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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.39 No.4(2003年4月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]


[論  文]

■ Development of an Evaluation Method for Estimating Information Processing Time Based on Blink Latency

NTSEL・Kazumoto MORITA

 外部刺激に対する情報処理時間を瞬目潜時から推定する方法を提案する.本方法は,被験者の自発性瞬目を利用するものであり,情報処理を行っている間は瞬目が抑制され,処理終了後に瞬目が解放されるという前提に基づいている.著者は刺激呈示時刻,および,その前後の瞬目発生時刻に関する確率的な関係を考察することにより,情報処理時間を推定する方法を理論的に明らかにした.さらに,被験者11名を用いてパソコン画面上の日本文を読ませるという評価実験を行うことにより本方法の妥当性を検討した結果,推定値と実験値とはよく一致することを確認した.


■ 地中レーダにおけるバイスタティック走査による地中埋設物画像の再構成

東工大・田中正行,高山潤也,大山真司,小林 彬

 現在,地中埋設物の検出には電波を応用した地中レーダが幅広く利用されている.地中レーダの多くは,モノスタティックレーダと呼ばれる十分に近い位置に配置されている送受信アンテナによる走査・観測が行われているが,その理由は走査の簡便性,画像化の容易性にあると考えられる.送受信アンテナが異なる位置に配置されているバイスタティックレーダは,形状認識等に有効であるといわれているが,あまり利用されていない.われわれはモノスタティックレーダのみならず,バイスタティックレーダにも対応可能な画像化手法として,キルヒホッフマイグレーションの考え方を拡張した逆投影ヒストグラム法を提案している.本論文では,バイスタティックレーダを利用してマルチスタティック配置の効果を等価的に得るような走査方式を検討する.さらに,このような方式により走査を行い,得られたデータに逆投影ヒストグラム法を施して画像化することにより,対象物の形状認識の可能性を実験的に検証する.傾斜角度を有する鉄板の検出および傾斜角度の識別実験を行い,傾斜角度で30度程度まで傾斜角度の識別が可能であることが確認された.


■ マイクロ波地中レーダのためのモデル適応度による伝搬時間推定

東工大・田中正行,高山潤也,大山真司,小林 彬

 現在,地中埋設物の検出には電波を応用した地中レーダが幅広く利用されている.しかしながら,電波の時間的および空間的な広がりのため,その分解能は悪く,地中レーダ画像から埋設物の位置を正確に同定することは難しい.その原因の1つとして反射波形が振動的であるため伝搬時間を推定することの困難さが挙げられている.本論文では,モデル適応度を利用して,伝搬時間を推定する方法を提案する.モデル適応度は,伝達関数モデルを利用して推定される反射波と観測された反射波との一致度として,二乗誤差に基づき定義される.また,このモデル適応度は送信波形の自己相関関数の包絡線関数が単峰であれば,モデル適応度は埋設物に対応して決まる伝搬時刻で頂点となる関数になり,この性質を利用して伝搬時間は推定される.また,直交双曲線的な広がりとしてあらわれる空間的な広がりを利用して,埋設物位置と伝搬速度を同時に推定する方法を提案する.これらの提案手法は,鉄管の検出実験に適用され,その結果埋設物位置が十分な精度で検出されることが確認された.


■ Non-Uniqueness of the International Temperature Scale of 1990 in the Range 14K to 433K

AIST・Hirohisa SAKURAI

 1990年国際温度目盛(ITS -90)では,その利便性を確保するために,補間計器や補間式,定義定点の選択に自由度が与えられている.このため同じ温度でも異なった値が得られるという不確かさがある.本研究では,14Kから433Kの温度領域について,補間計器の違いによる温度値の差,ノンユニークネス,と,補間式の違いによる温度差,インコンシステンシーを,カプセル型白金抵抗温度計とロングステム型白金抵抗温度計を用いて評価した.
 この結果,24K以下の温度領域を除き,温度計の示す温度値の差(ノンユニークネス)は最大で0.3mK程度であった.24K以下では0.6mKに達する温度計があり,補間式が不十分であることがわかった.一方,84Kから室温までの領域は,温度範囲が広く,校正点が水銀の三重点のみであるため大きなノンユニークネスが予測されたが,0.3mKを超えるものではなかった.さらに,従来見逃されていた補間式の違いによる温度差(インコンシステンシー)を評価した結果,温度領域で0.3mK程度が見込まれ,ノンユニークネスとともに無視できないことがわかった.これらの結果は,現在,検討されている新たな国際温度目盛の改訂の1つの課題となる.


■ Characterization of a Controlled-Clearance Piston Gauge Using the Heydemann-Welch Model

AIST・T. KOBATA,J.W. SCHMIDT,D.A. OLSON

 重錘型圧力標準器を用いて圧力標準を設定するためには,装置の重要部分であるピストンシリンダから決定される有効断面積が,圧力により,どの程度変化するのかを定量的に評価する必要がある.隙間制御型圧力標準器は,重錘型圧力標準器のひとつであり,ピストンシリンダ間の隙間を制御圧力により任意に調整できる装置である.本研究では,Heydemann-Welchにより提案されたモデルを用いて,隙間制御型圧力標準器の特性評価を行った.モデルに必要なパラメータは測定から求められた.実験,および解析結果から,(1)ピストンシリンダ間の隙間を一定に保つために必要な制御圧力が決定された.(2)隙間の幾何学的寸法が推定された.(3)ピストンシリンダの有効断面積,およびその不確かさが,システム圧力と制御圧力の関数として評価された.


■ ロバストLQR問題とそのモデル追従制御則設計への応用

航技研・佐藤昌之

 本稿では,時変パラメータを有するシステムのロバストLQ性能解析,およびロバストLQ最適なレギュレータ設計問題(ロバストLQR問題)について,パラメータ依存型リアプノフ関数を用いた定式化を行う.解析はLMI条件として定式化されるが,設計問題は非凸な条件を用いて定式化され,一般には容易に解くことができない.そこで,下村らにより提案された非凸な条件を凸な条件に変換して解く反復計算アルゴリズムを適用して解くこととした.また,簡単な数値例を用いて,ロバストLQR問題による制御器が,LQ性能を最適化したゲインスケジューリング制御器と比較して遜色ない性能を有する場合があることを示す.つぎに,ロバスト制御器設計法の1つであり有効性が報告されている,多数モデル/多数設計点法を用いてロバスト性能を考慮したモデル追従制御則設計に,先に定式化を行ったロバストLQR問題を適用した.その結果,従来はパラメータに関して離散的な時不変システムに対する解析および設計であったのに対して,想定したパラメータ変動に対する大域的な時変システムとしての解析および準最適な(大域的最適解ではない)制御器の設計が可能となった.最後に,モデル追従制御則設計の例として,航空機の横/方向運動制御の設計例および地上実験結果を紹介する.


■ 同次ディファレンシャル・インクルージョンに対するLyapunov関数

奈良先端大・中村文一,山下 裕,西谷紘一

 拡大付同次性の概念は制御理論において重要な概念として注目されている.本論文の目的は局所弱安定である不連続な同次システムに対して滑らかな大域的同次Lyapunov関数が存在することを示すことである.はじめに,ディファレンシャル・インクルージョンを導入することにより得られているClarkeら,Rosierの2つの不連続なシステムに対するLyapunovの逆定理を,仮定を整理することにより1つの定理にまとめる.局所弱安定な同次ディファレンシャル・インクルージョンに対して,任意の回数だけ微分可能な同次Lyapunov関数が存在することを証明する.最後に,同次システムの同次次数がシステムの収束性能を示していることを明らかにし,同次次数が正であるときには原点を含む任意の開集合に有限時間で収束し,零であるときには指数安定であり,負であるときには有限時間整定することを示す.


■ 論理混合型ハイブリッドシステムに対するCPI集合を用いたロバストモデル予測制御の一構成法

金沢大・向井正和,東 剛人,藤田政之

 本論文では,ハイブリッドシステムのひとつである区分的線形システムに対するロバストモデル予測制御アルゴリズムを提案する.この制御アルゴリズムでは,モデル予測制御とフィードバック制御を組み合わせて用いる.モデル予測制御は,区分的線形システムと論理混合型ハイブリッドシステムの等価性を利用し,またその終端拘束集合をConstrained Positively Invariant(CPI)集合で構成する.提案するロバストモデル予測制御アルゴリズムは,外乱が存在しても拘束条件を破ることなくCPI集合の和集合に状態を保つことを保証できる.簡単な数値例を用いて,提案するアルゴリズムが拘束条件を満たし,状態がCPI集合の和集合に収束することを示す.


■ Convergence Properties of the Membership Set in the Presence of Disturbance and Parameter Uncertainty

Kobe University・W. KITAMURA,Y. FUJISAKI

 The size of the membership set is investigated in the presence of bounded disturbance and l2 bounded parameter uncertainty. A tight upper bound of the diameter of the membership set is derived in a deterministic setting, which indicates that the diameter does not converge to zero in general. Then, a probabilistic upper bound of the diameter is derived in a stochastic setting, where the disturbance and the parameter uncertainty are assumed to be random variables and to take a value near the worst ones with a probability. This probabilistic bound leads to the fact that the diameter converges to zero with probability one as the number of samples tends to infinity.


■ ボールの追跡捕獲タスクに対するGAG(Gaining Angle of Gaze)戦略

阪大・森 亮介,宮崎文夫

 これまで実験心理学の分野で行われてきた外野手のボール捕獲時の移動経路の解析に基づく動作戦略モデルをヒントにして,ロボットにボール捕獲タスクを行わせることを通し,ヒトのボール捕獲タスクにおける動作戦略に関する考察を行ってきた.その結果,実験心理学の分野で提案されたボール捕獲時の動作戦略モデルに基づき,具体的な動作生成方法を視覚をもつ移動ロボットに対して導出した.しかしながら,この動作生成方法のもととなった動作戦略モデルは,限定された条件下でのボール捕獲タスクを対象としており,より一般性のある動作戦略モデルの導出の可能性を残していた.
 本論文では,実験心理学の分野で提案された動作戦略モデルの特徴を備え,また,その動作戦略モデルのもつ問題点を改善できるような動作戦略モデルを新たに提案し,そのモデルに基づく動作生成方法を視覚をもつ移動ロボットに対して導出した.さらにこの方法によれば,移動ロボットに搭載する視覚システムとして,魚眼レンズ付きCCDカメラ1台を用いた単眼視でも,3次元的に移動するボールを捕獲することが可能であることをシミュレーションにより確認した.


■ Improvement on the Digit Recognition Technique of Backpropagation Neural Networks

Oita University・Jiwu WANG,Masanori SUGISAKA

 Digit recognition based on backpropagation neural networks, as an important application of pattern recognition, attracted much attention. Although it has the advantages of parallel calculation, high error-tolerance, and learning capability, better recognition effects can only be achieved with some specific fixed format inputs of the digit image. Moreover, the recognition rate can not be improved obviously even if digits were trained with various format samples. This is because the accuracy of recognition is also directly affected by the digit image preprocessing ability. Here using Matlab software, the digit image was enhanced by resizing and neutral-rotating the extracted digit image before recognition, which improved the digit recognition capability of the backpropagation neural network for practical applications. This method may also be helpful for recognition of other complex patterns with backpropagation neural networks.


■ 線形補間型学習制御を用いた光ディスクの高精度トラック追従制御

富士通研・渡辺一郎,河辺享之,伊海佳昭,市原順一

 筆者らは,光ディスク装置のトラック追従制御系を対象として,学習制御系によるトラック追従精度の向上を検討している.前報では,回転同期外乱補償信号を階段近似して学習獲得し,フィードフォワードする方式を提案した.本論文では,学習結果の平滑化によりさらなる高精度化を図るために,線形補間近似を導入する方式を提案している.提案する手法ではフィードバック制御系のサンプル周期とは独立に,波形近似の時間分解能を決定するメモリ長Nを設定でき,学習対象とする周波数範囲を自在に設定できる.メモリ長を減らして近似する周波数範囲を制限した場合には,それに応じて学習収束時間を短縮できるという実用的な特徴をもつ.本論文では,シミュレーションと実験により,各設計パラメータの制御性能への影響,階段近似と線形補間近似の場合の性能比較,パラメータ変動に対するロバスト性について明らかにしている.さらに実験により,ディスク3回転程度で収束する高速な学習を行っても,回転非同期誤差の振幅を悪化させることなく,フィードバック制御系の帯域付近の,高次の回転同期外乱まで効率的に抑圧できることを示している.


■ 対称性を利用した大型衛星のロバスト制御

電通大・長塩知之,トヨタテクノサービス・山田和弘, 電通大・木田 隆

 近年の人工衛星は,アンテナや太陽電池パドルのような回転する柔軟構造物をもつ大型のものが多く開発されてきている.そのため,衛星を安定化するには,柔軟構造物がもつ広い周波数帯域にわたる振動モードと,その回転によるモデル変動の影響を同時に考慮した制御が必要になる.そこで,本論文では,このような問題をもつ大型宇宙構造物の安定化問題に対して,システムのダイナミクスがもつ構造を利用して安定化をはかることができるDynamic Displacement Feed-Back制御の適用を検討する.しかしながら,この制御方式は,安定性に関する優れた特性をもつものの,安定化以外に与えられた制御仕様を満たすような設計法は,十分に確立されていない.そこで,H∞制御理論の枠組みの中で,外乱抑制を仕様とするDynamic Displacement Feed-Back 制御の最適設計法を提案し,その際に必要となるLMI条件を導出する.また,本設計法の有効性を,実衛星である技術試験衛星VI型の数値モデルを用いたシミュレーションにより検証する.


■ 画像によるプラットホーム内観測点から黄色点字誘導ブロックまでの距離推定

和歌山大・西部優奈,京工大・呉 海元,塩山忠義

 視覚障害者の移動に際しておもに用いられている歩行補助具は白杖であるが,その白杖から得られる情報は限られたものであり,特に,下方段差を検知するのは困難である.下方段差の中でも最も危険なものの1つに駅のプラットホーム縁端がある.本論文では視覚障害者がプラットホームから転落するのを防ぐため,視覚障害者からプラットホーム縁端に沿って貼られている黄色の点字誘導ブロックまでの距離を測定する方法を提案する.提案手法は黄色点字誘導ブロックと,駅構内の看板や柱,電車のドアなどの情報を利用して1枚のカラー画像から黄色点字誘導ブロックの外側までの距離を計算するものである.まず,入力画像から黄色点字誘導ブロックの領域を抽出し,黄色点字誘導ブロック両側のエッジ直線を抽出する.つぎに,プラットホーム平面の法線ベクトルを求めるために駅構内の柱,電車のドア,看板などのエッジから鉛直方向の直線を抽出し,評価式を用いて最適な1本を選出する.そして3次元のベクトル解析により,黄色点字誘導ブロックまでの距離を求める.最後に実画像を用いた実験を行い,この手法の有効性を確認した.


 
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