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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.41 No.1(2005年1月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ LCDパネルにおける画像の輝度近似平面を用いた色表示の不均一の検出

創価大・崔 龍雲,インターアクション・上野和晃創価大・神内 恵,伊与田健敏,渡辺一弘,久保田 譲

 LCDパネルの検査にかかるコスト低減化を目的に,LCDパネルのサイズに応じてCCDカメラとその画像プロセッサを配置し,各カメラが独立して処理する領域内の色表示の不均一を検出するため,適用可能な画像処理の新しい手法として,画素の輝度によって作られる輝度近似平面の適用を提案した.この検出手法は,ある特定領域に分割された小領域ごとに輝度近似平面の勾配を利用することが特徴で,比較的に輝度差の高い点欠陥,線欠陥のみならず,色表示の不均一による輝度差の低いむら欠陥を自動的に,かつ高速に検出することができる.また,この手法は撮像時のカメラノイズに弱いとされる差分法や欠陥の方向によってテンプレートを取り替えなければならない諸テンプレート手法に比べ,耐ノイズ性に優れ,処理時間の短縮が可能で,さらに欠陥の輝度差勾配の方向も検知できる優位性がある.欠陥の判別法では,あらかじめ正常なLCDパネルの画像における小領域ごとの輝度近似平面の勾配と検査対象パネルの同一位置における勾配との差をそれぞれの判別基準と比較することによって,客観的な判断が可能となる.実際にLCDパネルを用いて行った実験結果より,RGBの処理時間は約3×120msであり,実時間処理に適用可能であることを示している.


■ 地中レーダのための微小鏡面モデルに基づく境界面方向推定および画像再構成

東工大・田中正行,高山潤也,大山真司,小林 彬

 本論文では,微小鏡面モデルに基づく画像再構成方法を新しく提案する.提案手法により,地中レーダ画像のみならず,各点に微小鏡面を仮定した場合の方向も同時に推定することが可能である.微小鏡面の方向は地中埋設物の境界面の方向に対応しているため,地中埋設物の位置とその境界面の方向の同時推定ができる.提案手法は,ある注目点微小鏡面を仮定して,対応する送受信アンテナ対にたいして,相互相関包絡線法により得られる複数のモデル適応度を合成することにより,画像値を得る方法となっている.微小鏡面の方向を変化させながら,合成値が最大となる向きを求めることにより,画像値とその位置に関する方向を同時に推定する.水平面に対する傾きの異なる鉄板の検出実験を行い,従来法である合成開口法と比較し,その有用性を検討する.


■ 浴室内監視システムにおける音響センサ使用による浴槽水位計測

山口大・礒永 聡,服部 哲,岡本昌幸,田中正吾

 著者らは,高齢化社会を迎え年々増加しつつある浴室内での事故を,入浴者のプライバシーを侵害することなく外部より監視するシステムの1つとして音響センサを利用する方法を考え,その一環として,上部に音響センサをセットした管を浴槽に浸すことにより,管内に発生する定在波を利用した浴槽の水位計測方式を提案した.具体的には,浴槽に浸した管の内側に生じる音圧変動を定在波の和によるダイナミックシステムでモデル化し,これにカルマンフィルタ,最尤法を適用することにより,データウィンドウを適応的に選定しつつ時々刻々と水位を測るものであった.これは,浴室内の直接的な音情報に加え,水位情報も得ることにより,入浴者の行動を特定しやすくし,浴室内での事故を防止するためである.しかしながら,計測に際しては,管内温度は温度センサにより測定する必要があった.本論文では,浴槽に浸す管にくびれ部を設けることにより,浴槽内の水位と管内温度を同時に計測するシステムを考える.つまり,管の途中にくびれ部を設けることにより,管上端から水面までに生じる定在波に加えて,管上端から管のくびれ部までにも定在波を生じさせ,これら2タイプの定在波を活用することにより,管内温度と浴槽水位を同時に計測する新たな方式を提案する.


■ Mass Measurement Using a System Containing an On-Off Relay with Dead Zone

Saitama Univ.・T. MIZUNO, M. TAKEUCHI,M. TAKASAKI, Y. ISHINO

 宇宙空間のような無重量環境下での質量測定を目的として,リレー制御系の自励振動を利用した新しい質量測定方法を提案している.提案する測定方法では,不感帯をもつリレーを挿入した位置フィードバック制御系を用いる.そして,測定対象物に作用する力を測定対象物の位置に応じて切換えることによって自励振動を発生させ,そのときのリレーのON, OFFの周期から質量を推定する.実験では,測定対象物に作用する力を発生させるのにボイスコイルモータ,切換え位置の検出にはフォトインタラプターを利用した装置を試作した.この装置を用いて実際に質量測定を実施し,提案する質量測定方法の有効性を実証した.


■ 有限語長データに基づくシステム同定―ナノオーダー制御に向けて―

大日本スクリーン・岡尾篤彦,阪大・池田雅夫,高橋亮一

 近年,機械システムをナノメートルオーダーで精密に制御する要求が増えている.そのため,ナノオーダーでの制御対象の挙動を表わすモデルが必要である.なぜなら,微小動作領域での運動のモデルと動作範囲が広い運動のモデルは異なるからである.アナログのプラントを同定する場合には,一般にアナログ信号をディジタルデータに変換して使用する.このディジタルデータは有限語長なので量子化誤差が生じる.特に広範囲の動作とナノレベルの動作での精度を要求される機械システムでは,この量子化誤差が同定精度に悪影響を及ぼす.なぜなら,A/D変換器の分解能はそのフルレンジに対応して決まるため,広範囲の動作が必要なプラントでは量子化単位がナノレベルより大きくなるからである.
 本論文では,量子化誤差を推定し,サンプル点での真の入出力アナログ信号を推定することによって,同定の精度を向上させる方法を提案する.提案法では,入出力差分方程式において量子化誤差とプラントパラメータを求めるべき変数とし,式誤差の最小二乗問題として定式化して,量子化誤差とプラントパラメータを同時に推定する.そして,シミュレーション例を挙げて,提案法により正確な同定ができることを示す.


■ 柔軟関節を持つロボットマニピュレータの角度計測のみを用いたロバスト軌道追従制御

九工大・大屋勝敬,和田 慎,小林敏弘

 近年,関節部の柔軟性を考慮したロボットマニピュレータの軌道追従手法が種々開発された.最近,コストや重量の削減,角速度計測値に含まれるノイズによる制御性能の劣化の改善を目指し,適応制御手法を用い角度情報のみを利用した手法が提案された.Regressorに基づく適応制御手法を用いた場合,リンク角度と理想軌道との軌道追従誤差の漸近安定性は保証されるが,コントローラの構成が非常に複雑となるという問題がある.また,軌道追従性能の改善法が示されていないという問題もある.
 本論文では,角度情報のみを用いた構成の簡単なロバスト道追従制御法を提案する.まず,前置積分補償器を用いたロボットマニピュレータの新しい運動方程式表現を提案する.そして,この表現に基づき,つぎの特徴をもつロバスト安定な軌道追従コントローラを開発する.1)Regressorに基づく適応コントローラに比べコントローラの構成が非常に簡単である.2)軌道追従誤差に関する制御性能を1つ設計パラメータを用いて簡単に改善できる.特に,一定値に収束する理想軌道に対しては,漸近安定性も保証される.


■ Analysis and Synthesis of Model Reference ILQ Servo Systems Using Robust L∞ Performance Measure for a Fixed Input

Osaka Univ.・S. KUNIMATSU, T. FUJII

 The robust servo system with robustness of output trajectories is analyzed and synthesized in the design of model reference ILQ (MR-ILQ) servo systems with the potential to achieve tracking robustness. Our purpose is to design a robust servo system with tracking robustness in that its output trajectory remains in a neighborhood of the nominal trajectory when the dynamics of the system is perturbed. For this purpose we first propose a robust L∞ performance measure for a fixed input in order to evaluate the worst-case value of the maximal amplitude of the error output response. By analyzing some related convex optimization problem described by linear matrix inequalities (LMIs), we next present a specific method to calculate this measure for the MR-ILQ servo systems. Based on this analysis, we then formulate a synthesis problem of minimizing this measure, and derive an LMI-based iterative algorithm to solve this synthesis problem. Finally we illustrate a numerical example to show the effectiveness of our results.



■ ディスクリプタ表現に基づくゲインスケジューリング補償器の設計―飛行制御系設計への適用による有効性の検証―

広島大・増淵 泉,嘉藤 潤,佐伯正美阪大・小原敦美

 ゲインスケジューリング制御は,制御対象の特性変動に応じて制御則を調整することにより幅広い動特性の変化に対応する制御法である.筆者の1人は,LPVモデルとしてディスクリプタ形式を用いることによりシステムモデルの特性パラメータへの依存の構造を設計する際に扱いやすい形とできることを指摘し,ディスクリプタ形式のLPVモデルに基づく設計法を提案している.
 本論文では,ディスクリプタ方程式と状態方程式との関係を考慮することで,制御対象の表現はディスクリプタ形式としながら直接状態方程式のゲインスケジューリング補償器を計算する手続きを示す.また,多目的制御において,単純な共通解アプローチに比べて設計変数の自由度を増やすことができることを示す.
 上記の設計法を航空機の姿勢制御系設計問題に適用し,現実的な設計仕様に対する提案法の有効性を検証する.結果として,従来法より優れた性能を示すゲインスケジューリング補償器が得られた.また,スケジューリングパラメータの特定の値のみで性能を達成する固定補償器と性能比較を行ったところ,そのパラメータ値においても固定補償器と同等の性能が達成されることが示され,この意味での限界性能を達成していることが確かめられた.


■ 線形放物系の境界安定化に関する新しい代数的方法

神戸大・南部隆夫

 本論文では,境界観測−境界制御機構のもとでの線形放物形分布定数系の安定化を考察する.この機構においては,境界制御問題をいかにして同等な分布制御問題に変換するかが大きなkeyになる.境界は,第1,3種が現れる混合型境界であり,付随する楕円型作用素の分数ベキの構造はよく知られていない.
 分数ベキを経由する従来の解析的方法に代わり,安定化を達成する代数的方法が,著者により2通り得られているが,本論文では,第3の新しい代数的方法を提案する.この方法の特徴は,境界制御系が境界入力項をもたない斉次境界条件を満たす偏微分方程式系に,代数的に帰着されることにある.前2通りの代数的方法では複雑な境界上の議論が必要であったが,本論文では(斉次境界条件のため)スタンダードな半群論を適用しやすく,また集中定数系との類似点がある.そして,制御系の適切性,安定化の検証において,より見通しのよい簡単な議論が可能になった.その結果,基礎,応用の両面で,本文のような代数的方法の解析的方法に対する優位性がより確実なものになった.


■ 自己組織化機能局在型ニューラルネットワーク

早稲田大・笹川隆史,平澤宏太郎,古月敬之

 本研究は,ヘブのcell assembly理論を参考にした自己組織化機能局在型ニューラルネットワーク(FLNN)を提案する.提案する自己組織化FLNNはメイン部と制御部で構成される.メイン部は教師あり学習によって入出力関係をマッピングし,制御部は教師なし学習によって入力空間の構造をマッピングする.メイン部の構造は通常の3層階層型ニューラルネットワークと同じであるが,中間層の各ニューロンの発火強度が制御部からの信号によって制御される.制御部は自己組織化マップ(SOM)ネットワークであり,出力層の各ニューロンはメイン部の中間層ニューロンと1対1で関連付けられている.制御部の出力は入力パターンに応じたメイン部の中間層ニューロンの発火強度を制御する信号である.このようにして入出力空間の構造的特徴をネットワーク構造に反映させることで,自己組織化FLNNは学習だけでなく機能局在化の能力も実現する.


■ ビヘイビアアプローチの同時安定化問題に基づく耐故障制御系の設計―2つのシステムに対する同時安定化コントローラのパラメトリゼーション―

阪大・金子 修,森 和哉,吉田恭子,藤井隆雄

 故障が起きたときシステム全体の安全性を保つための耐故障制御系設計という問題を,フィードバック制御のみならずシステム全体の設計という観点から統一的にとらえることを目的としたビヘイビアアプローチ(この理論はWillemsらにより提唱される)という新たなシステム理論を用いて同時安定化問題として定式化した.ここでは,2つの状態をプラントとした場合を考え,この同時安定化問題が可解であるための必要十分条件,そして主結果である同時安定化コントローラのパラメトリゼーションを導出した.そして,これらをもとに,同時安定化コントローラの1つの設計手順も示した.さらに,問題を1入出力系に限定することにより,同時安定化可能か否かに関する判定しやすい条件を導出し,さらに,従来のシステム理論で得られている結果との差も明確に示した.最後に,本論文の有効性を示すために,従来のシステム理論では同時安定化が不可能であったプラントを例として,同時安定化が可能であることと同時安定化コントローラの設計法を示した.結果として,本論文の結果は故障に強いシステムを作るための柔軟な対応をシステム設計の段階から統一的に扱える1つの手法を提供したといえる.



[ショート・ペーパー]

■ 任意曲線経路に対する移動車両の経路制御

神奈川大・江上 正,望月光一郎,中崎 哲

 二輪,三輪などの車両モデルはdriftless状態方程式で表わされ,速度の非ホロノミック拘束をもつ.このような非ホロノミックシステムに対しては多くの制御手法が提案されている.これらの手法はそれぞれ長所と短所をもっているが,三平らによって提案されている時間軸状態制御形を用いた制御手法は構造の簡単さ,拡張の容易さなどの点で優れた方法である.しかしこの手法を車両制御に用いた場合,基本的には直線軌道追従およびその切り替えができる程度で,運動の自由度が少ないものであった.極座標を用いて,同様な手法により円軌道追従なども試みられているが,円軌道に限定されていた.
 著者らはすでに任意経路目標値への追従性を目的として,ベクトル分解経路制御という手法を提案し,良好な結果を得ている.この手法は,回転座標変換と伸縮座標変換を用いて,任意経路目標値を仮想的に円あるいは直線経路目標値に変換し,変換領域で厳密に経路誤差を評価する方法である.本論文では,このベクトル分解経路制御の考え方を用いて,時間軸状態制御形に回転座標変換と伸縮座標変換を組み込んで移動車両の任意曲線経路への追従が可能になるように拡張した手法を提案し,実験によりその有効性を示している.


■ 変数のブロッキングを用いて表現される拘束システムに対するリファレンスガバナの構成法

奈良先端大・小木曽公尚,阪大・平田研二

 本論文では,変数のブロッキングを用いて定式化される拘束システムを対象に考え,拘束条件の達成と追従性能の改善を保証したうえで,参照入力の整形則の式数を調節可能なリファレンスガバナの構成法を提案する.拘束条件の達成は,最大出力許容集合を終端条件として導入することで無限時刻先まで保証される.また,追従性能を評価関数に含む最適化問題を考えるため,リファレンスガバナを併合した系において良好な追従性能を示す応答が得られる.そして,ブロッキングで設定するパラメータが参照入力を整形する周期に対応することから,区分的状態アフィン関数で表わされる参照入力整形則(リファレンスガバナ)の式数を調節することが可能となる.これは,リファレンスガバナの実装データの軽減化につながる.最後に,数値シミュレーションにより,提案法の有効性を検証する.


■ 1自由度フレキシブルアームの反復学習制御

横浜国大・池野谷康司,山科亮太,原 正之,藪田哲郎

 反復学習制御は試行を繰り返すことでシステムの応答の改善することを目指すが,非最小位相系に適用すると応答の改善が見込まれない可能性がある.本論文では有本らが提唱した学習制御則を時間進め量・忘却因子を導入することで改良し,改良した制御則を実際に実機に適用しその有効性を示した.


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