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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.39 No.8(2003年8月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ スピネルの蛍光寿命を利用した光ファイバー温度センサー

信州大・相沢宏明,鳥羽栄治 東洋大・勝亦 徹,常世田幸之,小室修二,森川滝太郎

 蛍光寿命の温度依存性を利用した光ファイバー温度センサーは,電磁環境下,水中,引火爆発性環境下などの従来の温度センサーでは測定困難な特殊な環境下でも使用できる.そのため,実用的な光ファイバー温度センサーの実用化が望まれている.
 クロムイオンを添加したスピネル結晶(MgAl2O4: Cr3+)は,長い蛍光寿命,大きなストークスシフトや温度係数などをもつため,光ファイバー温度センサーとして有望な結晶である.スピネル結晶は幅の広い固溶領域をもつため,結晶の育成条件によって化学組成の異なる結晶ができる.本研究ではスピネル結晶の化学組成の違いが光ファイバー温度センサーの諸特性に与える影響を明らかにするために,組成比:x(x=MgO/(Al2O3+MgO))が0.40,0.45,0.50,0.55,0.60の5種類のスピネル結晶を育成し,光学特性や蛍光寿命の温度特性を評価・比較した.その結果,化学量論組成(x=0.50)のスピネル結晶は他の化学組成の結晶に比べて蛍光寿命が長く,温度係数も大きいことから,温度センサーに最も適した化学組成であることが明らかになった.さらに,化学量論組成のスピネル結晶を用いた光ファイバー温度計を作製して,0〜400℃の温度範囲を測定精度2℃,測定分解能0.03℃で測定できることを明らかにした.


■ 帯関数を用いたパネルの比較判別能力の分析

東工大・鳥海不二夫,高山潤也,大山真司,小林 彬

 人間の感覚による計測,すなわち官能検査に関連する尺度付けの手法の1つに一対比較法がある.一般に,この一対比較法は比較的あいまいな量の尺度づけを行う場合に利用されるが,一対比較を行うパネルは,尺度付けすべき対象(量)としての刺激に関する十分な知識をもたない場合が多く,さらに,対象とする刺激に関する説明が不十分なために,検査者の意図とは異なるイメージの刺激についてパネルが比較判断することもある.このような場合,パネルの判断結果に含まれるあいまいさはより増大し,得られたデータをそのまま用いると,求めたい刺激についての尺度づけから離れた結果が得られてしまう可能性がある.この意味で,パネルが適切な検査能力をもっているかどうかを確認することは重要である.一方,パネルの検査への適性は,さまざまな外的要因やパネルのもつ属性(性別や年齢など)によって変化する.したがって,パネルのもつ属性や環境などが与える検査への影響を分析する必要もある.このため,パネルを属性や実験環境によっていくつかのグループに分け,それぞれのグループごとの検査能力を調べることができれば,検査に適した環境およびパネルの属性を明らかにすることが可能となる.つまり,より精密な尺度付けを行うためには官能検査を行う各パネルのもつ検査能力を適確に把握することが求められる.さて,一対比較法においては一意性と一致性の観点からパネルの検査への適性が評価されることが多い.このうち一意性は,おもにパネル個人の検査能力を調べるのに用いられる.また,一致性はパネル相互間の判断に関する一致の度合いを調べるのに用いられる.しかし,これら2つの手法は,多く一対比較データの直接的分析に基づいてパネルの検査能力を測定するという手法をとっているため,検査への適性の有無のみを判断する方法であり,パネルの検査能力の程度を数量的に評価することはできない.これに対し,本研究ではパネルがどの程度の刺激差に対してどのような比較判断を示すか,すなわち,どのような判断特性をもっているかを,帯関数モデル型一対比較法(BMPC法)に基づいて明らかにしつつパネルの検査能力の測定を行う.BMPC法では,パネルの判断特性関数のモデルとして,帯関数モデルが提案されており,この帯関数に基づいてパネルの検査能力を分析する手法について以降考察する.一般に,官能検査を行ううえでパネルに求められる検査能力は,判断基準の安定性,鋭敏さなどである.そこで本論文では,パネルの検査能力を示す新たな2つの評価指数,すなわち,判断基準のばらつきの評価指数および分解能の評価指数を帯関数から求める手法を提案し,これらの評価指数を用いることで,簡便かつ数量的にパネルの検査能力が分析できることを明らかにする.また,これら2つの評価指数を用いて実問題のデータの分析に適用し,「彩度判定実験」では,実験時にパネルに行う説明の仕方の相違によるパネルの検査能力の違いから,実験により適した説明はいずれかを容易に選ぶことができることを明らかにする.また,「真珠らしさの判定実験」では,評価指数によってパネルの検査能力を分析し,実験に適した実験条件やパネルの属性を明らかにし,適正なパネルの選別が可能であることを示す.


■ チェインドシステムに対する同次有限時間整定制御

奈良先端大・中村文一,山下 裕,西谷紘一

 自動車のような車輪をもった移動車両や宇宙ロボットなどの非ホロノミックシステムの中でもっとも研究が盛んに行われているシステムがチェインドシステムである.このシステムに対するフィードバック制御として,大きく分けると不連続な時不変状態フィードバックと時変の滑らかな状態フィードバックという2つのアプローチに基づいてさまざまな方法が提案されてきたが,両アプローチともなんらかの問題を抱えていた.そこで,本論文ではチェインドシステムに対し時不変の不連続な同次制御器を設計することで,入力が発散するような特異点をもつことなく有限時間で整定する,フィードフォワード要素を含まない制御則を提案する.提案する制御則を用いることにより,収束速度を有限整定あるいは指数安定といったように選択が可能であることを示す.特に,指数安定な制御則を構成することにより入力のチャタリングを回避できることを示す.最後に,コンピュータシミュレーションにより提案手法の有効性を確認する.


■ 回帰型非線形システムのパラメータ推定に関する一手法

徳島文理大・笠松博史,樋口 彰,森本滋郎, 古本奈奈代,田渕敏明

 最大事後(MAP)推定法による回帰型非線形システムの未知パラメータ推定に関する1つの手法が提案される.MAP推定法を用いる場合は,未知パラメータベクトルに関する,ある目的関数の最小化問題の求解が必要になるが,非線形システムの場合は,この目的関数が未知パラメータベクトルに関して多峰性となる.本論文では,多峰性目的関数の最小化において,極小点回避のために与える確率的ゆらぎの強さを調整する1つの手法が,推定量のゲイン調整の観点から提案される.
 その手法は,推定誤差ノルムの平均が0に収束するというところから逆算したときに,推定量が備えておくべき要件を導出し,それを推定量にもたせようとするものである.その要件を満足するようなゆらぎの強さは,連続時間型の代数Riccati方程式(CARE)の解として得られることが示される.その結果,推定量は繰返し型の拡張カルマンフィルタ(IEKF)とCAREを連動させる形となり,ゆらぎの強さはパラメータの推定誤差の大小に応じて適応的に調整される.
 数値実験例では,本手法が良好に作動することが示される.


■ A Dilated LMI Approach to Continuous-Time Gain-Scheduled Controller Synthesis with Parameter-Dependent Lyapunov Variables

Kyoto Univ.・Yoshio EBIHARA and Tomomichi HAGIWARA

 This paper is concerned with the gain-scheduled controller synthesis problems for linear parameter varying (LPV) systems. In the case where the state space matrices of the LPV system depend affinely on the time-varying parameters, the standard linear matrix inequalities (LMI's) are helpful in dealing with these synthesis problems provided that we accept the notion of quadratic stability. However, in the case of rational parameter dependence, the standard LMI's carry some deficiency and do not lead us to numerically tractable conditions in a straightforward fashion. This paper clarifies that dilated LMI's are effective in overcoming the difficulties and deriving numerically tractable conditions. The dilated LMI's also make possible to employ a parameter-dependent Lyapunov variable to achieve control objectives, which is promising to alleviate the conservatism stemming from a quadratic (parameter-independent) Lyapunov variable.


■ 小口径トンネルロボットの方向修正制御モデルとその評価実験

NTT・吉田耕一,粟田輝久

 本論文は,小口径トンネルロボットのオートナビゲーションシステムの実現へ向けた方向修正制御モデルの構成法に関するものであり,提案されたモデルの有効性が実機による推進実験により評価・検証される.対象とするトンネルロボットの先端装置は振動ヘッドと胴体部からなり両者の相対角を内蔵の油圧ジャッキにより変化させることにより方向修正動作を行う.方向修正制御モデルはロボット先端の移動方向がヘッド長手方向に一致する非ホロノミック拘束モデルとヘッド角操作に対する先端装置旋回曲率応答のARXモデルを組み合わせることにより導かれる.また,このモデルにカルマンフィルタを適用して旋回運動に係わる状態変数やARXモデルパラメータのオンライン推定を行うことを考える.
 実際のトンネルロボットを用いた実験により提案したモデルの状態予測性能が確認されるとともに,垂直方向の方向修正制御においては推定されたモデルパラメータに基づくLQR制御を適用したときの目標軌道追従性能が示される.


■ シームレスなプラント動作制御ソフトウエアの開発

筑波大・高橋正和,津田和彦

 本論文では,顧客の要求仕様に適合したプラント動作制御ソフトウエアを効率的に開発する手法を提案する.提案手法では,2種類のソフトウエア部品(要求仕様決定用と実装用)とZ言語を使用する.これらを使用することで,プラント動作制御ソフトウエアを標準化し,設計情報の曖昧性を低減するとともに設計情報の正確な伝達を実現し,顧客の要求に適合したプラント動作制御ソフトウエアを開発できるようにした.提案手法では,はじめに,要求仕様決定用ソフトウエア部品を用いてプロトタイプを作成し,そこで使用したソフトウエア部品の情報を利用してZ言語による要求仕様を作成する.つぎに,Z言語の要求仕様を実装用ソフトウエア部品の機能レベルとなるまで分割・詳細化してZ言語による設計仕様を作成する.最後にZ言語の設計仕様から適用可能な実装用ソフトウエア部品を選択し,それらを組み合わせてプラント動作制御ソフトウエアを開発する.提案手法を適用することで,要求仕様がプラント動作制御ソフトウエアのどの部分に展開されているか,容易に機能を追跡できるようになった.その結果,顧客要求に適合したプラント動作制御ソフトウエアが開発できるようになった.



■ 複数台移動ロボットの搬送経路計画問題に対する自律分散型最適化法

岡山大・安藤昌和,西 竜志,小西正躬,今井 純

 多くの搬送システムでは,AGV(Automated Guided Vehicle)間の衝突やすれ違いをなくし,総搬送時間を最短とする経路計画を迅速に作成することが求められている.本論文では,自律分散型最適化法を用いたAGVの搬送経路計画問題の解法を提案する.提案する手法は,各AGVが情報交換と各AGVの経路計画の最適化を繰り返すことにより,総搬送時間を最短とする搬送経路を作成する.本研究では提案手法をさまざまな問題に適用し,従来法と比較することにより,提案手法の有効性を検証した.また,提案手法によって得られる解の最適性について検討するため,ラグランジュ緩和法により下界値を導出し,双対ギャップを求めた.その結果,提案手法は143ノードから構成される搬送経路において15台のAGVの搬送経路を双対ギャップが5%以内の解をPentiumV(1GHz)の計算機を用いて約5秒の計算時間で導出することができることを確認した.さらに,提案する自律分散法の柔軟性を確認するため,3次元搬送路を有する搬送システムを対象として,AGVの速度の異なる問題に対する経路計画を行うことにより,さまざまな条件下での本手法の有効性を確認した.


■ サイクル長制御を取り入れた自律分散型交通信号制御

東大・杉 正夫,湯浅秀男,太田 順,新井民夫

 自動車台数増加による交通事情の悪化を受けて,道路を効率的に利用するための交通信号制御が研究されている.従来ではオフライン計画によって得た解を集中管理によって実現するが,拡張性や交通流の動的変化への対応等に問題がある.一方で自律分散的手法による信号網制御が試みられているが,3つの制御パラメータ(スプリット,オフセット,サイクル長)すべてを独立に制御できる手法は確立されておらず,広域制御というには不十分である.本研究は信号網を自律分散システムとして扱い,各要素が局所情報をもとに行動することで全体として適切な信号パターンを形成することを目指している.具体的には信号網を非線形結合振動子系でモデル化し,グラフ上の反応拡散方程式でダイナミクスを規定する.これまでにオフセットおよびスプリットの制御を実現してきたが,本論文では新たにサイクル長(信号の周期)の制御を扱い,3つのパラメータすべてを交通状況によって変化させ,高い交通効率の実現を目指す.シミュレーションを行い,提案手法の有効性を確認した.


■ Analysis of Gage Control Process for Cold Rolling Mill

Sumitomo Metal Industries・Toshiya OOI and Yoshiro WASHIKITA

 冷間圧延機の分野では,板厚,張力制御について多くの研究が行われ,早くから実用化もされてきた.しかし,冷間圧延プロセス動特性の一般論についての議論は,必ずしも十分行われてきたとはいえない.本論文の目的は,タンデムミルからレバースミルまで含めた,冷間圧延の板厚・張力プロセスの動特性をパラメトリックに記述することを通して,その特徴を解析し,これにもとづいた適切な制御則を実現することである.第1スタンドを除いて同じ構造の動特性に支配されるタンデムミルについては,圧下位置,サクセシブ速度といったいくつかの主操作量を適切な配分で同時操作することにより非干渉化できることを示し,非干渉化誤差の周波数特性による性能評価も行う.レバースミルとタンデムミル第1スタンドを総称した「ミル入側プロセス」については,圧下位置とモータトルクという2つの操作量をいかに適切に使い分けるか,という視点から制御則を検討した.1つはアクチュエータ動特性の観点から検討しクロスコントローラで簡易設計を実現した非干渉制御,今1つはプロセス動特性の改善を狙ったILQ制御である.



[ショート・ペーパー]

■ カオス教育研究用装置の開発

姫路工大・亀岡紘一

 分岐とカオスが直感的に理解できる実験装置を開発した.この装置は,ある倒立振子の支点に正弦波状の強制変位を加え,振子に上記現象を生ぜしめるものである.振子の振動は,Jθ●+Cθ●+Kθ−mghsinθ=mhaω2cosθcosωtで記述されると仮定されている.本装置を用いた実験では,n周期(n=1,2,3)とカオスが明瞭に観察でき,その分岐特性もシミュレーション結果とよく一致している.論文に記した装置設計の要点を参考にして同様の装置,さらにはそれを発展させた装置を製作することができる.


■ ニューラルネットを用いた衝撃貫通画像における鋼球位置の推定

拓殖大・小川毅彦,橋本 陽,金田 一,笠野英秋

 高速で飛来する物体による衝突が予想される構造物の設計において,材料の衝撃貫通特性,特に貫通限界速度や残存速度を評価しておくことが重要である.そのため,超高速度写真システムによる貫通破壊過程の画像からの特性評価が研究されている.この方法では鋼球を材料試験片に撃ち込み,鋼球や試験片の破片の挙動によって材料の特性を評価するが,セラミックス等の試験片では破片の散乱により,鋼球の挙動の観測が難しい場合がある.一方,画像認識の手法としてしばしばニューラルネットワークが用いられている.ニューラルネットワークを画像認識に用いる場合,ニューラルネットワークの処理のロバスト性により,不完全な画像からも十分な認識を行うことが期待できる.本研究では,ニューラルネットワークを貫通破壊画像における鋼球の認識のために適用することを提案する.なお,画像をニューラルネットワークの入力として与えるための画像圧縮の前処理としては,ウェーブレット変換による画像圧縮法を用いる.本研究では,ポリカーボネイドおよびポリメチルメタクリレート単平板試験片の衝撃貫通画像における鋼球の位置を推定する処理にニューラルネットワークを適用した場合の効果を実験によって示す.


 
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