論文集抄録
〈Vol.48 No.7(2012年7月)〉
論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)
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タイトル一覧
特集 第16回ロボテウィクスシンポジア
[論 文]
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■ 把持面の柔軟性を考慮したパラレルグリッパの把持計画
産業技術総合研究所・原田研介,九州大学・辻 徳生,
産業技術総合研究所・永田和之,山野辺 夏樹,丸山健一,中村 晃,,河井良浩
本論文ではアームの先端にパラレルグリッパを搭載したロボットシステムによる把持計画の手法を提案する.種々の形状をした対象物をロバストに把持するために,指表面にフレキシブルシートを貼ることを考える.対象物のポリゴンモデルにおいて三角形面の集合を求めることで,指表面の柔軟性を考慮に入れた把持計画が可能になる.また,三角形面の集合に対して把持計画で用いる種々のパラメータを埋め込むことで把持計画が高速に実行できる.提案する手法の有効性を数値例や実験により示す.
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■ 2台の一輪把持型移動ロボットを用いた車両の操り
東北大学・米澤直晃,小菅一弘,平田泰久,菅原雄介,日本大学・遠藤 央,
IHI運搬機械・神林 隆,鈴木公基,村上和則,中村健一,中西正樹
本論文では2台の一輪把持型移動ロボットを用いた駆動輪把持型車両搬送システムを提案する.本システムは前輪駆動車両に対しては前輪のみを持ち上げることにより車両搬送を行うもので,全ての車輪を持ち上げる従来の車両搬送システムiCARTよりもシステムを小型化できる点で優れる.しかしながら本システムにおいては車両の従動輪が地面に接触するため,車両は非ホロノミックな運動拘束を受ける.従ってシステムはこの拘束に従って運動する必要がある.
そこで本論文では運動拘束を受ける車両を搬送するためのシステムの運動制御手法と運動制御のために必要なホイールベースの推定アルゴリズムを提案する.運動制御手法はシステムを一種の3輪車としてモデル化することで,拘束条件を満たす運動を生成するものである.ホイールベースの推定アルゴリズムは,インピーダンス制御によりホイールベースが未知の場合でもシステムが運動拘束に従って運動できるようにし,そのときの実際の運動からホイールベースを推定するものである.また推定した値を運動制御に反映することで車両を目的地へ搬送できるようにする.そしてこれらの手法により,提案するシステムがホイールベースを推定し,車両を目的地へ搬送できることを確認する実験を行った.
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■ 自律遠隔システムにおける搭載ミッション管理機構での計画・スケジューリング機能実装について
宇宙航空研究開発機構・福島洋介,三田 信
宇宙や深海での調査といった極限環境での遠隔システムの運用では,通信容量・通信速度・通信機会の制約から自律型の運用の実現が望まれてきたが,これら分野では実際に自律技術が普通に適用されているわけではない.本研究では,その理由の一つとして,個々の技術を取り込む遠隔システムの搭載ソフトウエアがもつ構造がネックであり,組み込みシステムでの計画・スケジューリングの取り扱いが難しく,運用に適した自律化技術を柔軟に切り替えて利用できないことが理由だという仮説をとる.そこで,本論文では,自律遠隔システムに必要な「計画の変更」および「状態監視」を実装するためのミッション管理ソフトウエアの構造について提案し,計画変更のアルゴリズムとして実験計画法を検討し,そららを実験装置に実装して具体的な結果を挙げ,本論文での提案の妥当性を示す.
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■ 複数の一輪把持型ロボットによる車両の協調搬送システム iCART II
東北大学・柏崎耕志,米澤直晃,小菅 一弘,菅原雄介,平田泰久,
日本大学・遠藤 央,IHI運搬機械・神林 隆,篠塚博之,鈴木公基,小野右季
近年普及している機械式駐車場は,車両を取り回す空間が狭く,利用者の高い運転技術を要するため,初心者や高齢者のドライバーにとって利用が困難な場合が予想できる.そこで本研究では,ロボットを用いて機械式駐車場での入出庫を自動化することを目的とする.著者らはこれまでに,2台の移動ロボットが車両の左右の2輪ずつを把持して搬送するシステムiCARTを提案してきたが,そのロボットの構造上,小型化が容易ではなかった.
そこで本稿では,新たに“a-robot-for-a-wheel”コンセプトを提案し,それに基づくより小型な一輪把持型ロボットMRWheelと複数台のMRWheelを用いた車両搬送システムiCART
IIを提案する.まず,開発したMRWheelによる車輪の持ち上げ手法を説明する.次に,従来のリーダ・フォロワ型の分散協調制御手法を拡張して,各フォロワが他のロボットから車両を介して受ける力情報に基づき自身の運動誤差を推定するアルゴリズムを提案する.さらに,各ロボットに作用する力情報から内力のみを算出するためのモデルベースの外力補償手法を解説する.最後に実験により,提案する車輪の持ち上げ手法と運動誤差推定アルゴリズムの有効性を示す.
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■ GNSSマルチパス波判別を複合した精密単独測位による屋外移動ロボットの位置推定
早稲田大学・鈴木太郎,北村光教,天野嘉春,橋詰 匠
本論文では,都市環境における車両,移動ロボットの高精度位置推定を目的とし,GNSS(Global
Positioning Satellite System)マルチパス波判別を複合した精密単独測位(PPP)による位置推定手法を提案する.PPPはGNSSを用いた通常の精密測位手法である相対測位法と異なり,基準点の設置が不必要であり簡便に精度の高い衛星測位が可能な技術である.さらに,赤外全周映像(IR-ODV)を用いて,画像から大きなマルチパス誤差を含む不可視衛星を判別することで,可視衛星のみよるPPPを行う手法の構築を行った.これにより,GNSS受信機で除去することが困難なマルチパスの影響を除外することで,高精度かつ信頼性の高い位置推定を実現することを目的とする.建物が並ぶ実環境において,提案する位置推定手法の精度評価試験を行った.この結果,マルチパスによる測位誤差を軽減可能なことが確かめられ,その位置推定精度はRMS誤差で0.36mという結果となった.以上により,マルチパス判別を複合したPPPによる位置推定手法により,単独の受信機での高精度な位置推定を実現し,提案手法の有効性を明らかにした.
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■ 動作コーチングロボットにおけるデフォルメ動作と注意的言語表現のスカラーパラメータによる統合手法
総合研究大学院大学・奥野敬丞,国立情報学研究所/総合研究大学院大学・稲邑哲也
我々は,知的で効率的に動作をコーチするロボットシステムの実現という例を通して,デフォルメ動作と注意的言語表現の統合手法を前回の研究で提案した.その手法では,位相空間上のスカラーパラメータを用いて統合のコントロールを実現した.しかしながら,注意的言語表現に関する手法がプリミティブであった事もあり,その言語表現が動作学習の向上因子であるかを結論する事が出来なかった.本研究では,被験者によって注意的言語表現に対する感度が異なる事が要因との仮説をたてた.その仮説を検証する為に,模倣ターゲット動作と動作学習者の模倣動作の距離というパラメータに応じて,予め用意した3
つの注意的言語表現から動作コーチング時に使用する表現を選ぶという手法を新たに提案した.提案した手法の有用性を評価し,仮説を検証する為に,提案手法を使用したロボットコーチングシステムを用いて,テニス初心者にフォアハンドスイングをコーチする実験を行った.その結果,前回の研究の結果と今回の研究の結果の比較をもって,本稿の提案手法による注意的言語表現の使用が,より動作学習の向上に貢献している事を確認できた.
しかし,本研究で提案した注意的言語表現をコントロールする手法には有用性はあるが,明確に動作コーチングに貢献してるとは結論する事は出来なかった.
また,コーチングに使用する注意的言語表現を決定する評価基準に使用するパラメータの値の閾値の変化が,動作学習の結果に影響を及ぼす可能性がある事を実験結果から読み取とれる.そこから,コーチングに使用する注意的言語表現を決定する評価基準の閾値は,被験者毎に最適化される必要があるとの仮説を導く事ができる.選択肢が多く特定が困難な為に,注意的言語表現を選択する評価基準の閾値を,本稿では予め与えた.
しかし,今度は逆に,人間がロボットにデフォルメ動作と注意的言語表現を用いて動作コーチングする実験をする事で,人がどのようにデフォルメ動作と注意的言語表現を統合するかの知見をえる事ができると考える.そして,その結果をロボットコーチングシステムにフィードバックしていく予定である.
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■ 伸張反射による指伸展促通機能を有する片麻痺指機能回復訓練装置の開発
鹿児島大学・余 永,岩下説志,川平和美,,林 良太
片麻痺の機能回復は脳の可塑性―損傷を受けた部分の役割をほかの部位が代行する働き―を発現し得る効果的なリハビリテーション法として“促通反復療法”(川平法)では,訓練において人間の伸張反射を誘発し,自動的な随意運動を引き起こすことで促通効果を高め患者の意図した運動を実現している.すなわち,従来のリハビリテーションに見られる他動運動ではなく,自動的に随意運動を行わせ,脳の可塑性の発現を促すことに成功している.また,脳の可塑性の発現は使用頻度に依存することから訓練を反復することで神経路を強化/再建させ機能を回復させる.
本研究では,は医師・療法士の時間的・肉体的負担を軽減するために,川平法のように繊細かつ複雑な力と運動を操作して随意運動を引き起こしながら機能回復を図るリハビリテーション―伸張反射による指伸展促通機能を有するリハビリテーション―を実現できる装置の開発を目指している.そこで,パラレルリンク機構を用いた高機能な機構システム,高感度な力覚センシングシステムや,訓練中の指自動伸展を促すための抵抗付随型協動制御という制御手法を提案した.そして,訓練試験では繊細な力・運動制御が行え,医師・療法士による訓練とほぼ同様の訓練を再現していることとその有効性が実証された.
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■ 非線形最適制御による倒立振子の振り上げ安定化
名古屋大学・藤本 理唯宇,坂本 登
本報告では,単一のフィードバック則による倒立振子の振り上げ安定化を紹介する.この問題は入力飽和を含むシステムに対する最適制御問題と定式化され,近年提案した安定多様体法により解を求める.この手法では安定化領域を振り上げの初期値まで拡大する問題と置き換えられ,何回かの繰り返し計算の後最適フィードバック則が求められる.また,入力制約を変化させると異なる閉ループ解軌道が導かれることがわかり,入力飽和を陽に考慮することで現実的な最適コントローラが得られている.実験によりその有効性が確認でき,安定多様体法が実システムに対して有用であることが示された.
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■ ピーナッツ形状小惑星のラグランジュポイントの安定性に関する陰的制御的考察
京都大学・坂東麻衣,大阪大学・大須賀公一,福井工業大学・藤井隆雄,,京都大学・山川 宏
2つの重心により近似できるピーナッツ型の形状をもつ小惑星近傍の物体の運動を,陰的制御の観点から解析した.その結果,陰的制御単独では,通常の意味での最適性をもたないこと,評価関数にクロス積の項を含む最適制御問題の解として評価関数が一意に決まるという興味深い結論が得られた.力学現象である安定性の表出を,あえて制御則が内在しているからだという捉え方をすることで,天体の運動に対してこれまでとは違った思考が生まれ,新たな展開が期待できると考えられる.
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■ 大規模テプリッツ型方程式に対する定常反復法の制御理論的考察と磁場解析への応用
東京工業大学・織田知仁,加嶋健司,井村順一,住友重機械工業・宮崎修司,森田 洋
近年,磁場解析などの様々な工学的応用をもつことから,テプリッツ行列で構成される大規模方程式(線形・非線形)の解をより速く求めることが必要とされている.本研究では,この大規模方程式に対する反復解法を制御理論の観点から考察する.まず,テプリッツ型線形方程式に対する反復解法を扱い,テプリッツ行列が空間不変構造をもつことから固有値の近似値が得られることに着目し,定常反復法の収束を高速化する.その上で,テプリッツ型非線形方程式に対する定常型の反復解法を提案する.この非線形方程式においてある種の有界性を仮定し,スモールゲイン定理やルーリエ系の安定性解析によって,提案手法の安定性を議論する.これより,提案手法の大域的な収束性が保証される.これらの提案手法を,磁場解析の事例に対して適用し,線形の場合は収束速度の評価を,非線形の場合は安定性の評価を行う.
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