SICE 社団法人 計測自動制御学会
Top
新着情報
学会案内
入会案内
部門
支部
学会活動
学科行事
お知らせ
会誌・論文誌・出版物
学会誌
論文集・バックナンバー
英語論文集
産業論文集
学術図書のご案内
残部資料頒布のご案内
リンク
その他
サイトマップ お問い合わせ
 会誌・論文誌・出版物
 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.39 No.11(2003年11月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 極性相関法とその応用

筑波大・佐々木公男,池田真理子

 極性相関法によれば極性判別と加減積分演算のみで相関演算が実現できるため,精度を劣化することなくノイズに埋もれた信号からその情報を実時間で抽出可能である.しかるに,確定的信号への応用はいまだ報告されていない.
 本論文では,この種の信号への極性相関法の応用可能性を極力一般的に検討するため,まず単一正弦波,複合正弦波,AM変調波,FM変調波の4種の代表的信号について理論数値解析を行い,単一正弦波とFM変調波については通常の相関法と同等な機能が取得あるいは期待できること,また複合正弦波とAM変調波については,もはやその可能性はないが,信号の周期検出の見込みはあることを明らかにしている.
 つぎにこの基本的結果を踏まえて考案した,2つの具体的な応用,すなわちディジタル通信におけるFSK変調信号の検出と復調,ならびに超音波A-モード法における遅れ時間推定のおのおのについて加法的検出ノイズが存在する実際的状況下で数値実験を行い,極性相関法によれば通常の相関法と遜色ない形で当該目的を達成でき,かつ後者に比べ簡便性と高速性の点で優位であることを明らかにしている.


■ 四元数信号表現によるスペクトル解析と楕円運動の概念に基づく三次元計測信号の評価指標

筑波大・山本広樹,青島伸治

 加速度や動的変位の計測を基盤としたスペクトル解析は機械設備の故障診断や異常検出に多く利用されている.しかしながら現在は一次元的処理が中心であり,複雑な三次元的挙動の把握には必ずしも向いていない.そこで本論文では,計測信号の四元数表現を基にして,複数周期/異なる三次元的振動面をもつ振動成分が重畳した三軸計測信号の特徴を容易に抽出するための評価指標を提案する.四元数信号表現によりスペクトル係数値へ分解された信号成分は四元空間における周期別の楕円運動と結びつけて考えることができる.提案指標はこの楕円の状態を表わすもので,スペクトル係数値の性質をふまえて三次元空間での観察向けにしたものである.また,三軸加速度の計測記録が可能な小型のボール型計測装置を用いた加振実験により,加速度データの四元スペクトル値と提案指標値の計算例を示した.


■ 自動的なスケールの選択を伴うボックス・カウンティング法による2値画像のフラクタル次元の高精度な推定

宮城高専・佐藤喜一

 フラクタル次元は,自己相似性・複雑さ・不規則性といった性質を定量化できることから,画像処理や画像解析などの分野で広く利用されている.画像のフラクタル次元は,ボックス・カウンティング法(box-counting method, BCM)により推定されることが多い.しかし,BCMによるフラクタル次元の推定値は不正確になりがちである.
 そこで,本論文では,その原因を考察し,フラクタル図形が埋め込まれた2値画像のフラクタル次元を精度よく推定できるように,BCMの改良版であるBuczkowskiらの手法をさらに改良する.
 提案手法では,対象画像において利用可能なすべてのスケールでボックス・カウンティングしたあと,推定精度を低下させる原因となるスケールを自動的に取り除く.そして,選択されたlog-logプロット上の点に回帰直線をあてはめ,その傾きからフラクタル次元を推定する.
 理論的考察から,提案手法の計算量はBuczkowskiらの手法と同じかそれより少ないことがわかった.また,典型的なフラクタル図形とユークリッド体に対し,提案手法と従来法との推定精度を比較した.その結果,提案手法はBCMやBuczkowskiらの手法より推定精度が高いことがわかった.


■ 定在波を用いた管長高精度計測のための最適センサ配置

山口大・岡本昌幸,リズキエフ・ファルーフ,田中正吾

 著者らは先に直管あるいは湾曲管内に生じる定在波のいくつかのモードの音圧変動およびそれらの時間微分を状態変数とする線形ダイナミックシステムを導入し,これに管長を未知パラメータとするカルマンフィルタおよび最尤法を適用する高精度管長計測システムを開発した.
 なお,上記計測システムにおいてはこれまで,センサ設置の容易さから,音響センサを管端に設置してきたが,管内に生じる定在波の各モードの振幅は管軸方向の位置によって異なるため,センサの位置を変えれば,これに観測される各モードの定在波の振幅も変わる.したがって,以前提案の計測システムにおいて,状態変数の大きさが変わるだけでなく,未使用モードの定在波をすべて合わせた観測雑音相当項の分散も変わることになる.したがって,SN比の観点から,信号分をできるだけ大きく,雑音分をできるだけ小さくするような位置に音響センサを配置すれば,それだけ計測精度が高められることになる.
 このようなことから,本論文では,以前提案の管長計測システムにおいて,ダイバージェンスの観点から最適なセンサ配置について論じると共に,この最適センサ配置により管長の計測精度がさらに高められることを示す.


■ 熱電対校正用銅点実現装置の不確かさ評価

産総研・小倉秀樹,沼尻治彦,山澤一彰,丹波 純,井上正也,新井 優

 現在の温度標準は1990年国際温度目盛(ITS-90)に基づいて設定されており,白金抵抗温度計,放射温度計が補間計器として定められている.一方,産業界において一般的に使用されている温度計は熱電対であり,ITS-90に基づく温度を測定するためには,上記の2種類の温度計による標準と値を比較する必要がある.しかし,一般に異なるタイプの温度計に標準を移すことは技術的に難しいため,熱電対自体を上位標準の温度計とするトレーサビリティ制度の構築が産業界から強く求められてきた.産業技術総合研究所では,こうした要求に応えるため,国家標準としての銅点実現装置の設計・作製を新たに行った.
 熱電対による銅凝固点の標準供給を行う際,その不確かさの要因としては,「銅点実現装置の不確かさ」,「校正時の測定計(電圧計,基準接点装置等)の不確かさ」,「校正対象である熱電対のドリフトおよび不均質に起因する不確かさ」が挙げられる.これらの不確かさ要因の中で「銅点実現装置の不確かさ」について詳細に評価を行った結果,比較的大きな不確かさの要因は,不純物の影響,プラトーの再現性,および,熱流の影響であり,合成標準不確かさは20.2mKであることがわかった.


■ 多連秤によるコンベアライン上での連続秤量

小山高専・田崎良佑,山崎敬則新光電子・大西秀夫,小林政明クロテック・黒須 茂

 近年,コンベアライン上に搬送される秤量物の質量測定の高速,高精度化の要求にともない,ロードセル(はかり)により秤量された計測データから質量をいかに効率よく推定するかが重要な課題となっている.とくに,異なる長さの秤量物が連続的に搬送される状況下で,コンベアラインを停止させずに,高精度で質量を測定することは難しい.
 本研究では,複数の計量コンベアの出力を組み合わせた多連秤による連続秤量法を信号処理として捕らえ,数理的な側面から検討している.まず,多連秤によって秤量物の質量を連続測定するさいに,計測可能となる幾何学的な条件を導いている.そして,シミュレーションと実験において,多連秤による連続秤量を実施している.ロードセルの出力をFIRフィルタ(ダウンサンプリング周期T=4[ms])に通し,さらに一次系フィルタ(しゃ断周波数f0=80[Hz])を通したデータの最大値より質量の推定値を得ている.その推定値より誤差率を求め,多連秤において平均誤差率0.7%以下が保証される条件を明らかにしている.本研究で検討した多連秤による簡易秤量法の実用性が高いことを明らかにしている.


■ An Approach to Local Stabilization of Linear Systems with Actuator Amplitude and Rate Saturations

Kyoto Univ.・Hayato NAKADA and Kiyotsugu TAKABA

 This paper is concerned with the local stabilization of linear systems with actuator amplitude and rate saturations. Based on the local stability condition due to Takaba, we derive a synthesis condition of a linear time-invariant (LTI) controller for the plant with actuator amplitude and rate saturations under the assumption that the rate saturation is modeled as a nonlinear position-feedback system.
 It is shown that the present synthesis condition is less conservative than the circle criterion. A numerical example is also included to verify the applicability of the present synthesis methods.



■ システムパラメータ摂動にロバストな入力整形とそのフレキシブルロボットアームへの適用

名古屋大・家造坊薫,菅原佳城,早川義一,大同工大・尾形和哉

 近年,フィードフォワード制御の有用な設計手法としてInput Shapingが注目されている.その手法の多くは,固有振動数や減衰比などのモードパラメータに基づいて設計し,その摂動に対するロバスト性を実現している.これらの手法においては,摂動する恐れのあるシステムパラメータを事前に知っている場合でも,不確かさを固有振動数で表現し直す必要がある.
本論文では,システムパラメータの変動範囲内におけるロバスト性能を保証するInput Shaperの設計問題を,不確かなパラメータに起因する最悪な応答の変動を最小にするようなミニマックス問題として定式化する.そして,この問題を変形してLMI条件下の最適化問題に帰着する.提案した手法をフレキシブルロボットアームに適用し,実験結果により提案した手法の有効性を確認する.



■ 固有値に着目した2モード区分的線形システムの安定解析

東工大・岩谷 靖,東大・原 辰次

 本論文では,状態の解軌道を直接支配する固有値に着目した2モード区分的線形システムの安定解析を行う.従来の区分的線形システムの安定解析は,リアプノフの定理の拡張・適用に主眼がおかれていた.この手法の問題点は,その結果があらかじめ固定するリアプノフ関数のクラスに依存し,十分条件しか得られないことである.一方,本論文のアプローチは,解軌道を直接解析するものであり,従来方と比較してより精密な安定解析ができる.本論文では,まず2状態の場合に関して,システムの原点が漸近安定であるための必要十分条件をシステムの固有値を用いて特徴付ける.そして,この結果をn状態のシステムの場合について拡張し,n状態2モード区分的線形システムの収束性に対する必要条件と十分条件を導出する.


■ 格子点配置を用いた自律移動ロボットによる環境掃引経路計画

東大・深澤祐介,T. Chomchana,太田 順,湯浅秀男,新井民夫,理化学研・淺間 一

 本研究では,形状・位置・姿勢が未知な障害物が内部に存在する環境において移動ロボットによる領域掃引問題を解決している.従来当該問題はContour Parallel型(沿輪郭型)とDirection Parallel型(蛇行型),点配置型の基本手法に基づいて実現されてきた.しかし,「@複雑な形状を有する環境において生成される経路の冗長性」と「A再計画時の経路生成に要する計算量の増加」といった問題点はどの手法においても解決されていない.ここでは,環境を格子点により近似表現することにより@の問題点を解決する.また,再計画時には,すでに配置されている観測点の位置情報と,それらを結ぶ経路情報を保存し再計画の際に利用することにより,Aの問題点を解決する.提案手法の計算量は格子点総数と観測点総数のみに依存し,環境の外形形状が複雑になっても計算量が増加しないことを示した.提案手法と従来手法を比較し提案手法が10%以上短い経路を導出することがわかった.特に環境の外形形状が複雑な場合その差は増すと考えられる.未知障害物発見時の経路再計画では,「すでにある経路を保存しない手法」と比較し,1/10の計算量で再計画可能であることを示した.以上より提案手法の有効性を示した.


■ 操舵制御に関するドライバの意図認識システム

日大・田島 淳,柚原直弘

 本論文は,高速道路での走行における操舵制御に関するドライバの意図認識システムとして,操舵モード認識システム,横位置制御タスク認識システム,運転嗜好認識システムの3つのシステムを提案する.操舵モード認識システムは,ドライバが手動操舵における支援あるいは自動操舵による支援のいずれを選択しているのかを決定するもので,操舵トルク信号の前処理部,ARモデルによる操舵トルク信号の予測誤差系列の生成部,および逐次確率比検定による仮説検定部から構成されている.横位置制御タスク認識システムは,ドライバの行っている横位置制御タスクが車線追従であるのか,車線変更であるのかを判別するもので,隠れマルコフモデルフィルターを用いた認識部,ARMAXモデルと仮説検定を用いた認識部,およびそれらの出力の統合部からなる.そして運転嗜好認識システムは,車両ヨーレート,前後加速度,およびARMAXモデルによるハンドル操舵角,アクセル開度の予測誤差の移動平均値を用いて,ドライバの運転嗜好を反映する指標を算出する.実車走行で取得した時系列データを用いたシミュレーションによって,上記ドライバの操舵制御意図を提案したシステムにより確度高く認識できることを実証している.



[ショート・ペーパー]

■ A 3-Dimensional Measuring Method for Pulverized Particle―Spherically Equivalent Diameter of the Particle Floating in the Airflow―

Hiroshima Sanyo High School・Takayuki SUGITA,Hiroshima Inst. of Tech.・Yoshifumi KITAYAMA

 We devised the particle size measuring method in which flour particles were statically floated in the airflow at a test section. Spherically equivalent diameter of the floating particle was obtained by an elliptical approximation of the image. It was well confirmed by the study that the measuring time was reduced to one third and that the accuracy of the equivalent particle diameter acquired by the floating method was of a good consistency with our established Laser-used 3-dimensional particle size measuring method.


 
copyright © 2004 (社)計測自動制御学会