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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.46 No.4(2010年4月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 新しい最小次元状態推定器に基づいた安定化制御器の設計法

名古屋工業大学・不破勝彦,豊田工業大学・成清辰生,
    名古屋工業大学・森田良文

 本稿では,最小次元状態推定器を用いた安定化制御器の一般形と,それを用いた制御系について考察する.まず,最小次元状態推定器を用いてもイノベーションが恒等的に零にならないようにするため,観測量以外の状態変数は状態推定器により推定を行ない,観測量に関する状態変数はある補償器を導入し,それをハイゲインにすることにより近似的にその推定量を得ている.この結果,観測量に関する状態推定とそれ以外の状態推定との分離が達成された.つぎに,この推定器を併合した閉ループ系が内部安定となるための補償器や状態フィードバックゲイン行列の設計について考察する.その際,できるだけ状態推定器以外の補償器の次元を低減化するために座標変換を導入し,補償器を定数行列により記述する定式化を行ない,安定化制御器の次元を最小次元状態推定器の次元と自由パラメータの次元との和により記述することが可能となった.得られた安定化制御器を2慣性系の速度制御問題に適用し,外乱や観測雑音を抑制する制御系が構成できることを確認している.


■ 高次チェインドシステムの大域的指数安定化制御−サンプル値制御法に基づいたオブザーバとフィードバック補償器の設計−

名古屋工業大学・山田 学,IHI・高野洋瑛
     中京大学・舟橋康行

 本稿では,高次チェインドフォームで記述された非ホロノミックシステム(高次チェインドシステム)を大域的指数安定化するために,座標変換とサンプル値制御を組み合わせた新しいアプローチを提案する.そして高次チェインドシステムを大域的指数安定化する状態フィードバック補償器,およびオブザーバに基づいた出力フィードバック補償器の新しく簡単な設計法を与える.本手法の有用性は以下のとおりである.第1に,システムの状態や制御入力に依存しない新しい座標変換を提案する.利点は,従来法の問題点であった特異点を完全に回避し,大域的指数安定性を保証し,どんな初期状態からでも任意の希望の状態をすばやく効率な動きで達成できる点である.第2に,座標変換とサンプル値制御を組み合わせた手法により,チェインドシステムの大域的指数安定化問題およびオブザーバの設計問題を,ある可制御かつ可観測な線形時不変離散時間システムの標準的な極配置問題に帰着させ設計を簡単化する.第3に,オブザーバ極などの設計パラメータに関する従来法で課せられた条件(デッドビートオブザーバなど)を取り除き,設計の自由度を広げ,応答の改善を容易にする.
 最後に数値シミュレーションにより,提案法の有用性を実証する.


■ 非ホロノミック二輪車両型移動ロボットシステムのサンプル値制御−大域的指数安定化離散時間フィードバック補償器の設計−

名古屋工業大学・山田 学,富士重工・市川靖高
     中京大学・舟橋康行

 本稿では,非ホロノミック二輪車両型移動ロボットシステムのサンプル値制御による安定化問題について考察する.本手法の有用性は以下のとおりである.第1に,Chained formなどへの変換を用いずに,システムをサンプラと零次ホールダにより直接離散化し,システムの大域的指数安定性を保証する新しい離散時間フィードバック補償器の設計法を提案する.そのため,従来法のような離散近似は不要である.第2に,離散化された非ホロノミック二輪車両型移動ロボットシステムの安定化問題を,座標変換により,線形時不変離散時間システムの標準的な極配置問題に帰着させる.そのため,コントローラは標準的な極配置法により容易に設計でき,応答の改善も容易である.第3に,提案する座標変換は,システムの状態や制御入力を用いていないため,従来法のような特異点はなく,システムの大域的指数安定性を保証できる.さらに,座標変換は機体座標系における横方向の位置に重みを掛けているため,まず二輪車両システムの横方向の位置を優先的に希望値に収束させ,その後,姿勢角,進行方向の位置を希望値に収束させ,むだなく効率的な動きで安定化できる.第4に,速度項を制御入力とする場合だけでなく,ダイナミクスも考慮して駆動力と操舵トルクを制御入力とする場合の安定化問題も考察し,システムの大域的指数安定性を保証するサンプル値制御系の設計法を与える.第5に,提案するコントローラは,座標変換と定数ゲインの離散時間状態フィードバック補償器で構成されるため,構造が簡単であり,コントローラの実装も容易である.最後に数値シミュレーションにより,提案法の有用性を実証する.


■ 離散時間非因果的周期時変スケーリングに基づくロバスト安定化制御器設計

京都大学・細江陽平,萩原朋道

 本論文では,非因果的周期時変スケーリングの離散時間ロバスト安定化制御器設計への応用について論じる.非因果的周期時変スケーリングはリフティング手法を介して導入が可能であり,すでにロバスト安定解析においてその保守性を低減する点で有効であることが示されている.本論文では,非因果的周期時変スケーリングがもつ有望な特徴が,ロバスト安定化周期時変制御器の設計過程においてどのように活かされ得るかを論じるとともに,非因果的周期時変スケーリングの適切な構造の選び方や,スケーリングと制御器のLMIに基づく最適化も含めた具体的な設計手順を明らかにする.とくに,なぜ提案する設計手法により性能向上が期待できるかについて,単に制御器の周期時変なものへ拡張という観点にとどまらない,より包括的な議論を行う.その上で,非因果的周期時変スケーリングに基づく設計アプローチが,μ設計などの従来手法によるアプローチよりもたしかに性能改善の点で有効な一手法となっていることを,数値例を通して確認する.


■ 不確かな片持ち梁型搬送機の振動抑制のためのジャーク制御

大阪大学・三浦享博,池田雅夫,星島耕太

 製造現場では,被搬送物(以下,ワークと呼ぶ)を始点から終点まで積載し搬送する装置(搬送機)が広く用いられている.このような搬送機に求められる第一の性能は高速な搬送である.しかし,単純に高速な動作をさせると,搬送機がもつ振動モードにより,ワークは容易に振動し整定時間が長くなって,結局は高速な搬送にはならない.そこで,ワークの高速運動と振動抑制の両方を実現することが必要であるが,そのための1つの方法としてジャーク(加加速度)を抑制する方法が効果的であり,これまでにいくつもの研究がなされてきている.
 本稿は,液晶パネルやシリコンウェハの搬送に用いられるフォークのように,片持ち梁でワークを搬送する搬送機に対して,ジャークを抑えることで,ワークの高速運動と振動抑制を実現するフィードバック制御系を設計することを目的とする.搬送機の不確かさは機械構造物としての剛性と減衰のポリトープ型不確かさとして扱う.制御系設計に用いる数式モデルは梁の1次モードのみを含むものとするが,得られた制御則の有効性は,多数の高次モードを含み現実のシステムを十分に模擬すると考えられる有限要素モデルに対するシミュレーションで示す.


■ R/Cサーボモータのモデリングと劣駆動機械系への応用

大阪大学・石川 将人,京都大学・北吉 良平,和田 尭,丸田一郎,杉江俊治

 R/Cサーボモータとは主として無線操縦の玩具に搭載する目的で市販されているサーボモータで,DCモータ,ギヤヘッド,駆動回路および角度指令型のサーボコントローラが小型にパッケージ化されており,軽量,高トルクで使いやすいという特徴がある.近年では特に性能の進化が著しく,ホビー用途のみならず小型ロボット等でもよく用いられるようになった.本研究では,R/Cサーボモータ全体を「角度の指令値を入力とし実際の角度を出力する」動的システムとして捉え,学術研究の用途にも耐えうる実用的な数式モデルを構築することを目的とする.その際,システム同定の方法としては,さまざまな物理的制約に対する高いロバスト性が着目され近年急速に研究が進展している連続時間システム同定法を採用する.また,このシステムにおいてアクチュエータが発生するトルクは内部状態の1つであり,入力と角度の情報からトルクを推定するモデルも同時に得ることができる.これを用いることでR/Cサーボを含む劣駆動機械系へも応用可能であることを示す.


■ 可搬型端末を用いた患者の可処分時間向上のための診察待ち時間の推定法

産業技術総合研究所・石垣 司,山本吉伸,
    中村嘉志,赤松幹之

 病院における診察待ち時間の長さは,病院サービスの不満足度の大きな要因となっている.待ち時間を推定し患者に通知することで,患者の可処分時間を向上し,患者満足度の向上を図ることができる.そこで本論では,患者への待ち時間の通知を行うための電子カルテシステムを必要としない診察待ち時間推定法について述べる.非接触型ICカードと可搬型RFID端末を利用することで患者の行動記録システムを構築し,実際の総合病院の眼科における検査・診察待ち時間と所要時間を計測する.その計測データに基づき検査・診察フローモデルを構築する.ここでは,所要時間の不確定性が大きいため,確率的なモデルを作成する.また,記録ミスなどの不良データに対応するため,ロバスト推定により確率分布のパラメータを推定する.そのモデルに基づいて電子カルテを用いない診察待ち時間推定の実験を行った.



[ショート・ペーパー]

■ 群論に基づいた動的微粒子アレイのソーティング法

産業技術総合研究所・田中芳夫,香川大学・川田博之
   産業技術総合研究所・石川 満,香川大学・北島博之

 動的微粒子アレイは,融通性,再利用性,高反応性など,次世代のマイクロアレイ型センサとしての優れた特徴を有している.本論文では,2次元格子状の動的微粒子アレイを対象に,複数個の微粒子の並列的なマイクロ操作ができることを前提にして,微粒子相互の衝突や整列されたアレイの配列状態を乱すことなくアレイの各要素を任意の順序に再配置できるソーティング法を提案した.M×Nサイズの動的微粒子アレイが,群論に基づく格子点に位置する4個と6個の微粒子の循環操作で,衝突することなく任意の順番に再配置できることを証明している.また,時分割多点光ピンセットを用いた同時並列マイクロ操作により,大きさの異なるマイクロメートルサイズのガラスビーズから構成される3×3の格子状アレイに対して,提案するソーティング法の実現可能性を実証した.


 
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