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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.41 No.7(2005年7月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ A Controller Design Method for Mutually Interacted Decentralized Systems

Kajima Co.・Yutaka UCHIMURA,Keio Univ.・Takahiro YAKOH, Kouhei OHNISHI

 本論文では,分散システムの制御器の設計手法について論じる.本手法は複数の分散制御器の配置計画と線形行列不等式(LMI)による制御器の設計法から構成される.制御器の配置は,分散システムの“仮想的な階層構造”の解析に基づいて行う.
 分散システムの解析においては,システム間の物理的な結合やコンピュータネットワーク等による情報的な結合を統一的に扱う結合行列を導入する.結合行列から状態遷移行列を導出し,状態遷移行列の最大固有値に対応する固有ベクトルから状態遷移の漸近挙動を分析し,システム間の結合の集約度を定量化する.各サブシステムの結合集約度に準じて,分散システムの“仮想的な階層構造”を決定し制御器を配置する.また,結合集約度の順位に応じた制御器を複数配置することで,分散制御器を構成する.
 配置した分散制御器の設計問題は,LMIに帰着する.LMIを解く際には変数変換法を適用し,変換変数の構造を分散制御器の配置構造と一致させることで分散制御器を設計する.最後に数値例を示し,提案した手法による制御器の設計手順を示し,その妥当性を検証する.


■ ホモトピー法によるLQRの固有構造指定

防衛大・越智徳昌

 提案する手法では,まず最適レギュレータ(LQR)におけるハミルトン行列の特性方程式から,状態変数に関する重み行列の要素を従属変数とし,閉ループ固有値を独立変数とする微分方程式を導く.この微分方程式をある初期条件から指定された閉ループ固有値まで積分することにより,指定された固有値に対する重み行列が得られる.得られた重み行列が準正定でない場合は,重み行列の特性方程式に関する微分方程式を同様に導き,上記微分方程式と連立させる.そして負の値をとる重み行列の固有値を適当な正値まで変化させて連立微分方程式を積分することにより重み行列の準正定性を回復する.このとき閉ループ固有値は変化させない.さらにハミルトン行列の固有値と固有ベクトルの関係式から微分方程式を導き,閉ループ固有ベクトルの一部を指定する.これらの微分方程式を選択して組み合わせることにより,自由に閉ループ固有値および固有ベクトル,重み行列の固有値を変えることができる.ただし,指定された値によっては微分方程式の微係数行列の階数が落ち,解が得られない場合もある.この手法を文献の簡単な例題および航空機の線形化運動方程式に適用し,有効性を示した.


■ Stabilizing Control Design for a Class of Discontinuous Systems

Sophia Univ.・Takashi NAKAKUKI,Katsutoshi TAMURA, Tielong SHEN

 本論文では不連続特性を有するアフィンシステムの安定化問題を考える.制御系設計に先立ち,いかなるリプシッツ連続な制御器を用いてもシステムを漸近安定化できないシステムのクラスが存在することを十分条件とともに示す.その結果,漸近安定化を実現するために不連続な制御器を用いる必要性が生じる.さらに,不連続システムは大域的にリプシッツ条件を満たさないので,一般に解の一意性は期待できない.したがって本論文の目的として「漸近安定化」に加えて「閉ループ系の解の一意性」をも保証する制御器の実現を考える.まず始めに非線形制御理論において一般的なLgV構造による切替え動作を有する不連続制御器を導入する.しかし,この典型的な切替え制御器では閉ループ系の解の一意性を保証できないことが示される.この制御器の構造的な問題点を考察し,切替え動作を適切に修正することで大域的漸近安定性と解の一意性を完全に保証しうる制御器を提案する.


■ 高階Stokes-Dirac構造

東工大・西田 豪,山北昌毅

 本稿では,高階へ拡張されたStokes-Dirac構造を提案する.通常,Stokes-Dirac構造は,フローとエフォートと呼ばれるエネルギー変数を,ある領域とその境界における微分形式で表現する.そして,両者の関係を外微分作用素により定義する.この構造を用いて,内部領域のエネルギーの変化がその境界から与えられるパワーに等しいというパワー保存性が表現できる.このStokes-Dirac構造を用いて,分布定数系に対するport-Hamilton表現が研究されている.
 ここで提案する高階Stokes-Dirac構造は,外微分作用素だけでなくHodge star作用素,両者の合成作用素も表現に含む.この構造は,エネルギー変数間の高階微分構造を表現している.また,系の大域的な性質を表わしている調和形式との関係を明らかにすることができる.
 最初に,高階Stokes-Dirac構造を導入するために必要な高階エネルギー変数の定義方法,および,その表現の任意性について述べる.つぎに,本論分の主張する高階Stokes-Dirac構造を与える.最後に,高階Stokes-Dirac構造を用いた定式化例として,Euler-Bernoulli梁の方程式と,電磁波の方程式を示す.


■ 制約を有する線形制御系に対する補償入力の設計

首都大学東京・原 尚之,児島 晃

 現実の制御対象には,アクチュエータの性能により決まる制御入力の上限や,物理システムの構造に起因する状態・入出力の制限など多くの制約が存在する.また,制御系の目標値応答に直接制約を設けることにより,立ち上がりの遅れやオーバーシュートなどの制御仕様の改善を図りたいこともある.
 本研究では,制約を有する連続時間系に対し,良好な過渡特性を達成する補償則の設計法を導いた.補償則の設計にあたり,一般化した線形系に特異値・特異ベクトルの考え方を導入した.特異値・特異ベクトルを用いることにより,系に影響力を与えやすい入力信号とその出力の関係を明らかにすることができ,制約を満足させる補償則は,特異ベクトルの線形結合により構成できることを示した.
 また導いた補償則を数値例に用い,得られた結果について検討した.


■ A Self-Organizing Map Approach for Detecting Confusion between Blood Samples

Himeji I.T.・Akitsugu OHTSUKA, Naotake KAMIURA,Teijiro ISOKAWA
SYSMEX.Co.・Naoki MINAMIDE, Minoru OKAMOTO, Noriaki KOEDA
Himeji I.T.・Nobuyuki MATSUI

 本論文では,自己組織化マップ(Self-Organizing Map: SOM)に基づく血液検査結果取り違え検出法を提案する.本方法はCBC(Complete Blood Count)なる血液データを処理対象とし,被験者ごとに,前回検査時のデータと現在のデータの差分を計算する.この操作により得たものが学習データとされ,マップが完成される.学習完了後,マップには正常なデータに反応しやすいニューロンからなるクラスタと,取り違えデータに反応しやすいニューロンからなるクラスタが形成される.上記と同様の差分処理によって得た未学習データをマップに印加したとき,前回値データの被験者と現データの被験者が一致していなければ,取り違えデータに対応するクラスタのうちのニューロンが発火する.これによりCBCデータの被験者間取り違えが検出される.また,本論文ではSOMに遺伝的アルゴリズムを導入し,取り違え検出に有為な項目の組合せを選択することにより,本方法によって学習データ・未学習データの両方に対して80%以上の高い取り違え正答率が達成されることを示した.さらに,ニューロンのラベル付け規則を変更すれば,実用化に必要な基準をクリアできることも明らかにした.


■ 三次元音響実験装置による正中面前方の音源定位能とその体位依存性解析

金沢星陵大・二口 聡,富山県立大・高野博史,橋本憲明,中村清実

 本研究では,音源位置と被験者の体位条件を任意に設定可能な三次元音響実験装置を開発し,被験者の正中面前方における音源定位能力とその体位依存性について調査を行った.被験者の正中面前方4箇所に,9度の間隔で音源を配置した.白色雑音(0.3s)を用いた音源定位課題を,90,67.5,45,22.5,0度の5つの体位条件で行った.その結果,平均正答率は90度と0度の体位条件で,67.5度,45度,22.5度の体位条件よりも高くなった.また,すべての体位条件で垂直方向の音像定位位置は被験者の目線近傍にずれることが示された.音像定位位置のずれは67.5度,45度,22.5度の体位条件で90度と0度の体位条件よりも大きくなった.以上の結果から,音源方向識別能が体位条件と音源の垂直位置に影響を受けることが示唆された.



■ 繰り返し型最大値フィルタの性能解析

三菱電機・西口憲一

 繰り返し型最大値フィルタ(RMF)は,ノイズの多い画像系列から微小移動目標を検出するために提案した動画像処理アルゴリズムである.RMFのアルゴリズムは簡単でかつ低信号対雑音(SN)比の微小移動目標の強調に有効性を発揮するが,そのアルゴリズムは発見論的に導いたもので,原理や性能限界は明確ではなかった.本論文では,RMFをベイズ推定の立場から定式化し,動的計画法(DP)のBellman方程式として解釈できることを示す.DPを用いた微小移動目標検出アルゴリズムはすでに提案されているものがあるが,それらに比べてRMFは状態空間が小さいために計算量が著しく少なくてすむ.本論文ではさらに,RMFの出力の分布を記述するための近似式を導き,これを用いて性能評価を行う.RMFには近傍サイズと忘却係数の2つのパラメータが含まれる.性能評価においてはまず,入力SN比がある値を上回っていればRMFの出力SN比はいくらでも増大させられることを示し,この限界SN比の値を近傍サイズごとに求める.また,さまざまなパラメータ値のもとでRMFにより目標が検出可能となる条件を明らかにする.


■ 卓上作業支援システムのための作業者意図の推定

東大・田村雄介,杉 正夫,太田 順,新井民夫

 われわれは卓上作業を支援するシステムとしてAttentive Workbench(AWB)を提案している.AWBは,センサを利用して作業者の状態や意図を推定し,それに基づいて自走式トレイやプロジェクタを用いて物理面,情報面の双方から作業を支援するシステムである.本論文では,AWBにおけるユーザの意図を推定する手法を提案する.ユーザは必要な物体を指差すことで意図を表現し,システムはユーザの意図するターゲットを自走式トレイによって搬送する.本研究では,ターゲット推定の際に,以下の2つのアプローチを統合している.ひとつは,ユーザの主観的な指差し方向を推定することであり,もうひとつは,センサから得られる空間的な情報と,ユーザの過去の行為系列から得られる時間的な情報を動的ベイジアンネットワークによって統合することである.仮想トレイを用いたターゲット推定実験の結果,提案手法の有用性を示すことができた.


[ショート・ペーパー]

■ Inverse LQ Regulator of Large Scale Systems by Decentralized Control

University of Tokushima・Tomohiro KUBO

A method to construct a decentralized control law for large scale interconnected systems is proposed. The feedback gain is calculated with a solution of linear matrix inequalities. The resulting closed loop system belongs to a class of linear quadratic regulators.


■ 硝子体混濁に対応するステロイドの統計的投薬制御

徳島文理大・森山 峻,堀尾 誠,笠松博史,森本滋郎,田渕敏明

 本論文は医学分野における投薬制御のための,1つの工学的研究に関するものであり,眼科医のために,二次伝達関数に対する最小二乗法モデル・多変量相互相関解析・計測制御工学における危機管理制御を用いて880日間のデータにもとづくステロイドの投薬制御を記述する.本研究の目的は制御対象の同定とデータの各ステップにおける投薬効果むだ時間(無反応時間)の同定にある.モデルに対する動作信号は視力であり制御量はステロイドの日間投薬量であり,視力は硝子体混濁の尺度である.第一筆者は霧視とステロイド薬害白内障・緑内障・成人病をもち,現在脱ステロイドフィードフォワード制御中である.


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