論文集抄録
〈Vol.40 No.9(2004年9月)〉
論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)
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タイトル一覧
[論 文]
[ショート・ペーパー]
[論 文]
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■ 2次元ポインティング作業におけるFittsの法則の改良
東京成徳大・岩瀬弘和神奈川大・村田厚生,北岡正敏,ジュヴィ バリンギット
Fittsの法則は人間の動作時間を推定する精度のよいモデルであり,人間工学やヒューマン・コンピュータ・インタラクションの研究分野で広く利用されている.Fittsの法則は1次元動作のモデルとしては非常に優れているが,2次元ポインティング作業における予測モデルとしては精度が悪いことが知られている.本研究では,コンピュータのマウスを使った2次元ポインティング作業におけるポインティング時間の推定式として適用可能なモデルの提案を目的とした.Fittsの法則の改良式であるMacKenzieのモデルをパフォーマンスモデルとして利用して,そのパラメータであるターゲットサイズとターゲットまでの距離の新たなモデルを提案し,その有効性について検証した.また,ターゲットへの接近方向によるポインティング時間に対する影響について検証した.その結果,ポインティング時間や移動軌跡長,2次元有効ターゲット幅の接近方向による影響は見られないこと,ターゲット形状は横長の方が縦長よりもポインティング時間が短いこと,2次元有効ターゲット幅を用いた場合,ターゲットサイズの定義としてW′が最も優れていること,ターゲット距離の定義として従来の直線距離よりも移動軌跡長の方が優れていることなどが明らかとなった.
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■ Domination Design Approach to Robust Stabilization of Nonlinear Systems
with Time-Delay via Lyapunov-Razumikhim Functions
Sophia Univ.・Xiaohong JIAO, Tielong SHEN
This paper presents a new design approach to robust stabilizing controller for nonlinear systems with time-delay related uncertainty. The key idea of the design approach is to dominate the derivative of Lyapunov-Razumikhin function whenever the Razumikhin condition holds. It is shown that by exploiting the proposed domination design approach, a solution of robust stabilization problem can be derived for the nonlinear systems that has cascaded form and triangular structure with bounded time delay related uncertainty. Finally, a numerical example is given to demonstrate the effectiveness of the proposed approach.
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■ Memory-Based型PIDコントローラの設計
広島大・高尾健司,山本 透,雛元孝夫
プロセス系に対して,PID制御器が広く用いられている.しかし,一般にプロセス系は非線形系を有しており,固定のPID制御器を単純に用いただけでは良好な制御結果が得られない.これに対し,ニューラルネットワーク,ファジィ理論,遺伝的アルゴリズムに基づいたPIDパラメータ調整方法が提案されているが,学習に要する時間が非常に長いため,システムの特性や状態に対してPIDパラメータをオンライン調整することが困難であった.
本論文では,システムの入出力データをデータベースに蓄え,必要(要求点)に応じて,過去に大量に蓄えられているデータベースより,要求点に類似したものを近傍として抽出し局所モデルを作る,Memory-Based型モデリング法に基づいた新しいPIDパラメータ調整法を提案している.本手法によると,データベースとしてシステムの入出力データとPIDパラメータを蓄え,要求点が与えられると,データベースからPIDパラメータが自動生成される.さらに,得られたPIDパラメータに対して修正を加えた上でデータベースに保存するため,よりよいPIDパラメータが蓄積されていくという利点を有している.
また,数値法により本手法の有効性を定量的に検証している.
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■ 入力拘束システムのモデル予測制御に対するM-行列を用いた高速解法
東工大・齋藤 豊,井村順一
本論文では特殊なクラスのモデル予測制御に対するオンライン最適化アルゴリズムを提案する.まず,片側入力拘束システムのモデル予測制御がM-行列をもつ線形相補性問題に帰着される例を示す.このクラスの問題はLemke法等の一般的なアルゴリズムよりも効率よく解くことのできるアルゴリズムが存在する特殊な問題である.しかしながら,より実用的な拘束条件である両側入力拘束システムのモデル予測制御は一般にM-行列をもつLC問題に帰着されない.そこでこのクラスのモデル予測制御に対する新しいアルゴリズムを提案した.さらにこの提案アルゴリズムが,両側拘束を有するm次元の入力をもつ線形システムの,予測区間をNpステップとしたモデル予測制御に対して最大でも3mNp回のイタレーションで終了することを示した.最後に,数値例によって提案アルゴリズムが予測ステップ数,すなわち次元の大きい問題に対して既存の手法よりも効率がよいことを示した.
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■ 非有界出力作用素をもつ線形放物型システムのサンプル値H∞制御
鹿児島大・佐野英樹
本稿では,線形放物型システムに対するサンプル値H∞制御問題を取り上げ,有限次元離散時間コントローラの一構成法を与える.特に,システムの出力作用素は−Lγに従属する非有界性を有するものと仮定している.ここでは,まずはじめに,線形放物型システムにサンプラとゼロ次ホールドが取り付けられたシステムを,リフティングの手法を用いて,無限次元離散時間システムとして定式化する.つぎに,その無限次元離散時間システムに対して,状態変数が有限次元となるモデルを導出する.そして,そのモデルに対して構成された離散時間H∞コントローラと離散時間剰余モードフィルタからなる有限次元コントローラに着目する.本稿では,離散時間H∞コントローラに十分なH∞外乱抑制力があり,かつ離散時間剰余モードフィルタの次数が十分に大きければ,その有限次元コントローラはサンプラとゼロ次ホールドを有する線形放物型システムに対し,H∞コントローラとして機能することを示している.
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■ Graph Dependent Sufficient Conditions for Synchronization of Network
Coupled System with Time-delay
NAGOYA Univ.・M. AMANO, Zhi-wei LUO, S. HOSOE
This paper studies the synchronization of network coupled systems consisting
of many identical dynamic subsystems as well as network coupling with interaction
time-delay. Based on graph theory and Lyapunov stability theory, the paper
gives two sufficient conditions for the total system synchronization with
respect to the graph structures of network coupling interaction, one is
delay-independent and the other is the delay-dependent. These two conditions
are compared with Wu’s research1),2), which was established without taking
interaction time-delays into account. Simulations with two examples show
the influences of the interaction time-delay as well as graph structures
on the overall synchronization of subsystems.
▲ ■ 出力フィードバックによるn次元剛体の軌道追従制御
名古屋大・坂本 登
剛体運動の制御は,衛星やロボットの姿勢制御に見られる基本的な問題である.著者らは,前著論文で位置情報から角速度を推定するオブザーバの設計法とそれを用いた安定化制御が可能であること(分離定数)を示したが,本論文では,オブザーバを用いた軌道追従制御が可能であることを示す.この制御則は,追従する軌道が一定値の場合,定置制御(安定化制御)へ帰着する性質をもつ自然なものとなっている.この性質をもつ出力フィードバック制御法はこれまで報告されておらず,座標系を用いず,さらにハミルトン表現を行うという本研究で用いた手法が,剛体制御の基本問題の解析に有効であることを示している.
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■ ジョブショップ工程における多目的再スケジューリング問題の遺伝アルゴリズムによる解法
京工大・飯間 等,三宮信夫
近年の生産システムにおいては,環境に変化が生じた際に柔軟な対応が可能であるスケジューリングシステムへの要求が高まりつつある.本論文では,ジョブショップ型の生産工程において納期に変更が生じた場合の多目的再スケジューリング問題を取り扱う.多目的問題とする理由は,本来のスケジュールの目的である納期遅れ和最小化だけでなく,納期変更前後のスケジュール変更量の最小化を目指しているからである.この多目的最適化問題に対してパレート最適解集合を求めるための遺伝アルゴリズムの設計法を提案する.遺伝アルゴリズムの初期個体群は,納期変更前の問題に遺伝アルゴリズムを適用して得られた最終世代の個体群に多様性を増加させる手続きを導入して生成する.この初期個体群は,スケジュール変更量は小さいが納期遅れ和は大きい領域に集中しているので,この個体群を納期遅れ和の小さい領域に移動させる選択則を新たに提案する.これにより,探索領域を限定し,効率的に良いパレート解集合を得ることが期待できる.計算機実験において,提案解法を他の解法と比較した.従来用いられている被覆指標および新たに提案した劣性指標を用いて各解法を評価した結果,提案解法は他の解法と比べて,幅広くかつ良いパレート解集合を得ることができた.
▲ ■ 相互引き込みモデルを用いたアンサンブルシステムの開発
東工大・小林洋平,三宅美博
人間同士の音楽アンサンブルでは,それぞれが相手の演奏に応じて自分の演奏を変化させ,相互に適応する関係が実現されている.これに対し,現状のアンサンブルシステムでは,そのような相互作用は考慮されていない.このような現状から本研究では,2名の演奏者によって構成されるピアノアンサンブルを取り上げ,演奏者の打鍵タイミングのずれを指標とした位相制御特性を調べた.そして,位相振動子による相互引き込みモデルを組み込んだアンサンブルシステムを新たに構築した.その結果,演奏者間にこのような相互作用が存在することによって,より人間同士の演奏に近い位相関係が実現されること,そして,それが演奏者の主観的な評価にも反映されることがわかった.このことは,相互引き込みモデルを用いて演奏者と相互適応することで,実際の人間同士のアンサンブルに近い作用関係を実現できることを意味している.さらに,このような手法によって実現される位相関係の時間発展に注目すると,実際の人間同士の演奏とはやや異なるスペクトル特性をもつことも明らかになり,そのような点をふまえて,今後の改善の可能性も示された.
▲ ■ 移動ロボットの遠隔操作における手動操作と自律動作の融合制御手法―状況に適した自律動作の検討―
静岡大・松丸隆文,萩原 潔,伊藤友孝
本論文は,移動ロボットの遠隔操作における手動操作と自律動作の融合制御において,操作性の向上をねらって,状況に応じた自律動作を作用させる手法の初歩的な検討として,移動ロボットが曲がりのある通路を通り抜ける場合について,コンピュータ・シミュレーションを用いて検討した.まず手動操作だけでは,左右の壁と接触しやすい状況を調査し,接触が発生する点は曲がりの入口と出口付近に集中しており,曲がりの入口付近では内側に接触しやすく,出口付近では操作者の旋回操作が間に合わずに外側に接触しやすいことを明らかにした.つぎにロボットに旋回動作あるいは倣い動作が付加されているとき,操作者がこれらの自律動作を積極的に利用する状況を実験から分析し,曲がりの入口付近では倣い動作を利用する傾向にあり,出口付近ではロボットを通路の中央へ戻しやすくするために旋回動作が有効であることを明らかにした.これらの状況の分析から,操作者の手動操作の方向とロボットからみた障害物の方向から状況を推定し,それに応じて旋回動作と倣い動作を選択して適用する手法を考案した.これをシミュレーション・システムに実装して適用実験を行い,操作者の意図しない旋回動作を減少でき,操作者の操作性・操作感を向上できることを検証した.
▲ ■ AOPS: Automated Operating Procedures Synthesis for Chemical Batch Plants
Tokyo Inst. of Tech.・H.A. GABBAR, A. AOYAMA, Y. NAKA
This paper presents the concept and design of automated solution (called AOPS), which is proposed to synthesize operating procedures of chemical batch plants. The proposed solution is used to synthesize master recipe and generate the corresponding control recipe on the basis of recipe formal definition language (called RFDL). RFDL enabled smooth and systematic mapping between operating procedures and domain knowledge. Integrated user interface is designed to capture plant design model and the associated domain knowledge, and used to visualize and validate the generated control recipe as mapped to plant topology. A case study of 2-stage polymerization batch plant is used to illustrate the proposed solution.
[ショート・ペーパー]
▲ ■ Core-Stateless Networkの公平な帯域割り当てのためのロバスト性能設計
阪大・周 金鳳,今井悟史,山本 茂
SCOREネットワークは通信フローごとの状態を管理することなく通信の公平性を実現できるものとして注目されている.特にSCOREネットワークにおけるcore-stateless
fair queueingとよばれる手法のfare shareレートの算出は,通信ネットワークの公平な帯域割当を実現する重要な鍵である.本速報では,フィードバックに基づくfare
shareレートの算出法をとりあげ,そのフィードバックゲインを通信フロー数の増減やネットワークダイナミクスの不確かさなどにロバストに対応できるものとして求めるための設計法を与える.また数値シミュレーションによってその有効性を確認する.
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