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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.41 No.9(2005年9月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ Study on Output Mechanism of Cable Sensor for Vibration Detection

Ntt DoCoMo・F.Ito, D.Akhmetov, M.Komazaki, Hokkaido Univ.・H.Tachikawa, M.Ujihira, K.Ohara
Univ. of Tukuba・Y.Kawamura

 本論文では,新しいタイプの振動検出用ケーブルセンサの特性と応用について述べている.地質工学的分野の落石予知システムへの応用に関する既往の研究を紹介し,出力電圧の発生機構について論じている.センサの測定原理を明らかにするため,実験と解析を行いつぎの点を明らかにした.
 1) ケ−ブルセンサに外部から周期的な振動を加えると同軸ケーブル状センサの心線と外周の高分子誘電性チューブが接触分離を繰り返し,心線と誘電性チューブ外周のシールド間に振動的な電圧信号を発生する.2) 発生する波形信号は同時に測定した加速度信号と周期,スペクトル成分が一致している.3) 分子動力学的解析から,誘電チューブのFEPが正の電子親和力をもつことにより接触電圧が発生し得ている.また,理論的に,FEPに対しーCF2CF3側鎖を結合させることで起電力を向上できると推定される.4) ケーブルセンサを用いた振動測定回路の伝達関数を導き,信号線静電容量の増加に伴なう出力電圧減少割合を評価した.これにより,フィールドで延長したい信号線長に応じた増幅倍率を設定できる.本研究結果はケーブルセンサの測定原理と測定回路に関する理解を深めるために役立つと考えられる.


■ Bypassing Flowmeter Capable of Detecting Bypss Rate

Kumamoto Univ.・Ippei TORIGOE

 流れを,主管と支管に分流し,支管内流量から全流量を推定する分流式流量計において,主管と支管の流量の比−分流比を測定する方法を提案する.大きな流量を比較的小さい流量計で計測したり,主管内の圧力損失を小さくする目的,あるいはメンテナンス上の理由などから,いわゆる分流式流量計が用いられる.しかし,主管と支管の流路条件は一般に異なるので,全流量の変化にともなって,主管と支管の流量比は変化する.したがって,分流式流量計で全流量を正しく推定するためには,支管の流量とともに,分流比を知ることが必要となる.本方式では,主管と支管の接続点,すなわち流れの分岐点において,その上流側と下流側の主管内差圧を測定する.主管内の上流側と下流側の流量は,支管流量の分だけ異なっており,主管内の流れにベルヌイの定理を適用すると,この差圧は,主管内流量と支管内流量とで決まることがわかる.したがって,支管内流量を流量計で計測し,あわせて上記差圧を計測すれば,「分流比」の変動に影響されることなく,全流量を推定することが可能になる.実際の流量計では,粘性による圧力降下分を相殺するため,流れの分岐点と合流点の両方で差圧を測定して差をとる方式を用いる.水を用いた基礎実験を行って,この方式の有効性を確認した.


■ 入力拘束付き線形システムのモデル予測制御のための差分型高速近似解法

東工大・齋藤 豊,井村順一

 本論文では入力拘束付き離散時間線形システムのモデル予測制御に対して,高速なオンライン準最適化アルゴリズムを提案する.離散時間線形システムのモデル予測制御問題は,離散時間線形相補性システムの解軌道を求める問題と等価であることが知られている.従来はその解軌道を求めるために各時刻で通常の線形相補性問題を直接解いていたが,提案アルゴリズムでは,1サンプル時刻前の線形相補性問題の解情報に,システムの状態の差分値を元に計算した解の差分値を加えることで,その近似解を得るものである.これにより,あたかも通常の動的システムの差分解法のように効率よく解軌道を求めることができる.また,提案アルゴリズムから得られる近似解は,設計パラメータの極限において厳密解に一致することを証明する.最後に,提案アルゴリズムの効率が良いことを数値例によって示す.


■ 多変数系の拡張PID制御−最小位相性と高ゲイン出力フィードバックに基づく安定化−

慶應大・志水清孝,田村健一

 本論文では,PIDコントローラによる線形多変数(MIMO)システムの漸近安定化制御を研究する.われわれの目的はレギュレータ問題における閉ループ系を漸近安定化するようにPIDパラメータ行列の値を決定することである.PIDパラメータ決定法のアイデアは最小位相特性とリアプノフの直接法に基づいている.仮想的な出力を考えたときの拡大系の零ダイナミクスを漸近安定化し,高ゲイン出力フィードバックを行うことで,PID制御による閉ループ系は漸近安定化できる.さまざまな多変数線形システムに対してシミュレーションを行い,提案手法の有効性を示す.


■ Differences in Mental Workload when Processing Visual and Auditory Information - Effect of Presentation Method,Recall Type,and Time Period for Analysis -

交通安全研・森田和元

 被験者が視覚と聴覚により情報を獲得する場合の心理的負荷の程度を室内実験により推定した.影響を及ぼす要因として,
 ●呈示方法に関して,視覚情報と聴覚情報の両方を呈示する場合,聴覚情報のみの場合,視覚情報のみの場合の3種類の要因
 ●呈示後に発話して回答するかどうかの要因
 ●呈示前,呈示中,呈示後の3種類の解析時間帯に関する要因
の3種類を考え,これらについて被験者内実験計画により評価実験を実施した.その際,サブタスクとして被験者に直径6cmの回転板を回転させて,そのときの回転の変動を調べて負荷を推定した.その結果,視覚情報と聴覚情報とで呈示方法の違いによる心理的負荷の差は認められず,また,発話して回答する場合に最も負荷が高いことが明らかとなった.


■ 確率的切り替えを伴うARXモデルのパラメータ推定法

名古屋大・山田直幸,鈴木達也,稲垣伸吉

 本論文では,確率的切り替えを伴うARXモデルと,そのパラメータの推定法を提案する.提案したモデルは,HMMの各離散状態に,ARXモデルを割り当てたモデルとみなすことができ,離散状態間の遷移が,確率的に規定される.提案した推定法は,EMアルゴリズムをベースとしており,離散状態の遷移を規定する確率パラメータと,各ARXモデルのパラメータを同時に推定することが可能となる.また結果として得られる各離散状態におけるARXモデル中のパラメータは,該当する離散状態に滞在する確率を重みとした最小二乗解となることを示す.最後に,提案するアルゴリズムを,切り替えが生じる機械インピーダンスモデルに適用し,その有用性を示すと共に,単一のARXモデルによる推定結果との比較を示す.


■ 他動的運動を用いた人体の関節トルク成分分解

松下電工・谷口祥平,立命館大・小澤隆太,,東海大・坂上憲光,立命館大・川村貞夫

 人間の運動解析は,リハビリテーションやスポーツトレーニングを科学的に行うために非常に重要である.本論文では,人間の運動解析の一部として関節トルク成分分解法を提案する.関節トルク推定法として,パラレルワイヤ駆動システムと学習制御を利用した関節トルク推定システムを用いる.このシステムにより得られた人体の関節トルクに対し時間軸変換と静的推定を用いて成分分解を行うことで,関節トルクをつぎの3つの成分に分解できる.
 ●剛体リンク系として人体の物理的構造の慣性から生じる関節トルク
 ●筋・腱の粘性による関節トルク
 ●筋・腱の弾性による関節トルク
 これにより,各成分の大きさを定量的に示すことができ,他動的運動における関節トルクの発生源ごとの定量的な評価が行えるようになる.



[ショート・ペーパー]

■ 巡回セールスマン問題におけるACOによる女王アリ戦略の分散並列処理に関する検討

熊本県立大・飯村伊智郎,伊藤登志也,濱口孝治,鹿児島大・中山 茂

 本稿では,ACOの1つである,女王アリを中心とするアリ社会を模倣した$\mbox{AS}_{queen}$と名付けられた女王アリ戦略(Queen Ant Strategy)を対象として,オブジェクト共有空間を用いたワーカ複製形式による分散並列処理を提案した.
 実験の結果,提案する分散並列処理では,TSPLIBのeil76.tspにおいて,計算機台数(グループ数)を増やすことで,最適解発見回数,平均巡回路長,そして最適解を発見するまでの平均繰り返し回数を改善しつつ,平均探索時間を削減できることが確認できた.


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