主催:計測自動制御学会 システム・情報部門 システム工学部会
共催:計測自動制御学会 システムインテグレーション部門 スワームロボティクス調査研究会
近年,単一ロボットでは問題解決が困難なタスクに対して,構造が比較的簡単で安価に構築可能な自律ロボットを多数用いて解決策を提示しようとする分野が急速に注目を浴びるようになってきている.この新学術領域の必須の条件として,大域的情報を収集して各ロボットに指示を出すようなスーパーエージェントが存在しないことがあげられる.結果として,スワームの群れ行動は各ロボットの局所的相互作用から必ず創発的に生成される.この枠組みのもと,有意義な群れ行動の生成方式の一つとして,動物行動学に基づき生態を模倣した制御方式が有効であると考えられる.本講演会では,生物学から3名,工学から1名の先生方をお迎えしてスワームに関してご講演いただき,この複雑で適応的なシステムの成り立ち,解析法,適用法などについて討論する.
期 日 |
2012年7月20日(金) 13:00 - 17:30 |
会 場 |
京都大学 吉田キャンパス 本部構内 物理系校舎北棟3階314室 |
交 通 |
〒606-8501 京都市左京区吉田本町 |
プログラム |
(1) 辻 和希 先生(琉球大学) 「アリ社会の結束をもたらす進化と自己組織化」 演者らはアリの社会をシステムとして捉え,その世代を超えた時間スケールで生じるダイナミクス(進化)と世代内で生じるダイナミクス(社会生理学)という2つの力学系について話題を提供する.近年,進化生態学ではハチ目の社会を支える不妊ワーカーの利他行動は,ワーカーが互いに利己的に振る舞うのを監視・抑制(ワーカーポリシング)することで成立しているのではと議論されている.Ohtsuki & Tsuji (2009)は動的ゲームモデルによりワーカーポリシングが進化する一般的条件を提示した.このモデルにより従来統一的な説明が困難だった女王単婚下でのワーカーポリシングの存在を説明する一方で,若い小さなコロニーでは強いポリシングが起こり成熟したコロニーでは弱まるとの新しい予測を導いた.トゲオオハリアリではこのコロニーサイズ依存の予測を強く支持する実験データが得られている.しかし,アリはコロニーサイズの変化をいかに知り行動を変えるのか.アリがコロニーサイズを「知っている」ことはアリ学者には周知の事実だが,その具体的仕組みはほとんど未解明である.そこでこの系を用いアリがコロニーサイズに依存し行動を切り替える至近メカニズムを自己組織化と自律分散という観点から解明を試みた.本研究では進化と社会生理学という2つの力学系の相互作用を議論する. 【文献】 Kikuchi, T., Nakagawa, T., Tsuji, K. (2008) Changes in relative importance of multiple social regulatory forces with colony size in the ant Diacamma sp. from Japan. Animal Behaviour 76(6):2069-2077. Ohtsuki, H., Tsuji, K. (2009) Adaptive reproduction schedule as a cause of worker policing in social Hymenoptera: a dynamic game analysis. American Naturalist 173(6):747-758. Tsuji, K., Kikuta, N., Kikuchi, T. (2011) Determination of the cost of worker reproduction via diminished lifespan in the ant Diacamma sp.. Evolution 66(5): 1322–1331. (2) 松島 俊也 先生(北海道大学) 「競争,衝動性,同調:ヒヨコから見る集団のダイナミクス」 動物は,なぜ群れるのか?この問題に対して,行動生態学は非常に見通しの良い定量的フレームを提供してきた.採餌経済にシナジー効果があると,個体の戦術はproducers(生産者)とscroungers(掠奪者)に分かれて均衡する.この中で個体が自己の収益を最大化すると,その行為は個体の最適化から見掛け上の逸脱を示す.今回はヒヨコ(ニワトリのヒナ)を用いた実験室内の行動の解析をしめしながら,資源競合下における衝動性と同調の制御機構を探る試みを紹介する. (3) 森山 徹 先生(信州大学) 「カニの放浪集団と移動体に憑依したヒトとの相互作用実験の提案」 亜熱帯地方の干潟に生息するミナミコメツキガニは,数千から成る放浪集団を形成する.この集団中に小型移動体を投入すると,カニと人工物から成る新たな集団が生まれるだろうか.実験の特徴は,実験者が,小型移動体に搭載される無線カメラから送られる映像だけを頼りに移動体を遠隔操作する点である.講演では,これまでの実験で得られた放浪集団の特徴と,移動体投入実験の計画を紹介する. (4) 滑川 徹 先生(慶應義塾大学) 「マルチエージェントシステムにおけるダイナミクスと合意協調制御」 制御理論,通信理論,計算科学の進展が,我々の身の回りの動的システムを多機能化,高機能化させ,その結果益々対象システムは大規模複雑化している.大規模複雑系には,ネットワーク構造が内在し,複数の動的エージェントがこのネットワークを介して相互作用し合う.このようなシステムはマルチエージェントシステムと呼ばれ,その応用は,ビークルフォーメーション,協調ロボット制御,センサネットワーク,スマートグリッドなど多岐に渡る.一方で複雑系・力学系やシステム生物学の解析ツールとしても研究が進んでいる.近年,システム制御理論の分野においてマルチエージェントシステムに関する研究が活発に行なわれており,本稿では特にマルチエージェントシステムにおけるダイナミクスと合意協調制御則,その制御理論的な性質を解説する.また応用展開に関して,国内外の研究の趨勢をご紹介する. |
参加申込期限 |
2012年7月17日(火) (当日参加受付も可能) |
参 加 費 |
無料 |
申込方法 |
計測自動制御学会のCGI申込ページで受け付けます. |
開催案内 |
こちら (PDF形式)からご覧下さい。 |
問合せ先 |
千葉大学 大学院工学研究科 人工システム科学専攻 岡本 卓 |
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