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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.41 No.8(2005年8月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ ウェッジガラス板を用いた位相シフトモアレ干渉法による電子パッケージの熱変位場・熱ひずみ場の計測

九大・森田康之,新川和夫,東藤 貢

 モアレ干渉法に位相シフト法を適用し,先進的な電子パッケージである積層型MCP(Multi Chip Package)の熱変形を計測した.パッケージサイズは12mm×12mm×1.1mmであり,2枚のシリコンチップ(厚さ 140μm)が内蔵されている.位相シフターには取扱いが容易なウェッジガラス板の使用を試み,測定温度は75℃,100℃とした.実験結果として,30nm/本の高精度な等変位線分布を得た.また画像処理を併用することにより,観測領域全視野での定量的なひずみ計測を可能とした.そして,2つの温度間での変位分布,ひずみ分布の比較を定量的に行った.


■ 高速ビジョンを用いた弾性はりのダイナミック接触力推定

広島大・金子 真,薄井敏幸,石井 抱

 本論文では,公称1[kHz]で動作する高速ビジョンを用いて弾性はり先端に作用する時変外力を推定する問題を取り扱っている.一般的な時変外力に対して,時間に対する2階差分近似モデルを用いれば,はり上の一点を高速ビジョンで追跡するだけで接触力が推定できることを示した(単一サーチライン方式).実際には差分による誤差低減を踏まえ16本のサーチラインを用いて300[Hz]のサンプリングレートで力計測が行えることを実験的に検証した.さらに周期外力を想定した場合には,強制振動モード以外の振動モードが表れないという仮定のもとで,はり上の任意点における変位情報だけを用いて外力が推定できることを理論的に示すとともに,2[kHz]の高速サンプリングレートで力計測が行えることを実験的に示した.


■ Fuzzy-Logic-Based Self-Tuning PI Controller for Speed Control of Indirect Field-Oriented Induction Motor Drive

Kitami Inst. Of Tech.・Mohammad Abdul MANNAN,T. MURATA, J. TAMURA, T. TSUCHIYA

 本論文は,鉄損を考慮した誘導電動機の従来のPI速度制御器の性能を改善するため,ファジィ論理に基づくセルフチューニングPIコントローラが提案されている.PIコントローラの比例ゲインと積分ゲインを調整する新しいパラメータ表示法が極配置法の知識から簡単なパラメータを使用して適用される.動作点に依存してパラメータを調整するため,1入力,1出力,おのおのの入出力変数に対して,3メンバーシップ,3つのファジィルールをもつ簡単なファジィシステムが設計される.PI速度調節器の極は提案するパラメータ表示法を使用して,速度調節器が安定な領域で機能するように負の実数値に配置される.さらに,負荷トルク変動やパラメータ変動によって生じるオーバーシュートや定常誤差は提案するファジィシステムに基づくパラメータを変化して,克服する.提案するファジィ論理に基づくセルフチューニングPIコントローラの性能はシミュレーションによって証明される.負荷トルクやパラメータ変動に対して,オーバーシュートや定常偏差がない優れた所望の速度応答が得られることをシミュレーション結果で確かめている.


■ スイッチング機構に基づく磁気ディスク装置の繰り返し制御:提案する2種類のマルチレート制御系の比較検討

横浜国大・藤本博志,長岡技科大・川上文宏,近藤正示

 磁気ディスク装置に要求される位置決め精度は年々厳しいものとなり,従来は問題にならなかったような回転同期外乱の高周波成分が位置決め精度向上の大きな妨げとなっている.そこで,本論文ではスイッチング機構を有する2種類の新しいマルチレート繰り返し制御系を提案する.
 まず最初に,マルチレート制御によりサンプル点間でも繰り返し外乱を抑圧する適用し,高次外乱に対するサンプル点間性能が飛躍的に向上することを示す.ところがこの手法では,選択した外乱の次数が高くなると制御器の演算量が増大するという問題点をもつ.そこで,完全追従制御法(PTC)に基づく低演算量型の新しい繰り返し制御法を提案する.いずれの手法においても,スイッチング機構の導入により,常にループを閉じているフィードバック的な補償ではなく,適切にループを切るフィードフォワード的な補償で,外乱の抑圧を行う.したがって,閉ループ特性を乱すことなく高周波外乱を抑圧することが可能となる.
 最後に,実機実験によりそれぞれの手法の検証を行い,従来の方式よりも位置決め精度が大きく向上することを実証した上で,提案した2手法の比較検討を行う.


■ 劣駆動マニピュレータのフィードバック線形化における特異点を回避する最適運動計画法

愛知県立大・伊藤正英,戸田尚宏

 本論文では,劣駆動マニピュレータのあるクラスに対して,フィードバック線形化によって生じる特異点を最適制御により回避する運動計画法を提案する.
 制御対象には,2階の非ホロノミック系である,最終関節が回転非駆動関節の劣駆動マニピュレータを考える.従来,この系は部分的フィードバック線形化と動的フィードバック線形化により Brunovsky 正準形に変換した上で,境界条件を多項式で補間し,その運動が計画されていた.しかし,この方法で計画した軌道にはフィードバック線形化の変換過程で生じる特異点を含む場合があった.この問題に対しては,境界条件の他に適当な中間状態を付加し,運動計画を分割再計画することで対処されてきたが,計画された全体軌道に不連続点が生じるなどの新たな問題があった.
 そこで,本論文では,多項式補間で得られた軌道を初期軌道とし,特異点回避を制約条件とした最適制御問題を解くという運動計画法を提案する.そして,数値例によってその有効性を示す.


■ あるクラスの不確かなシステムに対する拘束条件の解析

阪大・平田研二,太田快人

 本稿では,制御入力および動作状態に関する拘束条件を有する不確かなシステムが,その拘束条件を破ることなく“安全に”動作するための必要十分条件を明らかにする.このために,不確かな“拘束システム”にたいする最大出力許容集合の概念を提案する.またこの最大出力許容集合が,厳密に構成可能なことを示し,具体的な構成手順を提案する.これにより,拘束条件達成のための必要十分条件を,陽にあらわすことが可能となる.本稿での議論は,不確かな拘束システムの制御系設計問題に,基礎ツールを与えるための1つの試みである.今後の研究で,制御系設計に活用されることが望まれる.


■ 線形連続時間制御系に対する最大出力許容集合・可到達集合の近似

阪大・Akarawit LIMPIYAMITR,太田快人

 本論文では,線形連続時間制御系を対象とし,自律系に対する最大出力許容集合,外部入力を伴う系に対する最大出力許容集合,可到達集合という3種類の正の不変集合について考察し,これらの近似法を提案した.本研究の特徴は$L_p$ノルム$(p\in[1,\infty])$を用いて線形連続時間系の正の不変集合の定義を拡張したことにある.主要結果は以下の通りである.(i)系の可到達集合の極集合はその双対系の最大出力許容集合に等しい.(ii)線形連続時間系を前進オイラー法により離散化すると,最大出力許容集合はもとの連続時間系のそれに含まれ,可到達集合はもとの連続時間系のそれを含む.また,線形連続時間系のサンプル値系を修正した系について,可到達集合はもとの連続時間系のそれに含まれ,最大出力許容集合はもとの連続時間系のそれを含む.前進オイラー法によって離散化された系の最大出力許容集合はもとの連続時間系の正の不変集合でありかつ出力に課した制約条件の達成を保証するという性質をもつ.一方,前進オイラー法によって離散化された系の可到達集合はもとの連続時間系の不変集合となる.(iii)サンプリング周期の間に包含関係が存在し,サンプリング周期を減少させると,単調によりよい近似が得られる.自律系に対する最大出力許容集合,可到達集合の場合については任意の精度で近似することができる.



■ 負の剛性を利用した空気圧式アクティブ除振装置

埼玉大・水野 毅,村下正人,高崎正也,石野裕二

 本論文では,提案する負の剛性を利用した除振装置に対して,高荷重を容易に支持できる空気圧アクチュエータを利用することができることを実証している.最初に,空気圧アクチュエータを用いた支持機構の1自由度基本モデルに基づいて,所定の大きさの負の剛性をもつ支持機構を実現する制御則を示している.つぎに,試作した1自由度実験装置において,導出した制御則を用いて負の剛性をもつ支持機構を実現し,これを正の剛性をもつ支持機構とを直列に結合することにより,直動外乱に対して原理的にはコンプライアンスが零となる支持機構を実現することに成功している.さらに,提案する方式が最も効果的であると考えられる鉛直方向の除振に焦点を絞って検討するために,空気圧アクチュエータを利用した3自由度アクティブ除振装置を試作し,実験的検討を行っている.


■ 色分けされた誘導ラインを識別する白杖を用いた視覚障害者用道案内装置

東海大・曲谷一成,小松製作所・金子裕紀,東海大・原田哲也,平原義朗,国立身障者リハセンタ・簗島謙次

 地下街や病院,空港等の公共施設において,視覚障害者が単独で歩行出来るような道案内システムを開発した.このシステムは誘導する施設の床面に敷設した,色分けされた誘導ラインを白杖先端部で検出し白杖を振動させる機構と,要所の天井に設置された赤外線標識により道案内を行う.すなわち,システムの利用者は白杖の振動を頼りに誘導ラインに沿って移動し,要所に設置された赤外線標識により適切な道案内を受けることが可能である.本システムを用い,健常者および視覚障害者を被験者として道案内実験を行ったところ,アイマスクを使用した全盲状態の下で全員が正しく目的地まで歩行することが可能であった.このことから本システムは視覚障害者の道案内に有用なシステムであると考える.


■ 移動音源存在時のブラインド音源分離に対する一解決法

名古屋大・伊藤雅紀,島根大・河本 満,名古屋大・大西 昇,理化学研・向井利春

 本論文では,移動音源が存在するときのブラインド音源分離に対する1つの解決方法を提案する.音源が移動するとき,混合行列は変化し,その変化量は音源からマイクロホンへの遅延に依存したものとなる.その遅延の変化量が大きいとき,求めるべき分離行列の変化量も大きくなり,移動音源のブラインド分離は困難になる.そこで,われわれは指向性マイクロホンを用いて,それらを同位置に置き,異なった方向に指向性を向ける配置を提案する.これにより,マイクロホン間の遅延を常に0にすることができる.この手法により,従来手法に比べ,求めるべき分離行列の変化は小さくなることを実験により示し,実環境で移動音源分離の実験を行った結果,提案手法では音源が移動したとき,移動に伴う性能の低下を低減することができた.


■ 階層化された相互引き込みモデルに基づくアンサンブルシステム

東工大・小林洋平,三宅美博

 人間同士のアンサンブルでは,お互いが相手の演奏を聞きながら協調することによって,より良い演奏が行われることが特徴的である.しかしながら機械との演奏では人間が一方向的に演奏をあわせなければいけないため,しばしば演奏が困難になる場合がある.先行研究では相互引き込みモデルによってその問題にアプローチしていたが,人間同士の演奏とはダイナミクスの点で異なることがわかった.そこで本研究では,人間同士の演奏をより詳細に解析するとともに,その結果を機械に応用することで新しいアンサンブルシステムを構築した.人間同士の解析結果から,演奏は演奏者同士の打鍵ずれと打鍵ずれ変化量に影響を受けて変化することがわかった.それぞれの影響は,短周期と長周期への相互作用が強いことがわかり,相互引き込みモデルを下位と上位に階層化することによってモデル化した.各モデルのパラメータを調整することによって,人間同士の演奏の再現を行うことができた.各モデルの挙動を調べたところ,下位モデルは高周波,上位モデルは低周波の作用が強く,ダイナミクスが異なることがわかった.結果的に,人間らしい演奏には両者の作用が適切に作用していることが示唆された.



[ショート・ペーパー]

■ モード切り換え型制御系の初期値補償に関する一考察

名工大・不破勝彦,神藤 久

 磁気ディスク装置のヘッド位置決め制御では,ヘッドを高速に移動させるシークモードとヘッドを目標トラックに位置決めかつ追従させるフォロイングモードとを順次切り換えるモード切り換え型制御系が多く用いられている.この制御系では,不連続な動作の切り換えに伴う応答の劣化が問題となるので,モード切り換え時に制御器の内部変数を再設定する初期値補償制御が行われている.この制御の1つの方法として,モード切り換え時の制御対象の状態変数から制御量までの伝達関数に存在する応答の遅い極を相殺するように零点配置を行うものが報告されている.この初期値補償の制御則は,希望の零点を考慮したある係数行列を構成し,それに伴う連立方程式を解くことにより求められる.その際,この係数行列の階数が重要となるが,これまでに制御対象や制御器と関連づけてこの行列の階数と配置可能な零点との関係を明確にしていない.本稿ではこの問題が考察される.まず,配置できない零点のクラスとして,制御対象の零点の中でたまたま制御器の極と一致するものであることを示す.この結果,それ以外の零点は配置可能であることとなり,制御対象の零点や制御器の極と関連づけてそのクラスが明らかにされる.


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