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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.49 No.12(2013年12月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

特集 次世代センシング最前線
[論  文]

[論  文]


[論  文]

■ 長遅延応答型超音波トランスポンダー

岐阜県情報技術研究所/東京農工大学・田畑 克彦,東京農工大学・岩井 俊昭,
岐阜県情報技術研究所・久冨 茂樹,遠藤 善道,産業技術総合研究所・西田 佳史

 無人搬送車(AGV)への適用を想定し,屋内外によらず,容易に経路変更が可能なナビゲーションシステムを実現する位置計測システムを開発している.本システムは,経路上に設置されたトランスポンダー型の超音波ランドマーカーと無人搬送車に搭載されたソナーシステムとの間でハンドシェイク通信を行いながら相対位置を計測して,経路に沿って走行するシステムである.特徴としては,信号対雑音比を改善するために,大気中ではあまり用いられていないフェーズドアレイ方式のセンサをソナーシステムに搭載し,ランドマーカーにIDを割り当て,該当するIDを受信した時のみ応答信号を送信するハンドシェイク通信することにより,他マーカーとの混信による誤作動を回避していることである.これまでの研究によりソナーシステムのフェーズドアレイで合成された強力な超音波信号の多重反射波が,ランドマーカーからの応答信号と重畳され,誤認識や位置計測精度の低下などを発生しシステムの性能劣化を招くことがわかってきた.そこで,この性能劣化を抑制するために,本システムの特徴を利用し,ランドマーカーがIDを受信し,ソナーシステムからの探索信号が十分減衰した時間経過後に,ランドマーカーが応答信号を送信することで,多重反射波による性能低下を解決した.


■ 3軸加速度計とピエゾ荷重センサを用いたベッドモニタリングシステムに関する研究

秋田県立大学・下井 信浩,間所 洋和

 今日,高齢者の人口増加は介護の社会的な問題とされている.この様な問題を解決するために,介護者が求めている工学技術について提案する.このようなサポートの重要例として,高齢の患者モニタリングシステムが本論文には提案されている.このシステムについては,高齢者や患者がベッドで寝ている状況から離床や離床予測を自動的に判定して通報する事が可能である.


■ Fiber Bragg Grating センサによる脈拍数,呼吸数計測

信州大学・宮内 祐樹,石澤 広明, 新村 正明

 現在,在宅医療等の観点から健康状態を常時モニタするためもバイタルサインセンサの需要が高まっている.その測定は非侵襲で無拘束であることが望まれている.本研究では私たちはFBG(Fiber Bragg Grating)センサを使用し,上記課題を解決するバイタルサインセンサの開発を行なった.私たちはFBGセンサを皮膚表面に貼り付けることのひずみ波形を検出した.私たちは得られた脈波形から脈拍数と呼吸数を算出し,FBGセンサによるバイタルサイン計測原理の妥当性を確認した.


■ 無発声母音認識のための訓練システム

佐賀大学・福本 尚生,倉冨 勲,古川 達也,
千葉工業大学・相知 政司,佐賀大学・伊藤 秀昭,和久屋 寛

 本論文では,表面筋電信号を用いた無発声母音認識のための訓練システムを作成した.まず,複数の熟練被験者から母音の無発声発話時の筋電信号を取得し,自己組織化マップで解析を行い,各母音における筋活動の標準パターンを作成した.提案したシステムは,被験者の筋活動パターンと標準パターンとの違いを視覚的に確認することができる.初心者である被験者16名で実験を行い,認識結果だけを文字と音声で確認することができる旧システムと,提案システムとで,試行回数と認識率の関係を示し,提案システムの有用性を確認した.


■ PID制御則を有する1リンク倒立振り子モデルを利用した前方傾斜動作の立位姿勢制御特性評価

弘前大学・後藤 博哉,佐川 貢一

 直立姿勢から自律的傾斜運動を行ったときの姿勢制御の特性を調査し,立位安定性の評価法を提案する.足関節トルクが時変PID制御される1リンク倒立振り子として身体を近似し,足関節角度を利用したPID制御則の時変パラメータとして比例ゲイン,微分ゲイン,積分ゲインを推定した.被験者は,股関節をできるだけ曲げないようにして,直立,前方最大傾斜,直立姿勢へ復帰という動作を実施させた.また,開眼状態での実験の他に,視覚障害と筋力低下を模擬するため,閉眼状態と,片足にのみトルクが作用する装置を利用した場合について,傾斜実験を行った.矢状面内の傾斜角度は,光学式動作解析装置を利用して測定し,固定トレース法を利用して制御則パラメータを推定した.その理由は,一般的な逐次最小自乗法は,本来推定には不要な,立位静止時の微小な振動の効果も反映する傾向があるためである.11名の健常若年者を対象とした実験の結果,立位状態からの傾斜はシステムを故意に不安定な状態とすることによって実現されており,筋力低下と視覚障害の影響はPゲインおよびDゲインに反映されることが確認された。また,推定したパラメータを利用することで,異なる3つの立位条件を高精度で推定することが可能であることが確認された.


■ 重複情報を用いた電力ネットワークの分散階層制御

慶應義塾大学・末廣 友晴,増井 健治,滑川 徹

 本稿では電力ネットワークに対し, 重複情報を用いた分散階層制御法を提案する. この手法は先の手法では考慮していなかったサブシステムの関係性や通信途絶などの異常を考え, よりスマートグリッドへの適用を重点においたものである. 分散階層制御器は先の手法と似たやり方で, 3つの段階を経て設計される. まず, 状態や入力を含むサブシステムが重複する階層システムを構築する. 次に, 階層システムと元のシステムとの関係性を確認する. 最後に, 階層システムに対する分散制御器を設計し, 元のシステムに対応するように制御器を縮小する. 分散型電源を導入した電力ネットワークの周波数制御問題に対し提案手法を適用し, 安定化できることを示す.また, 従来の分散制御則との比較を行い, 提案手法の有効性を示す.


■ 状態故障評価行列を用いた電力ネットワークにおけるサイバー攻撃・故障の診断

慶應義塾大学・藤田 佑樹,大川 佳寛,滑川 徹

 サイバー攻撃やシステム故障の検出・診断を目的に,本研究では故障評価行列という,システムの異常具合を表す一種の指標を用いた電力システムの異常検出・診断手法を提案する.この故障評価行列は,電力システムにカルマンフィルタを用いて得た状態推定値や誤差共分散によって構築されており,システムに異常が与えられると即座にその異常の大きさを自身の対角要素に反映する性質を持つ.この故障評価行列はシステムの状態・出力の双方対してそれぞれ個別に与えられているため,それぞれの異常を独立的に検出・診断する事が可能である.そこで本手法ではこの故障評価行列の対角和に対して閾値を設け,閾値内ならば正常,そうでなければ異常であると診断する.この閾値は,出力故障評価行列では定数としているが,状態故障評価行列では診断遅延時間を短縮するために動的に決定している.最後に,提案法の有効性を数値シミュレーションにて検証する.


■ 非周期的不随意運動を対象とした誤描画防止制御システムの開発

三重大学・中尾 智幸,坂本 良太,矢野 賢一,
岐阜県生活技術研究所・窪田 直樹,宮川 成門

 本研究では,不随意運動および描画動作の変化に応じてリアルタイムに減衰度を変化させる適応不随意挙動減衰フィルタと,抵抗力コントローラによる誤描画防止制御を統合した描画支援システムを開発し,不随意運動の解析結果をもとに緊張性アテトーゼ型脳性麻痺者に適用した.開発したシステムの支援により,誤描画の増加に伴い増加するアンドゥ数の低減を実現し,支援なしでは絵を描くことが困難な使用者が,非周期的で複雑な不随意運動を伴っていても使用者自身の感覚で画材を駆使しながら曲線や点の表現が複合した作品を描くことを実現した.


■ 結合線形システムのディスクリプタシステム表現および状態空間表現による数式モデルの導出

九州工業大学・古賀 雅伸,江角 貴宏,福岡工業大学・矢野 健太郎

 本論文では,ソフトウェアとして容易に実現することができる結合線形システムの数式モデルを得る手法を提案する.本手法を用いれば,システムが代数ループを含まない場合,状態空間表現による数式モデルが得られる.また,システムが代数ループを含む場合,代数ループは自己ループに帰着できることが示される.そして,自己ループの重みがある条件を満たせば,自己ループは削除でき,状態空間表現による数式モデルが得られる.そうでなければ,ディスクリプタシステム表現による数式モデルが得られる.制御系のモデリング・シミュレーションツールJamox(Java Agile MOdelingtoolfor Control Systems) 上で提案手法を用い結合線形システムの数式モデルを得る機能を実装した.


■ 代数的特徴付けに基づく大規模動的システムの階層化最適制御

北海道大学・椿野 大輔,東京大学・吉岡 大輝, 原 辰次

 多くの大規模システムは,様々なレベルからなる階層的なネットワークを介した複数のサブシステムの相互結合系となっている.
 本論文では,そのようなシステムを効率的に制御するための階層化 LQ 最適制御について,代数的概念を用いて考察する.まず,各階層の結合構造をモデル化する行列の集合として,半群をなすものを用いることを提案する.その後,それらの集合としての Kronecker 積と線形結合によって,階層構造を特徴付けるベクトル空間を定義し,それが代数をなすことを証明する.これより,Riccati 方程式の安定化解に所望の階層構造をもたせるための条件が導出され,階層的な最適制御器を設計することができる.また,半群で特徴づけられる結合構造の例を示すことで,これまでのいくつかの結果に本論文の枠組が統一的な解釈を与えることができることを示す.さらに数値例により,実際に階層的な最適制御器が得られることも確認する.最後に,階層構造を表現する代数の元のブロック分解を示し,安定化解の計算法に関する部分的な結果についても触れる.


■ 単一拡散因子による反応拡散系のTuring不安定性解析

東京大学・宮廻 裕樹,堀 豊,原 辰次

 近年,構成生物学の分野では単一の拡散因子による反応拡散系が注目されている.本稿では,単一拡散因子による反応拡散系が生じ得る時空間パターンを制御理論的観点から分類し,Turing不安定のための解析的条件を導く.はじめに,単一拡散因子による反応拡散系が定数フィードバックを持つSISOシステムに分解されることを示す.次に,この反応拡散系のTuring不安定性解析が,根軌跡法による安定性解析に帰着されることを述べた上で,Turingパターンを分類し,そのパターン形成のための解析的条件を導く.その結果,単一拡散因子による反応拡散系において,物理的に実現可能なTuringパターンを生成するには,少なくとも3つの化学種が必要であることを示す.最後に,拡張Gray-Scottモデルを用いて,理論的結果の妥当性を確認する.


■ 歩行運動の平面法則が成立する座標系について

岡山県立大学・山崎 大河, 仲達 俊介, 忻 欣

 ヒトの定常歩行運動中の大腿,下腿,足部が鉛直軸に対してなす角度(仰角)を計測し,その時系列データを3 次元空間にプロットすると,データはある平面にほぼのることが知られている(平面法則).この仰角は歩行中の下肢の協調構造を記述する座標系として重要と考えられている.しかし,下肢の姿勢を記述する座標系は,仰角のほかにも無数に存在する.同じ情報をもつデータであっても,表現する座標系が異なれば,平面性の高さも変化するはずである.本研究では,平面法則の成立に対して,座標系の取り方が与える影響を明らかにする.そのため,様々な速度におけるトレッドミル上での定常歩行において大腿の仰角,膝関節角,足関節角を計測し,これを {1,0,-1} を要素とする3次元の正則な線形写像によって様々な座標系に移し,それぞれの座標系において平面性の高さを評価する.解析の結果,座標系の取り方によって平面性の高さは大きく変化すること,仰角よりも高い平面性を生む座標系も低い平面性を生む座標系も数多く存在することを示す.さらに,座標変換が平面性の高さを変化させる数理的な仕組みを明らかにする.仰角において平面法則が成立することは,必ずしも仰角のもつ情報の重要性を意味しないことを示す.


■ 遷移沸騰領域における鋼板冷却制御系の設計

新日鐵住金・中川 繁政,奈良先端科学技術大学院大学・平田 健太郎,
福岡大学・畑田 和良,奈良先端科学技術大学院大学・杉本 謙二

 熱延高張力鋼板の製造では,仕上圧延後の鋼板冷却に際し,冷却後の目標温度が遷移沸騰領域に設定されることが多い.しかしながら、遷移沸騰領域では,水冷熱伝達率変化が大きく変化し、非線形性が強いため,遷移沸騰領域における鋼板冷却制御が難しくなる.先行研究では、冷却工程のプロセスゲインが鋼板温度に依存するという前提のもとで,遷移沸騰領域における鋼板冷却の制御系解析が行われているが、制御器を比例積分制御器に限定し、安定化限界ゲインについての考察にとどまっていた. 
 そこで,本論文では,遷移沸騰領域における鋼板冷却に関し,非線形状態空間モデルを基に,二乗和多項式を用いた制御系設計を直接行なうことを目的とする.制御器の構成を簡易化するため,まず線形近似モデルを前提にした設計法で定係数の制御ゲインを決定した後に,多項式成分の追加によって状態量に応じて制御ゲインが変化する非線形ゲイン制御器を再設計するアプローチを採る.


■ 不確かな情報環境におけるLQエネルギー需要ネットワークのVCGメカニズムによる統合

早稲田大学・岡島 佑介,長岡技術科学大学院大学・平田 研二,早稲田大学・内田 健康

 近年,電力自由化の進展とともに将来の新しいエネルギー需給システムの構築が議論されている.本研究は需要者の利己的・戦略的な振る舞いに焦点を絞り,需要者の具体的なモデルを用いてメカニズムデザインによるアプローチを展開する.具体的には系統に接続した一つの公益事業体とサービスを受ける各需要者からなるネットワークを最適化することを考える.各需要者は利己的かつ戦略的にふるまうと仮定し,各自の利益を最大化するような消費パターンを計算するものとする.需要者と公益事業体が情報交換を行い,公益事業体はその情報を用いて決定した価格を用いて各需要者の消費を調整し,社会全体の利益を確保する.各需要者は決定された価格をもとに各自の利益を最大化する需要パターンを計算する.競争的な環境下を前提とするため,通信の過程で起こりうる戦略的な虚偽の情報の交換を防ぐために,公益事業体はメカニズムデザインの考え方を適用して移転コストを設計することによってネットワーク全体の利益を確保する.特にエネルギー使用により得られる効用と,費やすコストが二次式で評価できる場合について考え,解析的な解を与える.需要者の具体的なモデルに対して数値例を用いたシミュレーションを行い,手法の有効性を示す.


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