした転倒安定性評価法を提案する.この手法は(1) ロボットのクローラ支持輪軸に取り付けた力センサにより路面抗力情報を取得し安定・不安定状態の安定性判別を行う方法,(2) 抗力の時間変化情報より安定状態時から不安定状態に移行するまでの予見的時間を算出し,それを安定余裕時間として評価する手法,の2つから構成される.実験を行い,種々の路面形状や可搬質量以上の把持物に対して提案する手法が有効であり,安定性判別が可能であることを実験により示す.また,簡単な安定化運動を行い安定状態を保てることを示す.


■ 非熟練オペレータ用情報収集ロボット−サーモグラフィを用いた視覚支援システムの開発−

岡山大・藤井宏行,法政大・伊藤一之
岡山大・五福明夫,電通大・松野文俊

 近年,ロボットを利用し,大規模災害の被害を軽減する試みが注目されている.
 しかし,従来のレスキューロボットは,専門のオペレータを対象に設計されており,その操作には,十分な訓練と知識が必要であった.さらに,過去の大規模災害においては,レスキュー隊員の不足が指摘されており,ロボットを多数配置してもオペレータ不足から十分に活用できないと考えられる.
 われわれは,この問題に対して,多数のボランティアを考え,非熟練者が操作可能なレスキューシステムの研究を行ってきた.人命探査装置の開発は,この重要な課題の1つである.
 本論文では,非熟練者が操作可能な人命探査装置の1つとして,サーモグラフィを用いたシステムの開発について考える.環境として,一般的な日本家屋が倒壊した際の瓦礫を想定し,熱画像から自動的に生存者を発見するためのアルゴリズムを開発する.そして,これにより得られた生存者の位置情報をカメラ画像に合成し,オペレータに提示することで,非熟練者が操作可能な人命探査装置を実現する.最後に,本装置の有用性を実験により検証した.その結果,瓦礫下の生存者を自動的に発見し,オペレータがその位置を容易に特定できるよう表示可能であることを確認した.


■ グループ形成によるレスキューエージェントの協調モデルについて

名工大・伊藤暢浩,JR東海情報・浅井義樹,松下電器・江崎哲也
名工大・犬塚信博,和田幸一

 近年,大規模災害に対する取り組みのひとつとしてロボカップレスキューに注目が集まっている.ロボカップレスキューにおけるマルチエージェントシステムには,単独では解決できない問題が同時に複数発生するなどの特徴をもつ環境において協調行動を実現することが求められている.そこで本研究では,グループを導入して,効率的に協調行動をおこなうことができる協調モデルを提案する.本モデルにはグループを形成することで,エージェント単体では解決できない問題が解決でき,また問題のサイズに応じたグループを作成できる利点がある.グループは,グループを形成する権限をもつリーダエージェントとそれ以外のメンバエージェントにより構成される.これらのエージェントが協力しあって,共通の目標達成を目指して活動していく.なお,本モデルはすべてのエージェントがリーダとなることができ柔軟なグループ構成が可能である.本研究ではロボカップレスキューシミュレーションにおける消防隊エージェントに提案手法を適用して実験をおこなった.その結果,提案手法が与えたグループ化アルゴリズムが必要なサイズのグループを形成し,そのグループが正しく機能していることを示すことができた.


■ 防災情報の平非両用運用と伝達経路拡大方式−携帯情報機器利用による防災情報配信システム開発−

はこだて未来大・畑 雅之,松原 仁

 この研究では,防災情報の平常時と非常時利用を円滑に結ぶシステムインテグレーションとその開発を行っている.情報活用機会を広げるため,ごく一般的な小型情報機器(携帯電話以外)に幅広く対応し,その活用検証行うものである.これら小型情報機器は,音楽プレーヤやデジタルカメラ,映像プレーヤ,USBメモリ等の広く普及している機器で,防災専用機器ではない.特定の専用機器に頼ることなく多様な情報伝達網を築くことが,情報伝搬性を高める条件と考えている.防災情報データベースから通信網を通して音楽プレーヤ等の情報機器に避難指示音声等を送り込み,携帯電話や防災専用システム以外での防災情報配信を行う.平常時は音楽や動画を楽しみながら防災情報を機器内に蓄え,非常時には防災情報を活用する試行システムを実現できる.これは,普段から防災に関わる情報を小型情報機器に蓄え更新することで,急な災害の発生時にもある程度の情報利用が可能となることを意味している.避難場所や病院,傷病時の応急処置法,被災時の行動指南等事前に準備できる防災情報は多い.平非両用という利用モデルと普及型小型情報機器への情報配信モデルの融合で,効率の良い防災システム構築と社会生活に深く浸透した利用方法を実現することができると考えている.


■ ロボットと時空間GISの連携による段階的な震災データ収集システムの開発

早稲田大・目黒淳一,石川貴一朗,京都大・畑山満則
     三菱電機・瀧口純一,早稲田大・天野嘉春,橋詰 匠

 本論文では,災害時に設置される対策本部での震災総合シミュレーションにおける初期段階で必要である,迅速かつ正確な情報収集を実現するため,ロボットに搭載したセンサ群による段階的な情報収集手法の提案を行った.提案した震災データの更新手法の特徴は,被災情報の迅速性と抽象度を両立させるための3段階のデータ更新と,ロボットによって取得する震災データから変化域のみを時空間GISフォーマットの KIWI+形式の建物データとして抽出,更新を行う点である.試作システムによる評価試験では,GPS/INSと全周カメラを搭載したロボットを災害現場に見立てた工場構内の道路を走行させ,一次更新として,自己位置と全周画像のみの更新を行った.二次更新では,全周モーションステレオにより三次元環境情報を取得,更新を実施した.さらに三次更新では,復元した最新の三次元環境情報と,事前に取得したGIS建物モデルの差分をもとに,変化領域抽出を行い,震災によって変化した,未知の物体を直方体近似し,KIWI+オブジェクトとしてDiMSISデータを更新した.この三次更新により,変化オブジェクトの位置,姿勢,属性などの詳細な情報が汎用性やデータ転送性で優れるKIWI+フォーマットで記述できることを示し,上位システムである時空間GIS震災総合シミュレーションへの効果的な接続や広域の被災状況の効率的な把握への利便性を明らかにした.


■ 移動ロボットによる環境認識のための実時間距離画像位置合わせ

阪大・大澤奈々穂,佐川立昌,越後富夫,八木康史

 災害時において,遠隔操作されているロボットによりあらかじめ情報を収集することが可能ならば,救助活動などを行うレスキュー隊員の危険性を減らすことができる.このような環境内においてロボットが移動しながら周囲の状況把握を行うためには,自己位置を推定すると同時に3次元環境モデルを作成する必要がある(SLAM問題).そこで,本論文では実時間レンジセンサから得られる距離画像を位置合わせすることにより,3次元環境モデリングとロボットの自己位置推定を同時に行う手法を提案する.本手法では,センサから得られる時系列距離画像を用いることで,外部センサや手動に頼ることなく実時間で距離画像の位置合わせを行う.位置合わせにはIterative Closest Point(ICP)法の派生法を用いるが,ここにセンサ精度を考慮した重み関数を導入し,精度による誤差を軽減する手法を提案する.実験では,センサの性能と位置推定の精度についての分析を行った.また,実際に移動ロボットにレンジセンサを搭載し,実時間環境モデリングとセンサ軌道の推定を行った.


■ 不整地走行用全方向移動システムの開発

岐阜生産情報研・田畑克彦,稲葉昭夫,消防研・天野久徳

 大震災等の大規模災害後の救助活動において,被災者やその周囲の情報を収集する情報収集ロボットの活躍が期待されている.これらのロボットの情報収集領域は,一般的に移動システムの走行能力に依存するので,その移動システムはガレキ上を移動でき,ガレキ内にも進入できる高い走行能力をもつ必要がある.
 そこで,情報収集領域を拡大する移動システムとして,形状変化機能をもったクローラ型全方向移動システム(CUBIC Rescue Robot: CUBIC-R)を提案し,そのプロトタイプを開発してきた.本移動システムは,立方体を構成する各面を開閉させることにより,立方体形状からその展開形状に変形できるため,ロボット形状を変形させながら,段差・階段・ギャップ等の不整地路面を走行することができる.また,前後左右方向に対して,移動体であるクローラユニットが連結されているため,ロボットを旋回させることなく前後左右方向に移動できることを特徴としている.
 しかしながら,CUBIC-Rは,いくつかの問題点(重量が重い,構造が複雑,移動時のバランスの悪さ,操縦が煩雑)が判明した.本論文では,これらの問題点を改良したCUBIC-R+を開発したので報告する.



■ 災害現場での探索活動を支援する人力駆動型簡易探索機

阪府高専・土井智晴,笹原龍樹,三藤大地 広島大・玉利寿靖
阪府高専・金田忠裕,梅本敏孝,葭谷安正

 災害現場ではライフライン等が寸断され電源確保が難しい.そのような環境下でも人力により動力を得て駆動し,人命探索を支援できる実用化を重視した有用性の高い簡易な瓦礫内探索機を開発した.
 まず,探索機はワイヤ駆動方式簡易探索機を試作し,基本仕様を求めた.つぎにワイヤ駆動方式の欠点を克服する発電駆動方式簡易探索機を試作した.そして,実用化を目指し,発電駆動方式簡易探索機に対して操作性を向上させる実用化試作機を開発した.
 本論文は,これら3つの試作機の開発を紹介し,災害現場での探索活動を支援する人力駆動型簡易探索機が非常に有用性の高いレスキュー機器であることを述べる.


■ 人工筋アクチュエータを用いた蠕動運動型ロボットの開発

秋田県立大・嵯峨宣彦,中央大・中村太郎,デンソーテクノ・上田晋也

 現在,2足歩行や車輪走行,蛇行などロボットの移動機構にはさまざまなものがある.図1に各移動機構とその移動に要する空間を示す.いずれの移動機構も移動に大きな空間を要し,わずかな空間のみで移動可能なものは,ミミズの蠕動運動による移動である.しかも,他に比べ安定した移動機構である.そこで,われわれは車輪や歩行に代わる移動機構としてミミズの移動機構に着目し,不整地や狭窄路,瓦礫内や原子力などの細管を移動可能なミミズ型ロボットの開発を目指している.本報では,ミミズの蠕動運動機構の研究および試作した蠕動運動型ロボットの設計およびその評価結果について報告する.


■ 小型無人ヘリコプタを用いた拡張現実感による被災者捜索支援システム

奈良先端大・小枝正直,松本吉央,小笠原 司

 都市部で発生する災害は壊滅的な被害をもたらし,膨大な人的・経済的損失を発生させる.被害軽減の代表的な方策としては,家屋・インフラの耐震性向上などの災害発生前の備えと,災害地の情報収集や救助活動などの災害発生後の行動がある.本研究では後者に注目し,発生後の迅速な情報収集活動の実現を目的とする.現在,被災地の情報収集活動にはおもに大型有人ヘリコプタが用いられている.しかし機体が発する騒音が地上での救助活動を妨害するという問題があった.そこで遠隔操縦型無人ヘリコプタによる情報収集・被災者捜索システムを開発した.遠隔操縦型無人ヘリコプタは小型,軽量,安価などの特長を有し,航空写真の撮影や農薬散布,危険地帯の偵察などに用いられている.しかし機体の低安定性や,姿勢認識の困難さから,その操縦は容易ではない.そこで没入型操縦システムを採用し,この問題を解決した.本システムでは機体に搭載した全方位カメラの画像を操縦者が装着するジャイロ付きHMDに投影,それを見ながら無人ヘリコプタの操縦を行う.また迅速な被災者捜索を実現するために,拡張現実感による操縦支援システムを開発した.本論文では開発したシステムの解説と,これを用いて行った人物捜索実験,およびその結果について報告する.


■ 透過型液晶フィルタリング方式によるカメラの広ダイナミックレンジ化

阪大・万波秀年,佐川立昌,向川康博,越後富夫,八木康史

 レスキュー活動にロボットを用いた場合,用いるセンサとしてカメラが考えられるが,屋外において瓦礫の下など光の届かない場所を撮影すると,明暗の差が激しいため通常のカメラでは撮影できないため,より広い範囲の明暗を表現できるシステムについての研究が行われている.そこで本論文では透過型液晶フィルタを用いた広ダイナミックレンジ画像の生成手法について述べる.撮像面の前方に配置した液晶フィルタを適応的に制御することで,受光面に届く光量を調節する手法が提案されているが,このように撮影された画像から広ダイナミックレンジ画像を生成するには,フィルタの制御と受光面が受ける光量の関係が必要である.提案手法では,フィルタの制御による透過率の変化をあらかじめ調べておき,さらに液晶フィルタのボケをモデル化することによって,調節された光量から実際の光量を算出する.液晶フィルタによる光量の調節を実現するシステムを試作し,明暗の差が激しいシーンを対象とした実験により,広ダイナミックレンジ画像が取得できることを確認した.


■ 移動体の遠隔操作のための過去画像履歴を用いたシーン複合

国際レスキューシステム研究機構・城間直司,東大・長井宏和,
電通大・加護谷譲二,杉本麻樹,稲見昌彦,松野文俊

 本論分では,ロボットの遠隔操作のための過去画像を用いたシーン複合について提案する.本手法による複合画像は,ロボットの位置・姿勢情報とロボット搭載カメラにより過去に撮像された画像履歴およびロボットCGモデルに基づいて生成され,環境中でのロボットを俯瞰的に見た画像をオペレータに提示することが可能である.本手法は,未知環境内でのロボットの状態をオペレータが把握するのを容易にし,ロボットの遠隔操作性の向上へ寄与する.また,本論文では,オペレータへのさまざまな俯瞰的複合画像の提示法を提案する.そして,本提案手法を閉じたシステムとして実現するため,レーザレンジファインダをロボットの位置推定用センサとして使用した自己位置推定法に基づいた本手法の2次元水平面内を移動するロボットへの実現例について述べる.



[ショート・ペーパー]

■ レスコンJr.におけるダミー人形用簡易振動センサの開発

広島大・大西 諒,小山雅樹,山本 透

 日本は世界有数の地震発生地域であり,阪神大震災以降,日本列島の各地で断続的に巨大地震が発生している.このような状況のなか,近年,レスキュー活動に対する関心が集まり,レスキュー技術を高める目的のコンテストが,さまざまな形で開催されるようになり,中学生を対象としたレスキューロボットコンテストJr.も行われるようになった.本論文では,レスコンJr.で利用される救助用ダミー人形に搭載可能な,安価で手軽に製作可能な簡易振動センサについて考察する.


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