論文集抄録
〈Vol.39 No.2(2003年2月)〉
論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)
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タイトル一覧
[論 文]
[論 文]
- ▲ ■ 無重力下で自由回転する未知剛体の物体上の点の位置情報に基づく運動推定
阪大・平井宏明,升谷保博,宮崎文夫
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ロボットシステムにより無重力空間を自由運動する未知剛体を自律的に捕捉する際.対象の運動を認識することは不可欠である.そこで本論文では.対象上の点の位置情報に基づき.その運動を推定する方法を提案する.一般に軸対称剛体の自由運動の場合.オイラーの運動方程式の解は2軸の等速回転運動の重ね合わせと解釈することができる.また.非対称の場合でも.ある条件下では.3軸の等速回転運動と近似できることが示されている.そこで本論文では.対象の運動を複数軸の等速回転運動の組み合わせと表現できるとし.対象上のある1点の位置情報が観測できる場合を想定し.運動推定を行う.たとえば.未知剛体にマーカーを付着させ.これを複数のカメラで観測する場合が考えられる.本手法によって.その3次元位置の時系列のフーリエ変換から剛体の運動を記述するのに必要なパラメータである回転周波数および回転軸方向の導出が可能となる.また.観測中に欠測が生じる場合も考慮し.時系列の周期性を利用した欠測区間のデータ復元についても提案する.本手法を運動推定の前処理として行うことで.隠れなどにより観測時系列に欠側が存在する場合も正しく運動推定を行うことができる.また.本手法の有効性を数値シミュレーションにて検証する.
- ▲ ■ 多重分光画像における画素内面積比の適応的推定
東大・喜安千弥,藤村貞夫
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カテゴリー分解は,リモートセンシングで得られた多重分光画像において,画素内に混在するカテゴリーの面積比を推定しようとする処理である.従来のカテゴリー分解法では,カテゴリーごとに用意したトレーニングデータから要素スペクトルを推定し,それにもとづいて分解をおこなっていた.しかし,トレーニングデータが画素内のカテゴリーを適切に代表していなければ,推定された要素スペクトルは分解しようとする画素内の分光特性に一致しないため正しい分解結果が得られない.本論文では,このトレーニングデータの代表性の問題を解決するために,観測データ自身から適応的に要素スペクトルを推定してカテゴリー分解に適用する方法を提案する.要素スペクトルの線形結合によって観測スペクトルが生じるとのモデルにもとづき,さまざまな面積比からなる観測スペクトルを内部に含む体積最小の単体を,特徴空間において決定することにより,要素スペクトルを推定した.センサのルッキング角が変化するために観測領域ごとに分光特性が変動する場合を想定して,シミュレーション実験をおこなった結果,要素スペクトルを適応的に推定することにより面積比の推定精度が向上することを確かめた.
- ▲ ■ 補助電極を含む平面型静電容量センサの特性解析
松下電工・瀬戸学雄,佐賀大・信太克規
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福祉・安全機器等に使用される人体検知センサの中で,電極を同一平面上に配置した平面型静電容量センサが有効である.なぜなら,人体は水分が多く含まれているゆえ,誘電率が高く,検知対象物として樹脂等の物体と明確な差を示すからである.また,平面型はその形態的特徴ゆえ機器内部へ埋設しうるという利点がある.
本稿は,平面型静電容量センサについて介在物が存在する場合の静電容量値が,測定電極の内外どちらか一方あるいは両方に配置される補助電極の有無,それぞれの電極の寸法,対象物の大きさと位置によりどのように影響するかについて有限要素法解析を行ったものである.検知対象の代表的な物質として樹脂,人および水を選択した.解析結果より,補助電極の有無により検知限界距離には影響をおよぼさないが,静容量値を上昇させる効果が明らかとなった.特に測定電極の内側に位置する補助電極および設置間隔が対象物検知に影響することがわかった.平面型静電容量センサは介在物が存在する場合でも測定電極の内側間隔より大きい対象物の検知が可能で,対象物の設置場所を固定すればその幅の推定が可能であることを示した.
- ▲ ■ デュアルオブザーバを用いた多入力系での外乱抑制
名古屋工大・不破勝彦,豊田工大・成清辰生, 名古屋工大・神藤 久
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外乱抑制問題は,高精度の位置決めや振動抑制などを実現する重要な制御問題であり,それを解決するための有用な結果も報告されている.とりわけ,外乱オブザーバによる方法は,ノミナル化の実現や構造の明確さなどの観点から,多くの有効性が見出されており,モーションコントロールによる産業機器に広く適用されている.しかしながら,実システムにおいては,マッチング条件を満たさないシステム外乱の影響が問題となることが少なくなく,外乱オブザーバによる方法では効果的に外乱を抑制することが困難となる.そこで,本稿では最小次元デュアルオブザーバを用いて,適当な次元の非可観測部分空間を構成し,外乱行列により張られる空間をその部分空間に埋め込んで,推定外乱のフィードフォワードによりシステム外乱を抑制する制御系の設計法を提案する.基本的なアイデアは,高次数のデュアルオブザーバを構成して,外乱空間を埋め込めるまで見かけ上の入力による空間を広げることである.得られた結果は,非可観測部分空間の極を任意に選択することができ,その空間と外乱空間との包含関係により,外乱抑制のための条件を明らかにしている.そして,3慣性系の速度制御問題に適用し,提案する方法の有効性が確認される.
- ▲ ■ Parameterization of All Multivariable Deadbeat Tracking Controllers
Nagoya Inst. of Tech.・Manabu YAMADA, Yasuyuki FUNAHASHI
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本論文では,多入力多出力離散時間システムに対するデッドビート追従補償器のパラメトリゼーションを提案する.本研究の成果は以下である.
・一自由度補償法の下で,デッドビート追従補償器が存在するための条件とすべての補償器のパラメトリゼーションを与えた.
・得られたパラメトリゼーションは,フリーパラメータのみを用いて,陽な形で与えられている.その結果,実現可能なデッドビート応答のクラスも,フリーパラメータを用いて陽に得られ,整定ステップ数とフリーパラメータとの関係も明らかにされた.この成果を用いれば,過渡応答などを考慮したデッドビート補償器の設計を簡単化できる.数値例では,追従偏差の最大値の最小化問題に応用し,本手法の有用性を確認した.
・デッドビート追従させる目標入力のクラスを一般化した.その結果,線形時不変システムにより生成される任意の目標入力に対してデッドビート追従させることができる.
・提案法は,制御対象が正方の場合(入力数と出力数が等しい場合)だけでなく,横長の場合(入力数が出力数より多い場合)にも適用できる.
・提案する設計法は,多項式行列の方程式の解と行および列標準形(row/column Hermit form)への変形のみからなり,容易である.従来法のような有理関数行列のスミスマクミラン標準形への変換のような厄介な計算を必要としない.
最後に,数値例により,本手法の有用性を確認した.
- ▲ ■ 拘束条件を有する最適制御問題の一数値解法
福岡大・岩村誠人,松下電器・河野裕介, 福岡大・尾崎弘明,九州大・毛利 彰
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本論文では,最適制御問題の数値解法として,終端拘束,状態量拘束,操作量拘束を考慮することができ,終端時刻自由問題に対しても適用することができる応用範囲の広いアルゴリズムを提案している.従来,拘束条件を有する最適制御問題の解法としては,スラック変数を用いた変換法やペナルティー法など拘束のない問題に変換する手法が主流であった.しかし,スラック変数を用いた変換法は適用できる問題が限られており,ペナルティ法はパラメータの微妙な調整が必要であるなどの問題点があった.それに対して,岩村らは拘束条件を直接取り扱うことができる階層勾配法という手法を提案している.この手法では,操作量の修正量を階層的に構成することによって,終端拘束,状態量拘束および評価汎関数に関する収束速度を個別に決定する.そのため,安定した収束が得られ,重み係数の微妙な調整が不要であるという特徴がある.本論文では,この階層勾配法をさらに操作量に拘束がある問題,終端時刻自由問題に対しても適用できるように拡張している.また,自動車の最短軌道生成問題に対して適用し,その最適化能力および収束性について検証している.
- ▲ ■ 一般線形システムの構造的Exact Model Matching条件
金沢高専・古屋栄彦,金沢工大・小林伸明,鈴木亮一, 足利工大・中溝高好
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本論文では,モデル適合(Exact Model Matching)問題の可解条件について,構造的見地からの検討を行っている.モデル適合問題は,システムの伝達関数を希望の応答を示すモデルの伝達関数に一致させるものであり,モデル規範型適合制御(MRAC)の基本となるものである.つまり,MRACではモデル適合問題が可解であることが前提条件となっている.そこで,パラメータ変換によらず情報伝達構造だけからモデル適合の可解性を判定する手法を明らかにすることがねらいである.ここでは,システム変換によってパラメータ間の独立性が失われることのない,中間変数表現された一般線形システムを扱う.モデル適合問題は,システムとモデルを並列結合した拡大系に対して,モデルの入力を既知外乱とみなした場合の外乱分離問題と等価であることから,まず,一般線形システムの外乱分離問題の構造的可解条件を新しく導き,これをモデル適合問題に応用することで可解条件を導出する.また,煩雑な計算をすることなく視覚的,直感的にモデル適合問題の可否を判定するためのグラフ表現を利用した主順も示している.
- ▲ ■ Parameter Estimation under Perspective and Orthographic Projections Using Laser Range Finder
Tokyo Denki Univ.・Satoru TAKAHASHI,Washington Univ.・Bijoy K. GHOSH
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In this paper, we consider the problem of estimating motion and shape parameters of a plane undergoing three different motion models using both a CCD camera and a laser range finder The Camera observes features on the moving plane perspectively or orthographically. The laser range finder observes a cross section of the plane as a line. We use this time-variing line information gor the estimation problem of motion and shape parameters, and ontainthe extant to which motion and shape Parameters can be estimated.
- ▲ ■ 接触モードのスイッチングに基づく多指ハンドによる包み込み把握の運動計画
―ハイブリッドシステムの運動計画―
防衛大・八島真人,山口秀谷
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本論文は,接触モードのスイッチングに基づく包み込み把握の運動計画問題を取り上げ,その操り条件および運動計画アルゴリズムについて述べたものである.包み込み把握は,指先操りに比べて十分な接触点自由度を構造的に得られないという特徴をもち,その運動計画を困難にしている.ここでは,接触モードをスイッチングして各接触点の接触点自由度を適宜変化させることによって,包み込み把握による任意な操りを実現している.本論文ではまず,接触モードの変化を伴う操り系の性質を運動学的・動力学的性質の両面から体系化するとともに,運動計画で満たすべき操り条件を明らかにする.さらに,ここで扱う操り系は,接触モードのスイッチングによる離散的な事象変化によって,系のダイナミクスが変化することから,ハイブリッドなシステムのクラスに属することを示す.そして,大域的運動計画と局所的運動計画からなるランダム手法に基づく階層型運動計画アルゴリズムを提案する.大域的運動計画で計画されたサブゴール候補に対して,局所的運動計画では各瞬間毎に逆問題を解き,実現可能なサブゴールを探索する.最後に,提案する運動計画アルゴリズムの有用性を示すために,包み込み把握の運動計画に関するシミュレーション例を示す.
- ▲ ■ Gopinath-Budinのアルゴリズムを用いた連続時間モデルの直接同定法
東京電機大・神藤良康,岩瀬将美,畠山省四朗,古田勝久
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本論文では,状態変数フィルタを用いて入出力信号の微分信号を生成し,生成された微分信号のサンプルデータから離散時間モデルを経由することなく,連続時間モデルを直接的に同定するアルゴリズムを提案する.一般に,入出力の微分信号用いる同定法では,微分信号から構成されるデータ行列の行数が大きくなるにつれ,原信号と高次微分信号の振幅差が大きくなり,条件数が増加し,同定精度が劣化することが知られている.
そこで本論文では離散時間系に対するGopinath-Budinの最小実現法を連続時間系に拡張したアルゴリズムを与える.このアルゴリズムでは同定に用いる微分信号の次数を明示的に指定するため,必要以上に高次微分信号を使うことがない.さらに入出力信号のスケーリングを行うことによって原信号と高次微分信号の振幅差を小さくし,同定条件の改善をはかる.同時に状態フィルタにローパスフィルタの特性をもたせることにより高周波雑音の除去も行う.数値シミュレーションを通し,同じ条件下で既存の同定法と比較を行い,提案するアルゴリズムの有効性を検証する.
- ▲ ■ 非線形システムの制御のためのニューラルネットワーク予測モデル
九州大・古月敬之,早稲田大・平澤宏太郎
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ニューラルネットワーク,たとえば,シグモイドノード関数をもつ多層パーセプトロン(MLP)ネットワークは,universal
approximatorであり,どのような非線形マッピングでも学習することが可能であるため,最近,システム同定と制御などの分野で深い関心がもたれている.しかし,コントローラ設計のためのモデルとして使う場合には,ニューラルネットワークは使いやすい構造をしていない.そこで本論では,非線形システムの制御のための新たなニューラルネットワーク予測モデルを提案する.提案する予測モデルでは,従来のニューラルネットワークをベースにしたモデルと異なり,入力変数に関して線形という有用な特徴をもっているだけでなく,モデルパラメータが部分的に有用に解釈できる特徴をもっている.前者の特徴を利用した提案予測モデルに基づく制御系が簡単に構築できることを示し,後者の特徴を活用した二重ループをもつ階層型同定アルゴリズムを導入している.数値シミュレーションにより,提案手法の有効性を明らかにしている.
- ▲ ■ Multi-parent Recombination を用いる進化戦略
神戸大・松村嘉之,大倉和博,東大・上田完次
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Evolution Strategies(ES)にMulti-parent Recombination(MPR)を用いた従来研究では,Intermediate
Recombination(IR)を戦略パラメータによく用いるが,Discrete Recombination(DR)を戦略パラメータに用いた詳細な研究はほとんど行われてこなかった.そこで,本稿ではさまざまなESの形式のうち,CES,
FES, RESに関して,IRとDRを実数値変数と戦略パラメータの両方に用いる場合のMPRの性能を検証し,その進化ダイナミクスを解析した.実数値変数と戦略パラメータを1組とみなしてDRを用いるGlobal
Combined Discrete Recombination(GCDR)はCES, FES, RESのすべてのテスト関数で性能が向上したため,ESにはGCDRを用いることを推奨する.
- ▲ ■ ジョブショップスケジューリング問題に対する局所探索法における新しい近傍設定法の提案
京工大・飯間 等,三宮信夫
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制限された計算時間内に生産スケジューリング問題を解く場合には,局所探索法の適用が有効である.しかし,局所探索法の性能は近傍の定義,すなわち新しい解の生成方法に依存する.本論文では,メイクスパンを目的関数とするジョブショップスケジューリング問題に対して,解を作業順列で表現する局所探索法の新しい近傍設定法を提案する.この解表現では異なる作業順列が同一スケジュールに対応するという冗長性が存在し,スケジュールが同一である作業順列を何回も生成してしまうと探索の効率が悪くなる.そこで,本論文では同一スケジュールとなる作業順列の条件を示し,異なるスケジュールに対応する作業順列を生成する効率的な方法を提案する.また,作業順列を生成する2種類の方法を交互に用い,一方の方法で収束した場合に他方の方法に切替えることによって,解の改善を持続させる方法を提案する.提案手法をいくつかのベンチマーク問題に適用した結果を示し,その性能を考察する.
- ▲ ■ 一時故障と完全故障を考慮した安全監視システムの信頼性・安全性
岡山大・凌 元錦,京大・幸田武久, 岡山大・鈴木和彦,島田行恭
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安全監視システム/センセの故障には,ノイズによる一時故障および使用時間経過により機能が喪失した場合の完全故障があると考えられる.一時故障または完全故障の発生によりさまざまな損失をもたらすので無視することはできない.
安全監視システム/センサは作動可能な状態でも一時故障を発生する可能性があるため,たとえ完全故障を起こさなくても作動が要求されるプラントの異常時に必ずしも作動できるとは限らない.つまり,高信頼性が必ずしも安全を確保するというわけではない.
本論文はn個の同質なセンサからなるk-out-of-n: G安全監視システムを考察の対象とする.システムの一時故障と完全故障を考慮した誤報確率と欠報確率の式を導出した上で,誤報・欠報による期待損失を安全性の評価指標とする場合の信頼性と安全性との関係を解析的な式で示した.これにより,高信頼性が必ずしも安全を確保するというわけではないことを数理的な解析を行った.また,センサ信頼度の変化により誤報確率,欠報確率および期待損失がどのように変化するかを調べた.さらに,安全性を向上するために期待損失を最小にする最適なkを求める公式を導出し,システムの使用時間変化に対応した最適な動的論理構成について考察した.
- ▲ ■ 位相モデルによる信号機広域制御ダイナミクスの提案
立命館大・西川郁子,中澤重人,大学評価機構・喜多 一
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各交通信号機を位相振動子でモデル化し,振動子結合系の同期現象を用いた,信号機群のオフセット制御法を提案した.都市街路網サブエリア内に分散した自律的な信号機群が,局所的な交通情報を共有しつつ局所相互作用により協調制御を行う手法となっている.信号機現示の周期性に着目して信号機の状態を位相振動子でモデル化し,振動子対に対する位相差相互作用を導入すると,その安定定常解が,隣接信号機対に対するオフセット制御目標にうまく対応付けられることがわかる.その対応付けに基づき,信号機群のオフセット制御に,2次元格子空間上の振動子系を用いる.直交街路網における直進流のみを考慮した基本制御式を基盤に,交差点での右左折流,進路別現示をもつ信号機,任意の分岐数をもつ交差点への拡張が自然に行えることを示し,その一般化制御式を導いた.計算機実験では,まず相互作用型の違いを,その差異が最も顕著になる一方通行巡回路で比較した.つぎに,小規模な信号機群に対して複数の交通流量パターンを与え,提案法により得られるオフセット値を調べた後,ミクロな交通シミュレータ上でその有効性を検証した.平均旅行時間などの統計的評価指標により,他の典型的なオフセット設定と比較して,多くの場合に提案法がよい性能を示すことを確認した.
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