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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.47 No.2(2011年2月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 外れ値を伴う環境下での切替え型オブザーバによる状態推定

東京農工大学・中村 幸紀,三菱重工業株式会社・長井 健祐,
奈良先端科学技術大学院大学・杉本 謙二

 本論文ではセンサが不規則に発する外れ値に対してロバストな 状態推定の方法を提案する.非接触センサでは測定が一時的に 失敗し,異常値(外れ値)を生じることがしばしばある.この 影響を補償するため、提案の推定器ではオブザーバゲインを 切替えて正しいセンサ出力のみ選択する.一方,その正しさは 現在の状態から判断する.この切替え系の安定性はswitched Lyapunov関数を用いて保証される.シミュレーションと実験 の両方により提案法の有効性が示される.


■ 最小射影法を用いた二輪車両の障害物回避制御

奈良先端科学技術大学院大学・福井善朗,中村文一,西谷紘一

 多数の障害物が配置された未知空間における,車両の自律的な目的地への制御手法が求められている.そのためには,新たな障害物が検知されるたびに障害物回避制御問題・制御則を作り直すことが重要である.
最小射影法は,障害物回避問題に対して,なめらかではないポテンシャル場を設計することで,大域的に漸近安定性を保証する手法である.しかしながら,これまでに非ホロノミック車両へ適用可能性は検討されていない.そこで本論文では,二輪車両型移動ロボットの障害物回避問題に対し,最小射影法を用いて制御目標を大域的に漸近安定化する制御則を提案する.提案する制御則は不連続な状態フィードバック則であり,計算量のかかる目標軌道の設計が不要である点,制御目標が大域的漸近安定である点で優れている.そのため,リアルタイムな制御則の設計が可能であり,未知空間の探査における制御手法として有用である.最後に,実験により提案する制御則の有効性を示すとともに,ポテンシャル場のなめらかではない領域が障害物の避け方を決めている訳ではないことを示す.


■ 非一様・非対称な時間遅れを持つマルチエージェントシステム平均合意問題

電気通信大学・桜間 一徳,中野 和司

 本論文では,非一様・非対称な時間遅れが存在する一般的なネットワークにおけるマルチエージェントシステムの合意問題について考える.
時間遅れのないマルチエージェントシステムでは平均合意が達成される,すなわち各エージェントはその初期値に収束することが知られている.しかし,非一様・非対称な時間遅れのあるシステムでは平均合意が達成されるとは限らない.
 本研究の目的は,このようなシステムにおいて平均合意が達成されるための,ネットワーク構造の必要十分条件を導出することである.そのために,システムの保存量を導出し,エージェントの収束値,すなわち合意値をネットワークの構造と初期状態および初期関数によって表現する.初期関数は時間遅れのあるシステムに初期条件を与えるものである.次に,その合意値が初期状態の平均値に一致するための条件を考え,平均合意が得られるための必要十分条件を導出する.この条件を遅延遷移ラプラシアンと遅延重みラプラシアンがある固有ベクトルを持つこととして表現する.これらのラプラシアンは時間遅れのあるネットワークを表現するために本論文で導入した行列である.最後にシミュレーションによって,全てのエージェントの状態が解析法によって計算した合意値に収束することを確認する.さらに,導出された必要十分条件を満たしている場合に平均合意が達成されることを確認し,本解析法の有効性を示す.


■ 多関節ロボットの省エネルギーを目的とした適応的剛性調節による周期運動制御法

立命館大学・植村 充典,川村 貞夫

 本論文では,多関節ロボットに対してアクチュエータと適応的弾性機構を併用することで,目標とする周期運動を少ないエネルギーで生成する制御法を提案した.
 本論文では,目標運動を制御の途中で変更したり,制御対象のパラメータが制御の途中で変わったりしても,機械的弾性要素の剛性を適応的に調節することで省エネルギー化を実現する.提案制御法は,制御対象のパラメータを用いないため,それらの値は未知であってもよい.制御系の安定性と剛性の調節効果に関しては,基礎的な数理解析を行った.提案方法の有効性は,シミュレーションによって確認した.


■ 小型魚類の生体電気信号を利用したバイオアッセイシステムの提案

広島大学・寺脇 充,曽 智,平野 旭,辻 敏夫

 一般に浄水場での水質検査には化学分析的手法が採用されているが,現状ではリアルタイムでの検査ができないという問題がある.そこで,水質汚染の常時監視が可能な手法として,魚類の生体反応から生体への影響を推定するバイオアッセイが注目されている.呼吸のリズムは化学物質の影響を受けやすく,呼吸の際に生じる生体電気信号から間接的に計測できるため,水質汚染の監視に有効な指標だと考えられている.生体電気信号から水質汚染を判別するためには,遊泳中の魚から信号を計測できることと個体差のある信号を安定して識別できることが必要である.しかしながら,上記の条件を満たすバイオアッセイシステムはまだ確立されていない.
 本論文では,自由遊泳中の小型魚類の生体電気信号を利用したバイオアッセイシステムを提案する.本システムは自由遊泳に必要な広い計測範囲を確保するため,複数の電極を使用して信号を計測する.そして,計測した信号の周波数情報から水質の変化を自動判別する.確率ニューラルネットを用いたアンサンブル識別の導入により,個体差の影響を受けずに識別することが可能である.本論文では水質汚染を想定して漂白剤暴露識別実験を行い,提案システムにより漂白剤の暴露前後の水質の変化を安定して識別できることを確認した.


■ 通信容量制約に基づく動的量子化器の統合設計

熊本大学・岡島 寛,電気通信大学・澤田 賢治,熊本大学・松永 信智

 協調動作を行うビークルやテレオペレーション,遠隔手術など通信ネットワークを含む制御系構築の需要は増しており,ネットワークを含む制御系の解析や設計に関する様々な研究がなされている.このとき,通信レートの有限性に起因した制御性能の劣化は対処すべき重要課題の一つである.情報圧縮においては信号の量子化が必要であり,効果的な量子化手法として動的量子化器が知られている.動的量子化器はフィルタ部と量子化部を持ち,量子化誤差の情報をフィルタにフィードバックする構造を有している.従来研究の多くでは,量子化部を既知としてフィルタ部の設計がなされている.一方,先行研究において,通信容量制約を満足するためにはフィルタ部だけでなく量子化部の設定も重要であることを明らかにした.
 本研究では,先行研究の結果を拡張し,通信制約下でフィルタ部と量子化部を同時に設計する設計アルゴリズムを提案する.提案法は,通信レートが無限の場合との誤差性能の評価に基づき,LMI最適化問題を繰り返すイタレーション型のアルゴリズムとなっている.さらに,提案手法の有効性を数値シミュレーションにより検証する.



[ショート・ペーパー]

■ レスキューロボットコンテスト競技運営支援システムのデータベース設計と実装

岡山県立大学・山内 仁,大阪府立大学・小島篤博,大阪電気通信大学・小枝正直

 レスキューロボットコンテストは大規模都市災害における救助活動をテーマとしたロボットコンテストである.本コンテストにおいて,救助対象であるダミー人形に与える負荷や競技の進行状況などの情報を競技者および観客に提示することは競技の評価と演出の両面で重要である.この目的のために独自に計算機システムを構築・運用している.このシステムはデータベースをその基幹に据えつつ,再現のための全記録とリアルタイム性の実現を目指したものである.
 本論文では,本システムの要となるデータベースのテーブル設計ならびに組み込み関数の設計および実装について報告する.リアルタイム処理の実現のために,最新データのみを保持する専用テーブルを用意し,組み込み関数およびトリガ関数を用いて,各種レコードの追加があったタイミングでこれらの専用テーブルに最新レコードを更新する設計を行った.


 
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