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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.48 No.6(2012年6月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]

[論  文]


[論  文]

■ パラメータ推定誤差存在下でのロボットの位置と力のフィードバック軌道追従制御解析

奈良高専電子制御工学科・櫟 弘明,立命館大学・川村 貞夫

 本論文では,フィードバック制御をベースとして位置と力の目標軌道に高精度で追従できることを理論的に明らかにする.提案するフィードバック制御は,誤差を含んでいることを前提としたロボットの推定パラメータと拘束面の幾何学的な推定パラメータを用いて制御則を作る.この場合,位置誤差が力制御方向に,力誤差が位置制御方向にそれぞれ干渉するが,フィードバック制御のゲインを大きくするとパラメータ誤差がある場合においても,位置と力の追従誤差を任意に小さくできることを理論的に解析する.


■ マルチエージェントシステムに対するすべての勾配型分散制御器のパラメータ表現

京都大学・桜間 一徳,東 俊一,杉江 俊治

 本論文では,マルチエージェントシステムに対して,勾配フロー法によるすべての分散制御器のパラメータ表現を与える.提案するパラメータ表現を用いると,制御器設計における最初の手順が分散的な制御器のクラスを与えることになる.あとは,自由度として残されたパラメータをタスクに応じて決めることで,所望の分散制御器を設計することができる.これによって,従来法における目的関数の勾配の分散性を確保するための試行錯誤が必要なくなる.本パラメータ表現はあらゆるタスクに対して有効であるため,
マルチエージェントシステムの分散制御器の設計を支援する強力なツールとなる.


■ 環状遺伝子制御ネットワークのロバスト安定性解析

東京大学・大澤 周平,堀 豊,原 辰次

 本稿では,環状遺伝子制御ネットワークシステムのロバスト安定性解析を考える.具体的には,各遺伝子のダイナミクスの相違や不確かさをロバスト制御理論の枠組みで定式化し,不均一な遺伝子で構成される遺伝子制御ネットワークにおいて,各遺伝子のダイナミクスのばらつきが,システムのロバスト性に与える影響を解析する.まず,先行研究によって示された大規模システムに対する図的なロバスト安定条件を適用することで,遺伝子制御ネットワークの図的なロバスト安定条件を示す.その後,その結果に基づき,パラメータに関して解析的なロバスト安定条件を導出する.解析的なロバスト安定条件は,任意の遺伝子数を持つシステムに適用可能なので,大規模な環状遺伝子制御ネットワークの解析も容易であるという特長がある.これらの特長を生かし,本稿では,生化学パラメータとシステムのロバスト安定性との定性的関係を考察し,数値例を用いて結果の確認を行う.


[ショート・ペーパー]

■ 通信容量制約を満足する動的量子化器の出力可到達領域に基づいた性能改善

熊本大学・岡島 寛,電気通信大学・澤田 賢治,熊本大学・海部 静,松永 信智

 通信路を介する制御系においては,単位時間当たりに送信可能な情報量が限られているため,量子化による信号圧縮が行われる.効果的な量子化手法としてフィードバック型の動的量子化器が知られている.先行研究においては,通信容量を陽に満足する量子化幅設計法をフィードバック型動的量子化器に対して提案している.通信容量制約を満足するためには動的量子化器のダイナミクスに起因する応答の最大最小値を見積もる必要があり,先行研究の手法では,状態可到達集合を楕円体で近似した上でLMIで量子化幅を求めている.そのため,楕円体近似による保守性が存在した.これに対し本研究では,出力可到達集合を直接的に求めることで保守性を任意に小さくする方法を示し,数値例にて有効性を検証する.


[論  文]

■ 消耗部材劣化の影響を予測する半導体CMPプロセス制御

日立製作所・玉置 研二,北海道大学・金子 俊一

 本論文では,半導体CMP(化学的機械的研磨)プロセス制御のための仮想計測モデルの構築手法について述べる.仮想計測モデルは,研磨装置関連データに基づいて可能な限り迅速に研磨レートを予測し,その結果を即座にAPC(高度プロセス制御)に適用する.提案する手法は,MCMC法(マルコフ連鎖モンテカルロ法)を採用し,研磨装置消耗部材の各個体に対応した多くのパラメータを含む解析モデルを小量の履歴データから構築する.予測モデルはマルチレベルモデルの形態を採用し,2種類の消耗部材であるドレッサとパッドの相互干渉をモデル化する。例えば,先行テスト研磨結果の活用,あるいはオンラインでのモデルパラメータの学習,あるいは外乱としての計測遅延の影響など,実際の製造ラインで想定される運用を考慮に入れてマルチレベル予測モデルを同定するために,提案手法は再びMCMC法を採用する。実際の製造ラインから収集したデータに基づく研磨シミュレーション実験結果により,提案する手法が計測遅延に対して低感度で,かつ研磨量制御に対して高精度であることを示す。


■ リレーションシップバンキングの有効性に関する研究

慶應義塾大学・錦戸幸仁,高橋大志

 国内における地域経済の停滞や地域間格差の拡大を背景に,地域経済の再生や活性化が重要な政策課題となっており,この地域金融の円滑化を図るための有効な手段になり得るものとして,リレーションシップバンキングが重要視されている.本研究では,リレーションシップバンキングの有効性および地域経済へ与える影響について,エージェントベースモデルにより分析を行った.分析の結果,(1) リレーションシップバンキングは,資金の貸手と借手の間に介在する情報の非対称性を緩和させ貸手の不良債権比率を低下させうること,(2)借手である企業の規模が大きいほど資金供給の面で有効となることを見出した.また,金融機関間の競争に焦点を当てた分析も行い,(3) 貸手の競争激化により市場に非効率性をもたらす可能性があることも見出した.これらの結果は,リレーションシップバンキングの特徴および問題点を示したものであり,実務的および学術的にも興味深い結果を示すものである.また,本分析は,地域金融経済の分析におけるエージェントベースモデルの有効性を示すものであり,その意味においても意義の大きい研究である.


■ 群れの中のゆらぎ構造と運動的機能

神戸大学・新里 高行

 我々の提案するMTI(metric-topological interaction)モデルは,従来のモデルと最近の観測結果に基づきつつ,動物の認知的側面も考慮したハイブリッド型のモデルである.本モデルによって,Scale-Free相関などの観測結果との融合性が主張できることが確認された.Scale-Free相関とは,群れの中に置いて,ゆらぎはランダムに与えられるものではなく,相関のつよい領域を有し,その領域のサイズが群れの大きさに比例するいったものである.さらに,モデルのパラメーターを調整することで,群れがゆらぎを溜め込んだり,吐き出したりしながら全体を運動させるといった,ゆらぎの運動的機能を主張する.このような,新しいゆらぎの解釈は,これまでされてきた臨界現象(それは物理的なアナロジーから誘導された)から,また一つ踏み込んだ解釈として与えられるであろう.


■ マルチモーダル情報統合によるインテリジェント人追跡システム

ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン・中村 圭佑,中臺 一博,
浅野 太,中島 弘史,Ince Gokhan

 人の定位や追跡はロボティクスにおいて不可欠な技術であり,特に音声を対象とした定位は音声認識にも関わる重要な課題であり,盛んに研究されてきた.これまでに多くの音源定位手法が提案されているが,実環境での応用には主に,
1) 目的音より大きなパワーを持つ雑音下で性能が劣化すること,
2) 特定の目的音のみを定位するといったインテリジェントな機能を実現していないこと,
3) 実環境下における追跡のロバスト性が低いこと,
の3つの課題がある.
 本稿ではこれらの課題を解決するため,音源を選択的に追跡する機能を持つマルチモーダル情報統合によるインテリジェント人追跡システムを提案する.
 第一の課題に対し,一般化固有値展開を用いたmultiple signal classificationを提案する.
本手法は大きなパワーの雑音抑圧や,各音源を選択的に定位できる機能を持つ.
 第二の課題に対し,階層的Gaussian Mixture Model(GMM)に基づく音源同定を提案し,
各音源のID情報と音源定位を統合することで,音源の種類に応じて目的音のみに傾聴できるシステムを構築する.提案手法はGMMを階層的に持つことで,探索の粒度を制御でき,雑音や未知音を自然に考慮できる利点を持つ.
 第三の課題に対し,パーティクルフィルタによって視聴覚の定位結果を統合し,系のロバスト性を拡充する.最後に提案手法を実時間実装し,
1) 提案した音源定位によって定位の雑音ロバスト性が向上すること,
2) 音源同定と音源定位を組み合わせて聴覚処理のみによって人追跡ができること,
3) 視聴覚統合によって無音区間やフレームアウトなどの未観測区間においても実環境ロバストな人追跡ができること,
を確認した.


 
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